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ミステリの祭典

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バードさんの登録情報
平均点:6.14点 書評数:324件

プロフィール| 書評

No.264 6点 奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!
加藤元浩
(2021/10/24 18:53登録)
前情報無しで衝動買いした本だったが、各所表現にそこはかとなく漫画風味を感じ調べたところ作者の本職は漫画家だった(笑)。

漫画描きなだけあってか読者への情報の伝え方は上手く、第一事件の密室、第二事件の犯人消失、第三事件の違和感の正体、別犯人を仕立て上げるという真犯人につながる伏線など重要情報がスムーズに頭に入ってきた。全体的にいい意味でシンプルなトリックや書き方で好印象。
一方、見立て殺人の要素やストーリー構成がテンプレ的で、ややオリジナリティに欠けるのがマイナス点。そこが少し残念で惜しくも7点に届かずです。


No.263 6点 ガラスの密室
森村誠一
(2021/10/18 13:34登録)
当初どの辺がガラスの密室なのか見当もつかなかったが、終盤でようやく意味を理解。つまり長い長い序章だったわけだ。

ストーリー展開は分かりやすく、一部稚拙と感じる箇所もあるものの好みだった。ガラスの密室の魅せ方は悪くなくオーソドックスなミステリとして楽しめた。ただし決め手となる証拠を犯人側が対策してないのはあまりにお粗末だし、トリックも単純で優秀なミステリとは思えなかった。
まとめるとミステリとして肝心な点が弱く、良作と呼ぶにはあと一歩足りない作品。


No.262 5点 往復書簡
湊かなえ
(2021/10/16 23:48登録)
嫌いでないが好きでもない。
語り手が一方的にまくしたてるスタイルは『告白』に似ているが、あちらの方が人の悪意という点で振り切れており、それに比べると本作は日和り気味。『告白』の肝だった長所が薄まっている。
また、一応各話で仕掛けはあるものの、驚かすにはもっとパンチ力が必要かと思う。手紙という色々と仕掛けを盛りやすい形式を使っている以上、読者も身構えるわけでね。

といった諸々の感想から総合点はまずまず~やや物足りないという感じ。


No.261 9点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2021/10/10 15:31登録)
(軽くネタバレあり)
非常に面白かった。目的は一つ、謎の女を見つけて証言させる事。物語の筋が分かりやすくとても読みやすい。
読者に示されるアリバイがなぜか否定されるという興味深い謎が示される序盤、あと一歩のところで関係者が次々と亡くなってしまう先が気になる中盤、読者予想の裏をかくための素晴らしいギミックが組み込まれ、更にサスペンス的盛り上がりも高水準な終盤。
序盤、中盤、終盤全てにおいて隙の無い面白さで、人気があるのも納得の作品である。

満点でない理由は、話を進めるためにご都合主義なところが散見された点。例えば、キャロルの追っていた側では犯人は動いていないのに人が死に過ぎな点など。ミスリードに必要だったのは分かるが、作者側の都合で話を転がしたんじゃ読者は納得しないぜ。


No.260 7点 終末のフール
伊坂幸太郎
(2021/09/27 06:25登録)
緩やかに人類が終焉に向かう中、色々な人が各々好き勝手生きる話。どうしようもない理不尽さにもかかわらず、登場人物達は懸命に生きており、読んでいて非常に気持ちの良い小説だった。
特に好きな話は『鋼鉄のウール』。苗場さんを見て、明日死んでも後悔の無いように自分も日頃からやれることをきちんとやろうという気になった。

構成面では各話の繋がりを強調せず小ネタ程度にとどめたのが功を奏したのかなと思う。もし結び付けを強く書いていたら、そういった伏線を気にしながら読まざるを得なくなり、結果焦点が登場人物達の生き様からずれて、この作品の良さが薄まっていただろう。


No.259 5点 “文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)
野村美月
(2021/09/27 06:23登録)
ライトさやかわいいキャラで整った味にミステリ要素がスパイスとしてピリッと利いていて、コクのある作品だったわ。ただ、ひと昔前の作品なのでキャラクター造形は少し古めかな。絵も特別良いという訳でもないので、少し鮮度が気になったかも。
シリーズ二冊目以降に手を出すかと言われると・・・、またお腹が空いたらいただくわ。


