奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃 |
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作家 | 加藤元浩 |
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出版日 | 2019年02月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | バード | |
(2021/10/24 18:53登録) 前情報無しで衝動買いした本だったが、各所表現にそこはかとなく漫画風味を感じ調べたところ作者の本職は漫画家だった(笑)。 漫画描きなだけあってか読者への情報の伝え方は上手く、第一事件の密室、第二事件の犯人消失、第三事件の違和感の正体、別犯人を仕立て上げるという真犯人につながる伏線など重要情報がスムーズに頭に入ってきた。全体的にいい意味でシンプルなトリックや書き方で好印象。 一方、見立て殺人の要素やストーリー構成がテンプレ的で、ややオリジナリティに欠けるのがマイナス点。そこが少し残念で惜しくも7点に届かずです。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2019/10/10 03:22登録) (ネタバレなし) 「私」こと七夕菊乃(たなばたきくの)は、以前はアイドルグループ「ブルースカイG」の一員だが、なんやかんやあって警視庁捜査一課の刑事に就任。当初はお飾りの広告塔の様に扱われかけながら、変人の捜査官「アンコウ」こと深海安公(しんかいやすきみ)の協力を得て二つの難事件を見事に解決。今は警部に昇進していた。だが警視庁内部の力関係から、彼女の活躍を快く思わない警備局の古見参事官が菊乃の足を引っ張ろうとする。そんななか、菊乃は八丈島の方にバカンス旅行に出かけるが、船旅の洋上で出くわしたのは、生首を乗せた高瀬舟だった。菊乃は休暇返上で、被害者の出身地と思われる小島・喜角島に乗り込む。だがそこは60年前の終戦直後、ある医学者が不老不死の研究をしていたという曰く付きの島、別称「奇科学島」だった。やがて島の周辺では、まるで死体が動いたかと思える、第二・第三の連続殺人事件が……。 シリーズ第三作。島民が約300人の小島、しかもその島の周囲はほぼ岩壁に囲まれた中で起こる、元庄屋の一族にからむ連続殺人……という、完全に横溝作品の岡山ものの雰囲気を狙った設定。 密室やアリバイトリック、動く死体、そして見立て殺人などなどミステリ的なギミックはかなり豊富だが、設けられた謎のなかには最後まで解明を引っ張らずに、物語途中で早々に明かされるものもあり、その辺は手堅い作りのような、大技を控えた分だけこじんまりしてしまったような。 あと個人的には、見立て殺人という犯人の狙いに気づいた菊乃たちが予防策を張るのはよいが、最後の殺人に関してはちょっとうっかりしすぎ、という印象。こちらが大丈夫かな、あっちの可能性もあるのではないか、と思っていた事態に、まんま、なってしまう。この辺は、前もって犯人の動きをもっと絞り込む捜査側の動きについて、もっと説得力が欲しかった。 それでも298頁で明かされる犯人の名前を認めた時は軽く驚かされたが、さらに事件の底が割れてくると、ああ(中略)なんだね、と、海外のある大作家のおなじみの作劇パターンと、さらにその同じ作者の某代表作が頭に浮かんでくる。ただしその上でちょっと原典をアレンジした、本作なりの工夫も感じないでもない。この作品はその辺の捻り具合を、評価すべきかもしれない。 ちなみにAmazonのレビューで、動機の説得力が……という声があったけど、それには同感。21世紀の人間の思考としては、そういうことを考えるかなあ、という感じであった。 シリーズ3冊読んで、出来の順番は②>③>①という感じ。 ②はメイントリックの創案もなかなかだったが、さらに途中の人間消失の仕掛けが、良い意味で旧「宝石」の新人作家のトンデモトリックという感じで心の琴線に引っかかった。まあ出れば気になる、楽しいシリーズではある。 |