take5さんの登録情報 | |
---|---|
平均点:6.61点 | 書評数:397件 |
No.357 | 7点 | 明日の雨は。 伊岡瞬 |
(2025/06/15 16:26登録) 私、教育関係当事者なので細かいディテールは おやと思うところもありますが、差し引いても 主人公の葛藤や子どもたちの心理描写は楽しめ 且つなるほどと思うところもありました。視点 それは親と子ら、同僚と主人公で多分に変わり そこが本作をミステリーとする点でもあります。 他の方の書評から手に取った作品で、作者初読 これから機会があれば、他の作品も試します。 |
No.356 | 8点 | 白夜行 東野圭吾 |
(2025/06/10 00:16登録) もう10年以上前に読み、書評が しかし青臭い事を言っていたので、 もう一度書きます。縦読み込みで。 この作品の胆は心理描写の関節表現 ことに二人の共依存の強さを本人達 が語らずに悟らせるところです。 ただ、最後の方に重要な台詞があっ て、雪穂について亮司がいう台詞を よみますと、「その後ろ姿は白い影に みえた。彼女は一度も振返らなかった。」 だそう。これまで雪穂を照らしてきた とう事者が死をむかえても、白い影 を失わず、他の誰か、または雪穂が もつ地位美貌財産などで照らし暮ら していくという比喩になっています ろんより証拠、雪穂自身も同じ様に いってます。 「あたしの上には太陽 なんかなかった。いつも夜。でも暗く はなかった。太陽に代わるものがあったから。」 はい、太陽ほど明るくはないけれどと はっきり言ってます。それであたしに は十分だったそう。ここに男女の差 は見られますね。大変興味深いです ! |
No.355 | 8点 | サウスバウンド 奥田英朗 |
(2025/06/08 16:13登録) 作者の作品は、伊良部シリーズも好きですが、 こちらも読み応え十分で、大変満足しました。 まず主人公含む4人の家族が大変魅力的です。 途中までの破天荒で、過去の傷が癒えない感じ それが第二部に入り、お互いが八重山の自然に 潔いほどあらわれて行く様が見事でした。他の 脇役も良い味を出したいます。本作のテーマが 政治・経済に翻弄される少数の声なき声に光を 当てる処にあるとすれば、私にはどストライク 650ページラストを飾る島の放送がググッと 心に刺さりました。全ての方にお勧めできます |
No.354 | 4点 | 口に関するアンケート 背筋 |
(2025/06/07 12:05登録) まずびっくりするほど小さな本 そしてとんでもなく薄い50P 複数の告白から構成される内容 最後のアンケートで作中作判明 内容に見合う費用対効果感じず 550円は質量あたり高額すぎ 印字のグラデも効果に甚だ疑問 作者名背筋は音訓どちら読み? 狙っていて最大のミステリです |
No.353 | 7点 | 全員犯人、だけど被害者、しかも探偵 下村敦史 |
(2025/05/31 20:32登録) 多重解決ミステリーを、さらに捻った努力作。 タイトルから想像する事の一つ上を行く最後。 読む前に300ページしかなく、読み始めて、 途中だれるのですが、最後スピードが増して、 ビックリしているうちに終わりました。さらに ここまでの評価の低さにびっくり。間違いなく 作者は頭が大変切れ、作品はまるで人民協会風 やはりこね過ぎですかね。嫌いじゃないですが。 |
No.352 | 7点 | ロスト・ケア 葉真中顕 |
(2025/05/31 13:49登録) 葉真中顕作品の映えある一つ目 日本ミステリー大賞新人賞受賞 素晴らしい取材から、社会提言 老人介護問題を構造上の欠陥と 日本的先送り主義を突きつける まさに思考の反転を促す作品。 ミステリー要素は人物の思考が 反転する以外は、人称のずらし ちょっぴりしかありませんが、 しかしこれは後のBlueや鼓動に 確かに繋がる作品です。高品質。 |
No.351 | 7点 | シリウスの道 藤原伊織 |
