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ミステリの祭典

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灰色の女

作家 A・M・ウィリアムスン
出版日2008年02月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 蟷螂の斧
(2020/02/16 16:49登録)
裏書より~『アモリー家に伝わる由緒ある屋敷、ローン・アベイ館。一族ゆかりの屋敷を下見に来たテレンスは、屋敷の時計塔で謎の美女コンスエロと出会う。婚約者ポーラよりもコンスエロの美しさに惹かれるテレンス。だが、それは次々と起こる奇怪な出来事の幕開けだった…。黒岩涙香が翻案し、その後、江戸川乱歩がリライトした傑作『幽霊塔』の原作をついに邦訳。』~

1898年の作品で、当時のゴシックロマン作品の特徴である”ゆったりとした展開”はやむを得ないか(苦笑)。「白衣の女」(ウィルキー・コリンズ、1860年)のオマージュ的な作品。この時代に○○に関するトリックを採用した先見性に脱帽。「灰色の女」の目的は何か?という謎で引っ張っていく。首なし死体、恋のさや当て、宝探し、蜘蛛屋敷などバラエティに富んだ作品。(敬称略)

No.1 7点
(2018/11/04 17:06登録)
涙香の『幽霊塔』の原作。ちなみに乱歩版は未読ですが、乱歩は原作不明で直接参照できなかったわけですから、この評も逆に乱歩版は参照せずということで。
この原作を読んでみて、涙香の翻案が乱歩の『緑衣の鬼』みたいなのではなく、原作に非常に忠実であったことには驚かされました。文章こそ涙香独自のものですし、ところどころ改変はありますが、重要な会話の内容に至るまで、意味はそのままを伝えている部分が多いのです。ちなみに、涙香版で虎井夫人の飼っている狐猿とは、マングースでした。小森健太朗氏の巻末解説で特に興味深かったのが、原作判明のきっかけが本作を原作とする映画であったということです。
現代日本語訳で読むと、蜘蛛農園のシーンは、涙香版の養蟲園の方が得体のしれない気持ち悪さがありますし、読みやすい文章であるためかえって偶然の多用が目立ってしまいますが、波乱に富んだストーリーはやはりおもしろかったです。

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