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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.67点 書評数:541件

プロフィール| 書評

No.381 7点 ギリシャ棺の秘密
エラリイ・クイーン
(2018/06/08 20:26登録)
登場人物が非常に多いにもかかわらず、犯人と目される人物が限定的で、かつ少数の証拠で容易に絞り込まれてしまう点で、筋肉質かつエレガントな「オランダ靴」には遠く及ばない。
また、プロットに盛り込まれたエピソードやガジェットが、その巨体に見合う十分な効果を挙げておらず、中だるみを強く感じさせる印象。
真犯人の衝撃を買って7点の最下層


No.380 6点 サウスバウンド
奥田英朗
(2018/05/31 08:46登録)
個々のエピソードは面白いのだが、他の作品にない説教臭さと、まとまりの無さを感じさせ、主題が曖昧な印象が強い。
読み物としては一定の水準に達しているのだが、著者の本来の力量が発揮されておらず、読者の期待に応えているとは言いかねる作品


No.379 5点 陰の季節
横山秀夫
(2018/05/02 13:50登録)
いずれの作品も小粒ではあるものの、一定の水準を保っているのは間違いない。
ただ、ご都合主義的な偶然や登場人物の不可解な言動等、リアリティの弱さ、主人公の推理が論理性に乏しく、飛躍が散見される点で、ミステリとしてのツメの甘さが散見される点は気になった。
読了順が逆になったことで、著者の後日の飛躍を実感させられる読書となった


No.378 5点 ジェリーフィッシュは凍らない
市川憂人
(2018/04/27 11:38登録)
伏線・ディテールに至るまで非常によく考えられた作品。
ただ、そもそもフーダニットを放棄した作品であろうから、犯人が直感的に分かってしまうのはよいとして、肝心のハウダニットも想定の範囲を脱していない。
各所で綱渡り、ところによってはアンフェアな仕掛けが講じられているのに、それだけの効果が挙げられていない。
著者の確かな実力は感じられるものの、作品の構想自体に難があり、それが十全に発揮されていない


No.377 5点 QED 六歌仙の暗号
高田崇史
(2018/04/17 15:51登録)
各登場人物の目を覆うようなオーバーリアクションをはじめ、叙述そのものの拙劣さ、ヒロインがワトソン、つまり探偵の引き立て役として全く機能していない点など、第一作の難点は改善されていない。
最も重要なガジェットの1つであるダイイングメッセージが、ハナから「七」に見えない点も大きな難点。
歴史解釈がもし著者のオリジナルだとすれば、高く評価することができ、5点の最下層としたが、ミステリとしては平凡で、歴史解釈とミステリの両者が有機的に連携しているとも言えない。


No.376 6点 百器徒然袋 雨
京極夏彦
(2018/03/30 14:16登録)
キャラクター小説としての色彩が強く、長編ほどのスケール感・完成度に達していない点で、百鬼夜行シリーズの同人誌的なスピンオフ作品という評価が妥当だろう。
それでも本格ミステリとして一定の水準に達しているし、何より読物として抜群に面白く、6点の上位


No.375 6点 体育館の殺人
青崎有吾
(2018/03/26 19:32登録)
真相解明プロセスの論理性の高さ、作品の各所に配されたガジェットの活用の巧みさ等、デビュー作としては出色のデキだろう。
明かされた真相がややもするとサプライズに乏しく、犯行計画のフィージビリティにもやや難点を感じるが、全体としては極めて堅牢な本格ミステリであると言えよう。
6点の最上位


No.374 4点 幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
倉知淳
(2018/03/16 10:33登録)
著者の日常の謎系作品は、真相が飛躍する衝撃とリアリティの絶妙なバランス、それを解明するプロセスの論理性の高さが特色であるが、そのいずれにおいても「猫丸先輩の推測」はもちろん、「猫丸先輩の空論」にも遠く及んでおらず、4点の下位


No.373 6点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2018/03/06 15:26登録)
プロット全体の重要な前提となる、ある事実が判明した瞬間、プロットが一挙に反転し、真犯人が特定されるという構成の妙は買う。
しかし、犯行の動機や目的に比して、その手段があまりにもリスキーであり、それが全く露見しなかったことも含めて、リアリティが感じられない。
真相解明に至る推理のプロセスにも疑問が残り、世評ほどに高く評価することはできない