(2025/05/25 12:04登録) 皆様の高評価作品を読んでみました。 広告代理店に勤める主人公の辰村が、 生き馬の目を抜く世界を生きていく、 時代を感じるハードボイルド社会派。 辰村の傍の人物が、過去も現在も共に 魅力的なので一気に読めました。最後 辰村がシリウスをあえて見上げない処 そこが大変ハードボイルドでよいです。 |
No.350 | 7点 | 法廷占拠 爆弾2 呉勝浩 |
(2025/05/19 10:33登録) 前作の評価と今作の評価で、 世間は今作、私は前作です。 相変わらずタゴサクの心理を 会話で描写する作者の力量! ページの費用対効果も高く、 名作だと思います。ただ終盤 実は実はと少し慌ただしく、 前作同様+60ページあれば 説得力が増したかな←結果論 次回のタゴサクに期待します。 |
No.349 | 6点 | 黒石 新宿鮫Ⅻ 大沢在昌 |
(2025/05/17 11:38登録) 現在発行されている作品のラストまで ようやくたどり着きました。第12弾 鮫島の相棒と上司の立ち位置が定まり これからも続きそうではありますが、 やはり第1弾からの流れを振り返ると ピークは去ったと言わざるを得ない… 犯人側のありきたりなカットバック… ささるのは城東地区の描写、私見です。 次回作でありそうを、想像してみます。 ここでもう一段階上げるなら、例えば 阿坂の過去と絡めた事件、最後の手段 鮫島の抱く秘密を隠しきれなくなって 内部対立を起こすとか、藪がどうにか なってしまうか、その辺でしょうかね。 もう一山盛り上げてほしいのですが…… |
No.348 | 7点 | 暗約領域 新宿鮫XI 大沢在昌 |
(2025/05/11 12:23登録) 10弾⇒5弾⇒本作第11弾の順で読みました。 桃井亡き後の作品、実に8年ぶりだそうですが、 描写がようやく令和に近づきました。民泊問題や 北朝鮮との拉致を巡る政治交渉が事件の元です。 シリーズで初めて、700ページの中盤で長いなと 感じるところがありました。会話の遣り取りから 物語は進みますがそこがくどい所がありました。 また、これまでの作品同様に、終わり方によって 次回以降を予見するなら、仙田に変わる相手誕生 (はっきりした)感じです。さあ第12弾です。 |
No.347 | 7点 | 炎蛹 新宿鮫V 大沢在昌 |
(2025/05/10 16:42登録) シリーズ第5弾、遅くなりましたが手元に。 カンチャンを引いて、さっそく読みました。 カットバックで3つの事件のうちの1つを 犯人の人称でえがく為、章の進みが速い事。 外国人抗争、時限放火、娼婦殺人が重なり、 最後にうまく繋がるのがいつもながら流石。 それにしても作者は新宿について、社会学者 といえるほどの理解があると思うのですが、 実地の取材が深いのでしょうか?もしかして ノンフィクションを書いてもよいのではと。 |
No.346 | 9点 | 絆回廊 新宿鮫Ⅹ 大沢在昌 |
(2025/05/06 18:22登録) ずっと続くと、どこかで願っていたことが、 失われてから、やはり幻だったと思い知る。 皆様、飛び石GWは今日を持って終わります。 鮫島と周囲の関係だって同様に変わります。 変わることを受け止め、それでもやはり進む 歯を食いしばりながら進む。そう感じさせて くれる、シリーズ第10弾です。第1弾から 実に20年経つそうで、その間に時代背景も 変わり、鮫島の周囲も変わる。しかし唯一、 変わらないものがあるなら、それは主人公の 生き様でしょう。そういう意味では、相手役 梶原の生き様もまた変わらない、変われない その象徴として効いています。更に作者が、 今回ネットのほぼ日に毎週原稿をあげた事も 変わらないものと変わるものの象徴として、 チャレンジされているのかなと感じました。 固定ファンのみに刺さる作品でなくて、広く 世の中に伝わってほしいのだと感じました。 第1弾からここまで来たのだという感慨が。 全く違う畑から持ってくると思い浮かぶのが スラムダンクの最初、ヒロインとの絡みから やがて流川との関係性に物語が移行していく 同時に絵も洗練されていく様なんですよね。 |
No.345 | 8点 | 狼花 新宿鮫IX 大沢在昌 |
