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ミステリの祭典

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Mystery Seller
新潮社ミステリーセラー編集部編

作家 アンソロジー(出版社編)
出版日2012年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 斎藤警部
(2022/04/04 19:29登録)
■■島田荘司/進々堂世界一周 戻り橋と悲願花■■ 毒殺成功、または失敗、どちらにしろ予想外の悲劇に見舞われる流れかと、思いきや! まさかこんなブライトでフラワーな地点へ向かうとは! 出来過ぎ話の感もあるが伏線はしっかり大胆に構築してあるし、文句は無いね。綺麗な大バカトリックかも知れないけど、それも良し。 太平洋戦争を挟み朝鮮、日本、そして◯◯を股に掛けた、◯◯のある苦難劇。
■■有栖川有栖/四分間では短すぎる■■ 下宿の学生飲みを舞台に、小粋なミステリ小咄。立ち聞きした電話のちょっと不思議な物言いを推理する。モチーフは「九マイルでは遠すぎる」。楽屋落ちめいたミステリ談義良し。素直だなあ、アリスアリス。ゆるいオチはもちろん許します。
■■我孫子武丸/夏に消えた少女■■ 妙にページ数少ないなと思ったら… これ、長篇でやったら顰蹙買うヤツやん。でも、もちょっと長い短篇でも平気じゃないかな。幼女誘拐事件を巡って両親と警察のやり取りに微妙な違和感。GPS追跡出来ない筈の犯人を何故捕獲出来たのか。。?? てか、社会派ぶるなって(笑)。
■■米澤穂信/柘榴■■ この結末、結果的に利を得るのは◯◯という考えオチなのか、それとも真っすぐにそういう事なのか、判断に迷わせてくれますが、敢えて前者と決め付けるがミステリとして吉! 奇妙な家族の、離婚を挟んだ奇妙な物語。 他作家作品と続けて読むと、技巧と雰囲気づくりに凝り過ぎでリアリティが薄く感じられる、いい意味で。そのプチ幻想が個性よね。 
■■竹本健治/恐い映像■■ のっけから、あーー、ゆるいなー(笑)! 折角のよかネタを。。これこそ長篇勝負が似合いそうなのに。連城並のディープな文体、濃縮した内容だったら短篇で充分だけどね。 或る夜、封印された(らしい)記憶を刺激する映像がTVCMで流れた。 ◯◯対象のすれ違いが謎を複雑にしたってわけか。。
■■北川歩美/確かなつながり■■ ちょっと混乱させる冒頭から不安を誘うカットバックを繰り返し、連城ばりの有機的多重反転で締め。それにしてはピースを余らせ過ぎ、ちょっとグラグラしてる感がある。あの ”重要ファクター” が今時禁じ手にさえ見えてしまうのは、たぶんその緩みのせい。作家志望の若い女性が、著名編集者を騙る女に引っ掛かり、監禁される話。。。。 
■■長江俊和/杜の囚人■■ 文章感覚が絵空事だと、折角の最後の衝撃が湿っちゃうですよね、こういうのは。。惜しいな。。題材はちっとも絵空事じゃないですけどね。 どこか違和感オーラ発する兄妹が田舎の別荘へやって来て、生活記録の映像を撮り始めた。。 でもまあ、ダークサイドへダークサイドへと何段も続けて落とすラストの技巧には、確かな力作感が漂います。
■■麻耶雄嵩/失くした御守■■ モヤモヤするなあ、、おいおい、その人●●も●●●●やないか。。気の滅入る御守捜しに付き合わされたのもなんだか。。まあそのへんが麻耶さんの企図なんでしょうか。「見えないなんとか」トリックは地味ながら良かった(でもそんなんポイントちゃうんやろな)。 良家の令嬢が平凡な男性と駆け落ち、のはずが心中事件に。。ところが、よく調べると他殺の疑いが・・・という話。 麻耶さん、普通にはヒネってくれないね(笑)。

文庫帯に「文庫史上最も華麗なアンソロジー。」 今どきこんな煽り文句に騙される人もいないでしょうが、傑出したアンソロとは言えなくとも、サンプラとして悪いモンではなかろうと思います。 2012年冒頭(?)時点での各作者著作リスト付き。

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