斎藤警部さんの登録情報 | |
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平均点:6.69点 | 書評数:1304件 |
No.1084 | 7点 | 突然の明日 笹沢左保 |
(2021/08/25 00:00登録) “義久は寂しかった。彼はしばらく、その場にたたずんでいた。新橋駅へ向かったのは、五分ほどたってからであった。” 家族の悲劇から突如、ゲーム性の高い世界へジャンプイン、強い思い込みを道連れに。。それも悪くない、現実世界が実はそんなもんだろう。だがやはり社会派ならぬ人生派らしい空気は琴線に触れる。ちょっくら理屈のエセーがうるさいのも許せる。タイトルワードの置き方が説教くさい所もあるが、いいでしょう。それにしてもこの小説には何やらケミカルの匂いが、、それともうひとつ、”アレ”の匂いがどうにも漂うのだが。。。 探偵役を買って出た被害者の父親と妹それぞれによる、頼もしき実地検分シーン、振り返れば泣ける。人造の筈のアリバイに、自然発生(?)の大火災がどう関わって来るのか興味津々。。と言ってアリバイトリックは腰を抜かすようなものでもないが、その、偶発事から身を守る要素も入った複雑な忙しなさと、ちょっとした心理トリック取り込みの妙、これはいい。主舞台は東京と宮崎。控え目な旅情が愛おしい。たまらなく鎮魂焼酎を呷りたくなる場面にも遭遇する。これだけ人間ドラマで煽っておきながら、靄の中で見えない、いかにも業の深そうな殺人動機はいったい何なんだ! ところが。。。。 いや、この動機そのものはともかく、その発端となった事象を軽く見ることなど、まともな人間に出来るものか! もうひとつの大きな謎、交差点での人間消失トリック、文字通りの物理心理トリック(かの「トリック・ゲーム」でも紹介!)のほうを最後の最後に解明して終わるのも、破格の味がある。 それと、目次では明かされないサブ章タイトルが普通にいい。 寂しいお父さん、まだまだ希望は残ったじゃないか。。!! |
No.1083 | 7点 | 11の物語 パトリシア・ハイスミス |
(2021/08/23 11:11登録) かたつむり観察者 かたつむり単体は動きが遅い。これは数学的想像力を発揮して玩読せねば!! 但し、割とグロ注意だぞ!! 恋盗人 甘い期待をかっさらって歩き去るストーリー。他人の手紙を盗み見て、返事まで出してしまった主人公は。。ベタに展開しても良かったとは思うが、、最後の涙は光ったな。 すっぽん シングル毒母に苛まれる幼い息子が脱出を試みる。庶民が生活に失敗した物語。最後はいきなりの事にびっくりするのだが、、残念ながらさほど響かず。 モビールに艦隊が入港したとき これは好きなディープ短篇だなあ。。話が次々と深掘りされて行く構造に旨味あり。冒頭いきなり、就眠中の夫を窒息させた不幸な女が当て所ない逃避行に出る。。シャーリィ・ジャクスンを思わす側面も光る一篇。もやっとしたエンドに雪崩れ込むのかと思っていたら。。 クレイヴァリング教授の新発見 これも分厚くて好きな短篇。面倒は抜きにしてひたすら熱いスリルに拮抗しよう。しかし教授、悔しいよな!! 愛の叫び ソフトきちがいばばあ二人の仲良し復讐合戦。考え落ちならぬ想像落ちがなんとも、痛ましい。まずまず。 アフトン夫人の優雅な生活 何故だかにこやかな心持ちになる日常の反転劇。そういうこともあるさ。。本短篇集の中ではミステリ度高と言ってよいかな。 ヒロイン 心の病とはどこまで罪深くなれるものなのか。。この、いきなりこれから始まる、暴力的オープンエンディング。。。。。。。。 もうひとつの橋 起伏の多い人生ドラマを淡々と歩み渡ってじんわり来た。本短篇集の中では際立って、前向きな力強さがあるね。 (まさか、主人公もいずれは。。というオープン考え落ちじゃないといいが。。) 野蛮人たち 軽犯罪?絡みの日常のサスペンス。しかし何なんだこの野球好きの不良オヤジ達は(笑)。絵がヴィヴィッドに浮かんで愉しいが、最後ちょっとクニャッとなって終わるのが、惜しいかね。 からっぽの巣箱 心のしこりが、偶然の出来事に因縁を植えつけて現れる。。可愛い(?)動物が走り回る話。 途中退屈だったが、最後はなかなかズンと来た。 |
No.1082 | 7点 | 大暗室 江戸川乱歩 |
(2021/08/19 12:15登録) 大通俗な内容に説得力ある文章。がっつり掴まれてハイテンションなリーダビリティは恐るべきレベル。 後半の後半、大暗室紹介シーンの目に余る机上の楼閣ぶりが心に響かず、そのフィージビリティの枯渇(冗談です)にはちょっとだけ醒めた。だがある種の集大成らしき風格も伴い、この際立ったメクルメク面白さはちょっと看過できない。久留須と花菱の魅力には参った。この世には「善と悪」なるものが在るとする大ファンタジー前提の痛快力作。 |
