蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1690件 |
No.1490 | 5点 | リボルバー 原田マハ |
(2022/02/06 17:10登録) ある日、錆びついた一丁のリボルバーが持ち込まれた。それはゴッホの自殺に使われたものだという。「ゴッホは、ほんとうにピストル自殺をしたのか? 」 「殺されたんじゃないのか?」・・・ 物語としては楽しめましたが、ミステリーとしてはどうでしょうか?。実在の人物なので、驚くような真相はかなり難しいと思います。まあ、 当たり障りのない所でという事でしょう。 (余談)TVトークにて。著者のお勧め本4冊のうちの一冊が「ダ・ヴィンチ・コード」で、「楽園のカンヴァス」を書く勇気をもらった一冊とのこと。ルーブル美術館の館長が全裸でモナ・リザの前で殺されている。こういうのを書いちゃっていいんだと思ったそうです(笑)。「楽園・・」のアンリ・ルソーに関し、基礎の10%が真実(史実)、90%が嘘とおっしゃる。このようなことを敢えておっしゃるのは、読者の中にはフィクションなのに「事実ではない」などといちゃもん?をつける人が、まだいるからなんでしょうね。 |
No.1489 | 6点 | 聖アンセルム923号室 コーネル・ウールリッチ |
(2022/01/27 15:38登録) ホテル開業の日から廃業の日まで、最上階の923号室に泊まった客の7つの物語。非ミステリー系ですが、著者らしさは堪能できます。 ①1896.6.20の夜 ホテルオープンの日、若い新婚夫婦が泊った。新婦が着替えるので新郎はドアの外で待つが・・・ ②1917.4.6の夜 青年は軍服を着て意中の女の子を誘う。宣戦布告がされ・・・ ③1918.11.11の夜 終戦の日、再会した二人は、どちらともぎこちない・・・ ④1924.2.17の夜 ギャングのボスが仲間を連れ、敵から逃げてきた・・・ ⑤1929.10.24 NY株価が大暴落。大損害を被った男は飛び降り自殺を考え・・・ ⑥・・・・・・・・の夜 駆け落ちしてきた若い二人。彼女は彼のことを「ケン」と呼んだ・・・・「・・・の夜」と名前の意味がラストで ⑦1957.9.30 ホテル閉館の夜、老女がやってきた。彼女は第一話の登場の女性であった・・・切ない物語ですが、ある意味怖い |
No.1488 | 6点 | 厭な物語 アンソロジー(出版社編) |
(2022/01/24 17:07登録) 「厭な物語」というより「不快な物語」が2作品あった。選者のセンスに疑問符 ①「崖っぷち」アガサ・クリスティー 8点 「マン島の黄金」で書評済 ②「すっぽん」パトリシア・ハイスミス 6点 母が料理用として買ってきたすっぽんを飼いたいという息子は・・・既読感あり ③「フェリシテ」モーリス・ルヴェル 6点 娼婦はある男と毎週土曜日の2時間だけデートするようになり・・・女性に人気のある作品らしい ④「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」ジョー・R・ランズデール 1点 エログロ・バイオレンスに人種差別 ⑤「くじ」シャーリイ・ジャクスン 7点 「くじ」で書評済 ⑥「シーズンの始まり」ウラジーミル・ソローキン 7点 狩猟シーズンが到来し二人の男が森へ・・・自然の風景とラストのギャップがいい ⑦「判決」フランツ・カフカ 5点 遠く離れた友人に結婚を知らせようと、父親に話したところ・・・1912年の作品。現代ではあり得ない? ⑧「赤」リチャード・クリスチャン・マシスン 7点 彼は身をかがめて拾えるものを拾い、先を注視しながら歩き出した・・・衝撃的ではある ⑨「言えないわけ」ローレンス・ブロック 6点 強姦魔の死刑囚は被害者の兄を懐柔して死刑回避を狙うが・・・ ⑩「善人はそういない」フラナリー・オコナー 2点 旅行に出かけた家族が脱走犯に・・・ ⑪「うしろをみるな」フレドリック・ブラウン 7点 「真っ白な嘘」で書評済 |
No.1487 | 6点 | シメール 服部まゆみ |
(2022/01/21 17:19登録) 「BOOK」データベースより~『画壇の若き俊才にして気鋭の美術評論家・片桐は、妻を亡くした春、満開の桜の下で精霊と見紛う少年と出会った―。その絶対の美を手に入れたいと願う彼の心は、少年と少年の家族の運命を破滅へと導く。逃れ得ぬ陶酔の迷宮に囚われた男の悲痛な狂気が織りなす、至極のゴシック・サスペンス。』~ 現実的に描いたら気色の悪い物語であろうと思いますが、著者の筆力で耽美かつ幻想的な雰囲気の作品に仕上がっています。これこそ服部マジックなのでしょう。もう著者の作品が読めないのはとても残念です。ミステリの採点なので、この点数で・・・ |
