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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2432件

プロフィール| 書評

No.492 6点 虎の首
ポール・アルテ
(2010/06/17 21:07登録)
バラバラ殺人事件と村の盗難事件に続く密室殺人がカットバック手法で描かれていくプロットは、読者を幻惑させるより謎の核心を散漫にさせ、成功しているか微妙です。
ツイスト博士のトランクに死体の一部が入っていたエピソードや二つの事件の関係がある意味「三つの棺」と類似していたりで、ディクスン・カーの影響が覗えますが、真相の隠蔽という点では邦訳作品内で上位の佳作といえると思います。


No.491 6点 チャーリー退場
アレックス・アトキンスン
(2010/06/17 20:33登録)
植草甚一が作品の選定&解説を務めた幻の叢書”クライム・クラブ”のなかの一冊。当叢書はあまりの玄人好みの選定で、読者を選ぶ作品が多いのですが、本書は比較的オーソドックスな劇場ミステリです。
主演男優の楽屋の殺人を描いていますが、多くの劇団関係者が登場し派手さのない展開は英国ミステリの典型です。本職のミステリ作家の作品に引けを取らない端正な本格編でした。


No.490 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅰ〉
エドワード・D・ホック
(2010/06/17 20:11登録)
オカルト探偵サイモン・アークの第1短編集。
シリーズ作品は60作以上書かれていますが、発表順の全集ではなく、各年代からチョイスされているのはちょっと残念。
著者の短編デヴュー作の「死者の村」が探偵の特質を活かしたオカルト色の強い設定で編中のベストですが、年次を重ねる毎にアークが普通のキャラになっているように思います。
不可能犯罪の趣向が光る「狼男を撃った男」が準ベスト作品です。
他の作品集で読める作品が多く含まれているため編集方針に▲1点。


No.489 7点 女占い師はなぜ死んでゆく
サラ・コードウェル
(2010/06/17 18:57登録)
ヒラリー・テイマー教授を探偵役とするシリーズ第4弾。
大学教授と教え子が安楽椅子形式で殺人事件の真相を解いていくというのがシリーズの常道で、本作も女占い師の謎の死を、主に関係者からの手紙で事件を描写しながら推理していきます。
若干地味な印象もありますが、複数人物による推論を二転三転させる手際は巧みで、本格ミステリのツボを押さえています。作者急逝により本書が遺作になり、テイマー教授の人物像(性別も不明)も謎のままとなりましたが、もっと読みたかったシリーズです。


No.488 8点 真夜中の死線
アンドリュー・クラヴァン
(2010/06/17 18:38登録)
タイムリミットものサスペンスの傑作。
死刑囚の無実を確信した新聞記者が、残されたわずかの時間内に冤罪を晴らすべく孤軍奮闘するというプロット。同類のサスペンスはいくつか読んできましたが、定番の展開と思いながらも物語に引き込まれました。
要因は構成の巧さと達者な筆力で、一人称部分の新聞記者エヴェレットのダメ男ぶりな人物造形と、三人称部分の死刑囚の緊迫した心情が対比して描写されて物語が進展していくところ。
仕事と家庭両面でのダメ男が最終局面でどう変わっていくか、サスペンスとともに人間ドラマとしてよく書けています。


No.487 6点 騙し絵
マルセル・F・ラントーム
(2010/06/16 21:21登録)
厳重監視下の室内からの宝石の盗難がメイントリックの不可能犯罪もの本格?ミステリ。
いかにもフランス本格らしい大らかで豪快なトリックは無茶だけど面白い。多国籍警察官という発想もすばらしい。細かいことを言わずに笑って楽しむ作品。
後半の冒険サスペンス風の展開も、アルセーヌ・ルパンを輩出させたお国のミステリらしくてなかなかいいですね。


No.486 5点 魔法人形
マックス・アフォード
(2010/06/16 21:06登録)
悪魔学研究家の屋敷を舞台にした古典本格ミステリ。
たしかに豪州のディクスン・カーと称されるように怪奇趣味と不可能犯罪が描かれていますが、トリックが平凡な上に偶然を利用していたりで本家ほどのテクニックが感じられませんでした。
伏線がこまめに張られていますが、描写が正直すぎて真相が分かりやすくなっています。


No.485 8点 狙った獣
マーガレット・ミラー
(2010/06/16 20:52登録)
米国の三大女流サスペンス作家のひとりマーガレット・ミラーの代表作といわれる作品。
巨額の遺産を相続した女性宛に架かってきた死を予言する電話で物語の幕が開きます。
マクロイやアームストロングのサスペンスとの一番の相違点だと思うのは、心理描写が執拗で重厚な点で、単にミステリの道具となっていないと思わせるところです。そのため結末のサプライズに欠ける作品もありますが、本書は文学性とミステリ趣向のバランスがとれた名作だと思います。


No.484 5点 技師は数字を愛しすぎた
ボアロー&ナルスジャック
(2010/06/16 18:57登録)
不可能犯罪を扱った正統派の本格ミステリ。
従来のような登場人物の心理の綾を絡めたサスペンス風のテイストは全くありませんので、ボアローの単独作と言われても違和感がない作品です。
これでもかというぐらい密室殺人が連続して起こりますが、淡泊な描写で物語が味気なく感じられ、内容の割に緊張感がないですね。


No.483 6点 ひとりで歩く女
ヘレン・マクロイ
(2010/06/16 18:41登録)
著者が従来の本格から作風を転換する契機になったサスペンスミステリ。
物語はいきなり女性の手記で始まります。
大金の運搬を依頼された女性が、西インド諸島からワシントンに向かう客船上で身の危険を感じ、警察署長宛てに手記を残すというプロットですが、作者が意図した仕掛けが序盤で察せられたため、期待したほど読了時のカタルシスは得られませんでした。
「地の文章で虚偽の記述をしてはならない」というミステリのルールの境界線を狙ったような感じですが、クリステイならもっと上手く騙せたように思います。