No.1081 | 5点 | 死にいたる火星人の扉 フレドリック・ブラウン |
(2021/08/17 20:50登録) 登場人物表の”出落ち”でこんなに笑わせるのも珍しい! 本職のSF領域にちょっぴり触れた展開だけに(?)面白さもそこそこ保証されてるよな微妙な期待感でスタート。やがておそろしく魅力的な変人が登場、一瞬めちゃ上がったが、そのあとちょっと退屈に。。だが予想外の激しい展開も覆い被さり、ユーモアは常に携行しつつ、ヴィヴィッドな女の子達も出入りしつつ、まず愉しく進行。依頼人捜し趣向の興味深さ、それが事件解決ないし紛糾にどう絡んで行くのかへの期待。しかし事件の背景こそ予想外に壮大で驚いたが、それがミステリとしての大きさにさっぱり寄与していないという何とも残念な、カスった感。。何なんでしょうか、この微妙極まりない、収まりの悪さは。エンディングも、気を利かせたようでなんか外してるような。。イカした邦題負けしてるとしか思えませんが、色々愉しいシーンもあってそう悪いもんではないです。特に勘違いボクシングで結果オーライの場面は最高にハイボール日和です。 だがなあ、おそろしく魅力的な変人、レイのカラフルなオーラがもっと、物語を席巻してくれてたらなあ..!! |
No.1080 | 7点 | 飛田ホテル 黒岩重吾 |
(2021/08/15 13:14登録) 表題作について。 大阪は西成区、飛田新地「月光アパート」の通称「飛田ホテル」は、この安アパートの半分が実質売春宿として機能している所に由来。作者が人生ドン底時代に (経緯は色々だが、金持ち証券マンが美食から悪食趣味に走り、腐肉を喰ったら三十路前に急性小児麻痺を発症、三年間入院って話は怖るべし。。。) 鬱々と暮らした、隣町は釜ヶ崎のアパートがモデルと言う。 最初の二篇が強烈に沁みます。 「飛田ホテル」・・・・ アパートの部屋の前には、昔は無かった、自分の苗字を冠した名札が。。刑期短縮で出所した主人公の男が、以前妻と住んでいた「飛田ホテル」に戻って来た。猥雑な住民達の和やかな歓迎。ところが、妻は数日前から行方知れずと言う。家財一切、管理人のもとに移して。アルサロ勤めだった妻につきまとっていた陰湿な青年の影がちらつくが。。 このたまらん情緒の中に心が迷い込むのを、そうはさせじと更にたまらん謎の力が牽引する、綱引き構造の嬉しさ、たまらんよなあ。。。 澱んだ下層社会を背景に、夫と妻の情愛がどこまでも沁み渡るお話です。 「口なしの女たち」・・・・ 妻を交通事故で無くした保険外交員の父親と、幼少時の怪我で脚に障碍を負う息子。大阪に住む二人だったが、優秀な息子が神戸の大学に通うため下宿住まいを始め、別々に暮らすようになった。 或る日、不良外国人が跋扈し治安の悪い湾岸地区の路地裏で、撲殺屍体として発見された息子。 現場の近くには”聾唖の娼婦”が集まる料理店があると言う。 警察の捜査に見切りを付け、単身調査に乗り出す主人公は問題の料理店に通い始める。そこに一人、何かが引っ掛かる、飛び抜けて品の良い女がいた。。 父から息子への情愛がどこまでも沁み渡る、ラストシーンが響く一篇。 中の二篇は、先の二篇ほど冥く深くは刺さらないが、もう少しだけ明るい舞台での人の心の働きに揺さぶられる、素晴らしい作品たちです。 「隠花の露」・・・・ パチンコ屋で真面目な男と初めて知り合った、って.. 腐れ縁姉妹(?)の人情話。早くから一人暮らしを始めた姉と、金持ちでもない”旦那”を週二で迎える無教養な母親と同居する妹は、どちらも幸せな暮らし求めてもがくコールガール稼業(頭に「高級」は付かない)。”どもり”を抱える妹の方が堅気な暮らしへの憧れは強く、工場勤めをしたりもする。悲惨な境遇が飄々と仄明るく描かれるのは、のうのうと暮らす事の出来ない下層社会が舞台であるからこそか。話が進んでもなかなか気配を見せない(それが不満にもならない)ミステリ要素は、最後の最後にやっと小さく破裂。本当は悲惨の上に悲惨を重ねる結末の筈だが、あっけらかんと、むしろほんわりした、未来のある空気感で締める。 「虹の十字架」・・・・戦災孤児として拾われた美しい娘と、夢の中に時折現れる母親らしき美しい女性、の絆を主軸に置いた物語(と私は思う)。男狂いの義母とその粗野な男たちから漸く逃れた娘は、町工場の熟練印刷工だった義父の現役時代の伝手で、中堅印刷会社社長とその息子、娘に紹介される。。。。 