kanamoriさんの登録情報 | |
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平均点:5.89点 | 書評数:2426件 |
No.926 | 5点 | 北の夕鶴2/3の殺人 島田荘司 |
(2010/08/02 19:59登録) 元妻を登場させることで主人公の人物造形に厚みを増し、北海道・釧路という舞台を得て、抒情的で読み応えのあるロマン・サスペンス小説になっているのに、場違いのバカトリックで雰囲気をぶちこわすところは島荘の面目躍如といえます。 |
No.925 | 5点 | ホック氏の異郷の冒険 加納一朗 |
(2010/08/02 17:27登録) スイス・ライヘンバッハの滝に落ちて行方不明になったホームズが、その間、明治時代の日本を訪問していたという設定のパスティーシュ本格ミステリ。 設定は面白いが、明治時代の雰囲気・情景描写がいまいち。中身のミステリ部分もあまり出来がいいとはいえない。 これで協会賞というのはちょっと不思議。 |
No.924 | 5点 | ぼくらの時代 栗本薫 |
(2010/08/02 17:27登録) 青春ミステリ、”ぼくら”シリーズの第1作で乱歩賞受賞作。 ぼく(栗本薫)ら学生ロックバンド仲間が、テレビ局でアルバイト中に殺人事件に遭遇。 軽妙な若者言葉で進行する物語は、当時新鮮ではありましたが、本格ミステリとしてはあまり面白味のない内容でした。 |
No.923 | 6点 | 非合法員 船戸与一 |
(2010/08/02 17:26登録) 米国情報局の非正規局員・暗殺専門家の日本人を主人公にした謀略サスペンスで、著者のデビュー作。 ユカタン半島の密林を舞台に、メキシコ反政府運動指導者の暗殺、仲間の裏切り、FBIの追跡、米国国防省からの抹殺指令など、追う者と追われる者が入り乱れる構図が面白いが、後の作品と比べると主人公をはじめ登場人物の造形の書き込みが不足しているように思いました。 |
No.922 | 5点 | 轢き逃げ 佐野洋 |
(2010/08/02 17:26登録) 突出した傑作がないが駄作も少ない著者の、「一本の鉛」とともに代表作と言われる本書ですが、個人的にはあまりいい印象がない作品。 前半が轢き逃げ加害者視点のサスペンス、後半はその加害者が被害者となる謎とき本格編と構成に工夫がありますが、社会派に影響をうけたような前半部が冗長であまり楽しめなかった。 |
No.921 | 7点 | 幽霊列車 赤川次郎 |
(2010/08/02 17:26登録) 警視庁捜査一課警部と女子大生の”幽霊コンビ”シリーズ、第1連作短編集。 表題作のデビュー短編は、山間部を走る列車から8人の乗客が消失するという謎。ほかにも、真夏の凍死体、晴天時の雨具着用死体など、解決編はともかく魅力的な謎の提示が印象的なミステリ短編集だった。 |
No.920 | 7点 | 暗い落日 結城昌治 |
(2010/08/01 21:06登録) 私立探偵・真木シリーズの第1作。 当シリーズがロス・マクのリスペクト作品であることは周知の事実で、一人称ハードボイルドで、テーマが家系の悲劇であることもそうですが、本格ミステリに通じる意外性も共通しています。 真相が判明し、終盤に真木がある人物に言う、「それはご自分で考えることでしょう」。セリフだけで主人公の心情を表現する手法、まさにハードボイルドだなあ。 |
No.919 | 7点 | マリオネットの罠 赤川次郎 |
(2010/08/01 20:35登録) 森の中の英国風邸宅に住む姉妹、使用人と家庭教師、そして幽閉されたもう一人の女性、というふうにゴチック・ロマンの定型をとりながら、現代的なネタも加味しつつ、最後に大きなサプライズを用意した傑作サスペンス。 その後、シチュエーション・コメデイとかジュヴナイル小説の方に行ってしまったが、初期の赤川次郎はミステリ・マインドに溢れていましたね。 |
No.918 | 6点 | 大いなる幻影 戸川昌子 |
(2010/08/01 20:20登録) 老朽化し取壊し寸前のアパートを舞台にしたサスペンス。 いわゆる集合住宅もののミステリで、アパートの住民たち(本書では老譲たち)の隠された秘密が暴かれていく過程が読みどころですが、女性作家らしく老譲たちの異常な心理・生態描写が巧く、フランス・ミステリのような味わいがあった。 |
No.917 | 5点 | Wの悲劇 夏樹静子 |
(2010/08/01 20:05登録) 社会性をテーマにした作品が多い印象の作者ですが、本書は倒叙形式からフーダニットに変転するプロットに工夫を凝らした本格ミステリ。しかし、F・ダネイが絶賛するほどの目新しいトリックはなく、ある法律ネタも感心するほどのものではなかった。 |
No.916 | 7点 | 伯林-一八八八年 海渡英祐 |
