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ミステリの祭典

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終末のフール

作家 伊坂幸太郎
出版日2006年03月
平均点6.44点
書評数16人

No.16 7点 バード
(2021/09/27 06:25登録)
緩やかに人類が終焉に向かう中、色々な人が各々好き勝手生きる話。どうしようもない理不尽さにもかかわらず、登場人物達は懸命に生きており、読んでいて非常に気持ちの良い小説だった。
特に好きな話は『鋼鉄のウール』。苗場さんを見て、明日死んでも後悔の無いように自分も日頃からやれることをきちんとやろうという気になった。

構成面では各話の繋がりを強調せず小ネタ程度にとどめたのが功を奏したのかなと思う。もし結び付けを強く書いていたら、そういった伏線を気にしながら読まざるを得なくなり、結果焦点が登場人物達の生き様からずれて、この作品の良さが薄まっていただろう。

No.15 5点 ある
(2013/09/13 16:19登録)
短編集は苦手だったのですが,「死神の精度」はとても良かったので,こちらの本も手にとってみました。
伊坂氏らしい洒脱さやユーモアはところどころにちりばめられていて楽しく読めたのですが。。なにかまとまりに欠けた感じがします。


余談。
何度か登場した腹痛や吐き気のシーンが,ラストに何か関わっているはず!と勝手に想像して読んでいたのですが,結局,何も関係ありませんでした(笑)

No.14 6点 まさむね
(2013/09/12 23:12登録)
 3年後に小惑星が地球に衝突し、人類は息絶えるだろう…という設定での連作短編。
 この事実が判明したのが5年前で,パニックによる殺人や強奪,はたまた自殺者続出という騒乱期を経たうえでの,小康状態とも言える時期を舞台としたところに,作者のセンスを感じました。確かに,一旦は自棄になりそうだけど,5年経ってしまえば,残りの3年間は逆に落ち着いて淡々とした生活を送るような気もしますね。妙なリアル感があって,実際に自分がこの状況に置かれたらどうなのだろうと考えさせられます。
 そもそも表題作が「ミステリーじゃないものを」との編集者の依頼に基づいて書かれたものだそうで,他の短編も含めてミステリーとは言いがたいのですが,伊坂さんらしい軽妙なタッチに中で,何気に自分の生と死を見つめ直せるような作品です。

No.13 7点 itokin
(2013/03/06 21:44登録)
巨大隕石が5年後地球に衝突し恐竜が絶滅した状況が再現されるという混乱時の人間社会を生きる人々の物語だが、変にリアルがあってそれぞれ胸に迫り自分だったらどのように生きるだろうかと考えさせられる。「鋼鉄のウール」の苗場は、武田幸三氏をモデルにしてるなと思ったが正解だったのでオッと声を出してしまった。

No.12 8点 ボンボン
(2012/08/11 23:16登録)
東日本大震災を経て、ある日突然、世界が一変して、めちゃくちゃになるということを実体験したので、リアルな気分で読みました。
一般人は大きな何かに飲み込まれて、それぞれ足掻いていくしかなく、そこに至って、”終末”が本当かウソかは、もはや関係ない、というところが、いかにも伊坂さんらしく面白い。

No.11 3点 ムラ
(2012/08/02 03:34登録)
終末物となると大抵はパニック物を思い出すけど、今回の話はパニックになった後の緩和的時間の話。
群像劇的になってるのはいつもの伊坂っぽかった、が終末物なだけに所々重い箇所がある。
個人的に一番好きなのは天体のヨールの二ノ宮。落ち着いていて感性が明後日の方向に向いているのがいい。しかし、ヨールはさすがに無理やり感があって笑った。
セリフとして一番好きなのはやっぱ苗場かな

No.10 5点 simo10
(2012/07/26 21:59登録)
舞台はお馴染みの仙台だが、なんと地球滅亡まであと三年らしい。五年前に発表された地球滅亡説以降、混乱を極めた世界がようやく一定の小康状態を見せ始めた頃という設定です。
8つの短編で構成されており、各主人公達のこれまでの、そして今後の生き方が描かれています。
登場人物達は皆五年間の辛い混乱時代を経験し、また短い未来しか残されていませんが決して暗い話ではなかったと思います。
残された三年間を普通の日常のように生きようとする登場人物の姿にちょっと感動しつつ、避けられない現実にしんみりする、そんな作品でした。
苗場のセリフ「あなたの今の生き方はどれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」が特に印象的でした。自分の生き方について考えさせられました。
しかし非常に良い作品でしたが、全然ミステリでないので5点です。

