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ミステリの祭典

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クリスティ再読さんの登録情報
平均点:6.39点 書評数:1392件

プロフィール| 書評

No.392 7点 人の死に行く道
ロス・マクドナルド
(2018/08/27 18:29登録)
死顔はやはり美貌だった。どこの葬儀屋でも、こういう美男を扱えば気分がいいだろう。

と、本作は後期と違って、突き放したような非情さが目につく作品である。本来のハードボイルドってこういう非情さがポイントのはずなんだけども、浪花節を強調しがちなのは日本の国民性だろうか?斜めに構えたあたりが少々チャンドラー臭いところもあるけども、本作あたりが「らしさ」が堂に入って熟してきた感じで、ロスマク初期の「ハードボイルド」完成形のような気がする。タイトルだって邦題が直訳でわかったようで分からない迷訳だとは感じるけど、「The way some people die -> 奴らの死にざま」くらいが適切なんだろう。まさに、ハードボイルドなタイトルだ。
というかねえ、どうも日本の読者はロスマクを家モノ作家みたいに捉えすぎな気がするよ。本作だとヘロインを巡る抗争が背景にあるし、犯人像もハードボイルドの大定番な犯人だし...と、ハードボイルド読んだ、という読書感があるのが一番イイあたり。ハードボイルドが登場した20世紀前半のアメリカというと、ギャングの抗争が「リアル」だった時代だ、というのを皆さん忘れがちではないのかな。しかも、本作の「非情さ」がラストの犯人の家族と馴れ合わず「分かりあえない」アーチャーの姿として現れているのが、本当にいい。カウンセラー化しちゃう後期よりもずっと、ね。


No.391 5点 スクールボーイ閣下
ジョン・ル・カレ
(2018/08/23 22:40登録)
スマイリー三部作の「中」にあたる本作は、一番長いが、一番動きがある作品である。「ティンカー・テイラー」が動きがすくない地味な作品で、退屈か...といえばそうじゃなくて、抑えたサスペンスのいい作品だったのだがね。と歯切れの悪い書き方をしているのは、今回再読してどうも本作は気に入らない、のだ。
というのはね、本作の「動」の部分をベトナム戦争が担っているわけだが、本作でのベトナム戦争は、動乱の中に消えた男を、危険を犯して「スクールボーイ閣下」ウェスタビーが追いかける、という「背景」に使われているだけなんだな。どんな紛争でもベトナム戦争のかわりになっちゃうんだろう。ル・カレというと、イギリス帝国主義の尻ぬぐい役としての秘密情報部自体の役割について、大して懐疑的ではないために、ベトナム戦争、とは言っても「欧米人の植民地主義的な見方」を抜け出た視点があるわけではない。ここらを問題化したポスト・コロニアルと呼ばれる文芸批評のスタイルがあるんだが、一世代上のアンブラーやグリーンがなかなかイイ線行ってるように思えるのに対して、保守的なル・カレは「最後の植民地主義者」みたいなもので、後退しているようにしか思えないなあ。
大きな視点を欠いているので、大英帝国主義を担った「honorable」である主人公ウェスタビーの暴走が、何か身勝手なものにしか見えないのが弱いところ。本作の緻密な描写はこういう動きのある事件描写の、ダイナミズムを妨げる方向にしか働いていないようだ。というわけで、本作の発表当時の高評価は、ベトナム戦争が「リアル」だった時代の空気の共有感で成立したものなのだろう。
いい部分は秘密情報部vs他官庁&CIAとの権力闘争にリアリティがあるあたり。ここらはスマイリーの主観描写がなくてギラムの推測で書かれているので、今一つ真意が見えづらいのが難。
結論:本作は古びてる、と思う。残念。


No.390 6点 ワイルドターキー
ロジャー・L・サイモン
(2018/08/14 13:20登録)
なんかねえ、モウゼズ・ワイン褒めちゃいけないような風潮があるように感じるんだけど、80年台にさんざん売れたシリーズなんだよ。だから古本屋の百均ポケミスの棚にわんさと並んでいるわけで、そんなにツマんなかったら並んでないよ。というわけで評者少し肩を持ちたい気分である。

「うんち」「うんちなものか」おれは、リノリウムのフロアにサイモンをあおむけにして、胸当てズボンを脱がした。垂れていた。「一番厄介な問題は一人でトイレに行けない二歳半の息子がいることだ」

