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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.920 6点 消されかけた男
ブライアン・フリーマントル
(2016/05/17 19:07登録)
(タイトル・男13冊目)2012版東西ベストではランク外となっています。なんとなく頷けます。スパイ物としての緊張感やスピード感に物足りなさを感じました。ラストの展開がサプライズという作品。


No.919 5点 誰かが泣いている
デイヴィッド・マーティン
(2016/05/14 17:45登録)
裏表紙より~『ピューリッツアー賞を受賞し視聴者の信頼も厚いニュース・キャスターのジョン・ライアン。ある日、彼は幼児虐待のニュースを読みながら涙を抑えることができず、結局番組を降番。その直後ライアンは、自宅前で黒人女性から奇怪なメッセージを手渡される。だが女性は彼の目前でタクシーに飛び込み自殺。衝撃をうけるライアンは、真相を掴もうと田舎町ハメルンへ向かう。そして、そこには18人もの赤ちゃんの殺害を噂される謎の小児科医キンデルがいた…。』~

主人公をはじめエキセントリックな人物ばかりで、ついて行くのが大変でした。グロテスクな描写やクレイジーな行動が大筋を占め、読後ドッと疲れが・・・(苦笑)。赤ちゃん殺害(噂)の真相は、ショッキングなものです。この点は高評価なのですが、物語の構成、リーダビリティにやや難があるような気がします。前作「嘘、そして沈黙」が好過ぎたのかも。


No.918 8点 嘘、そして沈黙
デイヴィッド・マーティン
(2016/05/13 08:12登録)
裏表紙より~『ワシントン郊外の邸宅で、実業家ジョナサン・ガエイタンが血まみれの死体で発見され、自殺と断定された。しかし、捜査にあたったキャメル刑事は、実業家の妻メアリーに秘密の匂いをかぎとった。彼女は前夜、邸宅に侵入した男の存在を隠しているのだ。その殺人狂の男フィリップは近くのモーテルに身をひそめ、次々と陰惨な殺人を引き起こし、事件は意外な展開を見せてゆく―。「『サイコ』『羊たちの沈黙』の伝統を受け継ぎ、新時代を築く傑作!」と絶賛されるD・マーティンのサイコ・スリラー問題作。』~
サイコ・キラー系なのでグロテスクな描写はありますが、素直に面白いと言える作品でした。人物造形(刑事、被害者?の妻、殺人鬼)は緻密でうまいと思います。殺人鬼については、少し頭が弱くドジなところがあるというところが若干の救いか・・・。ユーモア、ペーソスを取り混ぜ、自殺か殺人かという謎で引っ張て行きます。真相はこれに近いものは数作品ありますが、厳密な意味では初物でした。伏線はあるのですが、当然判りませんでした(苦笑)。ラストで題名(原題・邦題とも)の意味がわかります。エピローグでの粋な計らいが、人間ドラマ的な印象を与えてくれました。


No.917 6点 ブラジルから来た少年
アイラ・レヴィン
(2016/05/10 12:13登録)
アイデアはいいと思います。ただし、謎や題名の意味が中盤で判ってしまい、もったいなかったですね。もっと引っ張れば、もっと楽しめたのに・・・。裏に流れるテーマは「ローズマリーの赤ちゃん」と同じなのかも。○○の赤ちゃんと本作の少年たち。


No.916 5点 裁くのは誰か?
ビル・プロンジーニ
(2016/05/08 13:52登録)
米大統領選に因んで・・・。内容については、基本的に否定派ですが、サスペンスものなので容認(苦笑)。それらしきオチの後に更にとの二重落ちは楽しめました。本書評によれば森博嗣氏が本作(1977年、翻訳1992年)を絶賛しているとのことですが、氏が1999年に発表した作品で本モチーフを用いていたということで納得。


