不変の神の事件 ヴァルクール |
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作家 | ルーファス・キング |
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出版日 | 1999年07月 |
平均点 | 5.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 6点 | 弾十六 | |
(2020/12/12 07:46登録) 1936年出版。ヴァルクール警部補シリーズ第9作。翻訳は堅実な感じ。初出は月刊誌Cosmopolitan 1936-4(一挙掲載)。単行本初版はダブルデイ・クライム・クラブ。サブタイトルがありLieutenant Valcour’s most exciting case。カバー絵は帽子にコート姿、右手にリボルバーを持った厳しい顔の男(シリーズの他の表紙にも登場してるのでヴァルクールなのだろう)。色々調べると本作は映画化されてる! タイトルLove Letters of a Star(1936年11月8日公開 Universal) DVDやBD化はされていないようだ。ぜひ見てみたい。制作時期を考えると当初から映画化するつもりだったのか? ベラ・ルゴシ主演の無声映画The Silent Command(1923)にStory by Rufus Kingとクレジットされていたり、若きDuke Ellingtonが出演してるミュージカル探偵物Murder at the Vanities(1934)にも原作戯曲の作家(共著)として参加してるから映画界との関わりも結構深かったのだろうか? Internet Movie Databaseによるとイエール大学時代のThe Bond of Love(1914)に女性役としての出演記録あり。(2020-12-14追記) さて肝心の小説だ。まずは序盤に納得するか?で印象が分かれるかも。私はまーそーゆーこともあるかも、と素直に受け止め、お話しの盛り上がりが非常に面白かった。そこから小ネタを繰り出してスリリングなプロット。中盤以降は無理に無理を重ねたところがちょっと残念。 ミステリ味は薄い。要素が実に米国的。描写は簡潔だけど、いろいろなキャラのスケッチが上手。なんかリアリティがあるので、中盤以降が惜しい。わざわざ、ああしなくても… と思う。この設定なら人間模様をふくらませる余地が沢山あるのに、使い切っていない。 この作者の初期作品をもっと読んでみたいと思いました。 以下トリビア。 銃はコルト32口径(a Colt .32)が登場。海の男の持ち物らしいので、動作が確実なリボルバーだろうと妄想(作中には具体的描写なし)。時代的にColt Police Positiveあたり? p9 五月四日♣️事件の日付。 p9 チャンドラーのクーペ、グレイで黒いラインが一本はいっていた(Chandler coupe, gray, with a black line)♣️ Chandler Motor Car(1913-1928)はmedium-price carmakersのようだ。1922年のラインナップは$1495〜$2375を揃えていた。(米国消費者物価指数基準1922/2020(15.50倍)で$1=1670円、250万円〜397万円) この車は「新型(A new model)」らしい。ちょっと古いが1928年最終モデル?1928年12月のHupp買収後でも1929年にChandlerブランドで車を販売しているようだ。 「黒いライン一本」はChandler Standard Six 1928 (8527)で見られるデザインか(これはセダンだがクーペはChandler 65 Series Rumble Seat Coupeで検索)。p66「後部の折りたたみ座席(the rumble)」とあるのでRumble Seatバージョン。(この項目2020-12-13修正) (以上2020-12-12記載) p20 ギルド劇団の公演(Guild shows)♣️Theatre Guildは1918年ニューヨークで設立。英Wikiやコトバンク「シアター・ギルド」に項目あり。 p23 リリアン・ラッセル(Lillian Russell)… メイ・ウェスト(Mae West)♣️前者(1866-1922)は歌手・女優で活躍当時最も有名な女優だったという。後者(1893-1980)は映画女優。映画デビューは1932年、ヒット作は1933年1月&10月の公開なので、この会話の感じだと作中年代は1933年10月以降。 