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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2463件

プロフィール| 書評

No.1743 5点 綺譚の島
小島正樹
(2012/05/28 21:21登録)
戦国時代の落武者伝説が伝わる島という、「獄門島」と「八つ墓村」を合体させたような設定で、例によって島荘直伝の奇想がこれでもかと言うぐらいに連打される”やりすぎ本格”です。

まあ、好きな人は楽しめると思いますが、ひとつひとつの怪異現象の真相に関しては推理の余地なく、自称・名探偵の謎解きをひたすら拝聴するだけでした。なかでも、海に浮かぶ鎧武者と波間に突き出た木槌の正体には笑わせていただきました。
”奇想=バカミス”ということが再確認できる作品です。


No.1742 7点 アイ・コレクター
セバスチャン・フィツェック
(2012/05/27 11:33登録)
ドイツ・ミステリ界の鬼才と言われるだけあって、たしかに型破りのアイデアが施された異形のサイコサスペンスでした。

エピローグに始まりプロローグに終わる構成、ノンブル(ページ番号)も405ページから順に減っていくという構成は、単にタイムリミットもののサスペンスを高める効果のためだけではない、というところが巧妙です。
犯行を幻視する特殊能力をもつ盲目の女性の登場や、主人公である新聞記者の曖昧な心情描写がリーダビリティを損ねているように思いましたが、最後まで読むと納得させられる。
読者を選ぶタイプのミステリだと思いますが、最近の英米ミステリにない自由な発想を評価したい。


No.1741 6点 殺意のまつり
山村美紗
(2012/05/05 23:09登録)
昭和49年から51年にかけて雑誌掲載された初期の短編集。トリックより、捻ったプロットで読ませる作品が多かったように思う。
個人的ベストは表題作の「殺意のまつり」で、20年前の殺人事件の冤罪を追う弁護士の知らない所で、次々と真相が変転していく様は圧巻のひと言。旅客機墜落事故の唯一の生存女性の証言を巡って関係者の思惑が入り乱れる「孤独な証言」もブラックな結末が印象に残る一編。
トリックを主軸にしたものでは、年賀郵便の特殊性を利用したアリバイ工作もの「恐怖の賀状」が細部まで練られた好編。ラストの陥穽も皮肉が効いている。


No.1740 6点 血の味
ブレット・ハリデイ
(2012/05/03 18:04登録)
マイアミの赤毛の私立探偵マイケル・シェーン、シリーズ中期の作品。
炭鉱業者と悪徳警察が支配するケンタッキィ州の炭鉱町センターヴィルが舞台。シェーンに援助を求めた改革派の若い炭鉱主が殺され、労働争議の指導者が逮捕されたことから、シェーンは秘書のルーシイとともに町の粛清と真相解明に乗り出す。
本書は、B級ハードボイルドぽいシェーンの強引な調査手法に目を奪われていると、終盤のどんでん返しに足元を掬われるミステリ趣向が光る佳作と言えるでしょう。物語の背景自体が大掛かりなミスディレクションになっています。
しかし、二代目女性秘書のルーシイ・ハミルトン(妻で秘書だったフィリスは亡くなっている)は、いったい何のために同行したのでしょうか?ほとんど意味のない配役です(笑)。


No.1739 5点 この謎が解けるか?鮎川哲也からの挑戦状2
鮎川哲也
(2012/05/02 20:19登録)
昭和30年代にNHKで放映されたドラマ形式の推理クイズ番組「私だけが知っている」のシナリオ集第2弾。
その後に自身の作品でアイデアが再利用されたものが含まれているため既読感もあるが、鮎哲ファンなら楽しめる。

「おかめ・ひょっとこ・般若の面」は、星影ものの長編ほか何度か使われた得意の誤認トリックでまずまずかな。「制服の乙女」は”失言”によって犯人を特定するパターン、「観山荘事件」は人物の特性をきっかけに犯人のミスを暴くパターンで、これはともに簡単すぎるか。
「青嵐荘事件」が良く出来た犯人当て。動機と犯行機会の2つのファクターで容疑者を一覧表分析したうえで盲点を突いた形。犯人の失言も”たしかに言われてみれば....”というもの。


