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ミステリの祭典

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田園交響楽

作家 アンドレ・ジッド
出版日1938年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 斎藤警部
(2022/03/07 11:22登録)
「あなたが授けてくださる幸福は、何から何まであたしの◯◯◯◯◯◯◯◯◯いるような気がしますの」

聾唖の老婆に育てられた全盲の少女(!)が、偶然出遭った妻子持ちの中年牧師に引き取られ、やがて聡明な美少女に育ち、或る日、晴眼者となる外科手術を受ける。その後に起こるショッキングな「事件」までを語る、二部に渉る手記によって構成された物語。
本作のクライマックスである「事件」の謎は瞬殺で解かれてしまうが、実は事件が起きる前の物語進行が、予感に基づいて外周からじわじわ攻め上がる謎解き予行演習、のようで実は先物買いの謎解きそのものであるような、思い切った匂わせ構成がサスペンスを醸造する、特殊環境下の愛の物語。手術を受けたジェルトリュードに「見えた」ものとはいったい何だったのか。。。。

キリスト教(新教/旧教)も、つまるところ媒介に使われている気もしますけど、そもそも物語の始まるきっかけとして重要であることには変わりなし。 まあ多様な角度から解釈される余地ってやつが、こんな短い話でありながら、一見結末一直線風のシンプルな筋ながら、たっぷりありそうなんですよね、流石は純文学というか。。そのくせライトイヤミスとでも呼べそうなちょっと水底浅い感触も、否定は出来ませぬ。
ところで、生まれつき全盲の人が突然に視覚を得て、その即日に「こんな反応」を示しうるものだろうか、との違和感はかなりあります。 でもそこでゆったり時間を取っていると、このショッキングな物語構成に持って行くのは難しい、のかな。

題名に込められた、或る理想。 ここは流石に心奪われる所。

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