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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1692件

プロフィール| 書評

No.1312 7点 われら
エヴゲーニイ・ザミャーチン
(2020/03/09 23:17登録)
地球上に「単一国(管理社会)」が出来てから1000年後という設定。宇宙船建造技師の主人公D503が、未来に出会うであろう異星知性体に向けて書いた記録(日記)という形式で物語は進行します。D503が、イデオロギーではなく、「恋」により心を取り戻していく様が人間臭くていいですね。なお、比喩を多用する文章で非常に難解です。「1984年」(ジョージ・オーウェル、1949年)に多大な影響を与えたと思います。


No.1311 4点 愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える
ジャン=パトリック・マンシェット
(2020/03/05 17:38登録)
あらすじは、誘拐された二人が、犯人たちから逃げるという単純なものです。登場人物たちの心理・感情がほとんど描かれない(これが特徴?)。よって、何故誘拐したのか、何故逃げなければならないのか(何故助けを求めない)、何故殺そうとするのか?が不明のまま物語が進行します。ミステリーとしての謎ではないので、かなりのストレス(苦笑)。さらに登場人物の行動が常軌を逸しています。結局、感情移入できないため、追いつ追われつのハラハラドキドキ感が湧いてこなかった。残念。


No.1310 5点 アガサ・クリスティー読本
評論・エッセイ
(2020/03/04 19:35登録)
国内外の21名による評論などが掲載されています。「クリスティが語る」「簡潔の女王」が楽しめました。
江戸川乱歩氏と評論家・瀬戸川猛資氏の「アクロイド殺し」の評価が正反対で興味深いです。乱歩氏はクリスティの代表作として推していますが、瀬戸川氏はミステリ史上不朽の問題作であって、不朽の名作ではないと述べています。理由は一人称で終始し、客観性がなくアンフェアというものです。記述が事件の正しい記述であるという最低限の保証、すなわち客観性が必要。同じトリックでも、カーの某作は客観性があると言っていますが、某作の「手記」がどうして正しいといえるのかよくわかりません(苦笑)


No.1309 6点 鬼火
横溝正史
(2020/03/02 21:08登録)
江戸川乱歩は「彼(横溝)は谷崎潤一郎の作品を愛することが深く、意識してか無意識にかその着想を借り来ることが屢々であるが、例えば「鬼火」と「金と銀」と、「面影双紙」と「或る少年の怯れ」と、「蔵の中」と「恐ろしき戯曲」とには、一部ではあるがその明かな類似を見るのである」とやや批判的な見解を述べています。一方、高木彬光は「鬼火」は世界に誇る最高傑作とべた褒めで、この差はどこに?(笑)。
「鬼火」と「金と銀」の共通点はライバル同士の画家が一人の女性を取り合うというものです。あえて言うならば「本歌取り」に該当するのでしょうか。
なお、「水車館の殺人」(綾辻行人)が本作「鬼火」の盗作という評がありました。筋は違うのですが、共通事項は、画家、仮面、犯人の決め手(○○)位かと思います・・・。また、ミイラを扱った作品に関し、古典でミイラ登場の作品が既にあるというだけで二番煎じ扱いされてしまうこともあるような。まあ、人によって基準がまちまちなのは致し方ないことですが・・・。(敬称略)


No.1308 5点 潤一郎ラビリンス〈10〉分身物語
谷崎潤一郎
(2020/03/02 21:03登録)
乱歩によれば、横溝正史の「鬼火」の一部に、本作中の「金と銀」の類似があるとのことです。一部とはどの程度か?で手にしてみました。
①「金と銀」 6点 天才的な青野と、その才能に嫉妬する大川。二人は画家で同じモデルを描く。その後の二人の関係は?・・・。作中で「ウィリアム・ウィルスン」(ポー)に触れていることから、「分身」のイメージを膨らましたのかもしれません。ラストは著者が13歳の時に読んだという哲学者プラトンの理論へ?・・・
②「AとBの話」 5点 AとBは従兄弟で文学の道を志す。Aは善人思想、Bは悪人思想。二人の行方は?・・・
③「友田と松永の話」 4点 松永が四年ごとに姿をくらます。その理由は?・・・