モウゼズ・ワイン、ユダヤ系、元過激派、現ヒッピーな私立探偵。妻に逃げられ2児を育てながら仕事する。趣味はマリファナで、寂しくなるとオナニーする...とおおよそカッコ悪いこと甚だしい探偵である。このダメでカッコ悪いのが、いい。オトコなんてこんなものなんだよ。
セックス解放を巡って論争していた女性ニュースキャスターが殺され、その論敵の作家が殺害を告白して自殺した...自殺する前の作家に依頼されたワインは、作家の自殺を疑って捜査を継続する。どうやら作家が持っていた録音テープが自殺の現場から奪われたらしい。録音テープを取り返すよう、ワインはキューバ人ギャングに子供を種に脅される。ヒッピーコミューンのセックス解放カウンセラー、服役中のユダヤ系老ギャング、ハリウッド。ワインは70年代ウェストコーストのサブカルの最中を駆け抜ける。スキゾでカラフルでスピード感のある冒険だ。
とまあ、こんな小説。だから風俗小説の色合いも強くて、ビーチボーイズだの「ローリング・ストーンズ誌」だの、「アメリカン・グラフィティ」だの、固有名詞満載で、ここらを懐かしがって楽しめる人ならいいと思うが...馴染みがないとちょっとツラいかな。けどね、似たような傾向のA.D.Gの「おれは暗黒小説だ」がもてはやされるのを見ると、モウゼズ・ワインが無視されるのは評者はなんか納得がいかないな。A.D.G が楽しめるなら、ワインもどうぞ。


No.389 7点 キングとジョーカー
ピーター・ディキンスン
(2018/08/14 12:39登録)
架空歴史という口実のもとに、「王家のミステリ」をやって見せている本作、菊タブーのある日本とは比較にならないくらいにサバけている。主人公は13歳と1/4の王女ルイーズ。多感なお年頃で、このヒロイン・ルイーズの青春ミステリという味があることが、本作の面白みを高めている。考えてみりゃ、おとぎ話の舞台は王様と女王様の世界であって、そういう普遍的で神話的な「親」からの自立の物語として読むと、趣き深いものがある。ピブル警視ものよりもずっと読みやすくて一般的なので、ディキンスンを最初に読むなら本作が一番のおすすめだ。
イギリス現王家(1977年時点)は、国王ヴィクター2世、イザベラ女王の間に皇太子アルバート(20歳)と王女ルイーズがいる。このロイヤルファミリーの生活に中に、とんでもないイタズラが起きるようになった。当初は他愛もないイタズラだったのだが、どんどんと王家と周辺の人々を傷つけ危害を加えるものになっていった....ついには殺人さえも。老衰の果に死を待つばかりの、王家の11人の子供を育てた乳母が知る秘密とは?
...はっきりキャッチーである。自らの意思で公立学校に通う王女ルイーズの、しっかりした内面が陰影深く描かれるのが印象的。親で国王・女王といってもおとぎ話の王様・王妃様ではなくて、情けない秘密も併せ持った人間らしい人間であることが、子供もだんだんとわかるようになってくる...そういう惑いのなかで、ジョーカーの事件を媒介に、それこそ犯人に拳銃で脅されながらも、自分を確立していくさまが「青春ミステリ、だなあ」という感を受ける。
けどね日本で天皇家でこれやったら、大変なことになるだろうよ。いかにイギリス人が創作の自由をちゃんと守れる、洒落のわかった「粋な」気概の国民性であるかを示していると思う。


No.388 8点 ある詩人への挽歌
マイケル・イネス
(2018/08/12 21:42登録)
本作というと、スコットランド方言が多いために翻訳が難しかったこともあって、乱歩が絶賛したにもかかわらず今はなき社会思想社から訳が出るまで、名のみ高い作品だったのをよく覚えている。「ラメント・フォア・ア・メーカー」って原題表記でタイトル覚えたよ。訳題を見てピンと来て、出てすぐに買った記憶がある。そういえば昔「神への悲歌」の仮訳題をみたことがあるが、内容的には Maker は造物主という意味ではなくて、スコットランド方言での「詩人」という意味なので、刊行邦題が正しい。
先行する「学長の死」「ハムレット復讐せよ」みたいな本格というよりも、ゴシック・ロマンスのパロディみたいに読んだ方が面白かろう。荒涼としたスコットランドの古城に住む悪者領主もいれば、その被保護者の恋に悩む少女がいて...とゴシック・ロマンスの舞台装置満点なくせに、思わず吹き出すようなユーモアがあるのがいい(シビル・ガスリーがナイスなキャラだ)。関係者手記による構成が、その都度の視点切り替えでリフレッシュするかのようで、読みやすく効果的である。「教養ある靴直し」イーワン老人の担当部分などスコットランドの寒村の生活の描写が情趣に富んでいる。
だからアプルビイ、あまり名探偵でもなくて、終盤に近づくにつれ、これでもか、というくらいに真相を何通りにも組み替えてみせる力技が、万華鏡のような眩惑感を誘う。これはこれでなるほどの風格がある。雪に閉ざされた古城という舞台で、この暑い中けっこうな納涼になったしね。終盤の手記と合わせて、地方色描写が雰囲気が出ていて、小説としてなかなかいいものである。そういえば昔イネスで訳されたのって「海からきた男」が冒険ものだった記憶があるが、そういう資質も本作で少しだけだが出ている。今でこそ結構読めるけども、フトコロの深い作家みたいだ。本作褒めるあたり、乱歩のセンスも侮れない。


