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ミステリの祭典

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地下鉄サム

作家 ジョンストン・マッカレー
出版日1956年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2018/12/10 22:43登録)
「新青年」って探偵小説誌というよりも、モボ御用達の総合娯楽雑誌でかなり「雑食」の雑誌だった、というのがどうも見逃されがちのようにも思うよ。カシコキあたりで愛読されて何か最近人気みたいなウッドハウスもそうだし、本作みたいな洒落た都会派ユーモア小説も「新青年」名物だったわけでね。まあイマドキ「地下鉄サム」なんて言っても誰も知らなくて、「新青年」も遠くになりにけり、やね。
で本作「怪傑ゾロ」の原作者として知られるマッカレーのもう一つの人気作だった。ニューヨークの名人スリ「地下鉄サム」を主人公として、サムを追いかけて腐れ縁の探偵クラドックとの、軽妙なコントのような短編集である。のんびりと落語を聞くように楽しむのが吉。「江戸っ子だってね!」なんて合いの手を入れたくなるような、サムのべらんめえな職人気質が楽しい。ここらへん戦前でウケた要素だろうね。
マッカレーというと、早い話最初期のパルプマガジンの人気作家だったわけで、いってみりゃハードボイルド以前のハードボイルドみたいなものだ。ゾロもそうだが、ブラック・スターのような「マスクト・ヒーロー」がお得意でね。それこそグリーン・ホーネットやバットマンの原型みたいなキャラのわけだよ。こういうパルプ・マガジンのヒーロー物やウェスタンの中から、ハードボイルドな探偵たちも育ってきたわけで、そういう連続性みたいなものを、タッチは違えども「地下鉄サム」の中に窺うこともできるのかもしれないよ。
軽く読んで楽しめて、往にし方に思いを巡らせるネタに事欠かない本作はいかがかな?

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