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ミステリの祭典

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青斑猫

作家 森下雨村
出版日1995年01月
平均点3.00点
書評数1人

No.1 3点 斎藤警部
(2022/03/18 21:34登録)
読みは「アオハンミョウ」。 身寄りのない不良上がりの青年が或る日、見知らぬ弁護士を通じ「富貴兼ね備えた人物の後継者に指名された」との連絡を受けた。 ここから始まる、昭和初期の芸能界やら司法界やら引き連れて展開する、恋愛要素沁み込んだ惨酷絢爛ストーリー。。。 なのでありますが、平易ながらアンリーダボーな文章、電話帳の如し。 これじゃ退屈もしのげねえ。(←すみません、言い過ぎました) 

間接的にたいへんお世話になっている、日本探偵小説の父であらせられる大先生ですが、実作に当られた作品を拝読するのはこれが初めて。 きっと他に、私の嗜好に合うものも書かれていらっしゃると期待します。 本作はちょっと、肝となる●●のベクトルやら因縁やらアケスケだ。 ここは清冽なチラリズム精神を発揮し、ミステリ的にぐいぐい攪乱、堂々立ちはだかって欲しかった所。 キャラクタにしても、カックワリンだかカッケンだか分からん不良老年とか、もっと輝いてくれたら良かったですな。 気の抜けた二人二役? おっと、意外な被害者が一人いたな。(ここはちょっと好きだった) 

先生、いくら当時の主潮とは言え、地の文に闖入する神の視点いや筆者視点が煩(わずら)わし過ぎます。 サスペンス小説(ちょっと違う?)なのに、何より大事な(?)サスペンスってやつを手当たり次第、消去して回っていらっしゃいませんでしたでしょうか? 音速でカーブ切りまくりのジェットコースターストーリー、追う気にもなりません。 ごめん、興味が湧かないのよ。。 と、ここまでが物語前半への想い。 

ちょうど真ん中のあたり、筆致に微妙な変化が見られ、ちょっとスリリングなグルーヴを内在し始めた。悪くないかも。。。 しかしやがてそのスリルも摩耗を見せ、いつの間にやら擦り切れた退屈の側溝へとまたグラリゆらり。。嗚呼。。。(だども硫酸の雨て!!) 一瞬感動の光が差したエンディングだけど、締めは陳腐よ。

問題は、現代の読み手から見て大時代的とか陳腐化したとか、そういう事ではない気がします。 そっか、ストーリーのどの断面見ても、一律に何らかの異常事態ばかりで、時には普通にゆったりさせてくれってか、あまりにもメリハリが無いんだな、きっと。 メリー&ハリーは新婚旅行にでも行ってたのかな? 残念ですが、またいつか、先生の別な作品に当たってみようと思います。 ありがとうございました。

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