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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1280 6点 検察側の罪人
雫井脩介
(2019/12/16 19:56登録)
裏表紙より~『蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う』~

(ネタバレあり)
物語はエンタメ系警察小説によくあるパターンのものです。私はエンタメ系での「私刑」は容認しますが、本作のような社会派的ミステリーでシリアスなものでは許容できない。という立場で・・・。人物像造形や心理面で難ありというのが第一印象です。
最上検事~検事でありながら、出来心的に証拠隠滅してしまう。えっ?!と思うわけです。べつにこれが計画的なものであればいいんですけれどね。そして最悪なのはアリバイ工作もせず犯罪を犯す。こんな検事像ってありっ?!。
沖野検事~最初はいいんですね。しかしラストがいけない。なんで最上検事を弁護するなんて言い出すんでしょう?。あなたが最上検事の犯罪を断罪しなければならない立場なんですよ(苦笑)。
橘沙穂~沖野検事をよくサポートしていたのですが、真相が明らかになりそうなとき手を引くようアドバイス。意味不明です。
白川弁護士~人権派でやり手。パホーマンスで無罪を主張するのかと思いきや、死刑が無期懲役になれば・・・何をかいわんや。
諏訪野~最上検事にピストルを売った裏社会の人物。この人は立派(笑)。「物は売っても人は売らない」信念があります。
なお、ラストに何かを期待したのですが・・・。やはり感情移入の度合いによってラストの沖野検事の慟哭の意味合い(理解)が違ってくるのでしょうか。よくわかりませんでした。


No.1279 8点 寒い国から帰ってきたスパイ
ジョン・ル・カレ
(2019/12/13 20:08登録)
「東西ミステリーベスト100」(1986年版)の第33位。英3位米6位(英米合算では第2位)1953年「007カジノロワイヤル」から10年後の発表で、アンチ007のような作品と感じました。リアリティを追求した”非情”をメインとした作品と言えるでしょう。ボンドも女性に弱いが、本作の主人公も同様???。読みどころは、その点と査問会議の真相究明場面です。緊迫感がありました。なお、ベルリンの壁が出来た2年後の作品ということでした。


No.1278 7点 贈る物語 Mystery
アンソロジー(国内編集者)
(2019/12/09 10:33登録)
①「暗黒の館の冒険」エラリー・クイーン 5点 古典的トリック、初出であれば高評価としたいが・・・
②「黄色い下宿人」山田風太郎 5点 ホームズのパスティーシュ、彼の鼻を明かすのは?・・・
③「密室の行者」ロナルド・A・ノックス 8点 密室での餓死の理由は・・・
④「妖魔の森の家」ジョン・ディクスン・カー 9点 密室状況のバンガローから消えてしまった娘、今回で2度目だ・・・
⑤「長方形の部屋」エドワード・D・ホック 7点 犯人が丸一日死体といっよに部屋にいたわけは?・・・
⑥「カニバリズム小論」法月綸太郎 8点 同棲の女性を食する男・・・
⑦「病人に刃物」泡坂妻夫 7点 元患者が腹を刺されて死亡。誰も刺していないのだが・・・
⑧「過去からの声」連城三紀彦 8点 誘拐ものの秀作・・・
⑨「達也が笑う」鮎川哲也 10点 高木彬光氏の「妖婦の宿」と同様に「日本探偵作家クラブ」例会での犯人当てクイズのテキストとのこと。四重五重に張り巡らされた網(ミスリード)に引っかかり完敗です。正解に近い人が1人いたそうですね。しかし、著者がこの手のトリックを使用していたことにはビックリです。長編では1960年の作品が先駆的という定説になっていますが、もしかして本作(1956)が初出?。但し、メイントリックについて、当時の鑑識はどの程度だったのか気になるところです。現在では一発でバレてしまうので・・・。まあ、参加者から、その疑問は出なかったようですので良しとしましょう(笑)。密室ものでは「妖魔の森の家」を抜きNO.1となりました。


