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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.325 9点 ジェゼベルの死
クリスチアナ・ブランド
(2015/10/16 03:00登録)
皆さん「戦慄のメイントリック」ってのは一体どっちの事を言っているの!? いやそれは分かっていますけどね、私としては、悪魔的行為を伴うちょっと複雑な衆人環視変形密室トリックより、シンプルで大胆な○○○○トリックの方が鳩尾(みぞおち)にずぅんと来た感じでね。だけど恐怖の密室トリックの方もね、後からじわじわじわ来るんだねえ。。これが。やっぱり終結部の畳み掛けと急展開とまさかの反転ですよ、この弾丸三銃士が一斉に攻めて来るんですもの、こりゃ胃がやられますよ。(終わりの方の自白合戦は山田風太郎の「十三角関係」を思わせますねえ)更に読後のじわじわ攻撃に晒されるでしょう、笑いじわの代わりに唸りじわが出来ちまうってな寸法なわけでげズよ。

そうそう、登場人物の名前がまた魅力的ですよね(ニックネームも含め)。悲劇の将校JOHNNY WIZE、いい気の貧乏役者は貴族でもないがEARL ANDERSON、くちばしの青いマザーディアーことジョージ、その母チャリティ(彼らの姓はX脚ならぬエクスマウス!)、ビッチレイと呼ばれちまう浅黒女ベッチレイ、素敵に可愛いパーペチュア(ペピィ)、アイソラのマイヤー・マイヤーを思わすブライアン・ブライアンは通称ブライアン・トゥー・タイムズ(ブライアンを二回)だが時々ブライアン・トゥワイス(ブライアンを二回)と間違えられる、シュガーダディことエドガー・ポートおじさんのミドルネームは果たしてアランなのか? そしてジェゼベル気取りの嫌われ者、豊満中年女イゼベルに,, コッキー。 一度もチャーリーとは呼ばれない若手のチャールズワース警部。。あと登場人物表に出て来ないコッキーの相談相手フランセスカ嬢。ビッド部長刑事も笑わせてくれた。


【ここからネタバレ】

わたしゃね、当初はチャリティ母さんが眞犯人かと睨んでしまったものですよ。唯一絶対的アリバイのある彼女がね。そういや彼女は登場人物表に名を連ねている割に存在感が。。だからこそ最後に実は。。。   

な~んて、ブランドさんは流石にそこまで安易な罠は張らないか。

【ここまでネタバレ】


んで、まさかねえ、その名前に大きな秘密を忍ばせてる人がいたなんてねぇ~ 見事な煙幕の張りっぷりに全く疑ってもみませんでジたよ、とね。

そういや途中けっこう多重解決の気だるい泥沼に片足突っ込んでたのも、思えばこの恐怖の結末を際立たせる為のミスディレクションだったんだねえ。
それとこの小説はよく“パズラーに徹した”と言われる様だけど、なかなかどうして強力な物語性を感じますけどね私は。人間ドラマはキツいくらい激しい暗黒世界じゃないですか。文章のタッチは明るいのにねえ。

あとやっぱり、クリスチアナさんのユーモア感覚は本当にいい。いちいち肌に合う。翻訳もいいんだろうきっと。思わず噴き出してしまったり、声に出して笑ってしまった箇所もいくつかあった。付き合いたかったなあ、若い頃の美人の彼女と。


No.324 8点 本陣殺人事件
横溝正史
(2015/10/15 18:22登録)
眞犯人もトリックも承知の上、おまけに映画(中尾彬主演)まで観た後の初読でしたが、それにも関わらずこちらの憶測を大きく覆す展開の連続でぐいぐいと引き込まれ、あの眞相にはあらためて驚かされたなァ。。。 単純に犯人は誰で、というだけでは伺い知れないディーープな世界がそこにはあり、本当にスィヴィれさせていただきました。凄い筆力だなと感服しきり。で、やっぱり全体で見ると然程おどろおどろしくも時代がかったわけでもなく爽やかな読み口で、そこがまた不思議な魅力でね。物語の舞台設定は日本の地方の村のじめ~~っと暗い(現代の大都会の方がずっと健康的なような)気が滅入るような人間関係の渦の中なんだけど、その事件解決の場となるやいなや、びっくりするくらい論理明晰で弁舌さわやかな展開に豹変するわけですよ、名探偵金田一耕介の頭脳と口によって。そのクールで爽やかで、そのため何とも言えない明るさを放つ解決篇の部分がですね、確かにエラリー・クイーンの作風と共通してましたね。クイーンと違って舞台設定そのものはどろどろじめじめと暗いだけあって余計にそのからっとした明るさが際立つとも言えます(映画ではそのへんの落差が出せない、というかわざと出さないんだろうね)。
終戦直後の不安定な、されど希望もある、物資の乏しい時代に横溝氏がどんなに愉しい気持ちでこの探偵小説を書いたかと想像すると思わず自分もその時代のその場に居合わせて渋谷百軒店あたりに先生やその仲間達と一緒に飲みに行きたかったものなどと不遜にも思ってしまいました。

打って変って終始どす黒い空気が澱む併載「車井戸はなぜ軋る」は魘(うな)される怨念の魅力にぐいぐい引き込まれる痛切の一品。
題名の唆(そそ)り具合も秀逸至極。


No.323 7点 凶水系
森村誠一
(2015/10/15 12:19登録)
セイイチ・モリムラの良い所が凝縮された熱血長篇。本格寄り。
昭和のミステリでガッツリ行きたい方々に幅広くお薦めします!