(余談)大正九年、谷崎は「途上」を発表。それを乱歩が「プロパビリティの犯罪小説」と絶賛。しかし、谷崎は大変迷惑そうにして「殺される妻の悲劇を見てほしい」と言ったそうです。「探偵小説」と呼ばれることを嫌ったエピソードですね。また横溝正史から「新青年」への掲載依頼を断り続けていた点からも頷けることです。「途上」「私」などの評価でトリックなどと言われていますが、本人はそのつもりがなかったわけですからどうなんでしょう?。探偵小説への影響はそのようなことではなく、乱歩、横溝の御大二人が、谷崎の猟奇的、耽美的な作風を引き継いだという点が大きいと思うのですが・・・。(敬称略)


No.1307 6点 シタフォードの秘密
アガサ・クリスティー
(2020/02/26 19:50登録)
本作「吹雪の山荘」を坂口安吾氏がべた褒め。~このトリックほど平凡なものはない。現実に最もありうることで、奇も変もないのであるが、読者は見逃してしまうのである。露出しているトリックに気付くことができないのである。このトリックの在り方は推理作家が最大のお手本とすべきものである。~なるほど、その通り。主人公エミリーの男殺しの言動に気を取られ、動機のミスリードにすっかり騙されてしまった(笑)。


No.1306 7点 生者と死者に告ぐ
ネレ・ノイハウス
(2020/02/23 16:40登録)
裏表紙より~『ホーフハイム刑事警察署の管轄内で、犬の散歩中の女性が射殺された。80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女性が窓の外から頭を撃たれて死亡。数日後には若い男性が心臓を撃ち抜かれた。そして警察署に“仕置き人”からの死亡告知が届く。被害者たちの見えない繋がりと犯人の目的とは。刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続狙撃殺人に挑む!』~

評論家の杉江松恋氏が「ノイハウスってこんなにおもしろかったっけ?」と言っています。そうなんです、面白いんです(笑)。今回の犯人は狙撃の名手です。よって容疑者は少ないかなと思ったら、そうでもなく相変わらず容疑者は多かった。捜査チームはプロファイラーを押しつけられるのですが、”こいつ”がイライラする男でした。”こいつ”のおかげで犯人を見逃してしまった(苦笑)。


No.1305 6点 幻影城
評論・エッセイ
(2020/02/18 21:43登録)
探偵小説に対する乱歩の熱い気持ちが伝わってきます。しかし、乱歩は生涯、純探偵小説を書くことができなかった。さぞ無念なことだったろう。
「不連続殺人事件」(坂口安吾)について、乱歩は「探偵小説四十年」で「トリック外のトリック」と大絶賛している。それが何を指すのか不明であった。本作中の「不連続殺人事件」を評すで、次のように述べている。「普通の意味のトリックではなく、作品全体に蔽いかぶさっている非常に大きな別のトリックである。それは不倫乱行の別世界そのものなのである。」また、松本清張も「人間の設定、背景、会話が巧妙をきわめ、それに氏の特異な文体が加わって、その全体が一つのトリックだと気がつくのは全部を読み終わったときである。」と述べており、両者は一致している。(敬称略)


(以下ネタバレ)普通の登場人物が、ある異常な行為をとると目立つが、異常な人物が異常な行為をとっても目立たないというトリック。「不連続」は大げさに言えば、色情狂ばかりが登場する物語。


No.1304 5点 横溝正史読本
評論・エッセイ
(2020/02/18 21:36登録)
裏表紙より~『名探偵金田一耕助のモデルは?『獄門島』『八つ墓村』ほかのトリックはどのように思いついたのか?―作家小林信彦を相手に、主要作品の詳細な舞台裏を初めて明かした~(略)~乱歩・安吾・彬光による横溝正史作品論』~
デビュー作とも言われる「恐ろしき四月馬鹿」(懸賞小説入選)はフーディーニの映画を日本流に書いたものと・・・。先人が同様なことで懸賞金を得たので自分もということらしい。この時代、罪悪感というものがない模様(苦笑)。
乱歩の「二銭銅貨」に関し、編集者(横溝も)は常に翻案じゃないかという不安があると発言。そして「殺人鬼」浜尾四郎は何となく翻案臭があるでしょう、「高木家の惨劇」角田喜久雄はシムノンの翻訳とそっくりなどとおっしゃる。(昭和51年、この時74才)ご本人は若い頃、翻案ものを何冊か発表しているのですが、お忘れか?(笑)。
なお、坂口安吾による「蝶々殺人事件」評論が痛快。「蝶々」は傑作、最もつまらないのが「本陣殺人事件」、「蝶々」をおさえ「本陣」に授賞した探偵作家クラブの愚挙は歴史に残る。ドストエフスキーは探偵小説とする説は暴論(以上二点には意義あり!笑)。ヴァン・ダイン、小栗虫太郎は衒学ぶりが退屈と容赦ない。クリスティとクイーンは褒めていますね。なぜか「吹雪の山荘」(シタフォードの秘密)をべた褒め。未読なので読まねば。(敬称略)