No.1277 7点 手斧が首を切りにきた
フレドリック・ブラウン
(2019/12/07 12:54登録)
裏表紙より~『〈ろうそくが、おまえのベッドを照らしにきた。そして手斧が、おまえの首を切りにきた〉……十九歳の青年ベイリーは二人の女性と知り合ったが、マザー・グースの歌を思い出すたびに、少年の日の忌まわしい記憶にさいなまれた。』~

最初の暗示は無い方がよかった。あゝ勿体ない。物語はボーイ・ミーツ・ガール風で予想外の展開となります。更に途中でラジオ中継や映画が挟まれ、実際のストーリーと同様なものが音声や映像で流れるので、読者は狐につままれたような気持ちになります。そしてラストはハッピーエンドとなるはずが・・・題名通り???!!!。


No.1276 5点 わが母なるロージー
ピエール・ルメートル
(2019/12/04 17:55登録)
爆発犯ジャンの心理描写がないので心の内がよくわからない。よって、ラストシーンもモヤモヤ感が漂ってしまう。これがフランス風と言えばそうなのかもしれないが・・・。今までのシリーズと風味は変わっており、ちょっぴりガッカリ。決してつまらないというわけではないのですが。


No.1275 8点 妖婦の宿
高木彬光
(2019/12/03 17:11登録)
角川文庫版ではなく春陽文庫版で読みました。内容が相違していますので表題作のみの書評となります。傑作と言われる密室ものは、「なーんだ?!」というものが多かったのですが、本作は成程と頷けました。犯人が判明し、それはないだろうと突っ込みを入れようとしたら、ちゃんとした説明があり、更に一捻り。参りました(笑)。「日本探偵作家クラブ」例会での犯人当てクイズのテキスト。


No.1274 6点 真実の問題
ハーバート・ブリーン
(2019/11/30 22:00登録)
警察小説に関する座談会で、逢坂剛氏がこだわている一冊と言っていたものです。
~退職まじかのベテランと新人の二人の刑事は殺人強盗犯を逮捕した。その時、犯人は証拠の100ドル札を燃やしてしまう。ベテラン刑事は別の証拠を捏造することを思いつき実行した。犯人は死刑判決を受けるも、その後に新たな事実が判明し、若手刑事は苦悩することになる。~
新聞記者と付き合いのあるダンサーと若手刑事の恋や、犯人の弟妹が絡んだりと、筋は面白い。ただ、感情移入が出来なかったのが残念な点です。


No.1273 9点 セブン
アンソニー・ブルーノ
(2019/11/28 18:43登録)
裏表紙より~『何者かに過剰な食事を強いられ死んだ異様に太った男と、自らの体を切り刻むことを強要された弁護士―殺伐とした街で連続して発生した二件の殺人の現場には、それぞれ“大食”と“強欲”の文字が…。ベテラン刑事サマセットはキリスト教の“七つの大罪”に着目し、あと五つ事件が発生すると断言。若き刑事ミルズとともに狂気の殺人計画を阻止すべく捜査を始めるが…戦慄のサイコ・スリラー。』~

映画「セブン」(1995年)のノベライズ本。同じサイコ系の「羊たちの沈黙」(東西ミステリーベスト100の第9位)との比では、ラストの衝撃度で本作に軍配を上げざるを得ません。


No.1272 9点 レベッカ
ダフネ・デュ・モーリア
(2019/11/26 19:55登録)
「東西ミステリーベスト100(1985年版)」第68位。英ベスト6位、米ベスト9位。ゴシック・ロマンの傑作。「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た」の冒頭の暗示が効いています。この時代にこのプロットを書き上げた手腕に敬意を表します。真相およびラストシーンにはゾクッとさせられました。なお、新潮文庫の(下)は完全にネタバレしていますので注意。


No.1271 6点 殺意の試写状
サンドラ・ブラウン
(2019/11/24 08:33登録)
白昼、ホテルのエレベーターで大富豪が射殺された。容疑者は富豪の甥と富豪の愛人。どちらかが犯人!!・・・。しかし、途中で読者は犯人を知ることになります。知らぬは主人公(弁護士)ばかりということで、読者にヤキモキ感を募らせようとするもの?。しかし、それが効果的であったかどうか、最後までフーダニットにした方がよかったような気がします。といっても、倒叙ものとして読めば楽しめますね。