No.372 8点 背徳のぐるりよざ セーラー服と黙示録
古野まほろ
(2018/02/28 15:35登録)
何と言っても「太平洋戦争終了直前から閉鎖されたカトリックのムラ社会」という奇想天外な舞台設定が奏功。
これにより本シリーズと横溝の名作の世界観を折衷し、十戒の遵守という設定により、本格ミステリと親和性の高い論理世界を実現している。
ホワイダニットを解明する前提となる真相は、その内容にやや疑問を感じる点が残るものの、そうした事態が発生する蓋然性は高く、本作のタイトルに込められた意図も含めて強烈な破壊力を持っている。
フーダニットは真相とそれを解明するプロセスもさることながら、その証明の手際が実に鮮やか。
以上、細部には毀誉褒貶があるものの、本格ミステリとしての骨格の堅牢さを評価してこの点数


No.371 7点 神秘の島
ジュール・ヴェルヌ
(2018/02/20 19:12登録)
「海底二万里」以上に、緻密に組み上げられた莫大なガジェットが、本作の魅力の源泉であり、その抜きん出た構築の才は高く評価する。
一方、こども向けの作品であることも影響しているのか、登場人物がことごとく万能であり、ご都合主義的な幸運に再三恵まれるなど、スムーズすぎるプロットがサスペンスを減じているのは事実。
とりわけ、リンカーン島の生活インフラは、あのような少人数がわずか4年間で建設できるかと言えば、大いに疑問が残るところ。
しかし、総合的な評価としては、非常に面白い作品であり、リーダビリティの高さも相まって、高いレベルにあるのは間違いない


No.370 2点 四神金赤館銀青館不可能殺人
倉阪鬼一郎
(2018/02/01 17:07登録)
著者の作品を読むのは4作目だが、もはや限界という印象。
とにかく趣向がワンパターンすぎるうえ、さまざまなアイデアが必然性、すなわちプロットとの関連性もなく、ただ並べられているだけで、思い付きの域を出ていない。
また、この真相であれば何でもアリになるのは当然で、好意的に評価できる点がない


No.369 6点 火刑都市
島田荘司
(2018/01/25 14:48登録)
評論家が必ず著者の代表作の一つに挙げ、著者自身もそれを自認し、自画自賛している一方、市井のファンからは、「一定の評価はするものの、奇想天外なトリックがなく、犯人の動機を構成する主題に納得できず、サスペンスも弱い中途半端な作品」と評されることの多い本作。
一連の犯行の不可解性と、そこに秘められた謎(=本作の主題)、それを盛りあげるストーリーテリングの妙(改稿を重ねた全集を読了したからかもしれないが)は高く評価するものの、本作の主題が本件犯行動機に成り得るか、仮に成ったとして本件犯行のような態様を取るか、という点には疑問を感じた。
ご都合主義的な登場人物の配置や、その魅力の乏しさも減点材料であり、この評価


No.368 6点 影の車
松本清張
(2018/01/15 15:23登録)
非常に短いセンテンスで、抑制の利いた表現でありながら、優れた描写力を示す筆致に、高い筆力が伺われる。
一方、ミステリとしては、プロットや登場人物の行動に合理性を欠く点も見受けられ、犯人の小さなミスや偶然から、その犯行・底意が露呈するプロットのパターン化が目に付くところ。
一部に突出した作品が見られるが、それ以外は概ね平均点よりやや上に止まっており、そのアベレージの高さは称賛に値するものの、「黒い画集」とは確実に差がある印象
「張込み」と文字どおり同工異曲であり、同様の評価であるが、読み慣れてきたからなのか、同作よりわずかに劣っているのか、「張込み」よりわずかに下と位置付けた


No.367 6点 ほうかご探偵隊
倉知淳
(2018/01/12 20:55登録)
作品冒頭に提示される不可解な謎と、その解明プロセス、二転三転する真相に至るまで、隙のない完成度を誇り、大人の読書に耐え得る作品。
想定している読者層からやむを得ないのだが、スケールはやや小粒であり、プロットのごく一部に無理も感じられることから、この評価に止めるが、一読の価値のある佳作であることは間違いない。
挿入されたイラストが非常にかわいらしい点も特筆したい


