home

ミステリの祭典

login
take5さんの登録情報
平均点:6.59点 書評数:366件

プロフィール| 書評

No.326 7点 終りなき夜に生れつく
アガサ・クリスティー
(2025/02/02 13:22登録)
私個人的にアガサ・クリスティ作品の中では、
『春にして君を離れ』がお気に入りなのですが
ノンシリーズとして本作も同様に評価します。

300ページまでスムーズに進む恋愛ミステリー
ラスト40ページで反転するのは叙述の力です。
しかし40ページはやや冗長かなとも思います。
80年前の作品で、古臭くないのはさすがです。

タイトルがキーワードになっていて、物語中盤
対役の女性が奏でるしらべ、読み終わってから
気づいていたのかと、ハッとさせられました。


No.325 7点 宿命と真実の炎
貫井徳郎
(2025/01/26 18:30登録)
前作『後悔と真実の色』の続きなので
キャラの造形がはっきりしている分、
入り込みやすく600ページ一気読み
主人公西条がコンサル役で、代わりに
女性刑事が活躍する分かりやすい構成
ただし前作よりも古書店主などサイド
ストーリーも充実していて、三島から
推理するとかご都合主義健在ですが、
ガルシア・マルケスとか飽きさせない
工夫としていろいろぶっ込んでますね。
Whoダニット+Whyダニットとして、
複数の成りすましもなるほど納得です。


No.324 6点 去就
今野敏
(2025/01/25 20:47登録)
私それほど読むのは遅くない人ですが
400ページを2時間強で読めるのは
シリーズならではのテンプレ展開故に
↑褒めてます。竜崎署長のブレの無い
姿にカタルシス(悲劇ではないが浄化)
そしてキャラ立つ戸高や伊丹の安定感
全て安心するエンタメの極致。これは
6作目ですが、今後もこのままですね
↑褒めてます。旧態依然男性限定で笑


No.323 7点 さよならドビュッシー
中山七里
(2025/01/19 17:23登録)
ドビュッシーの『月の光』また
『アラベスク』の表現が繊細。
しかし話の筋自体はスポコン。
そしてひたすら読みやすい展開
およそ2時間半で読了でした。
終盤での謎解きもなるほど納得
中山七里のデビュー作として、
このミス大賞肩透かし無しです。
音楽を生業とする方は如何に?


No.322 7点 名探偵じゃなくても
小西マサテル
(2025/01/12 18:23登録)
『名探偵のままでいて』に続く第二弾。
このミス大賞は私には微妙な事があり、
されど前作は良い意味で裏切られたので
今作もおおいに楽しみにしていました。

全五章からなる短編集ですが、第一章が
前作のおさらいで第二章からエンジンが
かかります。作者の古今ミステリー愛は
相変わらず端々に表れています。例えば
刑事コロンボの愛犬、『シンデレラの罠』
セバスチャン・シャプリゾも懐かしい!

正直、各章が短い為にご都合的な流れも
ありますが楽しめるので私は許容範囲。

名探偵が名探偵でなくなる日が遠からず
来そうです。それでも次回作を期待する
そんな作品です。大団円希望で如何に✨


No.321 8点 わたしたちに翼はいらない
寺地はるな
(2025/01/04 11:42登録)
登場人物が、
なぜそのような行動をとるのか?
それはどの様に認知されるのか?
認知の変化は何がもたらすのか?

それぞれが学生時代を引きずって
生きている様が筆力高く描かれる
人生の機微こそミステリーです。

寺地はるなさんは人間を描いたら
名人だなと思う次第であります。


No.320 6点 後悔と真実の色
貫井徳郎
(2025/01/03 13:40登録)
500ページを一気に読める
リーダビリティの高い警察物
カットバックの手法で犯人の
狂気が明らかになってきます

フーダニットで最後まで押す
勢いはありますがこの作者、
女性の描き方がご都合主義で
デビュー作品の書評に書いた
ように女性読者に受けなそう。
本庁捜査一課がホームレス迄
一気に行きます?三万でもつ?
あ、私男性故に一気読みです笑


No.319 6点 正しい愛と理想の息子
寺地はるな
(2025/01/02 11:13登録)
「ああ、そうか。
とつぜん視界が開けた。
すべての愛は、正しくない。
正しい愛などというものは、
この世に存在しない。」

タイトルからの反転。主人公ハセが、
詐欺まがいの人生から気づく境地に、
私にも作品から気だるさ曖昧さと共に
やはり気付かされる事がある様です。


No.318 6点 慟哭
貫井徳郎
(2024/12/31 10:25登録)
リーダビリティがかなり高い娯楽作
第4回鮎川哲也賞を近藤史恵『凍える島』
に敗れて獲れなかったデビュー作品。
叙述物としても優れていますし、警察物
社会派としてカルト宗教も描きます。

難癖をつけるとすると、主人公と女性の
遣り取りが、いかにも男視点で書かれ、
仕事の苦労やら背負ってる物の苦労やら
胡散臭いなあと女性読者や若い人に全く
受けないだろうなと、思う次第です。


No.317 8点 川のほとりに立つ者は
寺地はるな
(2024/12/29 16:20登録)
「川のほとりに立つ者は、
水底に沈む石の数を知り得ない。」
※作中『夜の底の川』より

多くの物語がそうである様に、
傷ついた人々が他者に救われ、
そして再生していく。
そんな展開を希望する…

その思い込みこそが罪かもしれない。
作者は作中でそう語ります。

人は誰でも物事を一人称で捉えます。
ここでいう物語は現社会と同意です。
私たちはこの物語を読みながら、
主人公が、勇気を出して差し伸べた手を
振り払われた瞬間の、
痛いほどの恥ずかしさを、
いたたまれなさを追体験するのです。