冷徹な空気の中で進捗する激しい心理劇。 結末はちょっと、、開いた口が塞がりません。 そこに虹は掛かったのか。。十字架は建っていたのか。。 最後の二篇は、先行作ほどはじんわり来ない代わりに、普通の推理小説として楽しめる、ように見えるが。。 「夜を旅した女」・・・・ 工場の女子更衣室で発生した盗難事件を契機に接近した、地味な男と女の話。やがて女は行方知れずとなり、ある日溺死体で発見される。男は工場を休んで単身地道な調査を続ける。この調査行の叙述、描写に実に滋味が溢れる。 解決では見得など切らないが、ラスト一瞬には肝が冷えた! 「女蛭」・・・・ 最もミステリ側に振った作品。 好きでもない重役の娘と結婚した、身持ちの堅い宣伝部長が、うっかり浮気した相手からの真昼の緊急電話でマンションに駆けつけると、彼女は死んでいた。。警察に通報もせず何とか現場から逃げ出た所へ、結婚前にうっかり手を出した地味な女子社員が現れて 。。。 短篇らしいヒネリが強烈に効いたサスペンス好篇。業の深過ぎる暗黒のエンディングに、首根っこ締められる思いです。 |
No.1079 | 7点 | 山口線"貴婦人号(エレガンス・トレイン)" 草野唯雄 |
(2021/08/13 14:44登録) 大胆なトリック再現シーン(熱い)! 大胆過ぎる■■■捜査(でも、やるよね)。。 そしてあの、素晴らしき中規模物理トリック(て言うたらネタバレやないか。。?)!! 。。。 の全てを卓袱台返しして、尚且つこの最後の、気を持たせるおセンチなオープンエンディング..!! 折り返しあたりから(なんなら●●から)メインプロットは見切れてしまうという読者もおいでなさろうが、気品と俗っぽさが綱引きする文章力大いに含む全体力で、こりゃ現代に於いて評価が高めでも訝しからぬ事でしょうな。物語がかなり進むまで、□□が誰なのかまだ靄の中(強力無比な候補はいるが、決め打ち出来ず..)という興味牽引の工夫は素晴らしい。 で、その人が実はダミーで真□□が別にいたら、、なんて妄想はしたけれど。・。・ (そういうのは某氏とか某氏の決め技なわけで。。) ところで、この大見得を切る中規模物理トリックですが、過去の或る事件と相似形の全く同じ原理を当事者本人が使っているわけだから、そこに生まれる苦しい葛藤など、もう少し熱く叙述されてもよかったのでは? サラっと触れる事で察してくれという書き様かも知れないが。 で、どことなく『永遠の◯◯』を思わせなくもない結末に、結果的になった、とも言えましょう。 ところで、例の五百万円はどこへ行っただね ?! アリバイトリックに、昭和後期の復刻版(?)蒸気機関車が登場するという大胆な作品です。 中堅建設会社の跡取りの話が出ますが、会社派でもまして社会派でもない、本格推理小説である事は読んですぐに窺い知れます。 それから、時刻表アレルギーの方は、気にする必要無いです。 って言うとネタバレになりそで怖い。 |
No.1078 | 7点 | 射撃の報酬5万ドル ハドリー・チェイス |
(2021/08/11 08:54登録) 何度も寄り添っては突き放し合う、意外ながら凄まじい友情の渦中で、まさかの主人公入れ替わりが?! 。。。 なんて最後の最後まで分からない愕然たる感慨に直結するハイパーテンションサスペンスと冒険の顛末は、この一冊の本から少しばかりはみ出してもいよう!! 「きみの煙草を一本いただきたくなった。医者はわしが煙草をすうのを喜ばないのだが、わしは、無性にすいたくなることが時たまある。そのような時の一服は、気持ちを鎮めるのに、たいへん役にたつのだ」 腰抜けヘタレ野郎の俺の息子を、事情あって、9日間で一級の狙撃手に仕立て上げてくれ(下ネタではない)、というあまりにも疑惑を唆る南米大富豪からの依頼を受けた元米軍狙撃手(ベトナムでは全陸軍中銀メダルの腕前!)の主人公は、新婚の妻と一緒に射撃学校をなんとか経営している所。 チェイスは流石のストーリーテリングで、序盤はじっくりとスリリングに、中盤前から一気にフルスロットルで幾度のカーブも平然と飛ばしまくり。あっと言う間のハイ過ぎるリーダビリティで、むしろ計画的に一息いれながら読んだ方が面白いかも、なんて心配もしてしまう。 それにしてもですな、ある種の手掛かりとばかり思い込んで安心していた■■■が、まさかの大伏線だったとはな。。。。 最後の考え落ち&オープンエンディングで恐怖が沁み渡りましたよ。 空さん仰る通り、レプスキ刑事がもう少し喰い込んで来るかと思いましたが。。(最後に少し余韻を残してはくれました..) 更に贅沢を言えば、射撃学校の前の持ち主がもう少しいやらしくストーリーに絡んで来たらなあ。。なんて妄想します。 |