No.9 8点 NAP
(2012/02/13 17:35登録)
違う作者さんで「地球滅亡系」を読んで最後に納得がいかなかったんだけど、やっぱり伊坂さんのはキャラが魅力的で文章もセンスあっていいな、と思った。ただの贔屓ですが。笑

No.8 7点 concon
(2012/01/30 23:18登録)
こういう設定で小説を書こうというところにまず感心させられる。
そしてキャラが出来上がっているところで、別の話になるところに、作者の潔さを感じる。
そしてところどころで話がつながっているところが、こちらのツボを押さえてるなと思う。

No.7 6点 E-BANKER
(2011/05/28 21:14登録)
ノン・シリーズの連作短編集。
数年後に小惑星が衝突し、地球が滅亡する、というかなりストイックな設定です。
①「終末のフール」=学業が優れているのが「天才」ではない。特に、こういうストイックな場面では「バカ」の方がよっぽど価値がある・・・ということ?
②「太陽のシール」=世界一(?)優柔不断な男が登場。こんなストイックな状況で、妊娠した妻。果たして生むべきか生まざるべきか?
③「籠城のビール」=確かに、無責任なマスコミは嫌だ! でもマスコミ人も迷っているのだ!
④「冬眠のガール」=何とも魅力的な女性です。やっぱり、死ぬ前に恋人欲しいよねぇ・・・
⑤「鋼鉄のウール」=苗場さんが実にかっこいい。どんな状況になろうと、「やるべきことをやる」という姿勢こそ最も美しいのだと思わされる。
⑥「天体のヨール」=やっぱり、「自分の決めた道」を持ってる人は強い・・・っていうことかな?
⑦「演劇のオール」=何となく虚無的。
⑧「深海のポール」=ほぼ全編に登場するレンタルビデオ屋の渡部氏が主役。一本筋の通った父親のキャラが魅力的。
以上8編。
地球滅亡が迫り、人間の心が一旦荒廃した後、落ち着きを取り戻しつつあるといった状況設定。
「仙台」という設定のせいかもしれませんが、大震災後の今現在を何となく想起させる・・・
ただ、結局、伊坂は何が言いたかったのか? ちょっと不明。
(キャラ的には⑤の苗場さんがベスト。誰もがどうしていいか分からないような状況下では、自分ができることを休まずやることが一番大切なんだと気付かされる)

No.6 7点 ZAto
(2011/01/09 13:51登録)
フィクションを読むということは、小説家が構築した世界観の中で人物たちが動かしていく物語を読むということだ。読者は小説の中に起こる事件を知り、それが恋愛なのか、憎悪なのか、心理の迷宮なのか、直面した人物たちがどんな行動をし、どんな情動を受け、その詳細を確かめながらページをめくっていく。今まで経験した読書とはそういうものだった。
ところが伊坂幸太郎『終末のフール』は少し違った。読者は常に「自分ならばどうするのか」という仮定を想像しながら物語と伴走していかなければならない。
さすがに伊坂幸太郎は良質のフィクションを創出していくが、こういう設定の中で物語や人物の心情がリアルであるのかどうかはわからない。これもまた伊坂の想像でしかないからだ。でも面白かった。

No.5 6点 yoneppi
(2010/07/18 14:12登録)
個人的にはあまり馴染めない伊坂だが、なんとなく手に取った1冊。出来にバラつきはあるが、結構感動できる話もあった。子供のころ読んだ「ひとめあなたに…」を思い出した。「ヨール」ってのはどうかと。

No.4 6点 だい様
(2009/05/02 15:17登録)
世界の終りが宣告されたらという設定が面白い。
そして苗場がかっこいいです。

『明日死ぬとしたら生き方が変わるんですか?』
『あなたの今の生き方は、 どれくらい生きるつもりの 生き方なんですか?』

こういう言葉いいですね。

No.3 6点 VOLKS
(2008/12/10 09:33登録)
氏の作品らしく、変わった設定のもとで話が展開していく短編集。
ほんわかする話もあるし、随所に笑いどころも散りばめられているのだが、行き着くところは見えているのでやはり胸にモヤモヤしたものが残る読後感。

No.2 7点 ふ~
(2008/09/21 09:36登録)
文章も、すごく引き込まれるのですが、3年後に人類が滅亡するという設定のため、読んでいて辛く感じました。

No.1 9点 ばやし
(2007/12/15 19:47登録)
この短編集は本当良かったです。いやー最後ちょっとウルってきましたね。凄い綺麗な文章だと思いました。

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