蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1693件 |
No.953 | 4点 | 悪魔の降誕祭 横溝正史 |
(2016/08/10 08:15登録) 表題作のみの評価。金田一への相談者が誰もいない事務所で毒殺される。うーん、これはどうでしょう?偶然であり、ご都合主義では?。なお、残された新聞の切り抜きの謎はいいと思います。続くクリスマスパーティでの殺人事件の方法は、絶対?わからないでしょう(苦笑)。ラストは有名作品を連想してしまうし、トリックもオリジナリティがあるとは言えず残念です。 |
No.952 | 3点 | 貸しボート十三号 横溝正史 |
(2016/08/10 08:12登録) 表題作(原形である短篇)のみの評価。不自然な2遺体の謎が提示され、調査の結果、ある証言を得たところで「賢明な読者なら、おおよその真相はおわかりだろう」と解決篇へ。短かすぎやしないか?と思いましたが、その後大幅改稿されたようです。超短編のため期待した金田一の活躍はありません。なお、本作品のモチーフ先例(1931年)があり評価はあえて低目としました。 (追記) モチーフの先例作品が文庫化されました。その紹介文~「ボート上で発見された男女の遺体。事件の真相を追及するべく、NY市警察本部長のサッチャー・コルトが捜査にのりだす!金田一耕助探偵譚「貸しボート十三号」の原型とされる作品の完訳!」つまり翻案でしたね。 |
No.951 | 6点 | 学寮祭の夜 ドロシー・L・セイヤーズ |
(2016/08/02 13:32登録) (英ベスト4位・米ベスト18位)裏表紙より~『探偵作家ハリエットは醜聞の年月を経て、母校オクスフォードの学寮祭に出席した。するとその夜、けがらわしい落書きを中庭で拾い、翌日には嫌がらせの紙片を学衣の袖に見つける。幻滅の一幕。だが数ヶ月後恩師から、匿名の手紙と悪戯が学内に横行していると訴える便りが…。学問の街を騒がせる悪意の主は誰か。ピーター卿の推理は?』~ ミステリーよりも文学的要素の強い作品でした。自立する女性論的なもの、結婚観に関するもの(「毒を食らわば」以来のピーター卿とハリエットの関係)、私小説的な内容のもの(探偵小説論や学術研究など)が、事件と絡まって描かれています。よってミステリー(事件らしい事件)を期待すると、正直どうでしょうか?といったところです。 たまたま、「ゴルフ場殺人事件」(アガサ・クリスティー氏)でのヘイスティングスの恋を読んだ後なので、両著者の恋愛観の相違がよくわかりました。クリスティー氏は激情型(一目ぼれ型)、セイヤーズ氏は慎重型か?。 解説によれば、「(要約)ハリエットという自尊心を備えた一人の女性と結婚させるためには、ピーター卿もそれなりの性格を持たねばならず、その性格造形に時間を要したということのようだ。たかが探偵小説の登場人物を描くのに、何を大袈裟な、と考える人には本作は無縁な作品であろう。」そうかもね(苦笑)。 |
No.950 | 6点 | ゴルフ場殺人事件 アガサ・クリスティー |
(2016/07/31 07:09登録) この時代(1923年)で、このような複雑なプロットを考えたついたことに敬服。しかし、前半に提示される謎が小さく細かいもので、かつ数が多いので、やや読みにくい?。これは、ポアロの着眼点を引き立たせるものではあるのですが、カットしても良かったかも。また、基本構想(メイントリックとなりうる)がうまく機能しなかった感じがしました。つまり、その部分がなくても物語は成立してしまっている。この部分が機能していれば、かなりの傑作になっていたかも?。なお、「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)の中で、作中のトリックが、発表より約10年後にアメリカの超有名古典作品へ・・・とあり、X、Yに応用されているのか?と期待したのですが、該当するトリックはありませんでした。本作におけるチョットしたトリックであり、「三つの棺」に応用されているのですが、騒ぐほどのものではありませんでした(苦笑)。 |
No.949 | 5点 | 猟人日記 戸川昌子 |
