HORNETさんの登録情報 | |
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平均点:6.32点 | 書評数:1163件 |
No.143 | 6点 | お前が犯人だ エドガー・アラン・ポー |
(2011/02/13 15:08登録) 資産家シャトルワーズィ氏が殺害され,次々と明らかになる状況証拠から,甥に疑いがかけられ,甥は収監される。しかし,事件が解決したと思われたそのときに,死体となったシャトルワーズ氏が表れ,「お前が犯人だ」と名指しする。 話の展開からも,タイトルにより最後に真犯人が示されるのだという予測からも,読んでいるうちに大体の筋書きは読めてきてしまう。それでも,その最後の瞬間が楽しみで,興味は失せない。真犯人が最後に明らかにされるという形からも,一応ミステリの体をとっている作品といえるのではないだろうか。 |
No.142 | 5点 | 盗まれた手紙 エドガー・アラン・ポー |
(2011/02/13 14:53登録) 殺人は起きませんが,ポーの推理小説は三篇とする説によれば,「モルグ街」と「マリー・ロジェ」とこの作品だそうです。(初期は「探偵小説」と言われていただけに,単にデュパンが登場するのがこの三作品だからかもしれませんが)盗まれた手紙がどこにあるか?をデュパンが推理するのですが,その種は(特に今では)単純といえば単純です。しかし,この視点というか手法は,手を変え品を変えその後多くの作品に応用されたことを考えると,最初にこの視点を生み出したポーの力量の高さ,頭の良さは十分に感じられると思います。 |
No.141 | 5点 | モルグ街の殺人 エドガー・アラン・ポー |
(2011/02/13 14:42登録) 世界初の推理小説としてあまりにも有名で「犯人」も知っているので,デュパンがどのように推理を進めるのか,最初の推理小説とはどんなものなのか,が興味の中心でした。 各証言が箇条書きのように並べられ,それを付き合わせたデュパンの推理の部分がそのあとに続く構成ですが,余分な描写や場面展開がなく,ある意味読みやすく感じました。(冒頭のデュパンの人となりを紹介する部分はその逆ですが・・・しかし「探偵」という人物が登場する初めての物語だったことを思うとこういうものでしょう)。 事件と「犯人」だけを聞くと,「何だそりゃ」と笑ってしまいますが,読んでみると犯人特定のための筋道だてた推理はちゃんとされていて,納得もしました。 |
No.140 | 6点 | マリー・ロジェの謎 エドガー・アラン・ポー |
(2011/02/13 14:35登録) 「モルグ街の殺人」の続編として,探偵オーギュスト・デュパンが登場し,マリー・ロジェという女性の殺害事件解明に挑むのですが,これはニューヨークで実際に起こった,メアリー・セシリア・ロジャーズという二十歳の女性の暴行殺害事件をモデルとした話となっています。 実際の事件も未解決で,この創作はポーの事件への推理でもあるようです。作品発表後に分かった事実もあるようで,そう思うとこの推理がどこまで的を射ているのかは分かりませんが,各新聞の論調・推理について一つ一つ検討していく過程は非常に論理的で,読ませるものがあります。 何よりも,真相は今も闇の中,ということが何か背筋をぞくっとさせます。 |
No.139 | 6点 | 儚い羊たちの祝宴 米澤穂信 |
(2011/01/30 14:10登録) 副題にある「バベルの会」という読書サークルが全短編を通して登場するが,作品によってはほぼ不要のものもある。むしろ,贅沢なお屋敷に住むお嬢様の召使(女性)が物語の主要人物(ときには語り手)になっているという共通設定が面白い趣向だと感じた。ラストのどんでん返しに主体を置いた作品集だと受け止めるが,その評価は作品によりけり。私としては,「身内に不幸がありまして」「玉野五十鈴の誉れ」がよかった。 |
No.138 | 7点 | 暴雪圏 佐々木譲 |
(2011/01/30 14:02登録) 「制服捜査」の駐在警官,川久保を主人公にした長編。積雪の中から発見された女性の死体,ヤクザの留守宅に押し入った強盗,出会い系サイトとで知り合った男性との不倫関係を清算したい主婦,社長の金を盗もうとする中年男性,義父のいたずらに耐えかねて家出した少女・・・十年来の猛吹雪となった道東を舞台に,複数のストーリーが並行して進み,やがて一つの場所につながっていく。それぞれのストーリが間断なく展開していくため,読んでいてまったく退屈しない。川久保巡査の誠実で勇気ある人柄も前作と変わらず,好感がもてる。一晩読み続けてしまった。おりしも,外は雪で,読書の舞台効果も満点だった(笑)。 |
