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ミステリの祭典

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家族シアター

作家 辻村深月
出版日2014年10月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 ミステリーオタク
(2025/10/23 20:33登録)
 勿論作者のお名前は以前から存じ上げている(つーかこの人も後輩でした)が、その作品を実際に読むのはこの短編集が初めて。

 《「妹」という祝福》
 どういう話を書いてくるかと思えば・・・思春期の姉妹の何とも濃厚な物語。う〜ん、わかるところもあるが、わからないところもある、としか言いようがない。読みやすくて面白くていい話だとは思うが、てっきりミステリかと思ってこの本を読み始めた自分には・・

 《サイリウム》
 アイドルオタクのハタチ男とバンギャ(バンド追っかけギャル、ハタチ以上だとオバンギャとも言うらしい)の姉のファンキーな物語。
 「ふうん」って感じ。

 《私のディアマンテ》
 あまり賢くなさそうな元キャバ嬢の母親と頑張り屋で勉強ができるがオシャレに興味がなく恋愛にも縁がなさそうな高校生の娘の何ともぎこちない関係を描いた物語。
 途中まではあまり面白くない上に、時系列が交錯して混乱しそうになるところもあるが3分の2位のところからガラリと印象が変わる。コレは気がつかなかった。
 関係ないけれど小学校の林間学校が一週間というのはいくら何でもあり得ないだろう。

 《タイムカプセルの八年》
 まあ、いい話だと思うし最後のオチも悪くないが内容の割にはダラダラ長過ぎの感が否めない。先生の所行もイマイチしっくり来ないし。それはともかくふとアイドルルネッサンスの「PTA~光のネットワーク」を思い出した。また(前半までの)お父さんの性格はよく解かる。多分自分に近いから。

 《1992年の秋空》
 第一話に続いて年子の姉妹の物語。(辻村さん、多分・・)
 「科学」と「学習」、懐かしいね。
 自分も小1か小2の頃「科学」でLやdLなどを実感覚で覚えたり「学習」で印象深い物語を読んだりした記憶がある。
 タイトルの出自は前半で明確にされるがこの年の夏から秋、作者は12歳で主人公より学年が1つ上の中学1年だったはず。当然当時の自分への思い入れが強い話(「科学と学習」のために設定学年を1つ下げたのだろう)だと思うが、その歳頃の女子があの事に強い関心を持っていたのだとしたら、作者は主人公よりも主人公とは対照的なその妹に自分を投影させていたのかもしれない。
 後半は個人的にはある事情により、この姉妹が自分の子供達(姉弟だけど)とダブる部分があることもあって、少し胸が詰まる思いで読んだ。

 《孫と誕生会》
 妻に先立たれながらも充実した生活を送る独居だった爺さんと、そこへ家族と伴にアメリカから帰国してきたチョット人づきあいが苦手な8歳の孫娘の物語。
 少し痛ましいエピソードが続くがマトメは・・・
 そして最後の爺さんの心情描写が綺麗事ではない本心であるところには共感。
 余談だが主人公のように自分も娘が小4の時に学校の特別授業で臨時講師の一人として喋ったことがあるが、本作みたいに司会役の先生が(皆わかっているのに)「◯◯さんのお父さんでーす」などという紹介のしかたをしたり、話す方も「▢▢がお世話になっています」などという挨拶することはあり得ない。そんな指名的なことをされたら普通の小3~4の女子なら、全員からの意味がよく分からない意識の集中を感じてどんな顔をすればいいのか困惑するだけだろう。

 《タマシイム・マシンの永遠》
 最終話は本書の中ではズバ抜けて短かい20ページ弱の作品。
 四世代家族の心の中のSF物語。
 乳児(?)の伸太(しんた)の名前の由来が「のび太」なのが微笑ましい。


 予期せず読んだ家族の「人間関係」がテーマの非ミステリ(ミステリっぽい要素がある話もあったが)短編集だったが、どれもとても読みやすくて殺伐としたミステリの合間に読むのには悪くないと思う。

No.2 7点 take5
(2025/07/20 13:47登録)
家族にまつわる短編集全7編
琴線に触れた順番に、
「1992年の秋空」
「孫と誕生会」
「タマシイム・マシンの永遠」
それぞれの作品が、
姉妹
祖父と孫
夫婦幼子父母祖父母
それぞれの葛藤を鮮やかに
ラスト爽やかに描いていて
改めて辻村深月さんは
素敵な作品を書くなと思います。
余談ですが、
御本人の藤子・F・不二雄愛を
最後の作品の登場人物を通して
強く感じます。分かるな〜

No.1 6点 白い風
(2015/01/27 22:51登録)
姉妹・姉と弟・母娘・父息子・祖父孫そして夫婦・・・。
色々な家族のちょっとしたすれ違い・いざこざの短編集でしたね。
登場人物の中にはちょっとイラッとするキャラもいたけど、最後は上手く収まっていましたね。
私は息子の夢をさり気無く守った「タイムカプセルの八年」と不器用な小学生姉妹の「1992年の秋空」が良かったかな。

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