(2016/07/28 21:45登録) 時代(1963年)を考慮しても、ミステリー(サスペンス)としては弱い感じがします。まず、目次を見て結末がおおよそ判ってしまうのは、いかがなものか?。トリックも、大御所の作品(1958年・未読)にあるらしいので、先駆的とも言えず・・・。ドンファンが追いつめられていく心理をもう少し描いてくれたらなあと思いました。 |
No.948 | 5点 | 死仮面 折原一 |
(2016/07/27 10:29登録) 裏表紙より~『「君と一緒にいて幸せだったよ」と言い遺して急死した十津根麻里夫。彼が勤めてた高校に「妻」の雅代が連絡すると、「そのような名前の教師はおりません」と言われる。「夫」は名前も身元も偽っていたのだ。正体は何者なのか?それを解く手がかりは、大学ノートに残された小説のみ。失踪した中学生の少年を救うために、同級生四人組が、マリオネットの仮面の男に立ち向かう物語だった――。』~ 構成面では「匣の中の失楽」(竹本健治氏)、夢か現実か?的な部分では「ドグラ・マグラ」(夢野久作氏)を意識したのかも?。内容は全く違いますが、「ぶーん、ぶーん、ちゃかぽこ、ちゃかぽこ」などの表現も出てきましたし・・・(苦笑)。読書Mでは、結末がスッキリしない、モヤモヤ感が残るとの評が多いですね。しかし、ある登場人物の後日談が語られない点を考えれば、この物語の全体像が浮かび上がってくると思います。 |
No.947 | 5点 | 猫と鼠の殺人 ジョン・ディクスン・カー |
(2016/07/25 15:37登録) 裏表紙より~『猫が鼠をなぶるように、冷酷に人を裁くことで知られた高等法院の判事の別荘で判事の娘の婚約者が殺された。現場にいたのは判事ただ一人。法の鬼ともいうべき判事自身にふりかかった殺人容疑。判事は黒なのか白なのか? そこへ登場したのが犯罪捜査の天才といわれる友人のフェル博士。意外な真犯人と、驚くべき真相を描くカーの会心作』~ 脱力系でした。ラストでのフェル博士の行動の意味が全く理解できませんでした。銃撃については、相当の出血があると思われますが、血痕につき一部記載あるのみで、現場状況から見てかなり不自然です。登場人物がこの点に触れないのは???。また娘の不可解な証言(庇うなら黙っていた方がよい)も納得いかなかったです。まあ、展開は楽しめましたし、ロマンスもあったので甘目の採点となりました。 |
No.946 | 6点 | ハンマーを持つ人狼 ホイット・マスタスン |
(2016/07/24 14:06登録) 裏表紙より~『ハンマーを手に女性を襲う兇悪な通り魔を追及する警察は、ついにおとりとして婦人警官を起用することになった。しかし、その警官は警戒の裏をかいた犯人に襲われ、夫とともに殺害されてしまう。同僚の死にふるい立つ婦人警官たちの必死の捜査もむなしく、事件は暗礁にのりあげたかに見えたが・・・。警察小説の名手が婦人警官を主人公に新風を吹きこんだ、緊迫感あふれるサスペンス!』~ 逢坂剛氏推薦の一冊。題名からするとサイコ系を想像しますが、丁寧な語り口の警察小説です。犯人の策略に翻弄される警察官コンビのロマンスも邪魔にならず心地よい。 |
No.945 | 6点 | 鬼畜の家 深木章子 |
(2016/07/22 19:03登録) 読み易いし、内容も面白い。しかし、若干白けてしまう部分もあった。年齢的なもの(早熟)と探偵が出来過ぎか?。 |
No.944 | 9点 | そして誰もいなくなった(戯曲版) アガサ・クリスティー |
(2016/07/19 17:05登録) 「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)で、結末が原作と違う「戯曲版」があることを知り、手に取りました。180ページと短いのですが十分楽しめました。ラストも納得です。原作を読んで、劇場に足を運んでくれる人のためにラストを変更したみたいですね。解説によると、原作の方の童謡のラストをクリスティー氏が変更したとのことです。 |
No.943 | 6点 | メビウスの守護者 川瀬七緒 |