No.1738 5点 ハニー貸します
G・G・フィックリング
(2012/05/01 18:34登録)
女私立探偵ハニー・ウェストが活躍する通俗B級ハードボイルド、シリーズの第1作。豪華ヨット船上でテレビドラマ・ロケのスタッフ関係者が次々殺されていくというストーリー。
カーター・ブラウンが創造した女探偵メイヴィス・セドリッツを読んだ流れで、同時代のライヴァルといえるハニー・ウェストの本書も読んでみました。読者サービス満点なお色気シーン(これはテレビ映像化できないでしょう)や、アクション場面での女探偵の特技(空手と柔道の違いがあるが)など、キャラも設定もよく似ています。さらには本書を読む限り、本格ミステリ並みのトリックで意外な犯人の設定に拘っているのも同じです。トリックにかなり無理がありますが。

余談ながら、YouTubeで’60年代のテレビ映像「ハニーにおまかせ」も併せて見ました。主演のアン・フランシスの唇の横にあるホクロが色っぽいです(笑)。


No.1737 5点 高原のフーダニット
有栖川有栖
(2012/04/29 21:12登録)
火村&作家アリス・シリーズの中編集。ただし、「ミステリ夢十夜」は、箸休め的な連作掌編集で、個人的には作者に求めるような内容のものではなかった。
淡路島の観光案内とアリバイ崩しの「オノコロ島ラプソディ」が面白かった。最後に明かされるアリバイ・トリックはバカバカしい限りですが、自虐ネタを交えた軽妙なユーモアが物語を包んでいるため許容できてしまう。
閉された高原の村を舞台にした表題作はオーソドックスな犯人当てですが、これは凡作かな。現場は日が当らず暗いはずで、あの方法では無理なように思う。


No.1736 6点 血ぬられた報酬
ニコラス・ブレイク
(2012/04/28 18:48登録)
”交換殺人”を扱ったノン・シリーズのクライム・サスペンス。
本書の数年前に出版されたパトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」について、作者は、その存在を知った時”わが目を疑った”と巻末の「追記」に記していますが、確かにプロットの相似性だけでなく、被害者となる妻の名前がミリアムというところまで同じ(バーバラというもうひとりの女性名も共通)なので、焦ったのは間違いないでしょうね。
物語は、犯罪がどのように明らかになっていくのかというサスペンスの方向には向かわず、ミリアムの夫ネッドの犯行後の葛藤・心情描写を中心に展開しているのがやや冗長に感じましたが、終盤のヨット船上の決着シーンは緊迫感がありよかった。


No.1735 5点 殺人魔術
梶龍雄
(2012/04/26 22:44登録)
昭和53年から58年にかけて雑誌掲載されたミステリ8編収録の短編集。
偽アリバイトリック、毒殺トリック、ダイイング・メッセージ、人物の入れ替り、可能性の殺人など、あまり新味はないものの、各作品とも何らかの本格ミステリらしい仕掛けを入れている。また、作品の語り手に工夫があり、それがトリックに寄与しているのはさすがと思わせます。

なかでは、ある人物のアリバイの誤誘導によって犯行方法に迷彩を施した「色慾の迷彩」、強盗殺人事件に巻き込まれたタクシー運転手の話がラストで反転する「好色の背景」などが面白かった。
トリックとしては大したことがないが、「ピンクが好きな女」の哀切なテイストが初期の青春ミステリを思い起こさせる。


No.1734 6点 老人たちの生活と推理
コリン・ホルト・ソーヤー
(2012/04/25 20:37登録)
高級老人ホーム”海の上のカムデン”を舞台にしたコージー系の本格ミステリ、シリーズの第1作。
老婦人の殺害死体が海につづく階段下で発見され、好奇心旺盛なアンジェラ率いる老人探偵団の4人は、マーティネス警部ら捜査陣への迷惑もかえりみず探偵活動に乗り出す、というあらすじです。