No.1077 | 5点 | 夜の捜査線 島田一男 |
(2021/08/04 16:30登録) 妖精の舞踏曲(ボレロ)/悪女の三拍子(サンバ)/赤き死の組曲(スイート)/悪霊の合唱/千人斬り狂騒曲/墓掘り交響曲(シンフォニー) <春陽文庫> 昭和50年代前半、人気TVドラマ『警視庁の夜』で部長刑事(デカチョウ)役を演じる「栗チョウ」こと栗林はそれなりに人気の中堅俳優。新宿署に勤める本物の部長刑事「本チョウ」こと本田の信頼を得、芸能界で起こる本物の事件捜査に次々と協力しては本ボシを挙げて行く様を描いた連作短篇集。会話に文章は流石の高め安定だが、謎や解決はどれもチョイと浅めで、それこそ昭和の連続刑事ドラマ原作にはピタリな風情。「赤き死」や「墓掘り」あたりはもう少し深い真相で唸らせるかと見えたが、、存外シュンと終わりやがった、がそれでも合格点なのはこの人の文章力こそなせるワザ。ただ、昭和の性風俗がエロいというより厭らしいにおいで立ち込めるのはちょっと読者を選ぶかな。題名のルビに一部おかしいのが混じってるのはご愛敬。 それにしても、芸能界で殺人事件が頻発し過ぎです!! |
No.1076 | 8点 | シャドー81 ルシアン・ネイハム |
(2021/08/02 21:55登録) 歴史に乗った話だが、全く古びていない! 現代そのまま!! 長短さまざまなカットバックで描かれる、ベトナム戦争からの旅客機ハイジャック群像劇。群像の中へ飛び込み、やがて奥から飛び出す主役のぶっ倒し感がドエラい。 何より、凄まじいばかりのアリバイトリック!!!! 本格ミステリ流儀のそれとは全く違う話だが、これだけ壮大なアリバイ偽装を最後までやり抜けたなら、、 誰にも言えない最高の想い出作りだよな。。。。 “平和なしびれるような感覚が筋肉の隅々までしみ渡った。こうして豪勢な気分で手脚を伸ばしていると、エンジンの音に眠気を誘われて何ともいえない良い気持だ。” 滑り出しすぐから旨味が満ち溢れ出る、いきなり熟成、内なるバイブレーション豊かな「準備」の第一部。 振り返れば眩しい堂々の中盤、愉しいツラい愉しい「実行」の第二部。 サスペンス急襲から大団円へと降り立つ、大反転するくせに大いなる謎を残す「事後」の第三部。 看過出来ないモヤモヤを積み残すのに何故か爽やかな後口も、特筆したい。 「計算に入れるですって? それでその計算は誰がしたんです?」 ユーモラスな味も、特に終盤に近づくにつれ、シリアスな空気が濃くなるのを尻目に快調に飛ばすこと! 黄色いハンカチを振り続ける男。。ブリーフ一丁で対峙する男と男。。 「あなたがすぐれたお手本なんです。あなたに限らず誰ももう信用しないことにしています」 男が惚れる男の、遥かなる伏線があったのか。。こんなに高速で読みやすいのに、それはもう遥かな故事の気がする。。。 何故か忘れられなかったあのシーンは、ダブルの意味で、泣かせる伏線だったのか。。。(そうさ、俺だって忘れるものか!) そのタイミングでいきなり上下関係という安定装置を蹴飛ばすのか!! しかも、上の方からも!! オ、忘れてたあいつがここで再登場か!! しかもその立ち位置か!! ザッツ悲喜交々じゃないか・・!! 「自分が完全に自由だと一瞬なりとも信じたのはばかでした」 これほどまでに結末がジリジリ気を持たせるその気合いの度合い、本当に尊いね。最終盤で松本清張バリに強烈な暗黒予感のサスペンスが炸裂するのはヤバかった。 【これより後は、結末についての大きなネタバレに通じます】 最後の最後は一波乱も無く物語を終えたところに(さざ波はあった。。)、なんとも言い難い深い味を感じます。 いくらでも別方向の結末に持っていく余地はある筈なのに、そこんとこ満点のスリルで最後まで切り抜けたってのは、つまりそこに本作が本国米国でヒットせず、映画化も頓挫した、更には作者がこの一作だけで消えた原因があるのでしょうか。。 (更に言ってしまえば。。。。 いや、言いません) |
No.1075 | 7点 | 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎 |
(2021/07/28 06:28登録) 高評価順です。 身投げ女のブルース これは熱いな! やられた! 諸々全く気付かなかった! もしや、言うたら悪いけど作者の「●●●●の下手さ」がメタなトリックとして絶妙に機能してないか?! 序盤で或る人物を匂わす独特なミスディレクションも効いた! 綱渡り上手いじゃん! ゴン攻めもいいとこじゃん! 締めも文句無し! 9点やっちゃうヨ!!! リターン・ザ・ギフト 見事に落とされました。。。 ちょっとネタバレっぽいこと言いますが、、交換殺人■■みたいなのが始まっちゃったぞ、もう真相分かっちゃったから早くしてよ、、なんてフンフンしてたら、そこがまさかの目くらましだったのね。。。 うん、これも物語容積かな~り大きいね。 8点強! 現場から生中継 微妙に”穴”をチラ見せするアリバイ不可能興味、畳み掛ける突破否定突破また否定の応酬で、おいおい、こりゃ「樽」か「黒トラ」の平成通信版か?なんて思っちゃったよ。”見切り発車”の謎か、そりゃそうだよな、気付かなかったよ。。って、そしたらこれですよ! ガツンと来ましたよ。。 いや、タイトルが何だかダブルミーニング臭くて気になったんだよな。。 8点! 背信の交点(シザーズ・クロッシング) すごーく残念な作品! 基本アイデアはたまらなく良いのに。。素晴らしい反転がそこにあるのに。。あーー、もっと鉄道パズル(凄い素材見つけて来たじゃないですか!)の興味津々で引っ張ってからジワジワハラハラ真相明かして欲しかったな、渋目の文章で。 ミもフタもないが、これ◯◯三◯◯が書いてたらなあ。。。 5点弱 イントロダクション ふむー。 期待を持たせる役目果たせてないね。 3点 世界の神秘を解く男 んんーーーー なんか、つまらんですよ。 無理しいのコスパが低いてか。 2点強 「イントロダクション」を除くミステリ小説5篇中、実に4篇がかなり意外な犯人像で魅せてくれました。なかなか出来ないこと。 個人の嗜好ですが、前半につまんないの、後半にイカすのが固まってましたね。(だから、最初のうちはこんな高得点付けるとは夢にも..) |
No.1074 | 7点 | マイナス・ゼロ 広瀬正 |
(2021/07/26 15:15登録) 如何にも時代掛かった(!)大きなタイムマシンは、時間移動専門で空間移動は不可というのがミソ。更に、主人公が義理堅く責任感強い人物というのもミソ。いっけんバランス欠いたような思い切った構成が輝いている。(そこへ来て或る人物の能天気さも素敵!) 二度読みしなくても実質二度読み効果のあるシークエンスが実に愉しい。忘れ難き、レイ子。彼女の遺した核心のメモ!(ブックマークしちゃうよね) ところで、かの警官の立場は。。? そこんとこ、隠れたリドルストーリー要素なのか!?(作者自身への宿題だったとか?!) なお「陰獣」の致命的ネタバラシが堂々登場するのでご注意あれ。 昭和ノスタルジーのヴィヴィッドさは言うまでもなく、全体包む明るさ、滋味深さが素晴らしいのだが、本筋と並んで頼もしいのは、すっとぼけたユーモアと琴線触れる技術者魂。ユーモアも最終盤に近づくにつれ急速に緻密な知性の裏付けが露わになるのがまた良し。和同開珎云々は吹き出した。いや、まさかそこでナニしてるとは思わなかった! 一種の叙述トリックじゃないか!? 唐突に切り札として提示される◯◯◯◯なる飛び道具も自然に納得させられちまった。唐突なエグ味を遺して終わるとは思わなかったよな。。正体謎のまま終わる重要人物の立ち位置が実に、深いじゃないか! ただ、そこがミステリ性というかミステリ興味を薄めるポイントにはなっていると思うが。。SFなんだから何の問題も無いやね。 最後の一文、気を持たせてちょっと心配! 先述の能天気な人がこれから何かやらかさないかと。。。だがそこさえ魅力の、器の大きな一篇でありますな。 |
No.1073 | 7点 | ネジ式ザゼツキー 島田荘司 |
(2021/07/21 23:23登録) 螺旋が、物理的に心理の大罪を犯した話。 “私は、このセリフを言いたかったのだ。うっかり言わないで、この世界を去るところだった。” ファンタジーのドレスを纏い、自由奔放過ぎるが要所でクイーン張りに論理の閃きで崩しに掛かる御手洗。目を覆わんばかりだった奇想の群舞も折り目正しく着地。音楽の力がシビアに威力を発揮するシーンは強力だ。 死体にネジを嵌めた理由、見事な隠匿ぶり。「首を斬る理由」の凄い応用編、巧妙な広域目眩し付き。 或る人物の職業遍歴に微妙な唐突感があったのは、その、どこか笑ってしまうトリックのためだったのか。。 或る人物の正体バラシはもう少し勿体ぶってというか、重みを持たせても良かったんじゃないか。。? 或る人物の、告白に至る条件と経緯、これが熱い。。。そこがこの物語成立の肝なわけだ。。 最終地点へ近づくにつれ、じわじわ小波で押し寄せる感動と、やっぱり出て来たバカ要素への苦笑との、小さなせめぎ合いが。。