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ミステリの祭典

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技師は数字を愛しすぎた

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1960年01月
平均点5.20点
書評数5人

No.5 5点 人並由真
(2023/08/22 18:18登録)
(ネタバレなし)
 パリにある原子力関連施設。そこで技師長ジョルジュ・ソルビエの射殺死体が見つかり、同時に重量20㎏ほどの特殊な新装置で制御された核物質のチューブが持ち出されていた。核物質の扱いを誤れば、パリの大半が壊滅する大惨事となる。しかも殺人現場は密室と言える状況であり、ソルビエの同僚の科学技師ロジェ・ベリアールの戦友のパリ司法警察の警部マルイユが事件を担当するが、やがて証拠らしき物件から容疑者とおぼしき、とある人物の名が浮かび上がる。

 1958年のフランス作品。
 謎の設定だけ聞くと、不可能謎解きパズラーの興味を軸に、核パニックの恐怖を踏まえたスリラー要素で味付け……という感じ。まあ実際に読むとムニャムニャ。

 事件の真相(広義の密室の解法)に関しては、評者でも想像の範疇。
 作中のプロの捜査陣のただの一人も<そういう可能性>について発想しなかった、ということになるが、すごくリアリティがない。
(いや、流れから言えば、その手のポイントについての言及が出てきて、それが何らかの経緯や事由で打ち消されるまでがセットだと思っていたのに、出てこないから悪い予感をおぼえていたら、まんまと当たった。)

 核物質の脅威から半狂乱になるパリ警察のヤンエグ本部長(無理もないが……)に尻を叩かれながら捜査に務めるマルイユ警部の奮闘ぶりは、けっこういい味を出していた。レギュラー探偵を作らない作者コンビだけど、例外的にこの探偵役は、今後の続投があっても良かったと思う。

 そこそこ楽しめたが、長年のツンドク本への溜まった期待にはとても応えてくれなかった一冊ということで、この評点。

No.4 5点 クリスティ再読
(2018/12/24 23:54登録)
ボア&ナルにしては、登場人物のツッコミが今ひとつなパズラー風の作品。ここは人間消失の「不可能性」に翻弄されたマルイユ警部が、どんどんと妄想の深みにハマって、正気を失いつつもたまたま真相に頭をブツけてしまって、茫然自失する...というのをボア&ナルだから期待するんだけど、そういう風でもない。ここらが惜しいあたりかな。どうも上層部に信用してもらえなくて..というあたりが淡白になってしまうあたりを、もう少し「らしく」扱えたらいいのにね、と評者は思う。
不可能興味の人間消失とは言っても、第一感で「こんな真相だったらヤだな」と思うようなのが真相。解明されてもあまり大して嬉しくないのが正直な気分である....要するにね、「不可能」を連打しても、その「改め」が甘いから「どうせ抜け道あるだろ」と期待値が上がらないんだよね。まだからいいのはタイトルだけ。「技師は数字を愛しすぎた」ってカッコいいけど、深読みする必要は全然ない。残念。

No.3 5点 nukkam
(2014/09/02 10:56登録)
(ネタバレなしです) 本格派推理小説家のピエール・ボワロ(1906-1989)とサスペンス小説家のトーマ・ナルスジャック(1908-1998)が合作を開始したのが1951年、どのように取り決めたかはわかりませんがこのコンビによる作品は恐怖描写を特徴とするサスペンス小説だったので、その種の作品が苦手な私は1冊も読んでいませんでしたが1958年発表の本書は例外的な本格派推理小説ということで読んでみました。殺人現場(核研究施設)から犯人と共に核燃料チューブが消えたという事件を扱っていますが、核燃料盗難による不安描写はそれほど強調されず、謎解きを前面に出したプロットになっています。不可能犯罪トリックはジョン・ディクスン・カーの某作品と似ており、まあそれだけで弱点とまでは思いませんが推理説明があまり上手くないのは(特に第2の事件の説明)残念です。私の理解力が弱いというのもありますけど。

No.2 6点
(2012/12/19 22:28登録)
登場人物の不安な心理を執拗に描いて強烈なサスペンスを生み出すフランスのコンビ作家による異色作です。300ページ足らずの文庫本で不可能犯罪がなんと4回、それもすべて30秒以内という短時間に犯人が密室から消え失せるというよく似た現象が起こります。真相は最初の殺人を除くとがっかりだという人もいるでしょうが、偶然もうまくからめていて、個人的には好みにはまっています。
メインになるその最初の殺人については、カーの某作品との類似も指摘できますが、そういうことだったのかと納得させられました。まあその前段階の原理だけだったら、誰でもすぐ思いつくパターンですが。
ただ、今回は事件を担当したマルイユ警部の心理が描かれているのですが、不可能犯罪と核物質盗難に頭を悩ましているだけなので、他作品のような得体の知れぬ怖さが全くないところ、平板との批判ももっともだと思えます。

No.1 5点 kanamori
(2010/06/16 18:57登録)
不可能犯罪を扱った正統派の本格ミステリ。
従来のような登場人物の心理の綾を絡めたサスペンス風のテイストは全くありませんので、ボアローの単独作と言われても違和感がない作品です。
これでもかというぐらい密室殺人が連続して起こりますが、淡泊な描写で物語が味気なく感じられ、内容の割に緊張感がないですね。

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