No.137 | 7点 | 三つの棺 ジョン・ディクスン・カー |
(2011/01/30 13:51登録) 不可能犯罪,仕掛け・細工を弄したトリックを主体にした謎解きものは現在の作品にはあまりないので,こういう古典でこそ楽しめます。トリック主体の小説であるためか,無駄な場面の推移がなく,全編が事件と謎解きに費やされているのもこの時期の本格作品を感じさせます。 トリックのための事件だったのではないかと思うぐらい,「そんなのありか」というタネでしたが,さすが密室トリックの第一人者,よく考えたなあと思いました。 |
No.136 | 7点 | 新海外ミステリ・ガイド 事典・ガイド |
(2011/01/30 13:35登録) 海外ミステリはまだまだ新規参入者なので,純粋に指標としてほしいと思い購入しました。「海外ミステリの歴史」「各派」「名探偵の系譜」「トリック」などが整理されてまとめられていますが,それぞれが文章で解説され,作品について著者の主観的な評価が書かれているのが,私としてはよかったです。著者と作品名をリストのように並べられても,私にはなかなか分からないので・・・。「トリック」の章は,まだまだ未読の多い私は,目を逸らすのに必死でした(笑)。 また,ミステリの歴史や各派など,体系的なことについて知識を得るのも楽しめました。今後読みたい本ばかりがぐんと増え,ますます読書意欲が高まりましたが,全てこなせるだけの時間はなかなかないでしょう・・・。地道にがんばります。 |
No.135 | 6点 | ローマ帽子の秘密 エラリイ・クイーン |
(2011/01/30 13:15登録) 処女作らしく,一つの謎を解き明かしていく過程を純粋に丁寧に描いてあります。犯人へとたどり着く手がかりは,まさにタイトルの「ローマ帽子」一本で,現在読むと、物足りなさを感じるところもあります。ミスリードの役割も果たす捜査の各段階の描写は,読むのがもどかしく感じる部分もありますが,古典作品らしいよさだとも感じます。 犯人特定にいたる決め手も,「そんなこと書いてあった?」と思うぐらい描写に埋もれていた感がありましたが,何にせよ氏の記念すべきデビュー作を読んだという満足感はありました。 |
No.134 | 6点 | マリオネットの罠 赤川次郎 |
(2011/01/30 12:56登録) <ネタバレぎみ> ラストにさらなる真相があるとはそもそも考えていなかったので,アンフェアだとは特に思いませんでした(というかそういうどんでん返しがそもそもアンフェアなのかもしれませんが)。ただ,あのラストによって面白さがグッと増したのは間違いないです。タイトルの意味も納得できました。内容は残酷でしたが。 軽妙なタッチの作品が多い著者ですが,私は著者のこういう作品のほうが好きです。 |
No.133 | 6点 | 招かれた女 赤川次郎 |
(2011/01/30 12:41登録) ユーモア・ミステリが有名な氏としては希少なサスペンスの様相が強い作品です。赤川氏の作品解説文などでは,「マリオネットの罠」と二つ並べて,他作品とは違う位置づけがされていました。 なるほど,軽妙なタッチの他作品とはちがい,怖さ,陰惨さを感じさせる物語で,読みやすさもあって一息に読んでしまいました。ラストも意外な結末に驚かされました。 |
No.132 | 5点 | チーム・バチスタの栄光 海堂尊 |
(2011/01/16 18:07登録) ミステリの味付けがされた医療エンタテイメントという感のほうが強い。犯人が意外(でもないか)なだけであって,物語の筋としては犯人探しがメインではあるが,楽しみとしては田口&白鳥コンビの魅力がメインといった感じ。 楽しく一気に読めたのは間違いないが,これ以降このシリーズを積極的に読む気にはあまりなれなかった。 (最新の「アリアドネ・・・」はミステリ要素が濃いといううわさなので読んでみたいが) |
No.131 | 6点 | ZOO 乙一 |
(2011/01/16 18:01登録) ここでも多くの人が推していて,私の周りでもまず話題に上がる「SEVEN ROOMS」がやはり印象的。息をもつかせぬ緊迫した雰囲気と,ラストにちゃんと仕掛けが施されていて面白かった(想像すると気持ち悪くなりますが)。あと個人的には「Closet」がミステリ要素が強く,よかったです。 |