No.322 8点 分水嶺
森村誠一
(2015/10/15 12:13登録)
セイイチ・モリムラの良い所が凝縮された熱血長篇。社会派寄り。
昭和のミステリをガッツリ行きたい方々に幅広くお薦めします!


No.321 8点 天空の蜂
東野圭吾
(2015/10/15 07:00登録)
【ネタバレの機微有り】
プロの仕事を堪能させてもらった。警察小説、企業小説、現実科学小説、人類の将来に向けたリドルストーリー。最後は読者一人ひとりの危機感覚に訴えるメインストーリーの爆発力に、サブストーリーである親子の情愛物語や其々の友情物語さえ吹っ飛ばされる。犯人側主人公二人の出逢いのシークエンスだけ際立ってハードボイルド文体。子供の解放が意外と呆気ない時点で決着付くが、それで却って深まる物語の底知れぬ奥行きの予感。良質のアンチクライマックス。但しその安心感は見せかけだ。


No.320 6点 矢の家
A・E・W・メイスン
(2015/10/14 14:29登録)
若い時節に読むには古式ゆかしい地味な物語でしたが、ゆったりと豊かな愉しい時間を過ごしたものです。
いま思えば「明るいグリーン家」「健康的なハッター家」といった趣き(ゎらぃ)。とは言え殺人は起きる。
折りを見て再読したい一作です。


No.319 5点 七つの時計
アガサ・クリスティー
(2015/10/14 12:33登録)
眞犯人を記録的秒殺で当てた事以外、何も憶えてません。透けて見える様な叙述トリックでした。
読んでる間は割と面白かった筈です、青春サスペンスってな風情だけど、若くして殺されちゃっちゃあ人生もあったもんじゃないね。まぁ最後の反転はなかなかの物だけどね。何故かびっくりしないの。わざわざ人に薦めはしませんよ。題名で鮎哲の「五つの時計」を思い出す分0.14プラスしますが、四捨五入で6点まで行きませんね。


No.318 7点 盗まれた影
佐野洋
(2015/10/14 12:03登録)
大学時代のグループは男3人、女3人。やがて大人になり家庭を持って、記憶の底に隠蔽された暗い過ちを呼び覚ます悪夢の手紙を受け取ったのは男2人、女2人。。

東野圭吾の仕掛けっぷりを思わせる、興味津々のストーリーと真相。これは読ませます。
洋ちゃんファン以外にも大いに薦めます。

同じく洋ちゃん「盗まれた嘘」とお間違え無き様。


No.317 7点 死んだ時間
佐野洋
(2015/10/14 11:49登録)
いくら俺と浮気旅行の最中だったからって、折角のアリバイを否定するのかこの女は、殺人容疑が掛かってるってのに。。 ともかく独自の捜査を始める俺だったが、その行く手には思わぬ犯罪の闇が。。 って感じでしたかね、詳しい所はもうさっぱり記憶にありませんけどね、とにかく相当に面白い昭和の本格推理なんですよ。洋ちゃんファンならまず必読だね。


No.316 6点 砂の階段
佐野洋
(2015/10/14 11:21登録)
新聞社にて。報道写真に写っているのは、交通事故で逝った筈の、元同僚のあいつだ!!まさか、あの時の屍体は偽装で、本人は失踪でもしたってのか!?って事は奴は殺人者か、少なくとも死体遺棄!?
しかも俺、奴の奥さん(未亡人??)に捜査を頼まれたんだけど、彼女が好きになっちゃったかも!?

そんな滑り出しで「俺」が追う謎の行方は官界やら球界やら巻き込み中々の大風呂敷を広げますがベースが新聞社だからそう不自然じゃない。とは言え最後は謎の拡散を上手に回収し切れなかったか意外と地味に収束。。意味のあり気な題名は焦点が少し暈(ぼ)けてるかな。。

でも洋ちゃんファンなら読みたいでしょう。充分イケますよ。


No.315 5点 黒いカーテン
ウィリアム・アイリッシュ
(2015/10/06 14:08登録)
安心して読めるサスペンス。 面白いように次々と先が見えちゃう愉しさ、とでも言いましょうか。 スルスルっと読めちゃって、あれよあれよと終わってしまいます。短いしね!
むやみに傍点が振ってある(原典はイタリック?)のも謎感とスリルの嵩上げというか底上げというか、いい意味で安っぽい演出に貢献大。


No.314 7点 ウィチャリー家の女
ロス・マクドナルド
(2015/10/06 12:31登録)
いやぁ薄気味悪い心理トリック。。 物語を終始包み込む薄暗いムードを存分に堪能させていただきました。
最後は意外と爽やかと言うか、ある種の仄明るさを持って終わるところも+αの魅力です。