(2010/08/01 20:04登録) 「東西ミステリーベスト100」国内編の76位は、乱歩賞の歴史ミステリ。 ドイツ留学中の森林太郎(鴎外)が雪の古城での密室殺人に遭遇し、鉄血宰相ビスマルクと推理を競うというプロットは、当時は斬新で非常に楽しんで読んだ記憶がある。 追随するような作品がその後いくつか出たが、歴史上の人物を探偵役に据えたハシリで、密室トリックもなかなか凝っていたように思う。 |
No.915 | 7点 | 炎に絵を 陳舜臣 |
(2010/08/01 17:46登録) シリーズ探偵・陶展文が出てこないノンシリーズの本格ミステリでは本書が一番面白いと思った。 戦時中の中国の隠し資金といういつもながらのテーマと企業小説的なストーリーで、中盤まではあまりリーダビリティを感じなかったが、最後にとんでもないサプライズが待っていました。 主人公の行動などにご都合主義的なところがあるのが残念ですが、結末の真相を示唆する伏線も丁寧に張られており、よく練られたミステリという印象です。 |
No.914 | 7点 | 殺人鬼 浜尾四郎 |
(2010/08/01 17:25登録) 現在の基準では、とても高い評価はできませんが、昭和の初めにこれだけの重厚でリーダビリティの高い本格編を書いていたのはちょっと驚きます。 作中でも何度か触れられている「グリーン家殺人事件」を彷彿(というか、ほとんどコピー)させるプロットではありますが、こういうのが好きなので全然問題ありません(笑)。 |
No.913 | 6点 | 蝶々殺人事件 横溝正史 |
(2010/08/01 17:11登録) 金田一耕助シリーズとは全くテイストが異なる純粋なパズラー本格ミステリ。 戦前からの由利麟太郎&三津木コンビシリーズものでは、一番ロジカルでスマートな作品だと思います。死体移動の謎はやや分かり易いと思いますが、ほかにもユニークなアリバイトリックがあったりで、これはこれで楽しめた。 |
No.912 | 7点 | 写楽殺人事件 高橋克彦 |
(2010/08/01 16:51登録) 「東西ミステリーベスト100」国内編の66位は、”写楽の謎”を主題とした歴史ミステリ。 現在の殺人事件にはあまり惹きこまれなかったが、写楽の正体を特定するプロセスの緻密さ・作者の縦横無尽の博識には舌を巻く。最終的に提示される写楽の正体に関しては、ミステリ作家というより写楽研究学者の論考のような感じを受け、その点は最近読んだ島田荘司の作品と比べ、奇想天外さに欠けるように思います。 |
No.911 | 6点 | 富豪刑事 筒井康隆 |
(2010/08/01 16:38登録) 大富豪の息子・神戸大助刑事シリーズの連作短編集。 収録作4編のテーマにバラエテイを持たせてミステリの軽いパロデイが楽しめる。 たとえば「密室の富豪刑事」で探偵が読者に向き直り読者への挑戦を語りかけるシーンはアレを連想させる。 作者が気楽に書いて、読者が気楽に読める連作ミステリ。 |
No.910 | 6点 | ナポレオン狂 阿刀田高 |
(2010/08/01 16:22登録) いわゆる”奇妙な味”テイストの短めの短編が13作収録されています。 R・ダール風のミステリは、短編だけでは喰っていけない出版事情もあり、日本の作家ではあまり書く人がいなかったので、この作家は当時結構読みました。 基本的にショート・ストーリーなので、意外な真相というよりブラックなオチが持ち味で、飽きるのも早かった。 |
No.909 | 6点 | 焦茶色のパステル 岡嶋二人 |
(2010/08/01 16:06登録) 競馬オンチと競馬新聞記者、この二人の女性探偵役が転がしていくストーリーが心地よく、やり取りで自然に競馬界の知識と伏線が読者に与えられていく構成が巧い。 ただ、プロットは期待したほどの捻りは感じられず、「あした天気にしておくれ」と比べると出来はちょっと落ちると思った。 |
No.908 | 6点 | 招かれざる客 笹沢左保 |
(2010/08/01 15:51登録) プロットに工夫を凝らした社会派風の本格ミステリで、著者のデビュー作。 2部構成になっており、前半は新聞記事や関係者の証言を綴ったドキュメンタリー風な内容で事件を多面的に描き、後半は一転、刑事の私的捜査を本格ミステリ風に描いています。 若干ちぐはぐ感はありますが、暗号、密室、アリバイ崩しと本格のガシェットを多用し、乱歩賞応募作らしい作者の意気込みが感じられました。 |
No.907 | 7点 | 猿丸幻視行 井沢元彦 |
(2010/08/01 15:35登録) SF的趣向は、歴史ミステリとしての単なる手段なのはちょっともったいない気がするが、猿丸太夫の暗号解読、柿本人麻呂同一人物説など歴史の謎が楽しめた。 主人公の折口信夫など、実在人物が文学趣味の読者以外にとってはちょっとなじみがないのと、文学研究者寄りの内容は読者を選ぶかもしれません。 |