No.387 4点 夜は千の目を持つ
ウィリアム・アイリッシュ
(2018/08/12 20:43登録)
「夜千」の略称で親しまれる本作は...と言いたいところだが、そう呼ばれるのは本作の映画化の、さらにその主題歌がジャズ・スタンダードとして定着していて、コルトレーンなんかの名演があるためだ。しかし星空を「夜は千の目を持つ」と比喩したのはウールリッチらしい冴えがある。
本作は良くも悪くも、短編の寄せ集めみたいな書き方だ。言うまでもなくウールリッチは短編名人なんだけど、短編をそれ自体として成立させるような密度・濃度で、手変え品変えだと、全体として見たときに構成のメリハリ感がなくなって、ホントとりとめのない感じにしかなっていない。章ごとにオチがついてしまうのが、流れをせき止めている感じ。渋滞してる(イライラ)。いくらサスペンス(中断)でも、ちゃんと流れてなきゃそれに飽きてくるんだよ。
でまあ...本作は「超自然なし」という制約面ではミステリじゃない。ジャンルに困る作品なんだが、各務三郎氏が「ゴシック・ロマン」と呼んでいるのを見つけたよ。それでいいのでは。


No.386 3点 青いジャングル
ロス・マクドナルド
(2018/08/08 23:48登録)
申し訳ないが、本作ほめたらダメな作品の気がするんだよね....
たしかに頑張って通俗ハードボイルドを書いてるわけである。ギャングの殺伐な殺し合いはあるし、GI上がりで腕っぷしにも自信ありげな主人公は、やたらと強がってしょっちゅう警句を飛ばしたがるし...と極めて「努力が見える」通俗ハードボイルドという仕上がりなのだ。けどね、通俗ハードボイルドってそもそも頑張って書くものか? ここまであからさまに無理して書いてる感の強いものだと、読んでいてはっきり疲れる。ひどくは不自然ではない「動く標的」まで、本作からずいぶん進歩したんだなあ、と後でそう思われるような作品である。
子供の頃別れた父親が市政腐敗の張本人で、その息子がそれと知って少々ショックを受けたりする、というあたり、後年のモチーフが出ているから、それでもロスマクなんだよね、という気はする。何かキマジメなんだよね...
評者マーロウの警句って実際には「自分が痛みを感じてるから」自然に出るようなものだと思うんだが、本作の警句は「気の利いたこと言わなきゃ」って強迫観念に駆られて言ってるような気がするよ。気の利いたようなことを言い過ぎるのって、実は格好が悪い、というのにどうも気が付かないようだ。


No.385 6点 世界をおれのポケットに
ハドリー・チェイス
(2018/08/04 17:53登録)
古典的なケイパー小説である。4人のギャングに身元不詳のヒロインが仕事を持ちかけてきた。テキは企業の現金輸送車である...がそれは、難攻不落を誇る戦車まがいの装甲車だ。ヒロインの襲撃プランとその成否は?
このヒロイン、銅色の髪とその髪色を活かしたグリーン系のファッション、という設定で何か目に浮かびそうなくらい個性的でお洒落である。しかも男たちをビビらせるほど「タフ」で、「男に惚れない」ハードボイルドである。訳された1965年だと、時代がまだ追いついていなかったかな。今新作でこの設定だったら人気が出るんじゃないかと思うよ。そういうヒロイン・ハードボイルドとして楽しむのがナイス。
まあ計画は計画で、実際やってみるとなかなか思いの通りには動かない。ヒロインを巡って男たちは鞘当てするし、予想外の出来事に翻弄される。全体的なリアリティはなかなかあって、渋い映画向きな感じ。実際「悪の報酬」というタイトルで、ロッド・スタイガー主演(渋いなおい)で映画になっている。なぜか西ドイツ映画(1960)。チェイスって実は結構映画原作の帝王だからねえ。


No.384 7点 薔薇の環
ジョン・ブラックバーン
(2018/08/01 21:36登録)
暑中見舞い納涼三連発は、「涼しいタイトル」を優先したきらいがあるけども、さあ今度は本当にゾッとしてもらいましょう。ブラックバーンでも多分一番怖いのが本作。
冷戦下のドイツ。イギリスの駐留軍人家族の少年が、東ドイツを通過中の電車から消え失せた。冷戦下ということもあって、双方の不信感から情報の共有が進まないが、どうやら東独の作戦は絡んでいないらしい...少年は独力で西ベルリンの知人のもとに現れるが、失踪からの経緯を打ち明けない。帰宅した少年は高熱を発して死ぬ。細菌学者マーカス卿の診断は....ペスト。
少年の帰国には東ドイツから亡命するための秘密ルートが関わっているらしい。感染源と保菌者は? ペスト発症者が現れた。感染を食い止めるには?