No.1486 | 8点 | 自由研究には向かない殺人 ホリー・ジャクソン |
(2022/01/12 09:01登録) 久しぶりにワクワクするような楽しい読書を味わえることができました。事件の背景は、当然辛いものがありますが、主人公と相棒のキャラクターが明るく、めげない性格で抜群にいい(笑)。青春ミステリーと言ってもいいのかも。各ミステリーランキングで上位を獲得しているのも頷けました。 |
No.1485 | 6点 | マン島の黄金 アガサ・クリスティー |
(2022/01/07 17:15登録) ①夢の家 4点 若干ホラーテイストの恋愛物語。結末が良くない ②名演技 7点 女優が昔のことで強請られるが・・・芝居はお手の物 ③崖っぷち 8点 想いを寄せる男が結婚。その妻は不貞を働いている・・・アンソロジー「厭な物語」(文春文庫)のトップバッター ④クリスマスの冒険 5点 プディングからルビーが出てきた・・・「クリスマス・プディングの冒険」の短めヴァージョン ⑤孤独な神さま 6点 ラブロマンスもの。「夢の家」より断然好み。絵に描かれた想い人の表情がいい ⑥マン島の黄金 4点 観光客誘致のために書かれた宝探し懸賞小説 ⑦壁の中 8点 画家の絵を決して褒めない女性・・・こんなプロットをよく思いつくものだなと感心 ⑧バグダッドの大櫃の謎 8点 パーティの翌日、大櫃の中から死体が・・・「スペイン櫃の秘密」の短めヴァージョン ⑨光が消えぬかぎり 5点 再婚したところ、戦死したはずの前夫が現れて・・・ ⑩クィン氏のティー・セット 4点 毒殺を阻止できるか・・・動機、方法、真相がイマイチ ⑪白木蓮の花 4点 駆け落ちをしようとしたら、夫の会社が倒産・・・心理がよく分からん(笑) ⑫愛犬の死 5点 愛犬と暮らすために結婚?・・・愛犬家の気持ちは分らん |
No.1484 | 7点 | 死人の鏡 アガサ・クリスティー |
(2022/01/03 18:06登録) 4編とも、よくあるプロットですが、初出は誰なのだろう?著者なのか?気になるところ ①厩舎街の殺人 7点 密室での自殺と思われたが、ピストルを持っていた手の逆側のこめかみに銃痕があった・・・ ②謎の盗難事件 6点 居間に置いたばかりの重要な設計図が紛失した。窓から出る人の気配がしたというが、窓の外には足跡はなかった・・・ ③死人の鏡 8点 密室でのピストル自殺?。頭蓋骨を通過した銃弾で鏡が割れていた。そうなると体の角度がおかしくないか?・・・長篇ならば、ある人物がレッド・へリングになるのは明らかですね。ラストはちょっぴりホロッとする ④砂にかかれた三角形 8点 二組の夫婦の間に三角関係が、そして殺人事件へ・・・ 著者らしい騙しのテクニック。してやられた(笑) |
No.1483 | 6点 | アメリカの友人 パトリシア・ハイスミス |
(2021/12/25 09:19登録) 本作はシリーズ3作目ということである。やはりシリーズものは順番に読まないといけないと痛感。特に主人公・リプリーの殺人に関する考え方がどのように変化し、現在に至ったか不明のため、その行動にかなりの違和感があった。まあ、リプリーの謎の性格が魅力的であるともいえるのだが・・・ |
No.1482 | 7点 | 最後の楽園 服部まゆみ |
(2021/12/16 18:47登録) 短編集「時のかたち」の収録作を含めた全十七篇を一冊にまとめたもの。 ①時のかたち 7点 ②葡萄酒の色 6点 ③「怪奇クラブの殺人」 6点 ④桜 6点 以上の4編は短編集「時のかたち」で書評済。 以下、ショートショートをのぞいた書評。 ⑤骨 7点 画商は「女郎花」という絵に惚れた。画家が死亡し、その弔問時に部屋にあった「女郎花」を盗んでしまう。背を向けた女性が描かれているのだが、こちらを向いたような・・・ ⑥雛 7点 画商は老女から女雛を買い取った。だが人形の顔が鬼女のように変わったのだ・・・ ⑦髑髏指南 6点 金田一耕助登場。 耕助は京助教授と間違われ髑髏を預かる羽目に。なんとその中にダイヤが・・・ ⑧松竹梅 8点 老いた金田一耕助登場。歌舞伎観劇中の殺人事件。アリバイは崩せるのか・・・ ⑨最後の楽園 8点 題名とは裏腹にゾンビ登場・・・ |
