蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1693件 |
No.833 | 7点 | 瓶詰の地獄 夢野久作 |
(2015/11/28 19:52登録) ①瓶詰の地獄 9点 海難事故で孤島に流れ着いた幼い兄妹。初めは楽園かと思われたが。3本のビール瓶に入れられた二人の手紙が流れ着いたのだ・・・3通の手紙が書かれた順番を問題・謎とする書評が多いのですが、単に時系列を逆にしただけと思います。天国から地獄へをたった13ページで表現したところがすごい ➁人の顔 4点 幼い少女は、いろいろなところに人の顔が見えるという・・・無垢だけに大人にとっては恐ろしい ③死後の恋 6点 ロシアの青年は、これから語る数奇な物語を信じてくれたら、宝石をあげるという・・・果たして真実なのかという謎 ④支那米の袋 9点 ロシア娘はアメリカの青年に恋をした。青年には変な性癖があった。そのアメリカ青年の話によると、日本には男女間でもっと面白い遊びがあるという・・・本編が一番わかりやすいオチ ⑤鉄鎚 7点 主人公と叔父と従妹との三角関係。悪魔はいるのか?。従妹の死に顔を見て、主人公は彼女の真実を知ったで突然物語は終了する・・・彼女の真実とは何かと読者に問う。回答は4種くらい考えられるが、オーソドックスに「瓶詰の地獄」と同じ発想か? ⑥一足お先に 8点 片足を切断した主人公はその足が勝手に歩き回る夢を見る。そして殺人が。果たして現実の事なのか、夢なのか?・・・本編は「ドグラ・マグラ」に似ている ⑦冗談に殺す 6点 新聞記者の主人公は女優のサディスティックな趣味を見、完全犯罪で彼女を殺そうとする・・・完全犯罪をぶち壊したものは思いもよらない○であった。 著者の世界は、幻想と現実の境の曖昧さにあると思います。その世界を知らず、『ドグラ・マグラ』を読んだのが失敗だったと反省(苦笑)。これらの短編集を読んでからであれば、その評価は違っていたと思いました(よって評価変更)。 |
No.832 | 5点 | ラ・ロンド 服部まゆみ |
(2015/11/26 09:21登録) 内容は、副題にあるとおり「恋愛小説」です。展開がミステリアスといえるのかも。よって、ミステリーとしてのサプライズを狙った作品ではないと思います。といっても、それなりのオチはありますが・・・。著者が最後に上梓した連作集。 ①「父のお気に入り」・・・劇団女優・妙子は33歳。学生の孝と愛し合うようになるが、舞台で裸を晒したことから二人の仲に溝が。そんな折、孝は中学の同級生と偶然出会い、彼女のうなじにセックスアピールを感じていたことを思い出し・・・。 ②「猫の宇宙」・・・売れない画家・克己は兄・哲学教授より人生の敗北者とレッテルを張られていた。そこへ姪の藍が転がり込んでくる。藍は克己に魅かれてゆくのだが・・・。 ③孝は藍から、妙子と克己が付き合い始めたと相談される。交差する愛情劇は・・・。 |
No.831 | 6点 | 時のかたち 服部まゆみ |
(2015/11/25 07:51登録) 「BOOK」データベースより~『移ろいゆく時を画家の感性で捉えた珠玉の短編、密室・アリバイ・暗号・アナグラム・プロバビリティの犯罪…とさまざまなミステリ的アイディアに満ち満ちた服部まゆみのミステリ・ワールド。』 とありますが、ミステリ的アイデアより、心の機微、綾を中心に描いた作品のように思います。トリッキーさでは表題作「時のかたち」が印象的で、長編で読んでみたかった作品ですね。以下簡単な紹介 ①「怪奇クラブの殺人」・・・大学入学の下宿を祖父宅に求めた僕。祖父は資産を怪奇趣味に投じ、自宅に怪奇博物館まで設立しようとする。それを阻止しようとする人々が・・・ ②葡萄酒の色・・・軽井沢に住む私(翻訳家)の元に、転がり込んできた冴えない画家の友人。しかし、彼と私の兄の婚約者との間に何か秘密が?。私は彼に嫉妬しているのか? ③時のかたち・・・久ぶりの旧友からの手紙。彼の住む元ホテルを訪れた流行作家の私。14年前のホテルの火事以来である。その時は後始末の手伝いを断られ追い返させられたのだ・・・ ④桜・・・崖から脚を滑らせ転落死した叔母の葬式の日、夫である叔父は小さな男の子を「これはわしの息子だ」と愛人とともに親戚一同に引き合わせた。そして叔父の死。密室殺人のように見えるのだが・・・。 |