p23 プルーンが減れば…種が増える(Less prunes… and more bosoms)♣️プルーンの耕作地面積はカリフォルニア州では1926年にピークに達している。bosoms(複数形)は「女性の乳房」らしいが、このセリフの意味がよくわからない。(2021-1-9追記: pruneに男、ヤツの意味があるらしい。「男少なめ、女多め」というような感じ?舞台や映画関係でこういう言い方があったのか) p28 ガートルード・メリヴェイルの『情熱なき恋』(Gertrude Merrivale in “Love Without Passion”)♣️架空だろう。 p35 アンドーヴァーの寄宿学校(Andover)♣️Phillips Academy Andoverは1778年創設。プレップ校(名門大学入学を目的とする中等教育学校)の一つ。 p36 ダンス(ルンバ以外のすべて)dancing(in everything but the rumba)♣️ルンバは映画Rumba(1935年2月公開, George Raft, Carole Lombard主演)により米国で有名になったばかりなので習得してない、という意味か。作中年代は1935年5月と言って良いだろう。 p36 海軍で従僕として訓練を受けた二人のフィリピン人(two Filipinos trained for service in the navy)♣️for serviceは軍事訓練のことだろう。当時、フィリピンは米国自治領(1901年7月〜1935年11月)で、米国海軍学校アナポリス方式を採用したPhilippine Nautical Schoolがあり、フィリピン人は米国海軍にも志願出来たという。1919年には最初のフィリピン人がアナポリスに入学している。多分、米国を目指すフィリピンの若者にとって良い制度だったのだろう。 p42 カクテルとキャヴィア(cocktails and caviar)♣️現代の舞台人にふさわしいおもてなし。禁酒法(1920-1933)後のイメージなのか。 p42 モントーク(Montauk)♣️The Montauk Theatre(Passaic, NJ、1924年1月30日オープン)のことだろう。1900年代に流行った同名のヴォードヴィル劇場跡地に建設された。(2020-12-15追記: 以上の記載は誤り。正しくはニューヨーク州Montaukのこと。p22「ガーディナー湾」の近く) p44 ヴァン・ブリテンの『もう一度言って』Van Britten’s “Tell Me Again”♣️架空の芝居。 p45 『いちじくの木』The Fig Tree♣️多分、架空の芝居。 p45 『トーチ・ソング』... ベラスコ(Belasco... in “Torch Song”)♣️架空の芝居と登場人物。 p47 恋文が——当時は『ファンレター』という言葉はありませんでした(mash notes—the term ‘fan letters’ had not come in by then)♣️mash letterの用例は1880年が初出らしい。fan letterの初出は1932年だという。 p48 週2000ドル(two thousand dollars a week)♣️米国消費者物価指数基準1935/2020(19.01倍)で$1=2048円。月給換算で1775万円。 p49 <ラムズ>♣️The Lambs Clubはニューヨークの俳優や作詞作曲家など舞台人のための有名社交クラブ(1874年設立。130 West 44th Street in Manhattan)。ロンドンのクラブ名(1868-1879)に因む。 (2020-12-13追記) p69 ロバート・マンテル(Robert Mantel)♣️Robert B. Mantell(1854-1928)スコットランド生まれ、ダブリン育ちで、米国に渡りシェークスピア作品で有名になった俳優。サイレント映画にも出演。 p70 千ドル札(thousand-dollar bill)♣️=205万円。1928年以降はGrover Clevelandの肖像、156x67mm) 500ドル以上の米国高額紙幣は1945年発行終了。 p70 金はすべての悪の根である(money is the root of all evil)♣️「聖書の格言」と補い訳。新約聖書テモテへの前の書6:10(KJV)For the love of money is the root of all evil、(文語訳)それ金を愛するは諸般の惡しき事の根なり。