(2016/07/17 17:11登録) 虫暮部さんへ~大変失礼しました。掲示板(雑談・足跡)に記載しました。 内容紹介より~『東京都西多摩で、男性のバラバラ死体が発見される。岩楯警部補は、山岳救助隊員の牛久とペアを組み捜査に加わった。捜査会議で、司法解剖医が出した死亡推定月日に、法医昆虫学者の赤堀が異を唱えるが否定される。他方、岩楯と牛久は仙谷村での聞き込みを始め、村で孤立する二つの世帯があることがわかる。息子に犯罪歴があるという中丸家と、父子家庭の一之瀬家だ。──死後経過の謎と、村の怪しい住人たち。残りの遺体はどこに!』~ 主人公の法医昆虫学者と司法解剖医が出した死亡推定月日の差異については、前半での山場とは認めつつも、ページを割き過ぎた感があります。全体的に本格っぽい展開ですが、理詰めでの解決ではありません。といってサスペンスフルな展開か?と問われるとそうでもない・・・。評価が難しいですね。気に入った点は、かなりブラックな「動機」に関してでした。 ☆★☆★☆お願い事です☆★☆★☆ 本サイトの『はじめに』に記載されている*ルール*(管理人さんの意向~皆さんが楽しく過ごせるよう~)を守って書評されますようお願いします。(掲示板に記載すべき事項ですが、あえてこの欄を利用させていただきました。よろしくお願いします。) |
No.942 | 7点 | さらばその歩むところに心せよ エド・レイシイ |
(2016/07/16 14:04登録) 逢坂剛氏推薦の一冊。倒叙ものなので、犯人はうまく逃げ切るのか?それとも逮捕?または悲劇的な最期を迎えるのか?などというイメージで読み進めたのですが、いい意味でその期待は裏切られました。途中での違和感は、やはり伏線だったのですね(笑)。 |
No.941 | 5点 | アクロイドを殺したのはだれか 評論・エッセイ |
(2016/07/11 13:26登録) 「BOOK」データベースより~『アカザ・クリスティーの代表作として、またミステリー史上最大の問題作として知られる『アクロイド殺害事件』の犯人はその人物ではない―文学理論と精神分析の専門家バイヤール教授が事件の真相に挑戦、名探偵ポワロの「妄想」を暴き出し、驚くべき(しかし十分に合理的な)真犯人を明らかにする。「読む」ことの核心に迫る文学エセーとしても貴重なメタ・ミステリー。』~ 真犯人はなるほどと思える人物ですね。内容的には、その他の作品のネタバレが随所にあり、読者を選ぶ評論です。特に「カーテン」の章があり、私は未読なのでこの部分は飛ばさざるを得なかった(苦笑)。フロイトなどのやや小難しい理論を展開する部分もあり、十分理解したとは言えなかった。 |
No.940 | 4点 | 黒と愛 飛鳥部勝則 |
(2016/07/10 10:11登録) 裏表紙より~『奇妙に傾く狂気の城、奇傾城―血と内臓と腐肉が主題の絵画が集う一室に幽霊が出没する噂がたち、“探偵”亜久は心霊特番に協力して城を訪れる。遅れて“霊能リポーター”役の女子高生、全身黒服の少女・黒が現れ、亜久にそっと囁いた。「あなたは、鋏が好きですか」…やがて密室状況で、黒と親しい男がくだんの部屋で首を切断された。これは幽霊の凶行か?呪わしく美しい純愛(変愛)本格ミステリ。』~ ツイッターベスト100の83位、読書Mでも高評価なので手に取りましたが、肌に合わず残念。純愛(恋愛)ものではありませんでした。序幕で「彼女は、両の肩から手首まで、びっしりと―」とあり、以前「ラミア虐殺」(低評価)を読んでおり、その続編か?と嫌な予感。主人公の女子高校生・黒に全く魅力がないので感情移入できず(登場人物の数人が彼女に魅了されるのですが・・・)。構成(犯人拘束の章→犯人の前日談の章)は奇をてらったものですが、果たして効果的であったかどうか疑問。その章に仕掛けがあるのですが、伏線が弱すぎアンフェア気味でしたね。動機も良くわからないし、犯人がそんなところにいていいんですか?と突っ込みどころが多し(苦笑)。 |
No.939 | 5点 | 名探偵に薔薇を 城平京 |
(2016/07/06 17:39登録) ATB本格ミステリベスト100の24位(2015.4ツイッター上でファン150名が投票、一人10作品で1位10点~10位1点での集計)結構評価が高いですね。真相へのどんでん返し(推理の過程)が高評価なのか??。推理は根拠があるわけでなく仮定の話(多重解決)で、どうも好きになれません(苦笑)。どちらかというと告白など後出しの感が強い。一番気になったのは名探偵の悩みです。その結果、暗い探偵像になってしまって感情移入できませんでした。なお、動機のついての前例有無については全く問題ははないと思います。 |