(2025/05/06 10:41登録) 新宿鮫シリーズの本編第9弾、名作。 これまでの白眉ですね。登場人物同士 会話を通してパワーバランスが揺れる その様に作者の筆力をこれまでで一番 感じました。例えば香田と鮫島よりも 毛利と深見、そして香田と毛利(石崎) お互い相手を制しようとしながらも、 会話を通して状況を捉え直していく様 が、臨場感を生み出しています。 ここまで5弾をのぞいた中で一番という 私見ですが、斎藤警部さんの直近書評で 5弾も!と図書館の予約をし直しました。 |
No.344 | 7点 | 灰夜 新宿鮫VII 大沢在昌 |
(2025/05/04 17:44登録) シリーズ第7弾、灰夜の意味が分からず。 鮫島1人九州に赴き、遭遇する麻薬また 新ココム関連の問題に、最後は大爆破! 冒頭から拉致られ、カットバックにより 物語は進行。読みやすさは凄まじい限り。 登場人物其々の思惑が複雑絡み合うため 一気にスッキリささるにはやはり大爆破! |
No.343 | 7点 | 氷舞 新宿鮫VI 大沢在昌 |
(2025/05/04 11:01登録) シリーズ第6弾。第5弾が見つからず 先に第6弾を読むことになりました。 公安や政治家CIA絡みの事件が起きて 晶ではないハーフの女性を絡ませる筋 いかにも男性の男性による男性の為の エンタメ、ハードボイルドでした。 でも面白いんですけどね。終わり方が 次回鮫島と晶がどうなる!?という、 引っ張り方で、でも読むんですけどね。 |
No.342 | 7点 | 無間人形 新宿鮫IV 大沢在昌 |
(2025/05/03 16:19登録) シリーズ第四弾。後に知りましたが、 直木賞受賞作品。確かに読ませます。 90年代の覚醒剤の蔓延を描く中で、 地方財界のインシュラリズムが顕著。 映像的にもこれほど分かりやすく且つ 展開もベタなのに読ませる筆力は相当 まだまだシリーズがGWで進みます。 |
No.341 | 9点 | 向日葵を手折る 彩坂美月 |
(2025/04/27 17:26登録) ミステリーを描くか、また ミステリーで人間を描くか。 彩坂美月さんは、後者です。 主人公みのりの小6から主に 中学生時代の様子で紡がれる 人間模様。潜む大小の謎が、 成長と共にぎこちなく顕に。 読者として追体験しながら、 向日葵をモチーフとした祭り そして事件から物語の全体が 明らかになった時、切なさに 私にはどうしても落涙でした。 司書さんによるYAコーナーの お勧めに感謝します。出会い それは偶然の喜びです。GWの 当初に豊かな時間嬉しいです。 |
No.340 | 6点 | 病弱探偵 謎は彼女の特効薬 岡崎琢磨 |
(2025/04/20 16:36登録) 高校生を主人公とする短編集 安楽椅子探偵、貫地谷マイの 謎解き青春ミステリーです。 貫地谷マイ=患者+病です。 相方は山名井ゲンキなので、 病まないですが最後だけ元気 ではありません。高校は増加 と減ると、ペットの犬は病苦 言葉遊びに関してABC殺人 をなぞる謎も登場して、半分 おふざけで進むのでサクッと 2時間かからず読めました。 |
No.339 | 7点 | 風化水脈 新宿鮫VIII 大沢在昌 |
(2025/04/20 10:10登録) シリーズを3つ読んでから、 一番評価の高い本作を先に。 ハードカバー440ページ、 リーダビリティが高いです。 人物像がしっかりしていて、 Ⅲなどに比べて描写に於いて 男性側も女性側も説得力あり 心地よく読めました。各々が 背負う過去が交差する設定も 素晴らしいです。前後しますが シリーズ他作品も読んで行きます。 |
No.338 | 8点 | Spring 恩田陸 |
(2025/04/13 14:39登録) 448ページ一気読み、圧倒的熱量 精神と肉体の関係はミステリー。 バレエを通してその融合について 捉えた世界観もまたミステリー。 これほど繊細に描き切る恩田陸の 丹念な取材に、心から敬服します 作中で主人公の春が語る世界を、 私たちが追体験する時に、私たち もまた重力から解き放たれて跳ぶ そんな感覚を得られます。名作! ヒキタクニオによるバレエ作品の 『My name is TAKETOO』以来 印象的な作品に、出会いました。 |