No.915 6点 クリーピー
前川裕
(2016/05/06 13:42登録)
裏表紙より~『大学で犯罪心理学を教える高倉は、妻と二人、一戸建てに暮らす。ある日、刑事・野上から一家失踪事件の分析を依頼されたのを契機として、周囲で事件が頻発する。野上の失踪、学生同士のトラブル、出火した向かいの家の焼死体。だがそれらも、本当の恐怖の発端でしかなかった。「奇妙な隣人」への疑惑と不安が押し寄せる、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。」~
題名の「ぞっと身の毛がよだつような;気味の悪い」というようなサスペンスものとは言えません。ホラー、サスペンス、推理ものの要素をいろいろと欲張りすぎたため、全体的に薄味になってしまい物語の構成自体も中途半端な感じとなってまいました。しかし、高評価の理由は、ホラー・サスペンス系と見せかけて、読者の期待を裏切る?結構本格的要素のある真相を用意しているところです。まあ、本格ものとして身構えて読めばわかるのかも(苦笑)。


No.914 6点 目は嘘をつく
ジェイン・スタントン・ヒッチコック
(2016/05/04 13:30登録)
裏表紙より~『わたしは騙し絵画家。人の目を欺く幻影を生みだすのが仕事だ。そのわたしのもとへ、美術品収集家として名高い大富豪の老婦人がやってきた。屋敷の舞踏室に、壁画を描いてほしいのだという。しかし、屋敷でわたしを待っていたのは、十五年前に起きて迷宮入りした殺人事件の、今も消えぬ暗い影だった…読後に強烈な印象を残す、心理サスペンスの新しい傑作。』~
娘の殺人事件については、老婦人は決して話そうとしない。隠された真相は?とは別にもう一つの物語が・・・。ということで結末は予想とは大分違っていました。著者によれば、「これはミステリでも何でもない。テーマは”錯覚(イリュージョン)”だ」ということです。毛色の変わった心理サスペンスでした。


No.913 6点 呪われた女
カトリーヌ・アルレー
(2016/04/29 12:40登録)
(タイトル・女30)裏表紙より~『マリカはおびえていた。愛人の妻だった女、超心理学の大家マルトが、死してなお、彼女の生命をおびやかしているというのだ。次々に起こる超常現象は、マリカばかりでなく、その友人たちの目にも明らかだった。水泳の達者な彼女が突然溺れかけたかと思うと、知るはずもないラテン語を口にする。マリカは確かに呪われている! パリ高級住宅街を舞台にアルレーが描く傑作サスペンス。』~
前半はオカルトっぽい話であまり興味を引かれなかったのですが、殺人事件が起こる後半からはサスペンスフルで読みごたえがありました。悪女を描かせると、さすがアルレー!うまい。ラストはアルレー氏らしくないかも。


No.912 4点 ウルフェン
ホイットリー・ストリーバー
(2016/04/25 16:10登録)
裏表紙より~『ニューヨークの下町ブルックリンで二人の警官が惨殺死体で発見された。拳銃を抜く間もなく息絶えた二人の喉は鋭い牙で引き裂かれ、そのまわりには無数の獣の肢跡が。だが、その肢跡は犬のものでも、狼のものでもなかった。犯人捜査にあたったニューヨーク市警の古参刑事ジョージ・ウィルソンと、女性パートナーのベッキィ・ネフはやがて恐るべき真実をつきとめた・・・・・・・大都市ニューヨークを舞台に、斬新なアイデアで描き出す、かつてない恐怖とサスペンスの世界!』~
”徹夜本”からの一冊。前半は警察小説風で読ませるのですが、基本はホラー系で趣味に合致せず。残念。


No.911 6点 悪夢の五日間
フレドリック・ブラウン
(2016/04/24 16:52登録)
裏表紙より~『けんかしたままになっている妻のエレンがいない。そしてタイプライターにはさんであったのは、二万五千ドルの身代金請求書!つい最近の誘拐事件では、人質の人妻が殺されているのだ。ロイド・ジョンソンは二万五千ドルの金策に必死になって駆け回った。そして期限の五日目、低い、ゆっくりした男の声が電話に出た・・・・・・。悪夢の五日間をなまなましく描く、鬼才ブラウンの誘拐スリラー劇!』~
”徹夜本”から選んだ一冊。フーダニットよりも主人公の金策の様子を楽しむような作風です。最後の一行では、ホロッとしてニヤリとさせていただきました。