No.830 | 8点 | レーン最後の事件 エラリイ・クイーン |
(2015/11/23 08:02登録) 倉知淳氏による「レーン四部作のオマージュ作品」が発売になったようです。原作を読んでいないとお話にならないとの思いで手に取りました。四部作の最終話として相応しい内容でしたね。ただ、単独作品としてみれば、まあ普通の作品といったところでしょうか?。謎の文字が専門家の鑑定でも不明とは、思わず苦笑してしまいました。やはり、四部作全体で、本作の価値が決定されるような気がします。シェークスピア俳優であったレーンにシェークスピアに関する謎を提示したことや、「Yの悲劇」を本作への大伏線としていることなど感心する点が多かったです。感動も添えてもらいました。 |
No.829 | 6点 | 悪魔パズル パトリック・クェンティン |
(2015/11/20 13:15登録) 裏表紙より~『ふと目覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝ている。自分の名前も、ここがどこかも、目の前の美女が誰かもわからない。記憶喪失。あなたはゴーディよ、わたしの息子よ、と言う女。自分はゴーディという名らしい。だが、何かがおかしい。なぜ女たちは自分を監禁し、詩を暗唱させようとするのか…。幾重にも張りめぐらされた陰謀。ピーター・ダルース、絶体絶命の脱出劇。“パズル・シリーズ”第五作』~ あらすじからもわかるように、記憶喪失者は主人公ピーターであり、「私は誰?」的なサスペンスではありません。なぜ、ゴーディの身代わりをさせられるのかという謎で引っ張ってゆきます。その展開は楽しめました。ゴーディの妻セレナの造形がいい。手足をギブスで固められた本当の理由にはニヤッとさせられます(謎とはあまり関係ないのですが・・・)。 |
No.828 | 5点 | 致死量未満の殺人 三沢陽一 |
(2015/11/17 09:22登録) 題名ってつくづく難しいものだと思いました。旧題は「コンダクターを撃て」ですが、これはある意味絶対ダメですね。「致死量未満」もいかがなものか(苦笑)。序章と題名で大筋が読めてしまいました。人間うんぬんは気にならなかったのですが、やはり毒殺トリックにリアリティ(完璧なものを求めるわけではありませんが)を感じられなかったことが惜しい点です。アイデアは買いますが・・・。 |
No.827 | 5点 | ボトムズ ジョー・R・ランズデール |
(2015/11/15 13:17登録) ミステリーというより、少年成長物語・家族物語の要素が強い作品です。背景に人種差別問題が流れるというならまだ良いのですが、本作は前面に出てきます。よって、ミステリーを読もうとしていた、または、期待していた自分にとって、かなり違和感というか、肌に合わない要素が強い作品となってしまいました。また、ちょっと長いかなとの印象も。しかし、他の書評ではかなり高評価の作品です。 |
No.826 | 7点 | 宵待草夜情 連城三紀彦 |
(2015/11/10 11:00登録) 氏らしさとは、雰囲気全体(筆づかい、ロマン性、トリッキー性等々)を言うと思いますが、私的好みはやはり、トリッキーな部分ですね。そういう意味では、「花虐の賦」「未完の盛装」が良かった。ただ「未完の盛装」における「去年の末」がしっくりこない点で減点対象となってしまいました。残念です。 |
No.825 | 6点 | 月光のスティグマ 中山七里 |