No.1481 | 6点 | ファンレター 折原一 |
(2021/12/07 16:40登録) 覆面作家の西村香を主人公としたユーモア系の連作短編 ①覆面作家 7点 ファンの「みなみ」はついに西村に会うことに成功。西村は覆面をしたまま彼女をホテルに誘う。やがて結婚を申し込まれた彼女は・・・ ②講演会の秘密 6点 図書館の司書・井上茂から西村に設立二十周年記念の講演依頼があった。断ったが覆面の女性が現れ西村香と名乗り講演を始めた・・・ ③ファンレター 6点 西村香と同じマンションに住む西林薫。誤配されたファンレターを読んだ。送り主はミステリ作家を目指している女性で、その後も作品を送ってきた。西林は西村の名前で返事を出し酷評した。原稿は燃やしてしまったが彼女はそれを知り殺してやると・・・ ④傾いた密室 5点 崖の上の傾いた屋敷で密室殺人。部屋全体が湿気っていた・・・ ⑤二重誘拐 6点 西村を監禁し女は小説を書けという。女は誘拐犯のようだ・・・ ⑥その男、凶暴につき 6点 女性ライターと現地集合での温泉ルポ。覆面の男が彼女の部屋に現れた。逃亡中の銀行強盗が温泉地に入り込んで・・・ ⑦消失 7点 編集者が原稿を紛失。美女を付けるということでホテルで缶詰状態で書き直し。密室から西村が消えた・・・ ⑧授賞式の夜 6点 日本ミステリ大賞の受賞式で余興で覆面をかぶった審査員4人に暴行を受ける西村・・・ ⑨時の記憶 5点 記憶喪失の男は所持品から西村と思われるが・・・ ⑩エピローグ 5点 西村の部屋で発見された男は75歳の老人だった・・・ |
No.1480 | 8点 | 霧の旗 松本清張 |
(2021/12/02 16:50登録) 映画化が2回、TVドラマ化が9回と人気作品ですね。11名の女優さんが桐子役を演じているわけですが、その一覧を見て一番しっくり来たのは堀北真希さんでした(笑)。この逆恨みと理不尽さが本作の肝ですね。そしてラスト。それは今の時代とは異なり、昭和30年代の女性の決意であり、本作にとってなくてはならないものでしょう。 |
No.1479 | 5点 | 行方不明者 折原一 |
(2021/11/30 16:07登録) 一家失踪事件、5年前の一家殺戮事件、連続通り魔事件と一見関連性のない事件が最後には一つに繋がっていく。筋は面白かったのですが、叙述の切れがイマイチでした。 |
No.1478 | 7点 | ミクロの決死圏 アイザック・アシモフ |
(2021/11/25 18:12登録) 同名のSF映画(1966年)のノベライズ版。物語は単純明快。脳の外科手術が不可能な患者。外科医らをミクロサイズに縮小して体内に送りこみ手術するというもの。制限時間は60分。アイデア勝ちですね。映画ではラストが問題となっていましたが、さすがアシモフ氏、うまく処理しています。 |
No.1477 | 6点 | 青玉獅子香炉 陳舜臣 |
(2021/11/23 09:39登録) ~動乱の世には眼もくれず、佳人の面影をひたすら託した自作の玉器を、ひとすじに追い求める工芸師の三十余年にわたる執念を描いた直木賞受賞作~ 表題作のみの評価。レオナルド・ダ・ヴィンチがモナ・リザを死ぬまで手元に置いていたというエピソードに通じるものがあります。主人公の香炉はもう誰のものでもなく、ただ「美」として存在するということでしょう。そして、こんな恋愛もあるという小説だと思います。本作はミステリーとは言えないと感じ評価は4点、でも小説の良さは8点。解説によると「贋作をめぐるサスペンスとして推理小説の一種と考えていいのではないか」とあったので、真ん中をとり6点としました。 |
No.1476 | 8点 | 鋼鉄都市 アイザック・アシモフ |
(2021/11/20 09:58登録) (東西ミステリーベストの100位)本作のような作品が本来のSFミステリーであり、当サイトで書評対象となるSFの見本であると思いました。真相自体の評価はあまり高くないようですが、「ロボット三原則」や「○○には人殺しができない」がうまく取り扱われており、SFならではの真相と結構気に入っています。評価の高いSF「星を継ぐもの」よりも断然いい(笑)。 |
No.1475 | 6点 | サム・ホーソーンの事件簿Ⅰ エドワード・D・ホック |