No.258 5点 猿の惑星: 聖戦記
グレッグ・コックス
(2021/08/14 19:49登録)
各キャラの心情を丁寧に描写しているが、家族愛や仲間意識などの人間(?)関係部のドラマに特別光る個性もなく、残念ながら凡作止まり。駄作というほど悪くはないけどね。猿を善玉、人間を悪玉にしすぎており大味な勧善懲悪もので終わってしまっている。

猿が人間並みの知性で活動する様子を見るのが『猿の惑星』の醍醐味の一つなのだが、猿たちに人間味がありずぎて映像が無いと猿っぽさを感じ辛いというのも残念な点。わざわざ小説で読むメリットを感じなかったな。


No.257 5点 アリス殺し
小林泰三
(2021/05/31 22:39登録)
(ネタバレあり)
多分上手く作りこまれてる作品なのだろうが、独特の世界観に入りこめなかった。アリスと亜理のちょっと変わった二人一役は普通に引っかかったのでそこは良かった。そのトリックの出来を考慮してこの点数。


No.256 3点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
麻耶雄嵩
(2021/05/09 16:50登録)
(ネタバレあり)
自分の読解能力が足りないのは承知の上で書くが、つまらない以前に見所がさっぱり分からなかった。残念ながら、目的意識を伝えずに方法論だけを語る、悪い意味で先の読めないダメプレゼンを聞かされたような印象。結局、何が売りの本なんだ?

 純粋な犯人当て?→そこまでキレキレの論理でもない。
 独創的なトリック?→既視感のある密室くらい。
 『毒チョコ』のような多重解釈?→途中の推理は明確にハズレ扱いなので、多重ではない。
 どんでん返し?→探偵役が二人いる時点でひっくり返るのは読めてしまう。
 意外な展開?→タイトルにある探偵が死ぬも、タイトル的に死ぬかなーと思っていたので予想の範囲内。他の展開にも特に意外性を感じず。
 キャラ物?→特にオリジナリティある魅力的なキャラ造形でもない。

結局ここを楽しんで欲しいという点が分からないと、読者としてもノリようがない。ミステリ的技巧に走りすぎて、読み手への配慮を蔑ろにしてる作品かと。


No.255 6点 誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ
(2021/05/04 17:38登録)
(ネタバレあり)
初のセイヤーズ作品。語り調子や雰囲気は好きだが、惜しい作品だった。

「死体の処理で足がつくかも」→「だったら死体をすり替えて堂々と処理してやれ」
発想は悪くない。むしろシンプルで好き。
ただし、

・すり替えた死体が病院から持ち出されたものだと気づかれたら終わりなわけで、数時間の床屋作業による偽造対策だけでその危ない橋を渡るのはどうかと思う。
・レヴィが移動中に目撃されたのは不運だったと犯人は言っているが、これは対策考えてないのがおかしいレベルのポカ。実際それが命取りになったし。
・鼻眼鏡の役割が結局雰囲気作りだけで、登場意義が弱く面白くない。

と、ケチを付けたい点が多々ある。
楽しめたがマイナス点も気になるので、総合評価は平均くらい。


No.254 5点 黒後家蜘蛛の会2
アイザック・アシモフ
(2021/04/29 11:19登録)
一気に読みたくなるパワーは無いが、相も変わらず毎日一話位のペースでまったりと読み進めたい雰囲気。
点数については、各話の平均が1作目よりも落ちているので、総合で1点引いた。

<収録作毎の書評>
・追われてもいないのに(5点)
初っ端としてはまずます。

・電光石火(7点)
シンプルイズベストなトリックを決めている秀作。あとがきの通り、例の作品の影響が強いとは思った。

・鉄の宝玉(6点)
ラストのヘンリーの気の利いたコメントが好き。

・三つの数字(6点)
これも比較的シンプルな仕掛けで好み。伝言ゲームって難しいね。

・殺しの噂(5点)
『指輪物語』は未読なので、申し訳ないが良さが十分伝わらず。

・禁煙(7点)
うんちくを織り交ぜた小ネタが多めの「ブラックウィドワーズ」ものにおいて一風変わった正統派な探偵話と思う。(マッチの使い方を起点とした推理などは特にそう思う。)