(2015/11/05 09:13登録) 「BOOK」データベースより~『この傷痕(スティグマ)にかけて俺が一生護る――。月夜に誓った幼なじみは、時を経て謎多き美女へと羽化していた。東京地検特捜部検事と、疑惑の政治家の私設秘書。追い追われる立場に置かれつつも愛欲と疑念に揺れるふたりに、やがて試練の時がやってくる。阪神淡路大震災と東日本大震災。ふたつの悲劇に翻弄された孤児の命運を描く、著者初の恋愛サスペンス!』~ 主人公(淳平)は、双子の姉妹(優衣・麻衣)と幼馴染であった。震災で生き残ったのは優衣か麻衣か、やがて疑念が浮かんでくる。恋愛サスペンスかと思いきや、中盤から潜入捜査(マネーローンダリング)やテロ遭遇などに展開してゆくので、やや違和感がありました。まあ久しぶりに政治ものを読んだので考えるところが多かったです。やはり一番は東日本大震災が二大政党化が端緒についたばかりであった日本の政治に大きな影響を与えてしまったことかも?。なお本日のニュースで「非正社員4割を超える」とありました。「労働者派遣法」について本書では「民生党」の失政となっていますが「国民党」が制定・改悪したのが原因かと(苦笑)。以上は余談ですが、全体的にはやや詰め込み過ぎたかという感じですね。でも一気読みはできると思います。 |
No.824 | 5点 | 殺人ファンタスティック パトリシア・モイーズ |
(2015/11/03 11:02登録) 裏表紙より~『メイスンは今や事業を隠退し、”地方名士として敬われる”という夢を実現するべく、片田舎クレグウェルで日々を送っていた。ある日、農園の持ち主マンシプル家を訪れた彼は、その帰途、不慮の死を遂げてしまう。目撃者によれば、故障をした車を降りたメイスンは、喚声とともに宙を泳ぐように倒れ息絶えたという。この奇妙な事件もやがて、凶器と思われる拳銃が発見され、殺人であることが決定的となるが、さっぱり糸口が掴めず、遂にティベット警部の登場を待つこととなった……。モイーズが描く、ファンタスティックな殺人の顛末!』~ ユニークな(変人・奇人といわないまでも)登場人物とティベット警部とのやり取りを楽しむ小説かも?。本格度はそれほどでもないし、題名のファンタスティックな殺人(凶悪な殺人ではない?)の意味もよくわからなかった。 |
No.823 | 6点 | 赤の組曲 土屋隆夫 |
(2015/10/30 13:30登録) 裏表紙より~『千草検事は、懐かしい友・坂口秋男の来訪をうけた。「警察署長を紹介してほしい」彼の妻が失踪したというのだ。千草は助力を約束する。坂口の妻らしき女性が、長野の温泉を訪れたという情報が入るが、その女性も失踪してしまう。犯人が残す「赤い」謎―。論理と直感が絡まり合い、ひきたて合い、鮮やかな結末を紡ぎ出す本格推理小説。』~ 題名や目次にある「赤」に期待し過ぎたのか・・・。それほどの謎ではなかったのが残念。方言の扱い並びに刑事宅でのエピソードから解決への流れは光っていました。 |
No.822 | 5点 | 奇術師の密室 リチャード・マシスン |
(2015/10/28 00:06登録) 裏表紙より~『往年の名奇術師も脱出マジックに失敗し、いまは身動きできずに小道具満載の部屋の車椅子のうえ。屋敷に住むのは、2代目として活躍する息子とその野心的な妻そして妻の弟。ある日、腹にいち物秘めたマネージャーが訪ねてきたとき、ショッキングな密室劇の幕が開く! 老奇術師の眼のまえで展開する、奇妙にして華麗、空前絶後のだまし合い。息も継がせぬどんでん返しの連続。さて、その結末やいかに─鬼才マシスンが贈る、ミステリーの楽しさあふれる殺人悲喜劇。 』~ 密室とありますが、密室トリックものではありません。マジックルームという一室で繰り広げられる劇です。語り部は、車いすで動くことも、しゃべることもできませんので、ある意味観客みたいなものです。ユーモアあふれる語り部、バカバカしい?トリックの繰り返しということで、ユーモアミステリーに分類されるのかも。 |
No.821 | 4点 | 禁断の魔術 東野圭吾 |