No.910 6点 ハーメルンの誘拐魔
中山七里
(2016/04/23 18:55登録)
~「病院からの帰り道、母親が目を離した隙に15歳の少女・香苗が消えた。現場には「ハーメルンの笛吹き男」の絵葉書が残されていた。警視庁捜査一課の犬養が捜査に乗り出し、香苗が子宮頚がんワクチン接種の副作用によって記憶障害に陥っていたことが判明する。」~
ワクチン禍に警鐘を鳴らす社会派ミステリーです。物語の展開上やむを得ない面はあるのですが、やはり誘拐ものなので、もう少し緊迫感が欲しかったですね。社会性問題を重視している作品なので、刑事・明日香の言動は、女性の立場や母性の心理を代表していることは理解できます。しかし、ミステリー的には失敗のような気がしました。まあ、真相は著者らしいと言えば著者らしいのかも。


No.909 5点 食べられた男
阿刀田高
(2016/04/21 20:17登録)
(再読)落語風からSF風までバラエティに富んだショートショート42編。ベストは「時間外労働」・・・「職場に午前4時に着かなければならない。車を飛ばし、信号無視をした途端、男が飛び出してきた。刑務所から脱走した死刑囚の男らしい。死刑囚をひき殺しても罪にならないでしょうと警官に言うのだが・・・」。表題作は”食の奇譚”として「新婚のS君は、妻に食べられる夢を見るという。そういえばS君に変化が・・・」
”食の奇譚”ランク付け
①「おとなしい凶器」(『あなたに似た人』)ロアルド・ダール氏
②「爪」(『マネキンさん今晩は』)コーネル・ウールリッチ氏
③『特別料理』スタンリイ・エリン氏
④『二壜の調味料』ロード・ダンセイニ氏
⑤「恋人を食べた話」(『お・それ・みを』)水谷準氏
⑥「親愛なるエス君へ」(『瓦斯灯』)連城三紀彦氏
⑦「特別料理」(『眼球綺譚』)綾辻行人氏
⑧「豚」(『キス・キス』)ロアルド・ダール氏
⑨「わたし食べる人」(『冷蔵庫より愛をこめて』)阿刀田高氏
⑩『食べられた男』阿刀田高氏
⑪「閏の花嫁」(『煙の殺意』)泡坂妻夫氏
⑫「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け」(『異形家の食卓』)田中啓文氏 
という結果、もう満腹です。


No.908 5点 瓦斯灯
連城三紀彦
(2016/04/21 20:11登録)
裏表紙には恋愛推理小説とありますが、ミステリー度は薄い。各物語には、それなりの反転がありますが、それよりも男女間の心の機微を楽しむといった作品集ですね。「親愛なるエス君へ」だけ異質な作品です。本作は”食の奇譚”として手に取ったものです。


No.907 5点 100冊の徹夜本
事典・ガイド
(2016/04/20 18:33登録)
海外ミステリー100冊の選出基準は1980年以降翻訳された作品で(1)こんなに面白いのに、あんまり評判にならなかった40冊(2)これは評判をよぶぞと思ったら、案の定、評判をよんだ38冊(3)すでに名声を確立していたけれど、ついとり上げてしまった22冊で、徹夜本(一気読み可能)ということです。ほとんどが未読でした。既読(10冊程度)の平均点は6点で選者とは、まあまあの相性かもしれません。冒険、スパイ、サイコ系サスペンスが多く選ばれているような気がします。紹介文は、~『読後、「やられた!」と口惜しがる<ひっかけ小説>ナンバーワンはこれだ。』悪夢の五日間~というような感じで煽られます。この関連で「摩天楼の身代金」「キングの身代金」「リリアンと悪党ども」「真夜中の詩人」というように他の作品紹介もあります。煽りの激しい10作品程度は読んでみるつもりです。 


No.906 7点 家蝿とカナリア
ヘレン・マクロイ
(2016/04/18 11:28登録)
プロローグにおいて「一匹の家蠅と一羽のカナリアとを仲だちとして、ロイヤルティー劇場の殺人劇は解決を見たのだった。」と大胆なヒントを読者に提示しています。がちがちの本格(トリック、プロット、意外な犯人、フェア)のファン(1942年当時)には解けないだろうという自信の表れでしょう。主人公に精神分析学者(心理分析)を据えたところに著者の心意気を感じることができました。容疑者を絞り込んだ展開も読みやすく好感が持てました。


