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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2432件

プロフィール| 書評

No.172 7点 虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター
(2010/04/18 18:19登録)
テレポーテーションが発達した25世紀が舞台のSF復讐劇。
「モンテ・クリスト伯」を下敷きにしているが、力感と疾走感にあふれたノアール小説の印象があります。
哲学的な命題を提示して終えるエンディングがSFの名作と言われる所以でしょうが、謎と伏線の妙味もあり、「分解された男」ともどもミステリ読みにも魅力ある小説だと思いました。


No.171 6点 ガラス箱の蟻
ピーター・ディキンスン
(2010/04/18 14:20登録)
ロンドン警視庁のピブル警視シリーズの第1作。
「毒の神託」や「キングとジョーカー」などディキンスンの小説は、独特で異様なシチュエーションを設定しておいて、その中で本格ミステリを行うというのが定番のようです。
シリーズものの警察小説である本作も例外ではなく、20年前にニューギニアからロンドンに移ってきた部族の中で酋長が殺害された事件を扱っています。この部族はアパートの一室から出ようとせず一日中テレビの画面を見つめているなど、非現実的な生態なのに、いやにリアリテイがあって印象的に描かれています。
そういった世界だから、この殺害動機なわけで、本格ミステリとしても及第点。万人向けの小説ではないですが、ツボに嵌る人には楽しめると思います。


No.170 7点 密偵ファルコ/鋼鉄の軍神
リンゼイ・デイヴィス
(2010/04/18 13:45登録)
ローマ帝国を時代背景にした密偵ファルコ・シリーズ第4弾。
今作がシリーズで一番おもしろい。ライン河を越えてゲルマニアで冒険を繰り広げる、本格的な冒険小説に徹しています。
基本は歴史冒険ミステリではあるんだけど、巻によって恋愛もの、家族小説、本格ミステリなど色々な要素を取り入れています。
登場人物の会話は、歴史ものなのに現代口調なのが新鮮で、そういった点も受け入れやすい一因だと思います。


No.169 5点 カッコウの卵は誰のもの
東野圭吾
(2010/04/17 17:45登録)
翻訳ミステリや昭和の推理小説を読んでいると、女性の会話口調の不自然さが気になってしょうがない時がある。「~ですわ」などが出てくるとムズムズしてきて物語に集中できません。
その点、この小説に出てくるアルペンスキーの女性選手の会話口調は非常に自然体で、「父親」との会話などは、いかにも今時の19歳の女性という感じがして好感が持てました。以上感想おわり。


No.168 6点 鎌倉XYZの悲劇
梶龍雄
(2010/04/17 17:12登録)
鎌倉の旧家を舞台にした遺産相続が絡む本格ミステリ。
情けないほどベタなタイトルの真意は不明ですが、クイーン某作の趣向を取り入れているのは確か。
天国の局長が地上の私立探偵に指示して解決にあたらせるというとんでもないプロットは面白いが、前半の物語がギクシャクしていて、文章の拙さと相まって読みずらいのが欠点ですね。
前例はあるものの非常に意外な真犯人を設定していて、犯人当て小説としては満点に近い裏ベストといっていい出来だと思いますが、上に書いた点がちょっと惜しい気がします。


No.167 6点 殺人はお好き?
小泉喜美子
(2010/04/17 16:37登録)
ロスの私立探偵が日本に呼び寄せられて、中国人をボスとする麻薬密売組織と対峙するお話。まあ、軽ハードボイルド系の長編アクション小説です。
キリオン・スレイやトウキョー・サム同様に変な外国人を日本社会に放り込んで、異文化・異言語との交流の妙も狙ったと思われますが、そちらの趣向は成功しているか微妙です。カーター・ブラウンを意識した作風は肩の凝らないミステリに仕上がっていて、意外な結末につながる伏線の張り具合もまずまず。最終章のタイトル「さよなら、可愛い人」が泣かせます。
「あとがき」によると、この作品は1962年の別名義による新聞連載ということで、実質的に著者の処女長編のようです。


No.166 6点 私のすべては一人の男
ボアロー&ナルスジャック
(2010/04/17 14:44登録)
従前の心理サスペンス風の作風とはちょっと異なるボア&ナル最強の怪作だと思います。
臓器移植の大家が、重傷を負った7人の患者に一人の死刑囚のからだの部分を移植するが、手術後に患者たちに次々と異常が起こり始め、自殺が相次ぐ。
いわば、「占星術」の逆バージョン。現象はホラー小説の様相ですが、全ては合理的に説明される(かな)。
フランス・バカミスの頂点でしょうか。この驚嘆の真相に対して笑って許せるか、壁に投げつけるか、読者の度量の大きさが試されます(笑)。