一番のネタはアウトブレイク物なのだけども、東西冷戦と絡めて解決を難しくしているのが作者の工夫。ブラックバーンだしジャンルミックスはお手の物。最終的にはサイコホラーみたいな味も出てくるわけで、このサイコなキャラが一番怖い。

アティシュー、アティシュー、みんな倒れていく

ブラックバーンというと民話や民謡を使って不気味な雰囲気を醸すのが上手だけど、ペストだから言うまでもなく14世紀のヨーロッパ社会に大きな傷跡を残して、その痕跡がやはり民話や民謡のかたちで伝わっていたりする...「輪、ばらの花輪、ポケットいっぱいの花」だってペスト患者の発疹を歌った唄だった来歴があるらしい。本作の怖さ、はそういう恐怖である。
論創社で紹介された作品が「ウルトラQ」っぽいこともあって、ネタ作家扱いを受けて、ブラックバーンは軽く見られがちだけど、作家としてみたら盛り上げるテクニックは上手だし、なかなかの名文家で、小説にありがちな「...と誰々は言った。」を避けて「うまく」書いていたりする。工夫のある作家だと思うんだよ。「小人たちがこわいので」よりも本作の方が若干出来がいいと思う。


No.383 8点 寒い国から帰ってきたスパイ
ジョン・ル・カレ
(2018/07/30 00:58登録)
暑中お見舞い申し上げます。納涼3連発、第3弾は「寒い国から帰ってきたスパイ」

ベルリンのスパイ網を壊滅させられて、失意のうちに帰国した英国情報部員リーマスは、その失敗を逆用して東独情報部に一矢報いる作戦に参加した。それは異例の作戦だった。目的のために、リーマスは「堕落」した。堕落の底に沈んだリーマスに男が接触したきた...

古い話だが、評者とか昔高橋和巳に凝ったんだよ。そういう世代さね。執拗にインテリが「堕落」する話を書きつづけて、70年代初めに亡くなった作家である。自意識を強く持ちつづけ、堕落する自分を奇妙なほどにクリアに捉えつつ、倒錯的にその「堕落」を愛し「堕落」によって逆に救われるような逆説を描いたわけだけども、ル・カレの本作、高橋和巳みたいなリーマスの「堕落」が評者は今回一番印象に強く残った。もちろんスパイ小説なので、そういう「堕落」も納得づくのものなんだけどもね。しかし「作戦」は卑劣な男を助け、マジメな男を破滅させるものだし、リーマスさえも、愛した女がトラブルに巻き込まれる可能性を否定出来ないような作戦だった....何を選び、何を捨てるのか。そのときに自分が捨てたものが、本当に自分に不可欠なものでなかったと言えるのか?
そういう「アオさ」みたいなものが、本作の一番イイところになっている。本作の「寒さ」というのは、そこで捨てたものが実は一番大切なものじゃなかったのか?という疑念なんだろう。作戦のために「堕落」したんじゃなくて、スパイという職業を選んだことですでに「人間」から「堕落」していんじゃないか。そういう疑念を抱えてしまったリーマスは、職業スパイという「寒い国」から帰還できるのか...

(あと本作はちょっと「死者にかかってきた電話」の後日譚という感じの設定がある。ル・カレって単品で読んでも悪くはないけども、全体的なサーガみたいに読んだほうが良さそうだ。どっちかいうと本作は番外編みたいな色彩が強いと思う。)


No.382 4点 ウインター殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2018/07/30 00:30登録)
暑中お見舞い申し上げます。納涼3連発、第2弾「ウィンター殺人事件」

「別名S.S.ヴァン・ダイン」によると、最後の2作あたりは「映画の原作」に名前をつける、という本当にカネのための仕事だったようだ。本作は美人スケーターのソニア・ヘニー主演映画ありき、で書かれたアイドル映画のシナリオみたいなもの。だからエラ・ガンサー(ソニア)が2回もフィギュアを披露する場面があって、素直に映画になっていればこれが見せ場で、特にあとの方はヴァンスの真犯人指名とカットバックになって...とかいう場面だったろうな。というわけで「映画の原作」(というか原作のための原作だし)の役割はちゃんと果たしている。それでもママならぬ世の中で、ちゃんとは映画化されなかったようだ。
冬の雰囲気はちゃんと出ているので、「サムい」という意味ではなくて、納涼の目的は果たせる。よかった。けど、ミステリとしては...どうだろう、謎は小粒だし、推理も恣意的。けど何かヴァンスがイイ奴に思えてくる(ソニアのアイスショーの司会をするんだよ)。書き込みがなくて短いし「グレイシー・アレン」みたいに混乱してないから、結構読みやすい。

