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ミステリの祭典

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悪魔パズル
ダルース夫妻

作家 パトリック・クェンティン
出版日2010年05月
平均点5.67点
書評数6人

No.6 6点 E-BANKER
(2024/04/29 13:27登録)
ピーター・ダルースとその妻で大女優アイリスの夫婦コンビが活躍する「パズルシリーズ」の中のひとつ。
正直、あまり記憶になかったのだけど、「迷走」「俳優」「悪女」(それぞれ・・・パズルが付く)とシリーズ最終作の「女郎ぐも」は既読。
ということで久々の同シリーズということになる(かな)。1946年の発表。

~ふと目覚めると、見知らぬ部屋のベットに寝ている。自分の名前も、ここがどこかも、目の前の美女が誰かも分からない。記憶喪失。「あなたはゴーディよ、わたしの息子よ。」という女。自分はゴーディという名前らしい。だが、何かおかしい。なぜ女たちは自分を監禁し、詩を暗唱させようとするのか・・・。幾重にも張り巡らされた陰謀。ピーター・ダルース、絶体絶命の脱出劇~

うん。想像よりは面白かった、というのが率直な感想。
何だか作者に失礼な書き方だけれど、最初に触れたように、今まで四作品読了したはずの本シリーズについて、殆ど記憶に残ってないということは・・・って考えてしまっていた。

他の方も書かれているとおり、本作は「謎解き」よりも、ダルースがいかに脱出できるかというサスペンスの方に重きが置かれている。
ただし、謎解きについてはスルーかというと、そういうわけではなく、なぜダルースがこういう目にあっているのかという「大きな謎」がプロットの軸にはなっている。
で、要は、最終的な真相が「裏」なのか「裏の裏」なのか、はたまた「裏の裏の裏」なのか、ということになる。
登場する「美女」は三人。母と妻と妹。いったい誰が味方で、誰が敵なのか?
そこは当然、最終章で明らかになるのだけど、「まぁそうなるよねぇ」という程度の捻り方。そこは、まぁ2024年現在の目線ではちょっと物足りない。
タイトルどおり誰が「悪魔」なのか、これについては作者らしい「企み」が効いていて、当時なら「ヤラレた感」が強かったのだろうな。

評価としては、どうかなあ?
魅力的な道具立てが揃った舞台が用意されていた割にはインパクトが弱い、ととるのか、よくまとまっていてそれなりにサスペンスも感じた、ととるべきなのか。
個人的には「その中間」だな。だからこの評点。
(しかし、いつも美女に囲まれて、モテる役どころなんだなぁー。それがなんか腹立つ!)

No.5 6点 蟷螂の斧
(2015/11/20 13:15登録)
裏表紙より~『ふと目覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝ている。自分の名前も、ここがどこかも、目の前の美女が誰かもわからない。記憶喪失。あなたはゴーディよ、わたしの息子よ、と言う女。自分はゴーディという名らしい。だが、何かがおかしい。なぜ女たちは自分を監禁し、詩を暗唱させようとするのか…。幾重にも張りめぐらされた陰謀。ピーター・ダルース、絶体絶命の脱出劇。“パズル・シリーズ”第五作』~

あらすじからもわかるように、記憶喪失者は主人公ピーターであり、「私は誰?」的なサスペンスではありません。なぜ、ゴーディの身代わりをさせられるのかという謎で引っ張ってゆきます。その展開は楽しめました。ゴーディの妻セレナの造形がいい。手足をギブスで固められた本当の理由にはニヤッとさせられます(謎とはあまり関係ないのですが・・・)。

No.4 6点 HORNET
(2014/12/20 15:48登録)
 クェンティン作品は初読なのだが、ここまでの書評を見る限り、代表作「パズルシリーズ」とはいえその中でも特殊なものを最初に読んでしまったようだ。まぁ、ピーター・ダルースがピーター・ダルースでない状態ですべてが進む体なので、読んでいてそういう感じがしたが。
 記憶喪失になり、ゴーディという人物にさせられたピーター・ダルースが、その背景は何なのか、自分の味方は誰なのかを探っていく中で恐ろしい企みが暴かれていく。登場人物がそう多くなく、物語の舞台もお屋敷だけなので、シンプルで読みやすく混乱はない。よって推理もしやすい話で、古き良きミステリという感じがした。

No.3 5点 こう
(2011/03/21 23:57登録)
先にkanamoriさんがご指摘されているようにパズルシリーズではありますが内容はスリラーで拍子抜けしました。
 記憶喪失テーマではありますが我々にははじめから正体がわかっており全体の構図もページ配分を考えれば想像しやすいです。
 結局犯人たちの目論見も杜撰であり記憶喪失患者が見つかるというのもそもそも大分ご都合主義です。(少しネタバレですが)ギブスの所は伏線でありましたが本当に〇〇させていればすむわけでそういう意味でも杜撰でした。
 正直後のホイーラー単独のサスペンスの力作に比較しても大分落ちる印象ですがこの前作が悪女パズルだったことを考えるとkanamoriさんもおっしゃっているように作風を変化させるターニングポイント的な作品だったんだろうなと思います。
 今後パズルシリーズの復刊、新訳が出ることはあまり期待は持てないかもしれないので出来はともかくパトリック・クェンティンが読めたこと自体は嬉しかったです。女郎ぐもだけでも復刊してほしいです。 
 尚あとがきはネタバレとはいかなくても前4作でのピーターの推理に触れており稚拙な内容です。手に入るものとしては先に悪女パズルを読んでおいた方が無難かと思われます。

No.2 5点 kanamori
(2010/06/28 21:54登録)
ダルース夫婦シリーズの第5作。
原題は”Puzzle for Fiends"でパズルシリーズの一作ですが、パズラーとは言えません。
ある事が原因で記憶喪失になったピーターがフレンズという一家に軟禁されるというスリラー風の作品で、物語の様相がある程度見えやすくなっているためサスペンスに欠けるきらいがあります。
本作から大きく作風が変化した節目の作品と言えそうです。

No.1 6点 nukkam
(2010/06/16 19:14登録)
(ネタバレなしです) 後年(ウエッブが引退してホイーラー単独執筆時代)にはサスペンス小説路線へと切り替わる作者ですが、1946年発表のダルース夫妻シリーズ第5作(といっても実質はピーターのみの登場作品)の本書においても本格派推理小説よりサスペンス小説の要素が色濃く表れています。前半は陰謀に巻き込まれた(らしい)主人公がたっぷりと描かれ、中盤からは犯罪小説風な展開になり退屈させませんが謎解きの醍醐味は希薄です。最後は推理も披露されて謎解き伏線も回収されますが犯人の正体が判明してからの後出し気味の感があります。よくできた作品ですが個人的な好みの点では「俳優パズル」(1938年)や「悪女パズル」(1945年)の方に軍配を上げます。

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