外連味たっぷりの構成で壮大なバックグラウンドを匂わせつつ、終わってみれば当初の予感よりこじんまりとした収束。。ハナッカら大風呂敷を拡げなければ。。という気もしたが、んーー、それだとこの不可解な事件の猟奇性とバランス取りづらいよな。 出来れば、もっとスケールの大きいバカと感動のアウフヘーベン体験の渦の中に投げ込んで欲しかったものです(島荘さんなら出来る!)。 でもまあ、この人の作品世界はやっぱり特別に好きですよ。異物感無くスゥッとはまれます。 ビートルズの歌詞の記憶の件は、まあ装飾ですよね。これがたまたま、たとえばキンクスの「ローラ」だったらどんな不思議な童話が生まれたものかと妄想したりして。。 ところでスペース◯◯◯◯のアレはどうなったんだっけ? あのへん、一番あがる推理だったのに。。。 あとまあ、途中危惧したほどレペゼン反日でもなくてほっとしました。 ちょっと意味不明なタイトルが実は、、という大胆さにも拍手です!(つげさんは関係無かった) にしても、陰の主役、キーマンは天災か。。。(そいつが●●に運命のいたずらを。。) |
No.1072 | 9点 | 血の日本史 安部龍太郎 |
(2021/07/19 23:43登録) 大和時代から明治維新まで、歴史上の血なまぐさい事件に巻き込まれた人間達が命を遣り取りするドラマを、事件規模の大小織り交ぜ四十六もの掌編にしたため通史風に並べた一冊。物語はただ残虐なだけでなく、時に質実の空気漂い、時に爽やかな風が舞います。特筆すべきは、全ての物語中に遍在し、ここぞという折は一気に冷気突き上げる、強靭なサスペンス、そして恐怖!その共通基盤の上で手を変え品を変えの語り口七変化は実にお見事。更にはハードボイルドな味わいも要所で場を締める。間違いなく、ミステリファンへの訴求力、親和性強し! 目次には、物語の選択から漏れた歴史の重大事も補完され、日本史の略式年表の様な体裁になっています。 大和に異議あり/蘇我氏滅亡 前編・後編/長屋王の変/応天門放火/鉄身伝説/北上燃ゆ/陸奥の黄金/比叡おろし/鎮西八郎見参/六波羅の皇子/鬼界ガ島/木曽の駒王/奥州征伐/八幡宮雪の石階/王城落つ/異敵襲来/大峰山奇談 前編・後編/霧に散る/山門炎上/道灌暗殺/末世の道者/松永弾正/余が神である/沈黙の利休/性/姦淫/大坂落城/忠長を斬れ/浪人弾圧/男伊達/雛形忠臣蔵/お七狂乱/団十郎横死/絵島流刑/加賀騒動 前編・後編/世直し大明神/外記乱心/大塩平八郎の乱/銭屋丸難破/寺田屋騒動/孝明天皇の死/龍馬暗殺/俺たちの維新 |
No.1071 | 7点 | ギルフォードの犯罪 F・W・クロフツ |
(2021/07/16 17:05登録) 典型的クロフツ、むしろ鮎哲w!彼のファンだったら、鬼貫警部モノ幻の長篇みたいなつもりで充分読めるのでは。 宝石商の会社とその社長宅を舞台に、殺人と重窃盗、立て続けに発覚した二つの事件を巡り、犯人捜しとアリバイ破りの幸せな共存で魅せる快作。というか「そこに密室トリックはあるのか?」「そこにアリバイトリックはあるのか?」って何とも微妙な霧の深さが重なり合ってるんです。ダテに事件二つも起こしてないな有機的クロフツ、って感心します。 伝言ゲームを捻ったような電話のトリック、いいねえ。死亡推定時刻の妙、イカすねえ。指紋の在った場所にも(ミステリ的)緩急が。。金庫破りの大胆トリック、こいつは現代のSNS写真を使った或る悪事までをも彷彿とさせます。いっけん普通のようで実は特殊性を秘めた「物理的」殺人動機! んんん~、堅実ながら思わず唸る本格ミステリのポイントがいくつもあって愉しいぞ!もちろんフレンチや周りのコップ達の地道な捜査過程こそ実に味わい深くて、しかも鮎哲っぽくって、最高なんですが。 終盤タナーの登場もまた嬉しからずや。 最後の章だけは、クロージングの捕物だけでなく、もちょっと派手な意外性を弾けさせてもよかったかな、、とは思う。 でもいいさ。 どうでもいい事ですが「フレンチはたいぎそうに姿勢をあらため、坐り直した。」を「フレンチはたいそうぎに姿勢をあらため、坐り直した。」と読んじゃって噴き出しました。 冒頭地図にブライトンやらベルギーやら出て来るんで、三笘薫(川崎フロンターレ)の移籍を思い出しました。 しかしこの平成復刊版の表紙(宝石いっぱいを絶妙に犯罪っぽく配置)、何度見てもいいな。 |
No.1070 | 4点 | 猫丸先輩の推測 倉知淳 |