見えている世界を反転させた時、
痛みと共にそれでも必要だったと
思える読後感を得られました。
読書の可能性を感じる222ページ✨


No.316 3点 死体の汁を啜れ
白井智之
(2024/12/29 12:31登録)
はらわたといけにえの間の作品
いけにえには遠く及ばず、且つ
はらわたにも及ばない私的判断
グロがどうこうという前の問題
へぇというカタルシスもなくて
他の方とかけ離れた評価です。


No.315 7点 タイムマシンに乗れないぼくたち
寺地はるな
(2024/12/27 14:03登録)
人はなぜ同調圧力を疑いながら
そこに屈してしまうのだろう?
人の心の機微を繊細に描く作品
全ての短編が心に残る200ページ
河合隼雄物語賞受賞作者による
素晴らしい物語の数々でした。


No.314 6点 エレファントヘッド
白井智之
(2024/12/22 16:25登録)
『名探偵のいけにえ』の衝撃を
更に追求したらこうなったか!?

グロテスクです。前作よりも更に。
タイムリープという特殊設定で、
パズラーとして多すぎる伏線を
回収しまくりのために描写過多。
真相の一つ前のダミーも上手で、
ロジックを追求したのは分かります。
作者が賢いのも分かります。しかし
これを続けていくといずれ作者が
シスマを投与しないと書けなくなる
という危惧があります。
好みの問題でこの点数御免なさいね。


No.313 8点 今日のハチミツ、あしたの私
寺地はるな
(2024/12/22 09:36登録)
「もし明日人生が終わるとしたら、
 きっとわたしは、喜ぶ。」
という主人公の碧の物語。
ラスト、
「まぶしく光っている方向を目指して、
 ゆっくりと自転車を漕ぎ出した。」
まで、
こうやってネタバレしても構わないほと、
綺麗事とは対極の人物描写。
「あさのはちみつ」がキーアイテムで、
誰の?何処の?何故そのネーミング?
これらが230ページあまりで見事に
描き切られます。
書き下ろし。
私も今朝ははちみつりんごトーストを
食べました。


No.312 6点 ラプラスの魔女
東野圭吾
(2024/12/15 10:25登録)
6年前に読んでいた事すら忘れ、
筋を最初から楽しむという失態。
設定がSFを含むところが最高に
至らない理由ですかね。しかし
相変わらずリーダビリティの鬼。

この世の構成要素として欠けて
いい存在は何一つないという事
流体力学や社会学で証明されました✨


No.311 6点 可燃物
米澤穂信
(2024/12/08 15:37登録)
県警捜査一課の葛班が活躍する短編集
崖の下・・・雪山での滑落遭難もの
ねむけ・・・みんな眠い、やや強引
命の恩・・・もっと悲惨を想像した
可燃物・・・反転力が弱いので残念
本物か・・・反転よしパスタ無意味

全て50ページほどであっという間に
2時間かからず読めますが、米澤氏は
他にも良作があるのでそちらをどうぞ
短編集なら『満願』の方でしょうか?


No.310 7点 クラバート
オトフリート・プロイスラー
(2024/12/08 11:58登録)
ファンタジー要素の児童文学ですが、
全ての年代に耐えうるドイツの傑作。
『大泥棒ホッツェンプロッツ』の作者
オトフリートプロイスラーの作品です。

水車場見習いになった少年クラバート
親方から魔法を習う中で見つける矛盾。
やがて来る親方との生死をかけた対決。

その時、一人の少女の愛が必要となり、
クラバートは、どう気付いてもらうか。

ミステリーはそのくらいですがとにかく
名作なので忘備録として紹介したという
極めて私考的志向な思考ですみません。


No.309 8点 テスカトリポカ
佐藤究
(2024/11/17 17:28登録)
冒頭からメキシコの乾いた風を感じ、
川崎の湿った闇を思う、550ページ。
臓器売買を巡るカルテルの群像劇で、
かつアステカ文明の歴史を元にする
血を血で洗う抗争の凄まじさが圧巻。

正直、
ミステリーなのかは分かりませんが、
6時間も一気に読ませる筆力と熱量。
人間の内に入って描くそのスタイル
時代も場所もちがいますが、例えば
『同志少女よ敵を撃て』が近いか?
そう感じましたが皆様如何でしょう


No.308 7点 鼓動
葉真中顕
(2024/11/10 13:13登録)
「違う。だってその絶望は、あなたのものではないんだから。」

葉真中顕の社会派ミステリー。
今回は引きこもりを主として、
周辺の問題を複数えがきます。

300ページ強を一気読みの、
筆力は新作も相変わらずです。

カットバックの手法は、叙述の
トリックには使われませんが、
人称や時間を越えて収束する様
リーダビリティの元となります。


No.307 5点 バイバイ、サンタクロース 麻坂家の双子探偵
真門浩平
(2024/09/01 16:53登録)
本サイトから評価の高い作品を
拾い読みすることがありますが
私には久しぶりに合わず残念。
小3から小6絶対ない小学生像
言葉遣いラインの扱いも同様で
事件の扱いもオー・ヘンリーを
反転させてとんでも科学らしく
はまれませんでしたすみません
最終章の人物の反転も必要感--
まとめるとシチュエーションに
難ありと思うところです。失礼

366中の書評を表示しています 41 - 60