No.1303 3点 幽霊塔
江戸川乱歩
(2020/02/16 16:59登録)
翻案ものの評価は難しいが、一応、原作の評価-オリジナリティ±αとしてみた。原作(7点)-オリジナリティ(4点)+乱歩らしい作品(1点)-重要部分がカット(1点)=3点 
乱歩は中学生の時、黒岩涙香の「幽霊塔」(「灰色の女」の翻案)に出会い心酔したようだ。この涙香版をさらにリライトしたものが本作品。乱歩の特徴であるおどろおどろらしさは出ているが、ミステリーとしての重要項目がカットされてしまっているのが残念な点。
翻案ものに関し、乱歩自身は「緑衣の鬼」について「赤毛のレドメイン家」(フィルボッツ)を更に通俗化したような筋で、「踊る一寸法師」は「跳び蛙」(ポー)の翻案とか真似というには、少し離れすぎていると語っており、両者とも翻案ではないという認識である。しかし、現在では「緑衣の鬼」は紹介文などで翻案とされている。では、「踊る一寸法師」はどうなんだろうという疑問が湧いてくる。この辺は研究者にお任せするしかないのだが・・・難しいところ。(敬称略)


No.1302 7点 灰色の女
A・M・ウィリアムスン
(2020/02/16 16:49登録)
裏書より~『アモリー家に伝わる由緒ある屋敷、ローン・アベイ館。一族ゆかりの屋敷を下見に来たテレンスは、屋敷の時計塔で謎の美女コンスエロと出会う。婚約者ポーラよりもコンスエロの美しさに惹かれるテレンス。だが、それは次々と起こる奇怪な出来事の幕開けだった…。黒岩涙香が翻案し、その後、江戸川乱歩がリライトした傑作『幽霊塔』の原作をついに邦訳。』~

1898年の作品で、当時のゴシックロマン作品の特徴である”ゆったりとした展開”はやむを得ないか(苦笑)。「白衣の女」(ウィルキー・コリンズ、1860年)のオマージュ的な作品。この時代に○○に関するトリックを採用した先見性に脱帽。「灰色の女」の目的は何か?という謎で引っ張っていく。首なし死体、恋のさや当て、宝探し、蜘蛛屋敷などバラエティに富んだ作品。(敬称略)


No.1301 5点 江戸川乱歩と横溝正史
伝記・評伝
(2020/02/13 17:16登録)
「横溝が「新青年」編集者として乱歩に「パノラマ綺譚」と「陰獣」という傑作を書かせた。横溝がいたからこそ生まれたと言える。そして戦後は乱歩が編集者となり横溝に「悪魔の手毬唄」という最高傑作を書かせたのだ。」と筆者は語る。その間に不仲の時代があったのは興味深い。乱歩が「悪霊」を途中で休載し休養に入った。1年半後の1934年に復活するも、横溝は「復活以後の乱歩こそ悲劇のほかの何者でもない。」再休養したらの旨発言。友情に亀裂が入った。その2年後には和解か?。終戦後、横溝は自信作「本陣殺人事件」を発表。乱歩はべた褒めした後に不満を述べる。それは密室トリックが機械的過ぎ、動機が弱いということであった。横溝はドスをつきつけられたように思ったという。その後「獄門島」が発表された時は貶された「本陣」の方がいいと言われ、更に「君、こんど「犬神家の一族」というのを書くだろう。ぼく、犬神だの蛇神だの大嫌いだ。」などと言われる。二人は時には対立したが、ライバルとしてまた盟友として探偵小説界を牽引したのは間違いない。ただ、「翻訳」「翻案」「創作」の違いを対外的にあやふやのままにしたことは罪づくりであると思う次第。やがて”探偵小説を「お化屋敷」の掛小屋からリアリズムの外に出したかった”という松本清張が台頭することになった。(敬称略)


