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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2426件

プロフィール| 書評

No.986 6点 青じろい季節
仁木悦子
(2010/08/11 18:17登録)
一般人を主人公にしたハードボイルド風味のサスペンス長編。
翻訳事務所を開いている主人公が、アルバイト学生の失踪事件を追っていくうちに、もう一つの隠された事件につきあたるというストーリー。
主人公が何者かに襲われたり、真相が複雑な人間関係の闇にある点など、ロス・マクの影響があるように思います。


No.985 6点 第四の敵
山田正紀
(2010/08/11 18:01登録)
カフカの未発表原稿を巡る謀略系サスペンス。
著者お得意の一般人が巻き込まれる形の謀略小説で、序盤から謎の広げ方が巧みで、ヒトラーとの関係など壮大なスケールの物語を予感させましたが、結末はいささか尻すぼみの感じを受けます。
タイトルの”第四の敵”の正体は、時代性を感じさせるもののなかなか意外ではありました。


No.984 6点 超人探偵
小林信彦
(2010/08/11 17:44登録)
名探偵・神野推理氏シリーズ第2弾。
前作同様にパロディ精神にあふれた連作短編集ですが、前作は本格ミステリとしても充分読めるトリックを駆使していたように思いますが、本書は本格ミステリ自体をパロディのネタにしていて、東野圭吾「名探偵の掟」と同タイプのアンチ趣向が顕著な作品集という印象です。


No.983 6点 紳士同盟ふたたび
小林信彦
(2010/08/10 21:12登録)
「紳士同盟」から4年、再び金に困った面々が元天才詐欺師の老人のもとに再集結。
”単に金を奪うだけではダメ、被害者にも喜んでもらう”、というコンゲーム道のモットーに則り、今回は贋作詐欺で騙すことに。
前作同様、ユーモアとスマートな手口が読ませます。


No.982 7点 唐獅子株式会社
小林信彦
(2010/08/10 20:31登録)
ヤクザの親分が引き起こすドタバタ連作短編集。
任侠道を捨てて次々と流行ものを追いかける親分と、いやいや命令に従う常識人の配下の者とのやり取りが絶妙で、次々と笑いを誘います。
全然ミステリではないが、パロデイ&ギャグ満載のエンタテイメント短編集でオススメです。


No.981 6点 神野推理氏の華麗な冒険
小林信彦
(2010/08/10 20:13登録)
名探偵もの本格ミステリ連作短編集。
旧来の本格ミステリをちゃかしたパロデイで、鬼面警部&旦那刑事も脇役で登場しますが、単に笑いを得るためのパロデイではなく、きっちりとしたトリックを敷いている点が評価出来ると思います。
「”降りられんと急行”の殺人」「抗争の死角」などタイトルもしゃれています。


No.980 7点 大統領の晩餐
小林信彦
(2010/08/10 19:57登録)
怪人オヨヨ大統領シリーズ第5弾。
前作の「密使」では影の黒幕だった大統領が、宿命のライヴァル・鬼面警部&旦那刑事と因縁の対決(笑)。
例によって、パロデイ&ナンセンス・ギャグに料理道のウンチク満載の陰謀ミステリです。今回は配下のでこぼこコンビのドタバタ劇で笑わせてくれます。


No.979 8点 大統領の密使
小林信彦
(2010/08/10 18:51登録)
怪人オヨヨ大統領シリーズの第4弾。
一応、巻き込まれ型の謀略系ミステリの恰好をとっていますが、パロデイとナンセンス・ギャグに溢れたハチャメチャな娯楽小説。
とは言っても、プロット全体に先駆的な仕掛けが施されており、「SRの会」が選んだその年のミステリ第1位作品でもあります。
さすがに、時代を風刺したパロデイは現在では意味不明なものも多いのが残念。主人公の深夜ラジオ人気DJ・今似見手郎といっても誰のパロデイか分からない。神出鬼没の「青木の奥さん」は、たぶん亜愛一郎シリーズの謎の老婦人の元ネタでしょう。


No.978 5点 スリープ
乾くるみ
(2010/08/10 18:18登録)
「リピート」は過去への時間移動でしたが、今回は、天才的女子中学生が冷凍催眠によって30年後の未来で覚醒するというSF設定の「物語」。「夏への扉」風のプロットでソッチ系のSFを思わせますが、実はアッチ系のSFだったという仕掛けのミステリでした。
時間移動のシステムなど理系方面の説明が難解で読み飛ばしましたが、一応伏線でもあったとわかります。


No.977 6点 三人の名探偵のための事件
レオ・ブルース
(2010/08/10 18:00登録)
ビーフ巡査部長シリーズ第1作。
ピーター・ウィムジイ卿、エルキュール・ポアロ、ブラウン神父をパロッた3人の名探偵が密室殺人に挑むという内容。
多分にバークリーを意識したように思えるプロットですが、それほど弾けた展開を見せてくれる訳ではありませんし、パロデイとしても中途半端な印象です。
ただ、多重解決もののパズラーとしては、まずまず面白かった。