No.1270 6点 犬神家の一族
横溝正史
(2019/11/21 14:38登録)
「東西ミステリーベスト100」第39位 雰囲気や遺言状の内容などは楽しめましたが、ミステリーとして特に際立っているものがなかったのが残念。また、○○が好みでないもので、高評価は付け難いです。
「東西ミステリーベスト100( )内は順位」に選出された5冊を読み終えて。マイ順位は、本陣殺人事件 9点(10位)>悪魔の手毬唄 9点(75位)>犬神家の一族 6点(39位)>獄門島 6点(1位)>八つ墓村 5点(57位)となりました。


No.1269 5点 八つ墓村
横溝正史
(2019/11/18 17:35登録)
「東西ミステリーベスト100」第57位。動機や冒険譚に既視感(当然、本作以前のもの)があり、新鮮さを感じることができませんでした。語り部が次章以降の重要事項を予告又は仄めかします。そのことで驚きや緊迫感が削がかれてしまいました。残念です。それにしても金田一耕助が無能過ぎて、登場する意味がなかったような気がします。何人も死んでいるのに「見かけによらぬ天才ではないか?」には白けてしまいました。「悪魔の手毬唄」が良かっただけに落差が激しいです。と言いつつ次は「犬神家」(笑)。


No.1268 9点 飢餓海峡
水上勉
(2019/11/17 14:52登録)
(再読)「東西ミステリーベスト100」第31位 新潮文庫(1990年版)の裏書はひどい!!!。社会派ミステリーと謳いながらネタバレを書く無神経さ、特に(下)がひどい。まあ、言い分としては、人間ドラマがメインだからいいじゃないかということなのでしょうか?。言わずもがなの名作ですね。「砂の器」(1961年)に通じるものがあります。映画では左幸子さんの名演が忘れられない。


No.1267 7点 事件
大岡昇平
(2019/11/15 17:59登録)
(再読)「東西ミステリーベスト100(1985年版)」の第23位、2012年版ではランク外です。私の気持ちに似ているかな?。再読前は9点くらいの作品とのイメージ(記憶)がありました。当時は黒沢明監督の作品のような重厚でリアリティのある映像や、社会派といわれる松本清張氏の作品が好みでした。本作は裁判の過程をリアルに、かつドキュメンタリー風に描いたもので、当時の好みにマッチしていたと思います。しかし、今はエンタメ系の方が好みとなっています。よって7点どまりとなりました。小説はフィクションであるので本物のリアリティは求めません。嘘でも本物っぽく描かれていれば十分ですね。本作は映画化されており、若い大竹しのぶさんの演技にビックリ仰天した記憶があります。


No.1266 8点 疑惑
松本清張
(2019/11/13 19:48登録)
裏表紙より~『雨の港で海中へ転落した車。妻は助かり、夫は死んだ―。妻の名は鬼塚球磨子。彼女の生い立ち、前科、夫にかかっていた高額な生命保険についてセンセーショナルに書き立てる記者と、孤軍奮闘する国選弁護人の闘い。球磨子は殺人犯なのか?その結末は?』~

 TVなどでは、悪女・鬼塚球磨子がメインとして描かれてますが、原作では記者がメインです。原題「昇る足音」の意味がよく分かりました。当時(1982年)の車は、水圧で窓ガラスが割れてしまったんですね。車内にあったスパナや、脱げた靴などの小道具の扱い方が巧い。本格ものの匂いがプンプン(笑)。なお、ジャンルはリーガルがないのでサスペンスに一票。