(2021/07/14 17:39登録) 「夜届く」 犯人じゃなくて被害者って事か、アレが。ふ~~ん。まずまず。若い女子が猫丸先輩の影響で古風な喋り方するとこはウケた。 「桜の森の七分咲きの下」 弱い。驚けず。 「失踪当時の肉球は」 猫丸登場までが眠くて。。(探偵うぜー) 謎解きのほうも、なーんかカチリと嵌らないなあ。だけどその、二段階何とかを怖れる気持ちへの洞察はなかなか。タイトルがいいですね。 「たわしと真夏とスパイ」 外から見えない独自のタイムリミットですか。。ふむふむ。しかし明かされたソレ、犯罪行為としてかなり重いんじゃないの、シラっと書いてるけど。国と場合によっちゃ死罪になりかねんぞ。 「カラスの動物園」 見えない□□の応用篇というか、逆を張った感じが面白い。長篇犯罪物語のメイントリックに使ってみたらどうだべ。 「クリスマスの猫丸」 ◯路と●路ね。。なるほど、そりゃ盲点だわ! 短いだけに締まりも良く、自分的にはこれがベスト。 全体的に、推測というか推理のロジックは(物語として)しっかりしてるし、逆説趣向への意気込みも買えるんだが、如何せんその向けられる対象が小粒過ぎて、小粒でも深みがあれば充分なんだがそういうわけでもなく、、なんというか、知的スリルが淡い。もっと強く突いて欲しい(完全に個人の趣味の問題です)。 短篇集タイトルはいいですね。 |
No.1069 | 6点 | 処刑6日前 ジョナサン・ラティマー |
(2021/07/12 16:09登録) やけにのんびり、ドタバタ、助兵衛根性でさっぱりハードボイルドじゃねえw ふやけた不可能興味、中途半端な本格趣向(と最初は思った)、根拠の無い容疑者選び。。だけど何故だが、全体的にかなりイイんです。死刑囚仲間のコナーズが主人公に無償の協力を差し出した心は泣ける。探偵さんが酔っ払って可愛くなっちゃうシーンは面白い。◯◯◯◯◯が堂々と掲げられているってのは、、不用意過ぎないか?あからさまな、そしてコミカルなシ◯◯◯の伏線というかヒントも記憶に鮮やか。密室もアリバイも驚くものではないが物語のスリルを焚き付けるのに程良し。逆説的な或る手掛かりの趣向にはちょっと虚を突かれたが、、唸るまでは行かないか。だが、◯◯者の意外性までは気が回らなかったな。隠滅された証拠品サルベージの件はなかなか熱かった。最後、容疑者一同と証人たち、当局関係者まで一堂に会しての真相暴露シーン、短い間だが意外とスリリングな本格流儀。 そして、ラス前会話の優しい嘘。 |
No.1068 | 6点 | R.P.G. 宮部みゆき |
(2021/07/05 12:54登録) 存在感あり過ぎの裏主役が結局どうなるのか気になる。物語としてそこほぼ一点突破。だからこそ、騙されたのか。。。裏主役の思いの分厚さが最後に明かされる所が核心か。それ含めての騙しの構造だからこそ、気付かなかったのか。。。それとやはり、特徴ある呼ばれ方をする人物の存在が目眩ましになっちまったかな。題名の比喩する所、深い方はともかく、浅い方が犯人にとってこれほど残酷な攻撃力を発揮するとは。片方の殺人動機の熱さは(ミステリとして)尊びたい。意外性ではない。●●の人がそこまで●●出来るか、というかするもんなのか、という違和感はチっとある。 いろいろ踏まえて締めの台詞が何とも、大きな結び目を作って終わるようで、残る。 |
No.1067 | 8点 | しぶとい殺人者 鬼貫警部と四つの殺人事件 鮎川哲也 |
(2021/07/02 11:05登録) 青樹社がノベルズ版(BIG BOOKS)で’86年末に刊行した中篇集、と書いてるがむしろ長めの初期短篇集。 いかにも昭和末期、80年代ど真ん中らしいおどけた表紙絵(戯画化された鬼貫が、物語に登場する或る証拠物件(?)を突き付けている)が目を引きます。(やたら子ども受け良し) 表紙絵はともかく、読んでみるとあらためて鮎川哲也の相当に独特な、詩情にまで至る淡い、淡過ぎないユーモアとペーソスが本格推理とがっちり手を握った安定感あるスリルを堪能する事が出来ましょう。 悪魔が笑う 舞台は哈爾賓(ハルビン)。アリバイトリックは小味ながら一捻り。人情とその逆転に哀れなる味わい。B級っぽさがあるが、悪くない。 誰の屍体か この奥深さ、趣深さ、流石です。締めも良いね、紛うこと無きクラシック。ずばり本題そのままの題名にも重み有り。殺人凶器らしき三つの道具が別々の(微妙につながりある)人物に同時に送られて来る、という稚気溢れる発端にさえ、そんな緻密な計算があったとは。。稀代の偏屈者って、そういう事か。。終盤、意外性の高いグロテスクなシーンが爽やかに語られるのは、驚くとともに笑った。被害者(誰?)の恋人と思しき第二の探偵役も存在が光る。振り返れば、細やかな手掛かりがあちこちなんだよな。しかしこの前代未聞(?)