No.482 7点 無実はさいなむ
アガサ・クリスティー
(2010/06/15 21:58登録)
冤罪がテーマのノン・シリーズ長編ミステリ。
慈善家の老婦人殺しの罪で逮捕され獄中死した養子ジャッコの冤罪疑惑を巡る物語。
本書は著者自身が好きな作品の一つに挙げているようですが、一般的な人気はさほどないようです。テーマが重たく物語が暗いトーンに覆われていることと、シリーズ探偵が出てこない点が理由じゃないかと思います。
クリステイを読むのは約20年ぶりなので、思ったより新鮮な感じを受けました。犯人の設定方法は女史の得意のパターンなんですが、普通に面白かったですね。


No.481 6点 泥棒は哲学で解決する
ローレンス・ブロック
(2010/06/15 21:20登録)
泥棒バーニイ・ローデンバーが探偵役を務めるシリーズ第4弾。
泥棒に入った先で死体に遭遇したり、関係者が殺されバーニイが容疑者になるという同じパターンで巻き込まれ型探偵を演じます。一人称形式で語られるバーニイの軽妙なアメリカン・ユーモアも楽しみの一つですが、毎度きっちりフーダニットものの本格ミステリになっていて、今回も大団円では関係者を集めての謎解きが見られます。
本作は特に犯人特定のロジックがきれいに決まっているように思いました。


No.480 6点 嘘は刻む
エリザベス・フェラーズ
(2010/06/15 20:58登録)
射殺死体が発見された家の100個以上の時計が全て誤った時間を刻んでいたという謎に素人探偵が挑むというストーリー。タイトル通り「嘘」がテーマで、時計だけでなく事件関係者たちの供述も嘘で固められています。
時計の謎はあまり感心できませんでしたが、プロット上の仕掛けはなかなか意表をつきました。
トビー&ジョージシリーズのような軽妙な語り口は影をひそめていますが、まずまずの本格ミステリでした。


No.479 7点 事件当夜は雨
ヒラリー・ウォー
(2010/06/15 20:31登録)
警察小説の大家ヒラリー・ウォーの看板シリーズ、フェローズ署長ものの第3作。
著者の代表作といわれる「失踪当時の服装は」は、捜査状況をリアルに描いていて確かに読み応えが充分ですが、ミステリとしての趣向が弱い印象でした。
本書は遅々として進まない捜査状況や捜査官の人物造形の書き込みが弱いという欠点もありますが、フーダニットとして優れていると思います。真犯人像も発表年次を考慮すれば非常に現代的で、今読んでも違和感がない点が評価できます。


No.478 6点 魔王の足跡
ノーマン・ベロウ
(2010/06/15 18:58登録)
魔女が縛り首になった樹の伝説とか雪野原途中で消えた足跡など、怪奇趣味と不可能興味溢れるプロットはまさにディクソン・カーを彷彿とさせます。
不可解な事象に対して、色々と推論を重ねていくスタイルをとっているのもいいです。探偵役のスミス警部の印象はいまいち薄いですが、怪奇現象研究家の女性が面白いキャラクターで補っている感じです。
傑作とは言えないかもしれませんが、他の作品もこのような作風ならもっと読んでみたい作家です。


No.477 6点 証拠は眠る
R・オースティン・フリーマン
(2010/06/15 18:36登録)
ソーンダイク博士ものの長編ミステリ。
倒叙形式ではなくフーダニットですが、犯人はある程度見えやすくなっています。ミステリとしての一番のキモは砒素による毒殺方法がなかなか分からない点で、(実際に実行可能か判然としませんが)この真相はなかなか意外でした。
作者に対しては古臭くて退屈というイメージでしたが、本書に関してはいい意味で予想を裏切ってくれています。


No.476 5点 フレンチ警部の多忙な休暇
F・W・クロフツ
(2010/06/15 18:16登録)
旅行会社社員モリソンがイギリス列島巡行の豪華船事業計画に協力するうちに船長の殺人事件に巻き込まれるというストーリー(「フレンチ警部と賭博船」という別題があったようです)。
前半のモリソン視点の物語は例によって少々退屈で、初期の重厚さはありませんが、フレンチ登場後のアリバイ崩しはまずまず面白かった。写真の工作によるアリバイトリックとしては、この作品が先駆かもしれません。


No.475 4点 虚空から現れた死
クレイトン・ロースン
(2010/06/15 18:00登録)
奇術師探偵ディアボロが登場するミステリ中編2本収録。
探偵の職業やデビュー長編に似たタイトルから、グレート・マーリニもののようなガチガチの本格編を期待しました。たしかに2編とも密室殺人を扱っていますが、テイストはバットマンなどの米国漫画を彷彿とさせるヒーローものの通俗ミステリでした。
不可能興味満点の発端に対して解決が腰砕けなぶん落胆は大きかったです。


No.474 5点 さかしま砂絵
都筑道夫
(2010/06/14 22:26登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第11弾。
まとまったシリーズ本としては最終巻となる本書も、本格ミステリとしてはあまり読みどころのない作品集でした。「退職刑事」もそうですが、シリーズものは作者自身が飽きてしまって目先を変えるため、本来のコンセプトを捨ててしまうパターンが多いですね。


No.473 4点 いなずま砂絵
都筑道夫
(2010/06/14 22:13登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第10弾。
人間消失などの不可能興味でハウダニットもののミステリとして構築できる話もありますが、アイデア枯渇の感じが明確に覗われて残念な出来です。
前作に続いて、長屋のアウトロー仲間が容疑者となるパターンが続くのも気になるところ。

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