No.976 6点 騙し絵の檻
ジル・マゴーン
(2010/08/09 21:39登録)
タイトル通り秀逸なプロットによって事件の構図をミスリードするタイプのミステリ。
主人公が、殺人の冤罪を晴らすべく16年前の事件関係者を訪ね歩く物語と、その過去の事件の詳細が交互に描かれています。
終盤になって容疑者全員が犯人であり得ないことが判明しますが、ある視点の転換によって一気に真相が見えてくる結末はなかなか鮮やかです。


No.975 5点 ペンギンは知っていた
スチュアート・パーマー
(2010/08/09 21:03登録)
オールド・ミスの女教師・ウィザーズが探偵役を務めるシリーズ第1作。
シリーズ長編は14冊あるも邦訳は本書のみのようで全貌は覗えないが、本書はコージー風ながら伏線がきっちり張られたオーソドックスな本格ミステリ。
ただ、同時代のエラリー・クイーンと比べるとロジックは比較的単純でパズラーとしての歯ごたえがあまりなかった。


No.974 6点 他言は無用
リチャード・ハル
(2010/08/09 20:36登録)
英国風ブラック・ユーモアが漂う軽ミステリ。
上流階級の社交クラブを舞台に、会員の不慮の毒死事件と脅迫状をめぐる騒動を軽妙なタッチで描いています。
米国風のドタバタではなく、なにげない言動や行動にニヤリとさせる上質のユーモアが持ち味で、個人的には「伯母殺人事件」より楽しめました。


No.973 6点 絞首人の手伝い
ヘイク・タルボット
(2010/08/09 20:06登録)
長編は2作しか書いていないが、オカルト趣向と不可能トリックでマニア受けをする作家です。
なんといっても発端の怪奇趣向の謎の提示が魅力的で、本書も死後2時間で腐敗する死体とか不可能性は巨匠のカーに劣らないと思います。ただ、大風呂敷を広げた謎に対して、トリックの真相がちゃちで小粒になっているのは「魔の淵」と同様で、若干拍子抜けの感もあります。


No.972 5点 殺人は広告する
ドロシー・L・セイヤーズ
(2010/08/09 18:47登録)
ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第8作です(ネタバレになるのかな)。
シリーズ作の初期数冊は読んでいないのですが、本書はコージー風というか通俗ミステリ臭を前面に出した異色作でした。都会的で軽めの作風はOKですが、ミステリ趣向の面であまり読みどころがない作品という印象です。


No.971 7点 カリブ諸島の手がかり
T・S・ストリブリング
(2010/08/09 18:27登録)
心理学者ポジオリ教授シリーズの連作短編集。
西インド諸島の島々を舞台に、教授が遭遇する5つの事件が収録されていますが、ちょっと不思議なテイストの作品集です。
カリブ諸島の風習、宗教、人種などは興味深く読めますが、はたして、これが名探偵もののミステリといえるのかという感じを持ちながら、最後の「ペナレスへの道」で吃驚仰天。
かなり衝撃的な結末で、印象に残る問題作と言っていいでしょう。


No.970 6点 不変の神の事件
ルーファス・キング
(2010/08/09 17:44登録)
傑作とまでは言えないですが、ドタバタ風の逃亡サスペンスから最後にサプライズを仕掛けた本格ミステリで面白かった。
妻を自殺に追い込んだ脅迫者を殺してしまった夫と家族たち、彼らを追う捜査陣という通俗的ながら場面転換を多用したテンポのいい構成で、最後にワン・アイデアで驚かせてくれます。
戦前に、いくつか本格編を書いているようで、ちょっと気になる作家ではあります。


No.969 7点 検死審問ふたたび
パーシヴァル・ワイルド
(2010/08/08 20:57登録)
前作の構成をそのまま踏襲したプロットですが、陪審員のイングリスが主役級の活躍?をして審問をかきまわすさまが最高に面白く、まったく二番煎じの感はない。
引っ越してきたばかりの作家の焼死事件が今回の審問対象で、例によって関係者の証言がとんでもない方向に逸れていって、審問が長引けば日当が増えるスローカム検死官の思惑が見え隠れするのも笑えます。
これで伏線を張り巡らしたりっぱな本格ミステリに仕上がっているから不思議だ。


No.968 7点 八点鐘
モーリス・ルブラン
(2010/08/08 20:21登録)
アルセーヌ・ルパンものの第3短編集。
レニーヌ公爵ことルパンが恋する女性のために8つの冒険を繰り広げるが、本格ミステリ作品集といっていいほどトリックが満載されています。
「テレーヌとジェルメーヌ」の密室トリックは後にヴァン・ダインやカーの作品にも応用されたもの。そのほか、アブナー伯父シリーズや乱歩の短編とほとんどトリックが被っている意外な殺人手段ものなど楽しめる。


No.967 7点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2010/08/08 18:55登録)
国書刊行会の世界探偵小説全集で出て評判を呼び、一気にバークリー未訳本の翻訳ラッシュに火をつけた作品。
パーティの余興中の殺人で容疑者になった友人からの依頼で迷探偵シェリンガムが乗り出すというストーリー。
なんといっても友人のピンカートンの特異な造形が面白く、真相が分かってから再読すると、彼のいろいろな言動が皮肉なユーモアで真相を内包していたことが分かります。メインの仕掛けも、その手段をとる理由が某有名作品と比べて必然性がある点は評価できると思います。

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