No.1300 6点 探偵小説四十年
伝記・評伝
(2020/02/12 17:15登録)
商品説明より~『乱歩の探偵小説への関わりを幼年期から書き纏めた一つの半生記である。日本においてミステリ(探偵小説)がどのように受容され発展したか。歴史も学びながら、乱歩の探偵小説への情熱が伝わってくる。過去の全集にも含まれているものだが、写真を省略していないこと、乱歩の記述と事実との齟齬の明記などもあって資料としても充実している。』~
日頃、評価が低過ぎるのではないか、逆に高過ぎるのではないかなどと思う作品が何点かあります。それは個人の評価に対してではなく、あくまでも世間一般的にという意味ですので念のため。自分の考えをフォローしてくれるエピソードや文章がありましたので列挙してみます。
①「半七捕物帳」岡本綺堂(以下敬称略)は高評価過ぎ?
探偵小説がもてはやされたのは涙香全盛の明治時代で大正に入ってからは春浪にしろ春影にしろ子供向けの探偵小説を、それも翻訳または翻案しているばかりで大人の世界では人気がなかった。綺堂の捕物帳は出ていたが物足りない。もっとトリックと論理のある探偵小説が要望され愛読されなければつまらない。(同感、探偵小説としては弱いと思う次第です)
②「罪と罰」ドストエフスキーは探偵小説としても評価していいのでは? 
「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」などは一流の探偵小説である。探偵小説の中枢は、心理的追求にあるとすれば、偉大なるサイコロジストは、偉大なる探偵小説家であるのが当然。作家・加藤武雄(同感、純文学としてハードルが高すぎる?)
③「獄門島」横溝正史は高評価過ぎ?「不連続殺人事件」坂口安吾は低評価過ぎ?
1949年(昭和24年)第2回探偵作家クラブ賞 得票 マイ評価 東西ベスト 本サイト 
受賞「不連続殺人事件」坂口安吾         17票  9点  19位   6.94点 
「刺青殺人事件」高木彬光             10票  9点  32位   7.60点 
「獄門島」横溝正史                 6票  6点  1位  8.01点 
(マイ評価と一致して嬉しいのだが、自分の感覚が古いのか?(苦笑)「不連続」についてはトリックがクリスティの某作と同じという意見が多いのだが、ポイントはそこではないと思っている。乱歩は「トリック外のトリック」と大絶賛しているが、何を指すのか本書では明らかになっていないので「幻影城」を読むしかない)                     


No.1299 4点 こうして誰もいなくなった
有栖川有栖
(2020/02/08 21:02登録)
表題作のみの評価。オマージュ、本歌取りではなく、いわゆる「翻案」に近いのかも?。紹介では「再解釈」とありますが、どういう意味なのかよくわかりません。ラストは、それはちょっとねえ・・・というレベルでした。


No.1298 8点 二人のウィリング
ヘレン・マクロイ
(2020/02/07 11:16登録)
物語開始早々、殺人事件が起き展開はGood。しかし、その後登場人物の紹介となり冗長・・・。ところがどっこい、そこに本作の仕掛けがあったのです。真相が判明した時点で、通常は、ああ、あそこが伏線だったなどと思うわけですが、本作の場合、冗長と感じられる部分全体が伏線???!!!。動機も今のところ嚆矢(1951年)であり+2点。


No.1297 5点 遭難者
折原一
(2020/02/04 22:41登録)
本作(1997年)は松本清張氏の短篇「遭難」(黒い画集・1959年)の本歌取り、またはオマージュかと思って手にしたのですが違っていたようです。1982年に実際にあった山岳事故の追悼集にヒントを得たとのことでした。遭難事故からのミステリーなので、あらすじはどうしても似通ってしまいますね。比べながらの読書で楽しめました。あらためて清張氏の偉大さに感じ入っています。


No.1296 6点 松本清張あらかると
評論・エッセイ
(2020/02/03 22:32登録)
「松本清張小説セレクション」全36巻の各巻末に掲載されたエッセイ風の解説集。
清張氏は「私の一本の映画」として「眼には眼を」(日本公開昭和33年)を選んでいます。翌年「霧の旗」を発表。著者の阿刀田氏はこの映画からヒントを得たなと直感したといいます。このことは別に問題ではないのですが・・・。
別章でアイデアの類似性について語られています。作家のT氏がある作品で受賞。その作品とそっくりの映画が先に作られ上映されていた。アイデアの盗用で表彰は納得できないとの声が上がる。T氏は「映画は見ていない。盗用の疑いは許せない」という。結果はそのまま受賞。著者は、「もし、盗用で断罪されるなら、小説家はすべての小説、映画、芝居などのあらすじを知っていなければならない。そんなことは不可能」「道義的に問うことは何もありません。しかし、ことさらに賞を与えて表彰することも適当ではないでしょう」というスタンス。結局二番手のアイデアであり、作品の評価としてはマイナス点となるということでした。納得。
なお、それとは別にオリジナリティの件で気になっていることがあります。それは江戸川乱歩氏、横溝正史氏の御大が、いわゆる「翻案」といわれる作品をどういう気持ちで発表していたのかということです(現在ならパクリ?)。「翻案」でありながら、著者のオリジナルであるとされている中編、短編があるような気がしてなりません(苦笑)。まあ、その点が解消するかどうか分かりませんけれど、「横溝正史読本」「江戸川乱歩と横溝正史」などを読んでみるつもりです。


