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ミステリの祭典

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霧笛荘夜話

作家 浅田次郎
出版日2004年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 斎藤警部
(2022/02/23 12:29登録)
いやいやいや、文庫裏表紙や帯にあるような「ほんとうの幸せ」だの「比類ない優しさ」だの、そんな単純な話じゃありませんって。そういう側面も勿論ありますがね。「老婆」と「あんた」の来し方(回想で語られない部分)と今この瞬間(結末)を思うと、希望と淋しさ両方からの風圧で、立っているのもやっと。 何しろ、あんな事も乗り越えた上で、現在□□□□□□□□いない事になるわけですもの。。

横浜北部?港湾地区にある「半地下と中二階」の古いアパート。 ある夜訪ねて来た一人の男を迎え、大家で管理人の老婆が、六つの空き部屋それぞれの元住人(数え方で女三人男三人)に纏わるブルージーで賑やかな深堀り話を聞かせ、どの部屋に暮らしたいか選べと言う。この、ちょっと深堀りし過ぎじゃないのってくらいの話が、どれもこれも、良くてねえ。

第一話 港の見える部屋/第二話 鏡のある部屋/第三話 朝日のあたる部屋/第四話 瑠璃色の部屋/第五話 花の咲く部屋/第六話 マドロスの部屋/第七話 ぬくもりの部屋

連作短篇集の体裁ですが、既に序盤から、それに偽装した長篇小説の匂いが芬々。そこには二つの大きな謎が解かれる期待が宿っているわけだが。。 訳知り浅田次郎らしい沁みる話でいっぱいの本だけど、少しばかりファンタジーに飛び過ぎだったり、作り物っぽい展開を引っ張ったりもある。だが全体で見ればリアリティは充実、迫り来る登場人物それぞれの人生を慈しみたくなる重みのある一冊です。 トリッキーな小説構成が働きを見せる要素もあり、ミステリファンへの訴求力は大きい。 この小説、無敵そうやわ。。

ところでこの、文庫表紙の美女って、まさか(もしや)。。。。

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