No.1265 9点 コピーフェイス
サンドラ・ブラウン
(2019/11/12 18:51登録)
裏表紙より~『私は別の女性の運命を生きることになった。あの恐怖の瞬間から―飛行機墜落後、収容された病院で上院議員候補夫人と取り違えられたTVリポーターのエイブリー。形成手術によって夫人の顔に変貌した彼女の耳には病床で聞いた「夫を殺す」の一言が残っていた。この家族は何かが狂っている…夫人になり代わったエイブリーを待っていたのは驚愕の真相だった。』~

飛行機事故で他人と間違えられるという導入部分はウィリアム・アイリッシュ氏の「死者との結婚」に似ています。その後の展開は選挙戦、家庭問題、恋愛、そして殺人計画などバラエティに富んでいます。エンタメに徹し、かつサスペンスフルなストーリーは楽しめました。ラブ・サスペンスの名手ということで、ラブ・シーンはかなり濃厚です(笑)。NHKでドラマ化されたそうですが、その辺は当然カットでしょうね。


No.1264 6点 内海の輪
松本清張
(2019/11/11 18:10登録)
(再読)裏表紙より~『新進の考古学者・江村宗三は、元兄嫁の西田美奈子と十四年ぶりに再会し、情事を重ねていた。彼女は二十も年上の男と再婚していた。ある日、宗三は美奈子から妊娠を告げられる。夫と別れ、子を産む決意だという。順風満帆の生活が瓦解する恐怖に、やがて宗三の心に殺意が芽生えていき……。』~
 これほど手垢のついた内容を小説にするということは、よほどの自信の表れなのでしょう。解説(阿刀田高氏)で、著者の作品には考古学者、不倫、偶然が多いと言っています。本作も偶然が重要な要素なのですが、これは許せる範囲(笑)。殺人までの心理描写よりも、事件後の考古学者らしい心の動きがポイントですね。


No.1263 9点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2019/11/09 15:38登録)
「東西ミステリーベスト100」の第75位。「不連続殺人事件」以来の相関図を作っての読書でした(笑)。

【ネタバレあり】

本作における「見立て殺人」の意義は著者による読者へのレッドへリングであると思います。冒頭に「手毬唄」を載せることで「何故、あるいはどのように見立て殺人が行われるのか?」と読者の注意をひきます。メインの動機などから目をそらす目的ですね。「見立て」自体は、犯人にとって重要な意味もなかったし、次の被害者たちに恐怖を与えるものでもなかったし、さらに探偵側も真剣に謎を解こうとすることもなかったわけですから。やはり対象は読者ということになるのでしょう。白眉は複雑に絡み合った動機ですね。まったく予想もできませんでした。完敗。


No.1262 7点 霧の中の館
A・K・グリーン
(2019/11/07 18:07登録)
1878年「リーヴェン・ワース事件」の発表により「探偵小説の母」といわれるアンナ・キャサリン・グリーン(1846~1935)の短篇集。
「深夜、ビーチャム通りにて」(1895)クリスマスイブ、夫人ひとり残された家に二人の不審者が登場。一捻りあるサスペンス。
「霧の中の館」(1905)霧に迷い訪れた家では遺産相続人が集まっていた。昔、あるところに・・・に通じるファンタジーと狂気。
「ハートデライト館の階段」(1894)富豪の溺死体が3体続けて発見される。その謎は?裏家業と島田荘司氏に通じる仕掛け。
「消え失せたページ13」(1986)書類紛失が意外な展開に。「探偵小説の父」ポーの「盗まれた手紙」「アッシャー家の崩壊」へのオマージュか?。
「バイオレット自身の事件」(1915)女性探偵誕生秘話。娘の肖像画を見る父の姿が感動的。
著者の特徴は一般的なミステリーとはニュアンスの違う展開にあるような気がします。


No.1261 5点 Dの複合
松本清張
(2019/11/06 18:12登録)
(再読)この道はあまりにも遠回りではありませんか?。まあ、「一気に殺すよりも、その秘密を知る第三者が、この世にいることを思わせて、徐々に恐怖に陥れたほうが効果が強い。」と犯人に言わしめてはいますが・・・。浦島伝説や羽衣伝説などを絡ませていますが、その効果は如何に。

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