No.165 7点 クラシックな殺し屋たち
ロス・トーマス
(2010/04/17 14:06登録)
パディロ&マッコークル2人組「マックの店」シリーズ第3作。
先ごろデビュー作の邦訳から30年以上たって第2作が出たので、これも再読しました。やはり、メチャメチャ面白い。善人悪人にかかわらず登場人物の造形が個性的で、会話のセンスもいい。
今回は、やり手の殺し屋を向うにまわし、アラブの石油王になる男の身辺警護をするお話。前作と比べてプロットがすっきりしていて読みやすいが、人物関係の説明が省略されているのでシリーズ第1作「冷戦交換ゲーム」から読むのが吉だと思います。


No.164 4点 幽霊の死
マージェリー・アリンガム
(2010/04/16 22:03登録)
素人探偵アルバート・キャンピオン、シリーズ第6作。
残念ながらアリンガムとの相性はあまりよくありません。本作と次の「判事への花束」も、いちおう代表作ともいわれる作品だと思いますが、訳文が古いせいもあるかもしれませんが、探偵の人物造形がいまいちよく分からないため、物語に入り込めませんでした。最近訳出された作品も読んでみましたが、本格ミステリじゃなく、古いスリラー&サスペンスの様相で、これはまったく守備範囲外。英国4大古典女流ミステリ作家の一人というのは、現在での評価では、ちょっとどうなんでしょうか。


No.163 7点 四年後の夏
パトリシア・カーロン
(2010/04/16 21:27登録)
豪州のサスペンスの女王・カーロンの邦訳第4作。
10年前には毎年のように出ていた気がしますが、バッタリ止まってしまったのは売れなかったからなのか。
4年前の殺人事件の容疑者は2人のヒッチハイクの女性・・・。なんだか「ウッドストック行最終バス」のような雰囲気の過去の事件を、被害者の妹の依頼で私立探偵が解く。
過去の事件と現在の調査書類の写しが交互に描かれていて、サスペンスの盛り上げ方が巧い。この作品を読む限りでは女王の呼称に偽りなしと思いました。


No.162 6点 ジョン・ディクスン・カーを読んだ男
ウィリアム・ブリテン
(2010/04/16 20:54登録)
有名なミステリ作家のパロデイ「~を読んだ~」シリーズ11編と単発作品3作を収録した短編集。
表題作は既読ですが、倒叙もので、密室殺人を企てた男の皮肉な結末が笑える。この密室トリックは「密室講義」でばからしいとして無視されたものではなかったか。
「エラリー・クイーンを読んだ男」は金貨の隠し場所トリックでまずまずの佳作。
「レックス・スタウトを読んだ女」はサーカス劇場の殺人事件。ウルフの雰囲気をミスディレクションに使っていて巧い。
ほか、クリステイ、ドイル、チェスタトン、ハメット、アシモフなど錚々たるメンバーを揃えているが、後ろの作品になるほど完成度が落ちている気がします。
単発ものでは、「ザレツキーの鎖」が脱出もので最もトリッキー、結末のキレが抜群にいい傑作。
著者の代表シリーズ・ストラング先生ものは本格系のようで、続いて読んでみたい。


No.161 6点 ねじれた奴
ミッキー・スピレイン
(2010/04/16 19:04登録)
私立探偵マイク・ハマー、本格ミステリに挑戦する(笑)。
スピレインと言えば、暴力とセックス、そして最後は拳銃一撃で解決する。たいてい一番魅力的でセクシイな美女が真犯人(多少の誇張あり)に決まっていますが、本作は、まさかの「館」ミステリ。
舞台は「ヨーク家」で、利口な少年も出てくるので、どの本格ミステリをパロッたか明白です。シリーズ中最も「意外な犯人」でしょうね。


No.160 7点 冬の裁き
スチュアート・カミンスキー
(2010/04/16 18:39登録)
シカゴの老刑事エイブ・リーバーマンを主人公とする警察小説、シリーズ第3作。
著者は、①40年代のハリウッド映画界を背景にした私立探偵もの(「ロビンフッドに鉛の玉を」ほか)、②崩壊前のソ連を舞台にした警察小説(「ツンドラの殺意」ほか)も書いていますが、初期の軽妙なものやウイットに富んだ作風と比べて、リーバーマン刑事シリーズは深みのある渋い警察小説です。
親族や同僚刑事ハンラハンとの交情も重要な読みどころなのに、邦訳が発刊順になっていないため、その人間関係の肝が解り難いなど、日本での扱いが充分でないのが残念です。
この作品は、ある冬の一日の事件をモジュラー方式で描いていて、結末の意外性も設定されています。シリーズ中ミステリ志向が一番高い代表作ですが、できれば第1作の「愚者たちの街」から順に読むことをお薦めします。