で、本作はオマケで「推理小説作法の二十則」と「推理小説論」がついてくる。とくに「推理小説論」はヴァン・ダインの理論とミステリの歴史を簡潔にまとめたなかなか読み応えのある評論。ミステリと「現実性」を扱った箇所など、なかなか興味深い。やはりヴァン・ダインのセミ・ドキュメンタリタッチは、いろいろ読んだ末の結論だったようだ。オマケに+1点。


No.381 7点 さむけ
ロス・マクドナルド
(2018/07/30 00:02登録)
暑中お見舞い申し上げます。なので納涼3連発、を洒落込みます。第一弾「さむけ」

皆さん大好き名作の部類になってるなぁ。どっちか言うと本作は全盛期ロスマクだとあっさり目の作品のような気がする。ロスマク水準だと、ストーリーラインが素直、という印象の方が評者は強いよ。本作は凡作として知られる「凶悪の浜」との共通点が多いような気がする....「凶悪の浜」が不本意な出来だったのを、要素を組み替えて再チャレンジしたような、と読むのは穿ち過ぎだろうか。そう見てみるとシンプルに作品を練り直して、ラストの有名なショックを加えた「ロスマク入門編」という作品のようにも思われる。さらに作中で出てくる詩が象徴的。

もし光が闇で/闇が光なら、/月は黒い穴だろう、/夜のきらめきのなかで。/烏のつばさが/錫のように白いなら、/こいびとよ、あなたは/罪よりも汚れているだろう

有名なラストの一行なんて、こういう「罪に汚れたこいびと」という甚だロマンチックな(しかし「さむけ」な)ダークファンタジーといったテイストをうまく付け加えることに成功していると見るべきだろう。大詩人小笠原豊樹氏の訳に大感謝。
(本作とかホント何回も読んでるんで、妙に醒めた書き方になってるなぁ..すみません。あと1960年のあの有名な映画が影響してるかしら?何となくそんな気がする...)


No.380 5点 死者にかかってきた電話
ジョン・ル・カレ
(2018/07/29 23:35登録)
ただでさえハードル高めなル・カレのスパイ小説のハードルを、さらに上げるような真似はあまりしたくないのだが....評者本作初読なんだけども、これ「ティンカー・テイラー..」読む前に読んでおきたかったな。「寒い国から帰ってきたスパイ」も本作の後日譚みたいな作品だったりする。
本作はル・カレの処女作で、いきなりCWAのシルヴァーダガーをもらっている。注目度は最初から高かったわけだが、本作でのデビューはスマイリーだけじゃなくて、スマイリー三部作で活躍するピーター・ギラムやメンデル警部も本作がデビューだったりする。ル・カレ、話がかなり繋がっていて、スマイリー・サーガとでも言いたいくらいに人物があちこちに顔を出しているんだね。
密告によりスマイリーは外務省の役人の思想調査の面談をする。密告に根拠が無いことをスマイリーは確信して、友好的に別れたのだが、翌日、役人は自殺した。不当な疑惑を持たれたことを抗議する遺書があった....調査のために妻の元を訪れたスマイリーは、自殺した役人宛にかかってきた「朝の八時半を知らせるサービス電話」を受けて、役人の自殺に疑念を持つ...
こんな話なので「本格」扱いしたくなるのもわからないではない。東独のスパイ活動が当然背景にあるので「事件」はあるけども、その説明自体はスマイリーがちゃんとつけなければいけない。箇条書きにして検討するとか、ちょっと「ぽい」描写もある。けど評者の印象だと「警察小説」っぽいかな...捜査がかなり地道だからね。かなり地味な印象である。役人、というのを見ると松本清張風に「小官僚の抹殺」と捉えたら社会派っぽいのかもしれないし。未分化なミステリ、という感覚かな。
スマイリーの個人的背景がちゃんと描写されているとか、本作の読みどころは結構あるんだけども、処女作のせいか妙に凝った文章を書きたがっていて、そこらへんの印象はあまり良くはない。若書き、という感じはする。スマイリーが1900年代後半生れで、戦前から第二次大戦中にスパイとして活躍し、本作時点では半引退、という経歴アウトラインが描かれる。スマイリー三部作より少し年上の印象だ。ル・カレから見ると親世代に当たる主人公のわけで、ちょっとまだ手に余るキャラのように思われる。執筆時が29歳らしいが、この若さで親世代のインテリの肖像をちゃんと描くのって、かなりの難行の部類だと思うよ。


