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ミステリの祭典

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鉄路のオベリスト
オベリスト3部作

作家 C・デイリー・キング
出版日1983年01月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 ことは
(2022/09/23 00:09登録)
「海のオベリスト」と間をおかずに読んでみた。
読んでいてまず気になったのが、捜査に関して実にゆるいこと。
死者がでる事件があるのに、鉄道の運行も止めず、新たに乗り込む捜査関係者も検死医がひとりとは、現代の感覚ではありえない。執筆当時の1930年代でも、同時期の他作品と比較するとありえないと思う。(「海のオベリスト」でも捜査に関してゆるかったが、それは「船上であるためにしょうがない」と思えた。本作では、しょうがないと思わせる状況がないので気になる)
そこを「お約束」として気にしなければ、大陸横断鉄道の旅を背景に、コージー・ミステリのような空気感で読める。
ただ、ネットで書いているひとも多いが、心理学/経済学の記述が、ミステリとうまく絡まないので邪魔に感じるし、真相も無理を感じる部分がおおく、あまりたかく評価はできない。
美点は、(事件現場捜査時に「奇妙に思えることがある」とだけ話して、具体的な内容は解決編まで伏せられている)主人公の最初の気づきで、なかなか「なるほど」と思わされた。xのxxxxのいい例だと思う。クイーンのいくつかの作例が思い浮かぶ。
「手がかり索引」も、「海のオベリスト」よりもこなれてはいるが、やはりこれも惹句以上のものではないかな。
とはいえ、プールがある(!)列車とか、(事件が起きても運行する!)数日にわたる車窓の風景など、(「海のオベリスト」と同様に)極めて映像的な作品で、ミステリ外の面白さはあるので、たまにはこんな作品もいいかな。

No.2 6点 nukkam
(2016/07/27 15:58登録)
(ネタバレなしです) 1934年発表のオベリスト3部作の第2弾で前作「海のオベリスト」(1932年)と同じく巻末に「手掛かり索引」が置かれています。私はカッパノベルズ版で本書を読みましたがびっくりしたことに内容をカットした抄訳だそうです。戦前や戦後まもなくならともかく、現代では原作通りに翻訳するのが常識でしょう。翻訳者が著名な推理小説家の鮎川哲也なのでおそらく謎解きに関連する部分は全部残してあるだろうし、私が読んだオベリスト3部作の中では1番読み易かったのですがやはり抄訳というのは残念な気がします。内容的には前作よりも謎解きが(詳細は書けませんが)技巧的になりました。(ほとんど)最初から最後まで列車を舞台にしている本格派推理小説としてはクリスティーの「オリエント急行の殺人」(1934年)と並ぶ存在です。再版の際にはぜひ完訳版をお願いしたいです。⇒2017年についに完訳版で再販されました。

No.1 5点 kanamori
(2010/04/15 18:06登録)
ロード警部補ものの<オベリスト3部作>の第2作。
同じ年に大西洋の向う側で出版された「オリエント急行」と同様に長距離列車内の殺人を扱っていますが、こちらはアメリカ大陸横断鉄道が舞台です。
今作も巻末に「手掛かり索引」一覧を載せ、多重解決ものをやってくれてますが、冗長な心理学の講釈とトリックがやや強引なところがあって読後感はいまいち。
訳者が鮎川哲也というのは題材からナルホドと思いましたが、本当かなあ。

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