・時候の挨拶(5点)
ゴンザロがやたら色々推理するがコナンのおっちゃんみたいな感じで微笑ましい。謎の面白さは可も無く不可も無くといったところ。

・東は東(5点)
アメリカの地名ネタなので、日本人である自分には少しとっつきにくかったが悪くはない。

・地球が沈んで宵の明星が輝く(5点)
まあまあ。謎は微妙だが、「ブラックウィドワーズ」ものにしてはシリアス成分が強く、短編集の中でストーリーの緩急をつけるという意味でいいかも。

・十三日金曜日(4点)
考え方は小学生でも思いつくレベル。あとがきによるとEQMMは本作を没にしたらしいが、自分はこの判断が妥当だと思う。

・省略なし(6点)
『三つの数字』に続き伝言ゲームの難しさが原因で生じた謎。伯母さんのあの言い換えはちょっと無理矢理な気もするけどな(笑)。

・終局的犯罪(7点)
シャーロキアンの戯れを書いた話。こういう不毛なことについて真面目に議論するのは楽しいですよね。幸い自分の知識レベルでついていける議論だったので、メンバーと一緒に語っているような感覚が味わえた。本短編集の中で一番好きかも。ヘンリーが冠詞を切り口に推理し始めるのも自分好み。


No.253 7点 ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾
(2021/04/29 11:18登録)
各話がつながる瞬間(伏線回収?)がミステリとして面白い。
また、最適な道を選べていない、生い立ちが不幸、重大な問題を抱える、といった様々な悩み人達が紆余曲折しながら幸せを追い求める過程が、物語としても面白い。
ミステリ・SFのギミック的面白さと読み物的な面白さを両立できている良いバランス。

弱点は時系列の把握が少しめんどくさい点。伊坂さんの『ラッシュライフ』で似た感想を抱いたが、時系列順でないとやはり読んでいて多少のストレスがある。
ただし、本作はそういうマイナス点を打ち消す程度に、プラスの点が良かった。


No.252 7点 永遠の0
百田尚樹
(2021/04/01 22:30登録)
タイトルは元から知っていたものの、中身は完全に未知の状態で挑戦。0って零戦の0だったのね。長い上に暗く、自分の趣味嗜好のど真ん中ではなかったものの、一気に読みたくなるパワーがあり、期待以上だった。

宮部久蔵という人物を旧知人達が語る構成で、語手達の壮絶な戦争体験がリアルに伝わってくる。カミカゼや戦争を正しく認識できた、とはとても言えないが、本書を読み改めて今が平和な時代で良かったと思えた。


No.251 7点 化物語
西尾維新
(2021/04/01 22:28登録)
ファンタジー要素を絡めた青春ものだが、本作の評価はキャラクター達の漫才を楽しめるかどうかで決まりそう。個人的に「戯言シリーズ」より好みで、続きも読みたいと思った。(掛け合いが長い(くどい)と感じた部分がそこそこあったのは残念だが。)

好きな話は順番に
「つばさキャット」>「まよいマイマイ」>「ひたぎクラブ」>「なでこスネイク」>「するがモンキー」
である。
「つばさキャット」が特に面白く、下巻最終話にて1加点。(父上同伴デートは本気で笑った。また、各種伏線(忍の隠れ場所やブラック羽川の言動など)も上手く機能していた。)


No.250 6点 「Y」の悲劇
アンソロジー(出版社編)
(2021/03/20 11:58登録)
アンソロジーのタイトルがタイトルなので、各作者の調理センスが如実に表れるだろうと読前に予想。結果は・・・。見事に明暗分かれたね。
残念ながらはっきりと嫌いな作品もあったが、アンソロジー全体では6点くらい。

<個別の書評>
有栖川有栖 「あるYの悲劇」 6点
作家有栖シリーズの評価は
「堅実だが地味」か「派手さは無いが丁寧」
のどちらかに落ち着くことが多い。本作は後者で、7点に近めの6点です。(犯人名の読みには少し無理矢理さを感じたが。)
Yの意味は予想が的中。書き順が示された段階で正解と確信できた。