(2021/11/17 15:44登録) ①有蓋橋の謎 7点 屋根付き橋の途中で馬車が消失。橋の手前まで轍があるが・・・ ②水車小屋の謎 8点 水車小屋の火事で撲殺死体が発見され、被害者が前日に鉄道便で送った手提げ金庫の中から日誌が紛失・・・火事の理由が秀逸 ③ロブスター小屋の謎 5点 小屋からの脱出マジック。鎖で手足を縛られたマジシャンは喉をナイフで切られた。自殺?・・・ ④呪われた野外音楽堂の謎 7点 野外音楽堂の舞台に現れた黒マントに首縄をつけた怪人が町長を殺害し、閃光とともに消えた・・・動機が良い ⑤乗務員車の謎 9点 車両は金庫室になっており乗務員が中に滞在。その密室内で乗務員が殺され宝石が奪われた。ダイイングメッセージはelf(妖精)とあった・・・ハウダニットばかりにミスリードされ完全に騙された(笑)。宝石の隠し場所も、その特徴を生かしておりGood ⑥赤い校舎の謎 7点 校庭でブランコをこいでいた少年が、十数秒、目を離したら姿を消した。そして親元に身代金を要求する電話が・・・このトリックは思いつかなかった(苦笑) ⑦そびえ立つ尖塔の謎 4点 牧師が尖塔の中に入った。保安官が中に入ると牧師は刺殺されていた。そこにジプシーの男がいたが犯行を否認する・・・ ⑧十六号独房の謎 4点 留置場からの脱出。傑作「十三号独房の問題」のオマージュではあるが・・・ ⑨古い田舎宿の謎 3点 強盗が裏口の廊下から二度も消失・・・脱力系 ⑩投票ブースの謎 5点 選挙の日、投票ブースで刺殺された。周りには誰もいなかった。凶器もない・・・動機が? ⑪農産物祭りの謎 5点 タイムカプセルが埋められたがその中に死体が・・・仕組みがよくわからない ⑫古い樫の木の謎 7点 パラシュートで降下したスタントマンは着地した時、針金で首を絞められ死んでいた・・・成程 ⑬長い墜落 7点 ビルから飛び降りてから3時間45分後に死体が発見された・・・それしか考えられない(苦笑) |
No.1474 | 8点 | 華麗なる一族 山崎豊子 |
(2021/11/12 17:50登録) (再読)海外金融もの「ウォール街」を取り上げたので、国内作品もということで本作をチョイス。本作のモデルともいえる「太陽銀行」と「神戸銀行」は1973年に合併。その後「三井銀行」との合併を経て、現在の「三井住友銀行」に。本作は週刊誌に1970年3月から連載され、1973年に単行本になりました。つまり現実の合併以前に本作が書かれているわけです。山崎豊子さんってスゲー(笑)。内容は富と権力をめぐる人間の野望と愛憎劇です。読みごたえがあります。ミステリー要素と言えば親子関係の謎あたりか・・・ |
No.1473 | 7点 | ウォール街 ケネス・リッパー |
(2021/11/06 10:43登録) (再読)金融映画の金字塔と言われるオリバー・ストーン監督の「ウォール街」のノベライズ版。金融機関関係者には、結構衝撃的な映画だったのかな?と思う次第です。本作は1987年発表され、インサイダー取引という言葉が流行しました。翌年の1988年には日本において改正証券取引法が成立しています。映画が法律を変えた?。物語は単純明快。巨万の富を掴んだ相場師と、彼に追いつき追い越そうとする若き証券マンとのマネー戦争。ジャンルが「金融サスペンス」とあり取り上げました。 |
No.1472 | 5点 | 失踪者 折原一 |
(2021/11/02 18:28登録) ~連続失踪事件を調査するなかで、15年前の同様の事件との関連性が浮かび上がる。月曜日に女が消えること、現場に「ユダ」「ユダの息子」のメモが残されること。犯人はまた「少年A」なのか。~ 前半の少年Aの父親の手紙が冗長ですね。後半はテンポが良かったので、もう少し前半がコンパクトであればと思いました。15年前の少年Aとその父親、現在の少年Aとその父親が入り乱れ混乱させられるという折原一氏の叙述マジックでした。 |
No.1471 | 6点 | さらば友よ セバスチアン・ジャプリゾ |
(2021/10/23 18:09登録) アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンが共演した映画のシナリオをジャプリゾ自身が小説化したものとあります。ブロンソンと言えば「雨の訪問者」(1970)この脚本もジャブリゾとありました。アラン・ドロンはやはり「太陽がいっぱい」(1960)。両作品とも音楽がヒットしました。本作内容は、それぞれ目的の違う二人が金庫に閉じ込められ、いがみ合ううちに友情が・・・というもの。ラスト2行は意味深です(笑)。(敬称略) |