No.159 6点 一寸の虫にも死者の魂
リチャード・T・コンロイ
(2010/04/15 21:35登録)
スミソニアン博物館シリーズ、爆笑のスプラスティック・コメデイ第3弾。
今回、博物館の渉外担当ヘンリーが引き起こすのは、歴史的大事件。最初はスケベ心から民族フェスティバルに協力していただけだったのだが・・・首都ワシントンの運命、その責任が全て自分にかかってくるとは!(笑)
このシリーズ、回を重ねる毎に面白くなる。しかも最後は本格的にミステリ?な所がツボです。


No.158 6点 猫の手
ロジャー・スカーレット
(2010/04/15 20:50登録)
ノートン・ケイン警部シリーズ第3作。
いかにも古典本格ミステリの定型で、遺産相続を絡めた親族が集まる屋敷での殺人を扱っています。とくに新しい趣向もなく、「エンジェル家」のような派手なトリックもありませんが、予想以上に面白く読めました。
一番評価できるのは、終盤のケイン警部の論証でロジックに隙がない所でしょうか。猫の手に関する最後のひっくり返しもスマートです。残る未読の「白魔」(「バック・ベイの殺人」)の完訳を期待したいものです。


No.157 6点 毒蛇の園
ジャック・カーリイ
(2010/04/15 20:18登録)
サイコ・サスペンスと本格ミステリを融合させた<百番目の男>カーソン刑事シリーズの第3作。
ケネディ家をモデルとしたと思われる名門一族に絡む連続殺人を描いていますが、今回は本格風味が希薄。シリアル・キラーのカーソン刑事の兄も出番なく、ちょっと物足りない出来です。


No.156 6点 ヘッドハンター
マイケル・スレイド
(2010/04/15 18:45登録)
カナダ騎馬警官隊シリーズの第1作。
スプラッタ・ホラーと警察小説が合体した過激なサイコ・サスペンスです。
スレイドは何人かの作家の合作ペンネームですが、まるでリチャード・レイモンとジャック・カーリイが合作したような作風(かえって判りにくい?)です。
異常極まりない残酷描写の連続と掟破りの結末は、なるほど綾辻行人がイチオシのシリーズだと納得いきました。


No.155 5点 鉄路のオベリスト
C・デイリー・キング
(2010/04/15 18:06登録)
ロード警部補ものの<オベリスト3部作>の第2作。
同じ年に大西洋の向う側で出版された「オリエント急行」と同様に長距離列車内の殺人を扱っていますが、こちらはアメリカ大陸横断鉄道が舞台です。
今作も巻末に「手掛かり索引」一覧を載せ、多重解決ものをやってくれてますが、冗長な心理学の講釈とトリックがやや強引なところがあって読後感はいまいち。
訳者が鮎川哲也というのは題材からナルホドと思いましたが、本当かなあ。


No.154 7点 バースへの帰還
ピーター・ラヴゼイ
(2010/04/14 21:47登録)
主にビクトリア朝を時代背景に歴史ミステリを書いてきたラヴゼイが、本格的に現代ミステリに取り組んだダイヤモンド警視シリーズの第3作。
現代の英国本格を代表するシリーズの一つですが、当シリーズの書評が全くないのはちょっと寂しい。
時代遅れで頑固者のダイヤモンドは、今作ではまだ「元警視」で、ある事情から過去の冤罪事件と現在の誘拐事件に奮闘する。
いかにも田舎町というのんびりしたバースの雰囲気もいいし、本格ミステリのツボを押さえた結末もお見事。個人的にはシリーズの代表作だと思っています。


No.153 8点 スクールボーイ閣下
ジョン・ル・カレ
(2010/04/14 20:50登録)
英国情報部<サーカス>のスマイリーとソ連の工作指揮官カーラとの諜報戦を描いた<スマイリー3部作>の第2作。
前作で二重スパイ<モグラ>によって壊滅的打撃を受けた英国情報部は、カーラの資金移動のルートを叩くべく反撃に出る。
3部作の2作目となるとつなぎの物語と思われがちですが、前作の重くて暗い動きの少ない物語に対して、今作は東南アジアとロンドンを舞台に壮大なエンタテイメントに仕上がっています。準主人公の<スクールボーイ>こと臨時工作員ウェスタビーの役割もそれに寄与していて、3部作では一番面白い。
といっても、人物、情景の書き込みぶりは尋常ではないし、リアリズムを追求した地味なエスピオナージには変わりないので、読むのに相当の覚悟が必要です。

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