No.379 10点 夢幻紳士 幻想篇
高橋葉介
(2018/07/26 21:33登録)
漫画の書評をしていいか..というのが、掲示板の方で議論になっていたのだけども、管理人さんの結論としては「ミステリと断言できるのならば」ということになりました。なので書評をさせていただきます。
本作は70年代末のいわゆる「ニューウェーブ」としてデビューした高橋葉介の、ライフワークと呼ばれる「夢幻紳士」の新規シリーズとして、ハヤカワミステリマガジンで2004年度に連載された作品である。夢幻紳士自体、いろいろとバリエーションがあるが、職業は一応「探偵」で一貫しているし、特にHMMでの連載ということもあって、シリーズの中でもミステリ色が濃厚である。このHMMでの連載の夢幻紳士は「幻想篇」「逢魔篇」「迷宮篇」と一まとまりになって「ハヤカワ三部作」と通称される。16ページの短編にまとまりをつけ、しかも1巻12回の中で話の繋がった結末をつけ、さらにハヤカワ三部作でも大きな話の流れを作り上げるという、とんでもない構成の美をもっている。とりあえず「幻想篇」は...
精神病院に監禁された「僕」に、その「影」として夢幻紳士が訪れる。「僕」は財産を狙う叔父に「受信機を埋め込まれて」狂わされていたのだった。夢幻紳士は「受信機」を「僕」の頭から抜き出して、精神病院から救い出すが、叔父の策謀によって「僕」はその後も窮地に陥り、「この子は僕の大切なパトロンなんだ」とする夢幻紳士が、「僕」を幻想的な手段によって救い出す。その中で次第に明らかになる「僕」の秘密と、夢幻紳士の正体...
でまさに、本作が漫画であることによって、絵でしか表現できないファンタジーが横溢する作品である。ハヤカワ三部作でも「逢魔篇」の後半から採用された筆のかすれを使ったかなり特殊な画風(本作では表紙カバーなどで窺われる)を支えるために、かなり上等な紙での製本(ややお高いが)になっており、「幻想篇」では版画的な白黒の鮮やかな美を堪能できる。
しかも、本作は「信頼できない語り手」を非常にうまく使ったナラティブが効果的で、これが夢幻紳士の正体とも密接に関わりあっている。まさに上出来なメタ系の幻想ミステリであり、しんみりとした結末まで一気に読ませるユニークな傑作となっている。
HMM連載ということで、ミステリファンの間でも目にしたことのある方も結構いるのではと思う。今回書評をさせて頂いて、評者自身何か光栄、といったような感慨がある。

僕の名前は夢幻です 夢幻魔実也というのですよ


No.378 9点 ナイン・テイラーズ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2018/07/22 23:25登録)
今はイイ時代で youtube ででも "change ringing" で検索すれば、本作でウンチクられる「転座式鳴鐘術」の動画を見ることもできる。本作は評者の世代だと「幻の名作」で有名だったもので、高校生くらいでムリして平井呈一訳の創元「世界推理小説全集」で読んだ覚えがあるが、20世紀末に創元の新訳が出たときに購入。その頃は転座式鳴鐘術なんて本当に見当もつかなかったのが隔世の感である....
失礼、つい感慨に耽ってしまった。今回がだいたい4回めくらいの再読になると思う。悠揚迫らざる小説的充実感抜群の作品で、高校生向きじゃなかったな(苦笑)。謎解きを軸に話が進んでも、それ以上に舞台となるフェンの風土が主題のようなものだ。今回は全体を大きくまとめ上げるような荘厳な雰囲気に強い印象を受けている。悪人もいれば善人もいて、まあミステリだから職業的犯罪者はコセコセと悪をなし、巻き込まれた善人は秘密を抱え込んで途方に暮れ、教区長は祈り、ピーター卿は村人たちの話を聞いて真相を調査する。そういう当たり前な風景が、どこかしら民話のような話の枠組みの中で、1930年台イギリスのリアルな風景を介して、ふっと神話的な彼岸に吸い込まれていくような目眩む思いで読んでいた。
ちょうど水害があったばかりで被害に遭われた方のご苦労を思うと遣る瀬ない気持ちになるのだが、本作の結末でのすべてを洗い流すフェンの洪水にどこかしらノアの方舟めいた荘厳さを感じ、その人事の域を超えた何か大きな力に、ピーター卿も操られるかのように真相に導かれる。それは摂理というものなのかもしれないな。人間たちもどこかしらその祖型に還元されて、人臭い鐘たちと隠れん坊をするかのようだ。

小さなガウデ、銀の音のサベオス、力強いジョンとジェリコ、歓喜するジュビリー、甘やかなディミティと老いたるバディ・トーマス、そしてそのさなかを吠え哮りのし歩く巨大なテイラー・ポール。

繰り返されるこの鐘たちのクリシェが、本作のイノチであり人よりも人臭い登場人物として、リアルの向こう側への回路を開いている。ちょっと凄い小説である。こんなの書いちゃたら、確かにセイヤーズ、小説家なんて続けられないな...
(この文庫、巽昌章氏によるやや長めの解説がなかなか正鵠を得ていると思う。ちゃんと読む価値あり)