擬似パウロ書簡の一つ。 p74 ユーカー(euchre)♣️切り札のあるトリック・テイキング・ゲーム。ピケ・デック(32枚)を使用。古くからあるトランプ・ゲーム。Wikiに項目あり。 p74 最新ルールのコントラクト・ブリッジ(the latest rules of contract)♣️1920年代に成立したコントラクト・ブリッジを1930年代に主導し流行させた立役者がEly Culbertson(1891-1955)。上級者とのブリッジ・マッチで常に勝利し、自身が1929年に創刊したThe Bridge World誌で色々なテクニックを紹介し疑問手やマナーを論じた。 p74 シェリー[から]… カクテルに移行♣️過去と今との対比。Sherryの本場もの(Vino de Jerez)はアンダルシア州カディス県の産。 p75 サイドカー(sidecars)♣️英WikiによるとSidecarは第一次大戦末期のパリかロンドンが発祥らしいコニャック・ベースのカクテル。 p76 クラブ・セダン(the club sedan)♣️1920年代半ばに登場した屋根の低い高級セダン。ここの車は後で「リバティ(Liberty, p93)」と判明する。Liberty Motor Carは1916年創業で1923年に他社に吸収された。実在したが現在は廃業した会社名を使っている(チャンドラーも同様)ということは意図的なのだろう。 p89 虹色のプース・カフェ(a pousse-café)♣️数色が層になったスタイルのカクテル。比重の異なった液体で作る。 p103 一ポンド20セントで素晴らしいロブスターが手に入る(excellent lobsters at twenty cents a pound)♣️1キロ換算で903円。今の日本での相場は1キロ約1万円。今の米国では1ポンド約25ドルなので1キロ約55ドル(=5924円)。物価は19倍なので非常に安いのだろう。 p107 タリスマン(‘Talisman’)♣️架空のタクシー会社名か。この運転手はギリシャ系だが、ニューヨークでは東欧出身ユダヤ系が多かったようだ。 p112 最近のミュージカルのヒット作『オール・ハイ』(the recent musical success “All High”)♣️架空。 p112 マクベスの“よし、つかんでやる!”(Macbeth’s “Come, let me clutch thee!”)♣️第2幕第1場から。 p113 時代劇『迷える恋人たち』“Lovers Astray”, a costume piece♣️多分、架空。 (2020-12-14追記) p119 レベッカの色刷りの版画… しゃれた服に身を包み、水差しを抱えて井戸へ向かっている場面(a lavishly framed colored print of Rebecca, caught during one of her more dressy trips with a pitcher to the well)♣️「井戸のレベッカとエリエゼル(Eliezer and Rebekah at the Well)」のシーンだと思われる(創世記24)。文語訳では「リベカ」。p170にも登場(「レベッカのような風俗画」the Rebecca genre)。「風俗画」は訳者の補いだがズレている。キリスト教主題の絵画、というのが原意だろうか。 p151 ベルヴェデーレ美術館のアポロ(Apollo [Belvedere])♣️教皇ユリウス2世がヴァチカン宮殿内の「ベルヴェデーレの中庭」に置いた古代ローマ時代(AD130年ごろ)のアポロン像。Wiki “Apollo Belvedere”参照。 p154 デュマの『鉄仮面』(the Man in the Iron Mask)♣️ダグラス・フェアバンクス主演の映画The Iron Mask(1929)のイメージか。 p173 八年前のカルヴァースン調査隊… ポンペイ郊外の発掘場所で(in the excavations outside of Pompeii during the Calverson Expedition of eight years ago)♣️多分、架空。 p177 ピノクル… キング四枚で得点すると宣言(pinochle... melded four kings)♣️米国のトリック・テイキング・ゲーム。A-10-K-Q-J-9のみの24枚を2デック使用。普通は対面がペア、四人プレイの2チーム戦。