No.1295 5点 松本清張を推理する
評論・エッセイ
(2020/02/02 11:52登録)
著者の阿刀田高氏は「松本清張小説セレクション」全36巻を編集し、熱烈なファンであることを自認しています。本書は、著者が作者の視点から清張氏の小説作法を推理(想像)するというエッセイ集です。「よいしょ」だけではなく、批判もしていますね。その点は好感が持てます。
「点と線」に関し、「空白の4分間」は瑕疵とする説があり、本サイトでも同様の趣旨の投稿もあります。以前から、それが不思議でたまりませんでした。ちょこっと細工すれば済むことなので・・・。清張氏はそんなことは当たり前のことなので、あえて詳細を書くことはしなかったと、ずっと思っていました。本書でも、その点に触れており、まったく意見が一致し、ホッとしています(笑)。あとエピローグにおける「潜在光景」の評価が完璧に一致。やはり、著者と相性はいいのかなあ(笑)。


No.1294 6点 文豪たちの怪しい宴
鯨統一郎
(2020/02/01 08:05登録)
裏表紙より~『討論会の帰り、初めて立ち寄ったバー〈スリーバレー〉で、私は夏目漱石の『こころ』に関する女性バーテンダーの疑問点に答える羽目に。文学部教授である私が、まさかこんな場所で講義することになるとは。しかも、途中からやってきた宮田という男が、あろうことか『こころ』を百合小説と断言したことで、議論は白熱し……。文学談義四編で贈る、文庫創刊60周年記念書き下ろし。 』~
①夏目漱石「こころもよう」 8点 巷では私と先生が○○関係との説があるようですが、本作は百合小説であり、更にクライム小説だという。ではその犯人は?
②太宰治「なぜかメロス」 6点 殺戮を繰り返している王が、何故改心などしたのだろうか?。その理由は?
③宮沢賢治「銀河鉄道の国から」 5点 ジョバンニ(賢治)とカムパネルラ(賢治の亡くなった妹)との物語というのが定説であるが、実は○との物語でもある。○とは誰?
④芥川龍之介「藪の中へ」 7点 二人の証言・自白は嘘であり、一人だけ真実を告白している。その犯人は?
まあ、諸説ありますが、目くじら立てずに気楽に読みましょうというスタンスで。


No.1293 6点 魔性の殺人
ローレンス・サンダーズ
(2020/01/31 17:26登録)
「静かだった。彼は<悪魔の針>と呼ばれるそそり立つ岩峰の頂きにあおむけに横たわっていた。・・・」
『ミステリの名書き出し100選 』の一冊。サイコ系の嚆矢とのことで手に取りましたが、本作は1973年の作品で、1959年には既に「サイコ」(ロバート・ブロック氏)が発表されており、?マークでしたね。内容は七つの大罪の一つ「高慢の罪」を背景にした文学的匂いの強いものです。ジャンルはサイコ系連続殺人鬼を追う警察小説となるのでしょう。犯人側と警察側が交互に語られるのですが、犯人に魅力がなく、また追い詰め、追い詰められるというサスペンス感もいま一つでした。1000頁を超える力作ではあるのですが・・・。

(ネタバレありの追記・・・このプロットどこかで読んだ記憶。思い出した「マークスの山」(高村薫氏1993年)だ。山で始まり山で終わる。頭蓋骨に穴。凶器はアイスピック。主人公は精神が破綻。警察関係の人物が殺害される。女性が重要な役割。追う刑事に圧力がかかる。ホモ関係がある。ラストは凍死。まあ、作品から受ける印象は全く別物ですが。「魔性の殺人」もベストセラーだったらしいので、もし読んでいればヒントになったのかも?)

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