の心理的アリバイトリック、大胆な事したもんだねえ。。 一時一○分 言い訳無用の簡潔なタイトルに見合う、速球勝負にして奥行きのある物理的(補完部分は心理的)アリバイ&真犯人偽装トリックの一篇。締めの文章が胸を突く。。。 碑文谷事件 どこかすっとぼけた前半から、後半の急な発熱が魅力。強烈な不可能興味!実はちょっとした叙述の戯れまで。。アリバイ偽装はかなりの複雑構造。中には薄氷を踏む所もあって。。(それにしては、あの大胆な席外し。。) そっか、逆●●●●●●まで登場か。。 全体通してみると”長旅の時代だったからこそ成立する盲点”のトリックというのが、素晴らしく味わい深いですね。。或るミスディレクションが単なる飾りじゃなくてほぼ核心、という裏を突いた行き方も巧み。●●●●の要素にシレッと覚醒剤が登場したのは笑った(流石に昔のお話)。 最後、ようやく重い腰を上げて犯罪の動機を語り出す鬼貫。だがあの一言だけは言うのを憚った鬼貫。余韻が大き過ぎです。。 著者による「ハルビン回想----あとがきにかえて」は、ほぼ地名や街の構成を淡々と説明したものだが、どうにも、どこからかセンチメントが溢れ出ている。 山前譲氏の解説「凡人探偵鬼貫警部」は、五つのサブタイトル 1 鬼貫の登場 2 鬼貫の実像 3 鬼貫の推理 4 鬼貫の虚像 5 鬼貫の哀愁 で区切って順序立て学術的に解説しているようだが、やはりどういうわけだか情緒に訴えるところ強く、鬼貫警部(見た目以外ほぼイコール鮎川さん)の人物像がセンチメンタルに迫って来る切なさが嬉しい。 |
No.1066 | 6点 | いつか誰かが殺される 赤川次郎 |
(2021/07/01 07:03登録) 角川映画版はかなーーーり大胆に仕立て直してあるんですね。 主演の渡辺典子さん(原作は誰が主役か見えにくいけど)、多分あの人の役なんだろうなあ。。とぼんやり予想してたら、ま、ま、まさかの!!!! そこまでやるのか。。 凄くいい意味でーー さて本作、企画性の高い或る趣向(いいタイミングで明かされる)を知らずに読み始めたほうが愉しかろう。登場人物と因縁深い死刑囚の脱走騒ぎに始まり、尾行対象がトランクをすり替えたとか、貧しい探偵がボコられたとか、警官が浮気者だとか(?)忙しないカットバックで小出しにされる犯罪、悪意、違和感のユーモアこってりなタペストリーが織り成す切迫型リーダビリティの襲撃に休む暇なし。特に出だしの数十頁、事態の構成要素が複雑怪奇に重なり合って進む割に、不思議とスッキリ見せるのが上手いな。。と思ったがそれは実は逆で、意外とシンプルな物語構造を、トリッキーな順列や角度のチラ見せで暫時露出するから実際よりずっと複雑に見えてるのかも知れない?そんなある種の恩着せがましさもミステリのテクニックと思えば大歓迎! 読んでる間は最高で8点まで行きそうと胸が弾んだが、そこまで上等なもんでもなかった。とは言え実に手練れのベストセラー作家らしい素晴らしき快作でありまする。 思わず肩入れしてしまう悪党や変人もいれば、下水道に投げ込みたくなる悪党もいる。 あっと言う間に読めちゃうよ。 後味陰惨、って人も普通にいると思いますが。。(私も若干そう) しかしながらタイトルと内容に結構な齟齬を感じてたんですが、頭に「こんな事してると」って付けるといいんですかね。。「誰か」ってのはピンポイントで「あの人」の事だったりして。。 または、不特定多数の。。 もしかして、ちょっと社会派要素入ってる?(最後の方の台詞に滲み出てねえが。。) |
No.1065 | 7点 | 鍵のかかった部屋 ポール・オースター |
(2021/06/29 16:44登録) スーツケースいっぱいの原稿を遺したまま失踪した、昔の親友。。。。その原稿を出版社に持ち込むか否かは、彼の妻の言伝で、批評家である主人公の判断に委ねられた。 やがてその小説が予想以上の売れ行きを見せ、主人公と親友の妻、幼子が一緒に暮らし始めた頃、既にこの世に存在しないと思われた親友から、主人公に一通の手紙が届いた。。 この後一気に繰り広げられる、冷ややかなスリルに満ちた、大いにサスペンスフル且つカラフルにして病理的なストーリー運びは、、書かずにおきましょう。 「ミステリの雰囲気と私立探偵小説の形を借りた非ミステリ小説」らしい終結部では、とことんこじらせてしまったヤバい人達が最後の心理的ひと暴れを決めてくれます。 1986年米国産。 世に言われる様な文学的感興は、私の嗜好では然程ありませんでしたが、それよりも独特の強いサスペンス感を美点とし、この点数です。 いちおう言っときますが密室殺人とかは出て来ません。 |