No.130 | 4点 | 独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明 |
(2011/01/16 17:56登録) 残酷・凄惨な描写,通常の感覚を完全に失って普通にしている登場人物・・・作者の頭の構造というか,発想の源を見てみたい。そうした常識的な感覚では図れない世界を,さも普通のことのように描いているので,ちょっとついていけない感じがします。面白かったですが,一度読んだらもういいかな,と思う作品です。 |
No.129 | 4点 | 生首に聞いてみろ 法月綸太郎 |
(2011/01/16 14:01登録) 凝った設定だと思うし,著者なりに力を入れて書いた作品だという感じはしますが,正直読み疲れました。というのも一番は,石膏像の作り方という立体的な作業を文章により説明しているのですが,最終的にイマイチイメージが出来ず,たぶん本当の所で私は分かっていません。そのほかにも,アトリエの状況など,よくあるように挿絵や図の一つでも入れてくれれば分かりやすいのに・・・と思いました。 タイトルからおどろおどろしい本格ミステリを想像していたのですが,そうでもなかったところもマイナスポイントになりました。 |
No.128 | 7点 | 三毛猫ホームズの推理 赤川次郎 |
(2011/01/16 13:54登録) 軽い作風・タッチにより,万人に受け入れられ,一時はかなりの売れっ子作家だったためか,非常に多くのミステリを書いているにもかかわらすミステリ読者にはあまり受け入れられていない感のある作者ですが(まぁ少年少女向けの文体ですから,大人には物足りないということもありますが),この作品の密室トリックについては,私としては「舌を巻く」思いでした。 私も例に漏れず,読んだ当時は確か中学生ぐらいでしたので,今ならすぐにピンと来る,プレハブから机椅子が出されていたという状況も,当時は何も分からず,種明かしの段になってやたら感心した覚えがあります。 今でも,アイデアとしては秀逸なものを感じます。 |
No.127 | 9点 | 模倣犯 宮部みゆき |
(2011/01/16 13:49登録) 個人的に宮部作品の中では一番(まぁ世評でもそうですが)。上・下巻この長さで,2回読んだのはこの作品ぐらいです。ということは言い換えると,謎解きだけが面白かったわけではないということかもしれません。 娘を殺された有馬氏と少年のつながり,兄が殺人犯に仕立てられ,その無実を晴らそうとする中で相手に取り込まれていく妹,物語の途中で明らかにされる真犯人,ジャーナリストとして事件の解明に取り組む女性・・・物語の筋立て,展開全てが新鮮で,読み終えたあとは非常に充足感がありました。 ただ,最後に犯人を追い詰める役を,あの人がやってしまったのには少しすっきりしない感じがしました。基本的にその人のことはあまり好きになれなかったので。同じ理由で,続編である「楽園」も読んでいません。 |
No.126 | 8点 | 魔術はささやく 宮部みゆき |
(2011/01/16 13:39登録) 純粋なミステリが好きな私ですが,この作品はこれでサスペンスとして非常に楽しませてもらいました。催眠という,不確定要素が強いものをトリックに持ち出してくる時点でまぁミステリとは言い難いですね。しかし,催眠をかけられた人間が,その時刻ぴったりに(こういうところが非現実的な感じなわけですが)自分の部屋に入ってきて,焦点の定まらない目で言葉を発するシーンには戦慄が走りました。 宮部作品の中では「模倣犯」に次いで好きです。 |
No.125 | 6点 | 我らが隣人の犯罪 宮部みゆき |
(2011/01/16 13:33登録) ミステリ好きでなくても,一般的に好まれそうな「うまい」作品集。多くの方がいうように私も「サボテンの花」には顔がほころんでしまいました。話の内容を忘れたころに何度読んでも楽しめそうな短編集です。 |
No.124 | 4点 | とり残されて 宮部みゆき |
(2011/01/16 13:29登録) ミステリの短編集だと思って読んだらそうではなかったので残念。一つ一つの話はうまいし,それなりに面白いのですが,超常現象を扱う作品はあまり好みではありません。(といいつつ「魔術は・・・」は好きですが) |