毒舌ぎみで含蓄のあるアンジェラの言動などがユーモラスな一方で、老人ホームゆえの哀愁ただよう人生模様も描かれていて、その配分と構成が巧い。謎解き面でも伏線を活かしたフー&ホワイダニット・ミステリとして水準をクリアしていると思う。


No.1733 5点 男は夢の中で死ね
小泉喜美子
(2012/04/24 18:52登録)
”都会派ミステリ集”と称されていますが、広義のミステリの範疇にも入らない作品が大半でした。でも、印象に残ったのはそういった短編ですね。

たとえば、肩を壊したプロ野球の元エースが公園で離婚した妻と息子に再会する「本塁好返球」や、売れない芸人がプロになりきれない相方とバーで遭遇したある出来事「コメディアン」など、謎やトリックとは無縁な、人生の一断面を切り取ったような作品が多い。
なかでは、かつてヒーローだった高校教師の肖像を描いた「ヒーロー」が、ラストの衝撃的な事実でマイ・ベスト作品。


No.1732 6点 死と陽気な女
エリス・ピーターズ
(2012/04/23 18:37登録)
「修道士カドフェル」シリーズで人気を博する前に書かれたフェルス一家シリーズの第2作で翌年のエドガー賞作品。
本書は、16歳の息子・ドミニックの成長物語という側面が強い作品です。
殺人容疑がかかった初恋の年上女性の嫌疑を晴らすために、地元の部長刑事である父親ジョージ・フェルスに黙って、ドミニック少年が必死に手掛かりを探るという、父子が別々に探偵活動をするプロットがユニークです。
主要人物の心情がていねいに描写されているのが特徴(ドミニックとキティの最初の出会いの会話など秀逸)ですが、謎解きに関しても動機(犯行の契機)の隠蔽が巧みです。


No.1731 5点 榛名湖殺人事件
中町信
(2012/04/21 17:46登録)
「~湖」シリーズの3作目。
過去の伊香保温泉でのホテル火災のさなかに発生した2件の不審死を追及することで、新たに連続殺人が起こるという、典型的な中町ミステリです。
言葉の取り違えによるミスリードや、記憶障害に特殊な病気の活用、集合写真に記されたダイイングメッセージなど、繰り出される多くの小ネタも毎度お馴染みですが、犯人の設定を二転三転させるプロットが楽しめる。
実は、記憶障害がある素人探偵の「私」という存在と、プロローグの病室のシーンを併せて深読みしてしまった。


No.1730 7点 五人対賭博場
ジャック・フィニイ
(2012/04/20 18:39登録)
鬱屈した大学生活をおくる「ぼく」こと、アルを含む男女5人の若者たちが、ネバダ州の豪勢なカジノから売上金を強奪する計画をたて実行するが・・・という粗筋のジャック・フィニイの第1長編。

大胆でユニークな奪取手法も面白いが、実行までの綿密で用意周到な計画も読みどころです。終盤の皮肉なアクシデントから5人の立場を二転三転させる展開もサスペンシフルで良。
仲間の一人に対する扱いにやや不満がありますが、コンゲーム風の襲撃小説(=”ケイパー小説”と言うらしい)の古典傑作と言われるのも納得できます。(青春小説風の余韻が残るエンディングが、いかにもフィニイらしくて印象的)


No.1729 4点 女性編集者殺人事件
中町信
(2012/04/19 18:10登録)
労働争議に揺れる医療関係の出版社で、会社に対して急先鋒の女性組合員が常務室で殺される。被害者が持つ集合写真には血で書いた「S」のダイイングメッセージが・・・・という粗筋です。

創意のある仕掛けが施された初期作品群の中にあって、本書はイマイチの出来。
アリバイ・トリックは長編を支えるには小粒ですし、ダイイングメッセージは(被害者が出版社の編集員という点でなるほどとは思わせますが)、当初からイニシャルとは考えられないので意外性に欠けるように思います。


