嘘は刻む |
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作家 | エリザベス・フェラーズ |
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出版日 | 2007年03月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | nukkam | |
(2016/07/28 09:24登録) (ネタバレなしです) 1954年発表の本格派推理小説です。正直こういう真相は私の好まない種類なのですが、巧妙な手掛かりと証言の矛盾の鮮やかな解き方は実に見事です。物語の雰囲気は全般的に暗く、登場人物の性格描写や彼らが織り成す人間ドラマには後年デビューするD・M・ディヴァインの作風を髣髴させるところがあります。 |
No.2 | 6点 | mini | |
(2016/03/09 09:58登録) 今月初に論創社からフィルポッツ「極悪人の肖像」とエリザベス・フェラーズ「カクテルパーティ」が刊行された 私は3大倒叙に続く第4の倒叙型作品としてはオースティン・フリーマンの「ポッターマック氏の失策」だと思っているのだが、「極悪人の肖像」が第5番目の存在に成り得るのかということだね、そうなれば5大倒叙を名乗れるからね さてもう1つのフェラーズだが、作風がサスペンスタッチに変化した戦後の中期作である 私は海外で選ばれた名作表リストを眺めるのが好きなのだが、実は海外でフェラーズの代表作としてよく名前が出てくるのが原題「Enough to Kill a Horse」だったのである おそらく海外ではフェラーズの最も出来の良い作品と認識されているというわけだから、なかなか紹介されないのを残念に思っていたのだ それがこうして論創社から「カクテルパーティ」という訳題で刊行されたわけである、ただこの題名もっとマシなのは無かったのだろうか?、まぁ毒殺がテーマらしいのでカクテルなんだろうけど 実は論創社からは4月末にもう1冊予定されているらしい エリザベス・フェラーズというと一時期創元が精力的に刊行したせいか、昨今はトビー&ジョージシリーズが作者を代表するシリーズと世界的に認識されている、という風に思い込んでいる読者が多いが、はっきり言うけどその考えは100%間違っている トビー&ジョージシリーズは戦中に書かれた作者の最初期のシリーズで、森英俊氏が隠れたガチガチの本格派シリーズとして紹介したのを契機として注目されたのであって、つまりは埋もれていた初期シリーズの発掘だったのである おそらく世界の中でトビー&ジョージシリーズがこれほど読まれている国は日本だけだと思う フェラーズは海外でも人気作家だが、海外での認識では戦後のノンシリーズのサスペンス風本格作家のイメージなんだと思う、海外でリストアップされるフェラーズの代表作は殆ど戦後のノンシリーズ作から選ばれているしね そして最も名前が出てくるのが今回論創から出た「カクテル・パーティ」なのである 「カクテルパーティ」は1655年の作だが、その1つ前1954年の作が「嘘は刻む」だ 「カクテルパーティ」が海外の名作リストによく名前を刻む作ならば、「嘘は刻む」は例の森事典で戦後のノンシリーズ中の最高傑作の1つと喧伝されていた作で長崎出版で早くから刊行されたのもそれが理由だろう 今は無き長崎出版はスーザン・ギルラスとか結構面白いところに目を付けた叢書を展開していたので他の出版社が権利を買い取って復活させて欲しいよな 「嘘は刻む」は森氏も推薦していたようにサスペンス風の雰囲気の中でトリッキーな仕掛けが光るいかにも戦後のフェラーズらしい作だ 当サイトでkanamoriさんも御指摘のように狂った時計の真相は、単に被害者の性格に起因するもので全く大したことは無くて、前提としてはこれは謎として提出されている類のものではない 逆にもし時計の謎をメインに据えていたとしたら、トリックの為のトリックみたいな作に陥っていたんじゃないだろうか 真の謎解き上の肝は全く別のところに有って、これは要するに○○殺人の一種だよな そうすると某女流大家のあの作品とどっちが早いか?ということになる ネタバレになるから発表年は言えないが、調べたらやはり某女流大家の方が先だ 某女流大家のオリジナリティは凄かったんだな、まぁ唯一無比みたいな作家だからね と言うことはだ、「嘘は刻む」のアイデアはちょっと割り引いて評価せざるを得ないので、7点付けたかったのだが1点減点しちゃったんだよね 実はねえ、私はあの真犯人の正体は見抜いちゃったんだよねえ、だってあまりにも○○○○がはっきりし過ぎていたんだもん、まぁその前から必ずしも動機が無いこともないかなと思って怪しいとは思っていたんだけれど、私はこの手の犯人には気付いちゃうんだよなぁ(苦笑) |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/06/15 20:58登録) 射殺死体が発見された家の100個以上の時計が全て誤った時間を刻んでいたという謎に素人探偵が挑むというストーリー。タイトル通り「嘘」がテーマで、時計だけでなく事件関係者たちの供述も嘘で固められています。 時計の謎はあまり感心できませんでしたが、プロット上の仕掛けはなかなか意表をつきました。 トビー&ジョージシリーズのような軽妙な語り口は影をひそめていますが、まずまずの本格ミステリでした。 |