No.938 | 6点 | 王女マメーリア ロアルド・ダール |
(2016/07/01 09:47登録) 裏表紙より~『17歳の誕生日の朝、王女マメーリアは鏡に映った自分の顔に愕然とした。不器量な少女が、一晩で眼もくらむような美女に変身していたのだ。彼女は美しさゆえに絶大な力を身につけるが、かわりに優しい心を失っていく。やがて、マメーリアの傲慢さは彼女を不幸な運命へ導くが…大人のための寓話である表題作の他、鮮やかで洒落た結末や残酷な味など偉大なストーリーテラーのすべてが堪能できる九篇。日本オリジナル短篇集。』~ 「古本屋」(ベスト)・・・裏家業があるのだが、それが何だかわからない。読者はイライラさせられるが、ラストでやっとそれが判明する。なるほど、そういうこと、~では終わらずもう一捻り。 「ヒッチハイカー」(次点)・・・変わった職業の人間を乗せてしまう。そしてスピード違反で捕まってしまう。その職業には思わず笑ってしまう。 「ボティボル氏」(特別賞)・・・レコードを聴くと、作曲家や指揮者になりきってしまう変人。短篇でありながら、その演奏場面は臨場感あふれるものがある。余談~この主人公は極端にアスパラガスに似ている。下から上へ先細りにのび、てっぺんは禿げ頭。巻末の著者自身の写真に実に似ているのである(笑)。 |
No.937 | 5点 | 殺人者の街角 マージェリー・アリンガム |
(2016/06/29 18:32登録) 裏表紙より~『その男は一人また一人、巧妙に尊い命の灯を吹き消してゆく。だが、ある少女の登場を端に、男は警察から疑いをかけられることに…。寂れた博物館、荒れ果てた屑鉄置場―人々から置き去りにされたロンドンの街角を背景に、冷酷な殺人者が追いつめられる。英国黄金時代の四大女性探偵作家のひとり、アリンガムのシルバー・ダガー賞受賞作品、初の完訳。』~ 倒叙物に近い作品です。サスペンスとしては弱い感じがしました。活躍する中心人物が不在といった印象で、主人公が誰なのか明確でなかった。結局、伯母の犯人に対する感情や意識などを描きたかった作品とは思うのですが、その点が伝わってこなかった。 |
No.936 | 7点 | ある詩人への挽歌 マイケル・イネス |
(2016/06/27 10:58登録) 序盤の読みにくさは我慢するしかない?。真相に至る構図は面白い。江戸川乱歩氏による1935年以降のベスト10の一冊。あとは、「殺意」「伯母殺し」「判事への花束」「クロイドン発十二時三十分」「野獣死すべし」「大いなる眠り」「十二人の評決」「検屍裁判」「幻の女」 |
No.935 | 3点 | ウサギ料理は殺しの味 P・シニアック |
(2016/06/20 13:20登録) 裏表紙より~『レストランのメニューにウサギ料理が載ると若い女が殺される!女占い師と彼女にほどこしを受けるホームレス、ウサギ料理が好きな男、金ではなく高級商店の新入荷品で上客を取る娼婦。絡み合う人間関係。ある日、「ウサギ料理をメニューに載せるな」という脅迫状がレストランに届く。この町に何が起きているのか?とてつもないブラック・ユーモアが横溢する仏ミステリの傑作。』~ フランスミステリーの一番人気とのことで手に取るも、まったく相性が合わなかった。トホホ・・・。まず、フランス人の名前が覚えきれない、そして前半はかなり退屈。6件も事件は起きているのですが、単に殺されたということだけで調査の記述もなく、ただ町の人物の行動を紹介する、その繰り返しです。まあこの辺が伏線らしきものになっているのですが・・・。怪作と褒めるような評もありますが、どちらかと言えば「バカミス」の類になるのか?。 |
No.934 | 6点 | 羊たちの沈黙 トマス・ハリス |
(2016/06/18 06:38登録) (東西ベスト第9位)ジョディ・フォスター監督が映画宣伝(マネーモンスター)の為来日。女優業としては、本作「羊たちの沈黙」が彼女の代表的な作品となるのでしょう。映画の印象が強く残っており、中々手に取りづらいものがありました。ベスト10作品でありながら、本サイトで書評数が少ないのは同様の理由からなのかもしれません。いま一つ高評価をつけづらかったのは、物語の配分かな?。エピソードが分散されてしまった印象です。レクター対クラリス、および犯人対被害者の緊迫した場面をもっと多く中心に、と期待したためです。 |