現代日本の某人気作はひょっとして、この作品の肝の部分からパーーンとインスパイアされたのかしら。。


No.313 7点 私が彼を殺した
東野圭吾
(2015/10/06 06:58登録)
フロンティア精神溢れる挑戦企画には拍手を送ります。

「どちらか」とは違い、犯人明かさずという巨大ギミックを採用する事によって犠牲になる別のギミックも挙げるほどは感じないし、そういう点ではスッキリとこの特別形式推理小説の世界に乗っかれました。
となると「どちらか」の痛いようなやりすぎ感がやっぱり恋しくなって来たりして。読者は勝手なものです。

「私が」の感想とかぶりますが、結果的にこの小説が一般的な読者に促がすのは「ちゃんと推理すること」以上に「たまには再読すること」だったりしないでしょうか。

ふと思うのですが、この小説の様な犯人明かさない形式に「驚天動地の叙述トリック」を噛ませたら、どうなるかしら??


No.312 7点 どちらかが彼女を殺した
東野圭吾
(2015/10/06 06:50登録)
最後のシーン、二人の容疑者間の泥仕合には辟易。思わず「お前ら、どっちも悪い奴には変わり無いだろうが!?」って言いたくなりますw

フロンティア精神溢れる挑戦企画には拍手を送りましょう。 が、これだけの素晴らしい内容なら普通の推理小説として読みたかった気はかなりする。本当に回答がオープンになっているリドルストーリーとは違うんだし。。 そうそう、この小説は犯人だけでなくもう一人偽装をしている(読者には知らされている)人物が登場するんですよね。そういう興味深い構造も内在しているのに、いや、だからこそやるのが圭吾さんのこだわりの味なのかも知れないが、大きな一ひねり(複数構造の隠匿者)が巨大なひねり(作者が犯人明かさない)の陰に隠れちゃってる嫌いがあるのは何やら勿体無いよな気がします。

ところでこの小説が一般的な読者に促がしているのは「ちゃんと推理すること」よりむしろ「たまには再読すること」だったりしないかな?


No.311 9点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2015/10/06 06:27登録)
初めて読んだ鮎川長篇がこれです。どこの文庫も出ていなかった平成一桁鮎川暗黒期、少々プレミア付きで角川文庫の古本を買ったものです。地方ではなく都内のチマチマした路線(国電!)を大胆に使ったトリックは当事者感が強く新鮮で引き込まれました。本格の流儀を保ちつつ贅沢にもダブルで取り込んだ社会問題も謎の陰影に深みと暗い彩りを添えています。緻密なトリックも最後はきっちり露呈され、心地よい推理疲れと(本当は自分じゃロクに推理なんてしないけど)ちょっとした社会派気取りの苦味と、何かが終わって始まるような爽やかな風を感じる上質の読後感が長い間残りました。


No.310 6点 幽霊列車
赤川次郎
(2015/10/06 00:46登録)
氏の作品に初めて接したのは、幼い頃NHKの連続ラジオドラマで夜中に放送していた本表題作だったと思います。 面白く聴いたラジオの方は結末も知らず仕舞いの有耶無耶な別れでしたが、後年この短篇集で読んで想像以上に腑に落ちる意外な結末に納得。 他の作品も愉しく鑑賞出来ました(詳細はまるで憶えてないけど)。


No.309 4点 三毛猫ホームズの追跡
赤川次郎
(2015/10/06 00:38登録)
シリーズ第一作「推理」でまさかの大胆トリックにやられて手に取った第二作はまったく記憶に残っておりません。 正確には、凡作でもなかろうがさほど好みじゃない、って個人的評価だけはっきり記憶に残っています。


No.308 6点 踊る手なが猿
島田荘司
(2015/10/05 23:59登録)
表題作と「暗闇団子」のせいか、どこかしら人情ってヤツを漂わせる短篇集。
(他の二篇はそうでもないのに)

人情もありつつ表題作のトリックの微妙なバカっぽさ(実際の行為ならは頭イイの範疇だろうが、小説のネタとしては。。面白いけど)は「6とん」の人を思わせずにいられませんねw


No.307 6点 毒を売る女
島田荘司
(2015/10/05 23:53登録)
島荘なのに、島荘ならではのこの軽さはいい。表題作の主題なんか現実世界なら怖ろしく重い脅威だけど、小説となるとこれがまた違う感触。 全体を通して、伏線もミスディレクションも意外な結末も揃ったファンサービスのエッセイ集を読んでいる様な気分になった。 あとやっぱり、他の作品群にも増して大音響の音楽が流れ続けているような気がしてね、文章に。


No.306 6点 展望塔の殺人
島田荘司
(2015/10/05 23:44登録)
社会恐怖こそ最短最強のエンタメ・スイッチ! と割り切って世のダークサイドに寄宿している様にも見えますが、どうしても行間から滲み出す問題提起や絶望の味わいは島荘の高い当事者意識あればこそ。

都会的、かつ嫌な後味の作品が並びます。トリックは堅調、ぐっと来る結末の意外性は流石の冴え。
表題作の派手で突飛なスタートラインは昔の西村京太郎を思わせる。

でもやっぱり島荘は長篇がいいな。

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