(2015/10/28 00:03登録) 裏表紙より~『高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作!』~ 『禁断の魔術』(2012)所収の「猛射つ」を大幅に加筆・改稿したもの~2015版~で拝読。残念ながら人間ドラマを感じることはできなかったし、内容もありきたりのものでした。 |
No.820 | 8点 | 死のドレスを花婿に ピエール・ルメートル |
(2015/10/23 11:32登録) 裏表紙より~『ソフィーの目の前に転がる男児の無残な死体。ああ、私はついに人を殺してしまった。幸福だった彼女の破滅が始まったのは数年前。記憶にない奇行を繰り返し、彼女はおぞましい汚名を着て、底辺に転落したのだ・・・。ベストセラー『その女アレックス』の原点。あなたの心を凍らせる衝撃と恐怖の傑作サスペンス。』~ 解説(千街晶之氏)にもありましたが、「その女ソフィー」が相応しいか?。題名は本格物であると、やや問題がありそうですが、まあ、サスペンスものなので・・・(苦笑)。第2章に入り、「えっ、そんなのありなの?」と唖然としてします。サイコ系サスペンスがお好きな人にお薦めのフランスミステリーです。 |
No.819 | 8点 | 悪女パズル パトリック・クェンティン |
(2015/10/20 13:35登録) 1945年作品。離婚を考える3組の夫婦、婚約者カップル2組、そして主人公ダルース夫婦の計6組の男女が織りなす愛憎劇か?!・・・。プロットはシリーズで一番と思えるほど非常に優れていますね。第2、第3の事件は、○○殺人(私にとっては初物)という本作品の”肝”であると思います。よって、どんでん返しへの伏線として、非常に重要な事件であると感じました。ダルース夫婦シリーズで8点評価が3作品となりましたが、順位は「悪女パズル」>「俳優パズル」>「女郎蜘蛛」です。 |
No.818 | 7点 | サイモンは誰か? パトリシア・モイーズ |
(2015/10/16 21:51登録) サイモンは誰か?(どちらか?)という謎で引っ張っていきます。前半は、サスペンス色の強い展開です。そして、思いもよらないサプライズが用意されています。満足(笑)。後半は、殺人事件の犯人探しで本格的な展開となります。よって、2度楽しめたという気持ちです。 |
No.817 | 5点 | 夜歩く ジョン・ディクスン・カー |
(2015/10/14 19:38登録) 密室・○○○○○トリックは、それほど感心するものではなかった。しかし、サイコキラー系は割と好きなので、最後の一行(犯人の言葉)は結構気に入りました。 |
No.816 | 4点 | 大絵画展 望月諒子 |
(2015/10/11 15:29登録) 「BOOK」データベースより~『ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。』~ 絵画ものは、どうしても贋作がらみとなり、既視感がぬぐえない。ストーリー展開(コンゲーム)も新鮮味は感じられなかった。 |
No.815 | 7点 | マーチ博士の四人の息子 ブリジット・オベール |
(2015/10/09 09:49登録) 裏表紙より~『医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。』~ 1992年のサスペンス作品。この手のトリッキーな作品は好みなので高評価としました。殺人者とメイドの交換日記的な展開なのですが、やや長いのが玉に瑕。中編で良かったかも。 |
No.814 | 7点 | だれがコマドリを殺したのか? イーデン・フィルポッツ |
(2015/10/06 16:22登録) 1924年の作品。愛憎劇はじっくり描かれており退屈はしなかった。サプライズは用意されており、面白いと思いますが、やはり時代性を感じる。トリックはやや古いパターンの部類かな?。消去法でいくと、こういう結果にならざるを得ないのですが、三人称形式では、ややアンフェアか?と思われる部分も・・・。といいつつも7点を献上(笑)。 |