ビッドはチームの予想獲得ポイントを上げてゆく。手札に役があるとビッド終了後トリック開始前に当該カードを晒して点がもらえる。晒したカードはトリック獲得にも使用するので手札に戻す。ここは手札に四枚のキングがあり80点獲得した場面。次頁「ダブル・ピノクル(a double pinochle)」も手札役の一つ(ダイヤJ&スペードQが二組)で300点獲得。英Wiki参照。手札の情報を与えないように、わざと得点獲得をしないという駆け引きもあるのかな? p181 サウサンプトンあたりに住み、朝海に泳ぎでたら夜までもどってこないあの変人(that odd man who hung around Southampton and who would swim out to sea in the morning and not come swimming back in again until night)♣️英国南部のSouthampton市ではなく、ニューヨーク州Southampton Beachのことだろう。変人のほうは調べつかず。 p182 マダム・バラスカ(Madame Valaska)♣️多分架空。 (2020-12-15追記) p183 シコルスキー(Sikorsky)♣️今はヘリコプターで有名だが1923年創業のころは大型・中型の飛行艇が主流だった。ここに登場するのはS-38(1928)か。 p187 ブリッジから鐘を打つ音が六つ♣️六点鐘。船ではAM及びPM3時、7時、11時。30分ごとに1点増やして叩き、八点鐘で終わり。(Wiki “船鐘”) p194 ガボリオ… オッペンハイム(Gaboriau... Oppenheim)♣️古いイメージを出したいので、この二人が登場。 p195 昔観たメアリ・ラインハートの作品(Rinehart production {X} had seen long ago)♣️サイレント映画『螺旋階段』(1915)のワンシーンだろうか。 p210 交霊会(a spiritualistic séance)♣️1930年代前半でも流行っていたのか。 p234 釘を打った板に座っているみたいで。インドで魂を救うために使う…(sitting on one of those nail boards they use in India to save their souls with)♣️英Wiki “bed of nails”参照。 p242 平たいオートマチック(a flat automatic)♣️ヴァルクールの銃。38口径のColt M1908 Pocket Hammerlessを推す。 <ちょっと長い蛇足> ルーファス・キングの関わったサイレント映画The Silent Command(1923)と楽しいミュージカル探偵映画Murder at the Vanities(1934)がWebに落ちてたので見た。いずれもミステリ的工夫がある作品。興味深いところが色々あり。前者は軍法会議のシーンとか船内のアクション・シーンとか、後者は女性を徹底的にモノとしてしか見てない感じのヴァラエティ・レヴューのシーンとか、ファン必見エリントンの若々しさとか(メエ・ウエストが映画関係者に助言して出演となったらしい)。どちらも楽しめました。どこかで本作の映画Love Letters of a Star(1936)を日本語版にしてくれないかなあ。(2021-1-9若干修正) (2020-12-19追記、完) |
No.4 | 6点 | nukkam | |
(2014/09/02 15:57登録) (ネタバレなしです) 全11作のヴァルクール警部補シリーズが発表されたのは1929年から1939年にかけて、全12作のヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスシリーズは1926年から1939年にかけて発表されています。どちらも映画化されるほどの人気を博したそうですが両者がライバル関係だったのかというと微妙かもしれません。キングはヴァン・ダインほどには本格派推理小説のスタイルにはこだわらず、良くも悪くも通俗的です。1936年発表のヴァルク-ル警部補シリーズ第9作の本書は犯罪小説と本格派推理小説のジャンルミックス型なのがユニークです。最後は謎解きで着地しているのですが中盤までは復讐を果たした家族とそれを追跡する警察との間に繰り広げられる追跡劇の展開を見せます。追う警察が迫力不足のためサスペンスがいまひとつ盛り上がらないのが惜しいところですが退屈はしません。 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | |
(2014/06/15 14:19登録) 1936年発表。順番で言えば、作者11番目の作品に当たる(とのこと)。 作者については本作が初読でもあり、予備知識ゼロで読み始めたのだが、さて・・・ (この書評を書き始めたときに、ちょうど日本がコートジボアールに敗戦・・・) ~「これは殺人じゃないわ。処刑よ」・・・リディアは宣言した。姉を自殺に追い込んだ憎むべき恐喝者が、今、残された家族の前で息絶えたのだ。一同は法の手を逃れようと画策するが、死体を運んでいるところを通行人に見られてしまい、事件は早々に警察の知るところとなる。目撃者からの通報を受けたNY市警のヴァルクール警部は着実に手掛かりを集め、逃走した彼らを後を追う。逃亡と追跡、この二つの物語は徐々に思いもよらぬ展開を見せていくのだった!~ ちょっと「予想外」というのが率直な感想になるだろうか。 冒頭にも書いたとおり、作者に対する予備知識が全くなく、紹介文からすると重めのサスペンスタッチの作品かなという予想だったのだが・・・ 実際には、結構テンポよく読ませ、程よく「笑い」の要素もあって、割とサクサク読了することができた。 ジャンル的にもサスペンスというよりはフーダニットをメインテーマとした「本格ミステリー」。 (確かに追う側と追われる側という視点で捉えればサスペンスなのかもしれないが、この辺はあまり心に響かない) ラスト約30頁は船上にて警部の真相解明の場面が続き、なかなか気の利いたサプライズも用意されている。 不満点と挙げるとするなら、序盤の分かりにくさ。 最初は何が起こっているのかよく分からない状況が続き、数章を経た段階でやっと展開が腹に落ちてきた。 この辺りは訳のせいかもしれないけど、短めの作品だけにやや残念に思えた。 創元推理文庫版のあとがきは森英俊氏が書かれており、作者について詳しく紹介されている。 ヴァルクール警部ものもまだ数編あるようなので、読めればいいのだが、未訳が多そうで難しいのかもしれない。 評点としてはこんなものだが、印象としては決して悪くはない。 (それならもう少し高い点つけろよ、って感じだが・・・) |
No.2 | 6点 | mini | |
(2012/10/19 09:52登録) 30年代のアメリカン本格長編黄金時代のクイーンとキングと言えば、もちろんエラリーとC・デイリー・キングである しかしキングにはもう1人のキングが存在するのだ、ルーファス・キングである C・デイリー・キングより2歳だけ年上のルーファス・キングは、年齢や出身地が近いだけでなく両者は同じキング同士として姻戚関係など何らかの関係が有るのではという説も有るらしい ただし作風は全く似ていない 例の森事典でも、アメリカ本格黄金時代の申し子のようなデイリー・キングに対し、ルーファス・キングは通俗風味に流れてしまうのが弱点と解説されている その通俗調な弱点を逆手に取った代表作が「不変の神の事件」とのことだ 後半には船上ミステリーになるが、デイリー・キング「海のオベリスト」のような純然たる船上ミステリーではない 船上なのは後半だけだし、それも船上からの乗客消失とサプライズ演出の為だけって感じで、船上という舞台設定がメインになっているわけでもない しかもサプライズに関しては慣れた読者なら真相は見抜き易く、私もおそらく作者の狙いはこうではないかとは早い段階で気が付いた ただしこのサプライズだが、サスペンス小説に付け加えられたサプライズの類ではなく、最初から本格派のプロットとして仕組まれたもので、前半がサスペンス小説、後半が本格派というのは計算されたものだ、まぁだから気付いたのだが ただ案外と前半の通俗調サスペンス・スリラーの部分の方が、単に後半の本格部分の伏線だけに留まらない皮肉な面白さに満ちていて楽しめた kanamoriさんの御書評が的確に言い表しておられるように私も追従して、”傑作とまでは言えないが良い意味で軽く読める気の利いた佳作”という評価にします |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/08/09 17:44登録) 傑作とまでは言えないですが、ドタバタ風の逃亡サスペンスから最後にサプライズを仕掛けた本格ミステリで面白かった。 妻を自殺に追い込んだ脅迫者を殺してしまった夫と家族たち、彼らを追う捜査陣という通俗的ながら場面転換を多用したテンポのいい構成で、最後にワン・アイデアで驚かせてくれます。 戦前に、いくつか本格編を書いているようで、ちょっと気になる作家ではあります。 |