No.905 5点 眼球綺譚
綾辻行人
(2016/04/15 09:37登録)
反転では「再生」と「眼球綺譚」に軍配。「特別料理」は同名(1956)のスタンリイ・エリン氏へのオマージュ作品ですね。最後に”二ひねり”あり楽しめました。食の奇譚ものとしては10作品程度となりましたので、「親愛なるエス君へ」(『瓦斯灯』)連城三紀彦氏で打ち止めとしようと思っています。


No.904 6点 お・それ・みを 怪奇探偵小説名作選(3)水谷準集
水谷準
(2016/04/12 22:04登録)
大正11年(1922)から昭和28年(1953)までに発表された28篇。センチメンタルでロマンティックな雰囲気の作品が多く、大正・昭和という時代を感じさせてくれます。恋と死をテーマにしたものが多いですね。
お気に入りの作品。
①「恋人を喰べる話」(1926)・・・カニバリズムではありませんが、恋人を失った男の悲哀を描いた作品。
②「お・それ・みを」・・・墓場あらしがあり、遺体がなくなった。犯人は恋人で気球の研究者であった。ロマンティックな作品。
③「胡桃園の青白き番人」・・幼なじみの女の子をを洞窟に閉じ込め死亡させたと思い込む。17年間後、死んだはずの幼なじみは生きており、結婚し子供(女の子)もいる。男のとった行動は。サイコ風作品。
④「まがまがしい心」・・・自殺した彫刻家から、自宅に「心」と題する作品が届けられた。その理由が分からない。最後の一行的作品。


No.903 3点 異形家の食卓
田中啓文
(2016/04/12 22:01登録)
裏表紙より~『国際会議のため来日した、ゾエザル王国の外務大臣・ジュサツ。独裁国家に対する強い風当たりにもめげず、常に笑顔をたやさない彼を癒す、おぞましいストレス解消法。つぶれかけたフレンチ・レストランを救った、魅惑の食材の正体。一家団欒のテーブルで告白される、悪食の数々など、全11篇。異才が贈る、駄洒落×ホラー×グロテスクのフルコースを召し上がれ。』~
”食の奇譚”の日本編として探した一冊。読書Mでは、8割以上の方が、グロではあるが面白かったとの評。しかし、グロのオンパレード(極み?)+SF的要素+ダジャレのオチで好みから遠くかけ離れたものでした。代表作?「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け」は題名としては結構洒落ていると思うのですけれども・・・(苦笑)。


No.902 5点 雪の墓標
マーガレット・ミラー
(2016/04/11 09:46登録)
主人公の弁護士の行動は、事件の真相を暴こうとしているのかどうか疑問を持ってしまいます。そこが謎でした(笑)。容疑者を弁護しようとすると、犯人と名乗る男が現れてしまうので、展開上やむを得ないか?。結末からすれば、ミステリーというよりも様々な愛の形を描いた作品ということになるのかもしれません。残念ながらラストは伏線が弱ので、ミニ・サプライズに終わってしまいました。


No.901 6点 マネキンさん今晩は
コーネル・ウールリッチ
(2016/04/09 16:18登録)
アイリッシュ氏名義でなく、ウールリッチ氏名義の本短篇集に「裏窓」があり手に取りました。ミステリー・サスペンス洋画ベストでは第4位、言わずと知れたヒッチコック監督作品。原作ではグレース・ケリーさん演じた恋人役の登場はありませんでした(残念)。著者らしい作品は、ノンストップ、タイムリミットものの「毒食らわば皿」です。短篇らしい短篇といえるでしょう。オチもいいです。らしくないのは、「爪」で「奇妙な味」系の作品。1940年でこの手の作品を書いていたのは驚きでした。
お気に入りの4作品。
①「毒食わば皿まで」・・・男は未払い給与を取りに行く。先客がおり金庫を開けるときダイヤル番号を見てしまう。
②「爪」・・・強盗殺人犯は金の入った箱を開けるとき爪を剝がし現場に残してしまう。犯人は厨房で働く者で警察が来ると証拠を隠そうと爪のない指を
③「裏窓」・・・アパートの裏窓をのぞいていると、長患いしているらしい夫人が突然いなくなってしまう。その夫の行動がおかしい。
④「睡眠口座」・・・睡眠口座の金をだまし取ることに成功するも、それが大金で新聞沙汰に。

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