篠田真由美 「ダイイングメッセージ《Y》」 5点
ネカマネタが出た時点で予想できる範囲のオチ。Yの意味は独特で好きだが、総合的には少し物足りなかった。

二階堂黎人 「「Y」の悲劇-「Y」がふえる」 1点
読んでてイラついた。滑り過ぎていて物語が頭に入ってこないレベル。編集者も一緒に悪ノリしてしまったのだろう。

法月綸太郎 「イコールYの悲劇」 8点
暗号ものは解釈に取って付けた感が出ると途端に冷めるので、いかにシンプルで意外な答えを用意できるかが重要だ。
本作では暗号の解釈が
「人名に関連する記号」 → 「人名の隠語?」 → 「人名そのもの」
と推移する。別解で正答をカモフラージュし、最後にシンプルな正解を明かすという理想的な構成だ。
加えて、赤字の重要性、意外な人物相関など、メインの暗号以外も上手く機能しており上手さを感じた。本短編集でNo.1の出来でしょう。


No.249 7点 ウォリス家の殺人
D・M・ディヴァイン
(2021/03/17 07:30登録)
翻訳が上手かったのか、非常に読みやすかった。
構成についてはヴァン・ダインの『グリーン家』が頭をよぎった。上記同様意外な犯人で魅せる作品だが、作中で言及されている点から犯人を推測することができるので、意外性だけでなく、パズルのピースが綺麗にはまる感覚も楽しめる佳作。


No.248 7点 東の海神 西の滄海
小野不由美
(2021/03/07 08:46登録)
十二国記シリーズ3冊目。シリーズに対するここまでの感想は、思いのほかサクサク読め、手軽に楽しめる良ファンタジーという認識。

今回は、以前より登場している延王尚隆と延麒六太の物語。ストーリーは善人ぶってるが真の性根は腐ってる敵役を成敗するという超王道もので、有事の際は頼れるリーダーという尚隆のキャラ付けや、比較的早く敵役の仮面が剥がれるのもあり、敵を倒してハッピーエンドだろうと途中で察せる。
このように、意外性での盛り上がりはほぼ無いので人によっては物足りないかもしれない。しかし、独自色の強い設定である本シリーズでは、話は王道で分かりやすいくらいがちょうど良いと私は思う。

本作が比較的明るい締めだったので、次辺りきな臭い話がくると予想。


No.247 9点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂妻夫
(2021/02/27 19:27登録)
独特な魅力を持つキャラクター達がテンポ良く話を転がしており、肝の仕掛けを味わう前でも、結構良い本だと感じていた。そんな状態で最後に明かされた衝撃の仕掛け。驚愕のあまり、思わず一人声を上げてしまいました(笑)。

こういう遊び心満載の面白本に出会えるのだから、ミステリファンはしあわせだ。未読の方はぜひネタバレ前に読んで、自分同様しあわせを受け取ってほしい。


No.246 4点 奇岩城
モーリス・ルブラン
(2021/02/27 08:10登録)
これは昔の有名シリーズの悪いとこ(違和感があるレベルでの主人公上げ、場当たり的に次々と登場する舞台や人物、主人公上げに使われるしょーもない謎、など)が出てしまっている作品。
主人公のボートルレのキャラが弱いのは、キャラ物として致命的。後半は惰性で読みました。


No.245 8点 ボッコちゃん
星新一
(2021/02/13 11:00登録)
学生の頃星さんの本を何冊か読んだ時は、安定感はあるが話の短さで誤魔化している作家、と思った。しかし、本当は逆で、短いと誤魔化しが効かない。そんな高難易度のショートショートで安定して面白い凄い作家、というのが私の現星さん評価である。
本書は、そんな作者の力量が遺憾なく発揮された良短編集だ。

あとがきによると、マンネリ化を避けるために本短編集には色々なパターンの話を入れたそうだ。自分は『おーい でてこーい』のような因果応報系と、『親善キッス』のように最後で重要情報を明かしてオチを付ける系の話を特に気に入っている。

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