No.377 6点 盃のなかのトカゲ
ピーター・ディキンスン
(2018/07/17 23:57登録)
前作の「眠りと死は兄弟」が、ピブルの表象の中に浮かんでは消える解釈の万華鏡といった、「意識の小説」になり読みづらい作品になってしまった。それを反省したのか、「解釈の万華鏡」は変わらないが、ストーリーラインに動きがあって、ピブルもそれほど内省的ではない。イオニア海に浮かぶギリシャの島、イオス島の珍しい風物など開放的な印象があるから、まあそんなに身構えなさんな。
この島にあるボロボロの修道院には、2人の酔っぱらいの修道士が住んでいて、聖画を描く助手の女性(ギリシャ正教だしもちろんマズい)が居候していたりする..ピブルは「眠りと死は兄弟」で知り合った大富豪タナトス氏に声をかけられる。マフィアとの遺恨からタナトス氏の暗殺が計画されているらしい、との情報を得たのだ。ピブルはタナトス氏の警備顧問みたいな立場で、その側近グループと行動をともにすることになった。タナトス氏が水上スキーをしていると、急にモーターボートが炎上した!これは暗殺の企てか?島に身分を隠してイギリスの麻薬刑事が訪れている。それとも麻薬密輸ルートが関わっているのか?
とディキンスンらしく、決定的な大事件が起こらないまま、最終盤になだれ込んでいく。フーダニットでもホワイダニットでもなくて、「一体何が問題なのか?」を「予感」するのが推理だ、という感覚的なミステリである。まあ本当に、捉えどころのない茫洋としたミステリだが、ピブルは今ある情報をいろいろと組み合わせ・組み替えて「何が問題なのか」を推理していく、その変転のさまがまさにミステリの精華でもある。
ちなみにタイトルの「盃の中のトカゲ」は、島の伝承にある一種の毒トカゲのことで、コップのミルクを飲み干すと、その底に毒のあるトカゲの死体が沈んでいるのを見つけて...という状況。裏切り者探しみたいな趣向もあるので、タイトルはちょっとした比喩でもある。
さてピブル物の残は3作目の「封印の島」(ピブルが警察をクビになるエピソードだ、楽しみ)だが、どうも未訳作品で最後のピブル物の「One Foot in the Grave (1979)」があるようだ。ピブルってどうも情けない印象があるのがナイスだ。Mr.ビーンみたいなキャラなんだと思う。


No.376 7点 メグレの回想録
ジョルジュ・シムノン
(2018/07/12 22:07登録)
メグレものなんだけど、空さんがやり落とされていた作品で、評者もそのうちやりたいなと思いながらも、怠けてたら雪さんに先を越されてしまった。70年代に「モダンの極み」な編集方針で、伝統的なファンの怒りを買ったことで有名なハヤカワの「世界ミステリ全集」で訳されて以来、ポケミスにも文庫にもなっていない「メグレの回想録」である(その前にHMMで訳されたことはあるらしい)。
メグレだって最初から管理職だったわけではなく、駆け出し時代はパトロール警官だって、風紀係だって、平刑事だってやっている。メグレ夫人との馴れ初めまで描いた、メグレの青春を語っちゃった本作は、ファンサービスのための公式薄い本みたいなものだよ。メグレものに親しんでいる読者にとっては、非常に興味深く読める作品なのだが、メグレ自身によるエッセイでしかないから、小説だと思うと困るだろう。それでもね、評者は「メグレの青春」を何かほっこりした気持ちで読んでいたなあ。特にメグレの生い立ちみたいなことが語られる章もあるので、とくに「サン・フィアクルの殺人」は読んでおいた方が楽しめるだろう。
普通のメグレもの小説だと「ミステリ」なので、メグレが感じてること・考えていることは、わざと描写されないことが多いけど、これは「回想録」だ。かなり自分を語っていて、メグレものを読んでいればいるほど、興趣が増す。

人間の神秘的な部分を理解してはいけない--わたしが最も熱心に、ほとんど怒りさえこめて抗議するのは、こういうロマネスクな考え方に対してである。

そうやって得た人間の神秘とは「いわば技術的なもの」だとメグレは言う。ここらへんにきわめてフランス的な知性を感じる。人間の魂と靴とケーキと、それぞれに対する、刑事、靴屋、菓子屋の知識に貴賤の違いはなく、それぞれがそれぞれに、尊い知識なのである。シムノンが明白に気楽に書いているだけに、手の内をかなり明かしているという、作家論として外せない読み物である。

(挟み込みの月報と巻末の座談会が、シムノン受容を考えるにあたって、70年代初めまでのきわめつけの資料になる。そういう意味でも読みでがある。すごい)


