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ミステリの祭典

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神野推理氏の華麗な冒険
神野推理

作家 小林信彦
出版日1977年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 クリスティ再読
(2023/12/14 21:30登録)
ミステリマニアってのは、翻訳ミステリと洋画とジャズにやたらと詳しい....そんな時代があったわけ。小林信彦といえば「昭和ヒトケタの心情」の作家であり、昭和ヒトケタとは敗戦によって欧米との実力差に直面した世代でもある。

日本において、西欧的な形での名探偵は、パロディとしてしか存在し得ないのではないかと言いたいのです。

だからこそ、ミステリマニアに心の奥底に潜む「西欧への憧れ」の感情と、裏返しの「情けない日本の現実」の葛藤を、パロディ・ミステリのかたちで小林信彦が語ろうとした小説なんだ。

いや昭和ヒトケタの子供世代の評者とかが、こんなことを書けてしまうあたり、本作での小林信彦はオヨヨ大統領シリーズのノリが薄れて、シリアスな自己批評に向かっているかのようだ。この後自伝的な「メディア論小説」に流れていくわけだが、そんな「手の内」をここまで晒してしまうのは、ミステリ作家としてどうなんだろう。実際、後半になるほどネタ切れ感の強い短編集だと思う。意外なくらいにマジメにミステリしていて、意外なくらいにミステリとしてつまらない。

考えてみれば「ニッポンの名探偵」にはどこかしら欧米への憧れの気持ちを隠せない面がある。その気持ちを嫌がる作家は、キャラを盛らずに鬼貫警部のような警察官探偵や、非シリーズの一般人探偵に流れたんだと思うんだ。言いかえると、名探偵を改めて肯定した新本格は、こういう日本の現実にこだわる「昭和ヒトケタ」的屈折がリアリティをなくした後で生まれたものなんだろうな。

(ちなみにホームズの「最後の事件」を模した「神野推理最後の事件」は「合言葉はオヨヨ」の後日譚みたいな話である)

No.1 6点 kanamori
(2010/08/10 20:13登録)
名探偵もの本格ミステリ連作短編集。
旧来の本格ミステリをちゃかしたパロデイで、鬼面警部&旦那刑事も脇役で登場しますが、単に笑いを得るためのパロデイではなく、きっちりとしたトリックを敷いている点が評価出来ると思います。
「”降りられんと急行”の殺人」「抗争の死角」などタイトルもしゃれています。

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