No.366 4点 僧正殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2018/01/12 20:54登録)
まず、「登場人物を殺しすぎてしまい、根拠はないが、犯人が察せてしまう」というプロットが失敗。
それにもかかわらず、捜査陣の無能ゆえに、犯人を断定する決定的証拠が得られず、心理的な駆け引きで犯人を特定するプロセスや、登場人物の行動の不合理性など、本格ミステリとして高く評価することはできない。
作品の本質としてはむしろ、見立て殺人を活かしたサスペンス・スリラーと考えるべきだろうが、犯行動機の納得性、見立て殺人の必然性など、その視点でも高い評価は難しい


No.365 7点 クロスファイア
宮部みゆき
(2018/01/06 13:52登録)
大ヒット漫画「デスノート」と同一の主題であり、同工異曲と言うべき作品。
主人公に対する批判・悪意の反映かもしれないが、登場する悪人がチンケすぎる、主人公の行動原理が純粋な正義感ではなく恋愛感情が混入している、無関係な人間を巻き添えにするなど、主人公の行動に大義がなく、行動もあまりにも不用意である点等から、同作のような強烈な緊迫感・問題意識は伝わってこない。
そうした点から、主人公を待ち受けているラストは明々白々であるが、その着地も呆気なさ過ぎる印象を受ける。
ミステリとしての面白さ・リーダビリティは高く評価するものの、主題を十全には活かしきれていない点で画竜点睛を欠いており、消化不良と違和感が残る作品


No.364 4点 ゴーレムの檻
柄刀一
(2017/12/12 18:06登録)
類例のないアイデアに著者の並々ならぬ意欲が感じられるが、提示された不可能状況の説明は、破綻こそないものの、「詭弁」の印象があまりにも強く、納得感は弱い。
また、1個の作品として見ると、情景・心理ともに描写が不足しており、舌足らず感が否めないところ。
力作であることは間違いないが、非常に読者を選ぶ作品


No.363 4点 オレたち花のバブル組
池井戸潤
(2017/12/01 14:26登録)
作品全体から受ける印象は前作と同様。
リアリティの欠如と、主人公の行動原理への嫌悪感がわずかながら改善され、近藤のエピソードに対する評価で加点したが、官僚的大企業における人間模様として、牧歌的なファンタジーであることに変わりはない。
4点の中位


No.362 3点 オレたちバブル入行組
池井戸潤
(2017/12/01 14:25登録)
ドラマ「半沢直樹」は見ていないが、興味本位で手に取った。
高視聴率ドラマの原作というプロフィールから、期待してはいなかったのだが、その低いハードルをさえ、大幅に下回る内容。
まず、各登場人物の造形と言動が類型的すぎ、犯人による物証の取扱いがあまりにも不用意であるなど、プロットにリアリティが感じられない。
そして、それ以上に、主人公の「力・強さこそ正義」という行動原理にまるで共感することができない。
主人公は「倍返し」というが、自分が憎み、軽蔑する相手に、相手以上に下世話かつ陰湿極まりない手段で報復することの深刻な自己矛盾に気付いているのだろうか。
本物の大人物は、このように小人物と同じ土俵に立つことはない。
また、私も銀行に負けず劣らず官僚的な大組織に属しているが、このような組織では過度に目立つこと自体が大きなリスクであり、いくら優秀な人物でも個人の力で組織に打ち克つことはできない。
したがって、敵対する相手に対しても、常ににこやかに笑顔で接しつつ、その裏で事後にさえも気付かれないように刺すべきであって、部下本人にさえ見抜かれるような露骨な本部工作に奔走する支店長や、衆人環視の状況で他セクションの上席に土下座させる主人公は論外である。
最後に、主人公が支店長の悪事を暴きながら、それを隠蔽することと引き換えにポストを得るなどに至っては、自身も背任・詐欺に荷担することになり、愚劣を極めると言わざるを得ない。
銀行組織の硬直性・閉塞性というプロットの着眼点は買うし、リーダビリティは高いのだが、作品としては非常に稚拙なファンタジーであり、読後感も至って悪い。
3点の下位

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