No.375 7点
ジョルジュ・シムノン
(2018/07/10 23:25登録)
tider-tiger さんもそういう要素にお気づきのようだが、評者は本作はグロテスクなコメディみたいにして読んでいたなぁ。周囲が「お似合い夫婦」みたいに見ていたとしたら、逆に非常に怖いことになっていたのかもしれない。誰がどうみても悪意を通貨にして、相互に依存し合っていたわけだからね。
だから評者はあえて本作は「大した作品じゃない」(いや面白いが)と言いたい。名作というよりも、シムノンという作家の職人的な上手さが発揮された作品のように感じる。ちょっとした心理のねじれをうまく組み立てて、軽妙に処理した作品、というイメージだ。動物たちが殺されたあと、その主人たちも老年によるエネルギー低下と惰性によって、言葉なきケダモノ同士の「共存」としかいいようのない「生活」に落ち込んでいく、アイロニカルなさまを描いた小品である。
どう見てもミステリじゃないけども、シムノンという作家の多面性が覗かれる作品ではある。成り上がって居場所をなくす男、というのはシムノンの固執的なテーマではあるんだよね....


No.374 9点 深夜プラス1
ギャビン・ライアル
(2018/07/08 18:25登録)
一時実家に帰省するたびに、読み返してた思い出がある。スルメ本である。これだけ再読が利く作品というのも珍しいのではなかろうか。今回も何がどうなって...が完璧に頭に入っているにもかかわらず、面白く読めた。
だからね、筋立てなんてどうでもいいんだ。本作は「カッコイイ!」「憧れるぅ」な感情を刺激するファッション・カタログ雑誌みたいな作品なのだ。こういう感情は「記憶」じゃないから、何回読んでも新鮮なのである。ここらを刺激されないのならば...読む意味はなかろうよ。ファッション・カタログ雑誌のヴィジュアルは速攻で古くなるけど、小説のイメージは読むたびにアップトゥデイトされる。ましてやレジスタンスで憶えた「仕事」のやり口が「今では古いか?」と自嘲する主人公なんだから、ちょっとレトロなのも「オシャレなオヤジ」で時代に超然、のポーズが取れる。いいじゃないか。
団塊とかね「本作が好き!」とか言うと、相好を崩す連中多数な作品だけど、作品側というよりも読者側にフォーカスした作品論って必要なんだと思う。「まあいっぺん読んでみな」ってねww
(個人的にはフェイ将軍大好き!鷲巣萌えみたいな感情だ)


No.373 8点 逆転 アメリカ支配下・沖縄の陪審裁判
伊佐千尋
(2018/07/07 23:23登録)
酔っぱらいのケンカの結果、一人が怪我を負い一人が死んだ。逮捕された若者4人の裁判を追ったノンフィクション作品である。なんていうと「はあ?」という声が上がりそうだが、死んだのが在沖米軍の兵士、被告は沖縄人のカタギな青年たち、時は昭和39年で沖縄は未返還の時代、沖縄での裁判はアメリカ流に陪審裁判だった...となれば、話は盛り上がる。
米軍基地との取引メインの商社を経営する主人公(=著者)はその陪審に選ばれる。他の陪審にはウチナンチュは2人だけ、あとはアメリカ人たち。米軍による捜査は極めて秘密主義で、公判で明らかになる「捜査内容」は疑義もかなり多い。「栄光ある軍人を殺害した現地人には見せしめに厳罰を!」と米軍のメンツにかけて、強引な捜査が行われた印象だ。主人公はこの陪審裁判の間に、経営する会社に理不尽な税務検査と、基地からの契約の破棄、という隠然たる圧力を受けていた。
「事実は小説より奇なり」とは言うけども、ここまで誂えたような状況もないもんだ。主人公は陪審の評議で抵抗する。そのさまはまさに「12人の怒れる男」。被告の調書はかなり捜査当局のシナリオに沿った作文臭いものだし、怪我をしただけの米兵は「何も覚えてない」と証言拒否に近い不審な態度だ。物証も混乱している...と主人公は丁寧に指摘するが、「兵士に手を出す不埒な現地人は吊せ!」と言わんばかりの白人の陪審もいる。死んだのは軍曹から一等兵に降格された粗暴な問題兵士なんだけどね。主人公の抵抗によって審理は長引き、みなの嫌気が指してきたあたりで主人公は「逆転」を狙ってある「取り引き」を考える...
本作は大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作、というか70年代というと「苦海浄土」とか「テロルの決算」とか注目度が高かかった時代である。それらに負けない力作で、のちに裁判員裁判の導入のときに本作が改めてもう一度注目されたこともあったな。2018年2月に著者が亡くなったこともあり、いい機会なのでとりあげようと思ってた。社会派法廷ミステリとして十分面白く読める「ノンフィクションなのが信じられない」くらいの傑作。

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