No.1728 6点 ローリング邸の殺人
ロジャー・スカーレット
(2012/04/18 18:40登録)
”館もの”の本格ミステリのみを5作書いたスカーレットの最終第5作。
”ロジャー・スカーレット”は女性2人の合作ペンネームで、いわば筆名で二人一役と性別誤認トリックをやっている訳ですが(笑)、本書でもそれに匹敵する非常に大胆なトリックが用いられており、途中でそれに気付くかどうかで大きく評価が分かれそうな作品です。
多少無理があるようには思いますが、登場人物が限られている中で、意外な犯人像を設定した手腕は認めたい。また、病気療養のため休職中のケイン警視が身分を隠している状況をはじめとして、最後に明かされる数々の伏線も見事です。


No.1727 6点 十和田湖殺人事件
中町信
(2012/04/17 18:41登録)
「~湖」シリーズの2作目。
定番の意味深なプロローグから始まり、十和田湖畔の不審死、”犯人”が乗る旅客機の墜落事故、推理小説の盗作疑惑などが絡むかなり複雑で錯綜したプロットです。
真相を知る人物が告発寸前に次々殺されていく展開は、もはやお約束の様なものですが、〇〇を誤認させるテクニックが「田沢湖」同様に巧妙で、最後まで犯人を絞り込めなかった。
医療関係の出版社勤務という作者の職歴から仕入れたと思われるメインのアイデアは特殊知識ものですが、伏線が丁寧に張られているのでアンフェアという感じは受けない。


No.1726 5点 乾杯、女探偵!
カーター・ブラウン
(2012/04/16 18:58登録)
ハリウッドの女探偵メイヴィス・セドリッツ登場。
軽ハードボイルドというより、序盤の死体の処理方法を巡って連続する騒動はドタバタ・コメディです。
マリリン・モンローか「チャーリーズ・エンジェル」のファラ・フォーセット=メジャースを髣髴とさせる、少々オツムの弱い肉体派の主人公メイヴィスは、ひたすらお色気担当で(必然性のないヌード・シーンが三回!)、探偵らしい行動がほとんど見られないのはシリーズのお約束なのか?
かなりご都合主義な展開のすえに、”意外な真犯人”だけは用意されているのですが。


No.1725 5点 私だけが知っている 第2集
アンソロジー(出版社編)
(2012/04/15 17:51登録)
昭和30年代のNHK名番組「私だけが知っている」のシナリオ・アンソロジー。第2弾の本書は、全266作品の中から昭和36年以降の12作品が収録されています。

戸板康二「金印」は正月特番ということで、脚本を担当していた鮎川哲也、土屋隆夫、夏樹静子、藤村正太、笹沢左保の5人が探偵局側で出演し、レギュラー探偵団が推理劇を演じるという、攻守ところを替えた趣向が楽しい(内容自体はたわいない消失トリックものですが)。
夏樹静子「崖の上の家」は、自身の長編でも使ったプロット上のトリックが、枚数の関係もあってやや複雑で難解。藤村正太「雪の証言」は、足跡のない殺人テーマ。実行の可能性に疑問があるがミスリードは巧み。
総じて犯人を特定するロジックが弱く、意外性のある”決め手”を設定した作品が見当たらなかったのは残念。


No.1724 6点 ドーヴァー3 誤算
ジョイス・ポーター
(2012/04/14 18:06登録)
ドーヴァー警部シリーズ。ポケミス版「ドーヴァー3」を文庫化に際し改題したものです。

複数の猥褻な中傷の手紙が村を揺るがし、女性の自殺未遂とガス中毒死が連続する奇っ怪な事件に、ロンドン警視庁の厄介者ドーヴァーが出馬する。例によって、面倒くさい捜査は部下のマグレガーに押し付け、自分は飲み食い昼寝を決め込むという、いつもながらの展開です。
”天敵”である村の有力者の女性との攻防も可笑しいが、見当違いの推理をするドーヴァーに対して、最後に真犯人が採った行動がまた爆笑ものでした。

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