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ミステリの祭典

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文生さんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:510件

プロフィール| 書評

No.350 7点 不実在探偵(アリス・シュレディンガー)の推理
井上悠宇
(2023/07/17 10:34登録)
ミステリーマニアの女性刑事と強面の先輩刑事がコンビを組む割とありがちなタイプの連作短編で、独創的なトリックや驚愕のどんでん返しがあるわけではありません。しかし、そこに不実在探偵というわけの分からない存在を放り込むことでミステリーとして面白さが格段にアップしています。アリスと名付けられた探偵は喋ることも筆談をすることもできず、唯一可能なのが質問に対してダイスの目を変えて「はい」「いいえ」などの簡単な回答することだけです。そのため、本来なら探偵の推理に耳を傾けるだけの存在であるワトソン役や刑事たちが真相にたどり着くために推理合戦を始めるのが楽しい。


No.349 6点 盲目の鴉
土屋隆夫
(2023/07/17 10:01登録)
過去作と比べるとミステリーとしては小粒な点は否めないところ。アリバイトリックはちょっとユニークですが、どちらかというと短編向きで、それだけではもの足りなさを覚えてしまいます。その代わり、田中光二を始めとした純文学作家の蘊蓄を交え、抒情性豊かに描かれた物語には引き込まれました。


No.348 5点 妻に捧げる犯罪
土屋隆夫
(2023/07/14 08:06登録)
いつもの本格長編とは趣向を変えたサスペンスよりの作品です。悪戯電話が趣味の主人公が些細な手掛かりから電話先の相手を推理していくくだりはさすがの面白さ。しかし、全体的にはミステリー色が薄味で読み終わったあとはもの足りなさを覚えました。


No.347 8点 赤の組曲
土屋隆夫
(2023/07/13 11:10登録)
比較的地味な事件ながら、文学性の高さと次第に混迷を深めていく展開にはそこはかとない幻想味が感じられ、引き込まれました。五里霧中のなか、一つの閃きがきっかけとなって一気に謎が解けていく構成も見事です。大胆なトリックと二重三重に張り巡らされたミスディレクションの妙が堪能できる名品。


No.346 7点 天国は遠すぎる
土屋隆夫
(2023/07/10 20:22登録)
多くの指摘があるとおり、人を自殺に誘う流行歌という魅力的なガジェットが雰囲気作り以上の役割を果たしていないのが大きな弱点。著者の代表作である次作『危険な童話』と比べると完成度という点ではどうしても見劣りがしてしまいます。それでも昭和型のアリバイ崩しものとしてはかなりの面白さです。トリックが良いですし、コンパクトにまとまっているのも好印象。


No.345 6点 ロジカ・ドラマチカ
古野まほろ
(2023/07/06 14:09登録)
日常の何気ない一コマを文章に起こし、それをロジカルに分析することで思わぬ真実を掘り起こしていく『九マイルは遠すぎる』のオマージュ作品。
とにかく、ロジックの積み重ねが尋常ではなく、その密度は完全にオマージュ元を凌駕しています。反面、あまりにも学術然とした推論は読んでいて頭が痛くなってきます。ある意味、ロジックミステリーの極北に位置する問題作です。


No.344 8点 世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
(2023/07/05 23:08登録)
大きな事件は起きない日常の謎ものに近い作風ですが、人気ミステリー作家の遺作の行方を追うというプロットには大いにそそられました。そして、なんといってもあの大仕掛けです。先にレビューしたミシェル・ビュッシの『恐るべき太陽』 もそうですが、まさか続け様に泡坂妻夫マジックを彷彿とさせる作品を読めるとは思いもしませんでした。ちなみに、どちらも力作ではあるものの、個人的には冗長さが目立つ『恐るべき太陽』よりもテンポ良く読めて、謎の提示から最後のサプライズまでを寄り道なしに楽しめる本作の方が好みです。


No.343 6点 Wの悲劇
夏樹静子
(2023/07/02 14:21登録)
殺人事件が発生してアリバイ工作が瓦解するまでの倒叙ミステリとしての前半と、真犯人の正体を暴く後半からなる2部構成の作品です。すごい仕掛けや手に汗握るサスペンスがあるわけではありませんが、前半のアリバイトリックと後半の××トリックの相乗効果で、そこそこ楽しめたといったところでしょうか。


No.342 5点 真実の10メートル手前
米澤穂信
(2023/07/02 13:51登録)
ミステリーとしての仕掛けが小粒なのは割といつも通りなのですが、それを設定の面白さや捻りのあるプロットで盛り上げていくのが米澤ミステリーの真骨頂。しかし、本作の場合はそうした工夫に乏しく、ひたすら地味でした。ジャーナリズムのあり方といったテーマに興味が持てないというのにも同感。決して駄作ではないものの、佳作というにはもの足りなさを感じる作品です。


No.341 8点 ヨモツイクサ
知念実希人
(2023/06/27 21:25登録)
読む前は評価高すぎだろうと思っていたのですが、これが大変面白かったです。まず前半は体重1トン近い人喰いヒグマの追跡劇をサスペンスたっぷりに描いていてこれだけでも大満足な出来映え。中盤からはにわかにバイオホラーとなり、面白いことは面白いのだけどいささかやりすぎで、これはちょっとB級かなと感じていたところ終盤のあれに驚かされ、思わずのけぞってしまいました。結局、B級ではあるのですが、最後まで読むとそれも気にならなくなります。もしかしたら2023年6月現在、今年読んだ本の中で1番面白かったかもしれません。


No.340 6点 香港警察東京分室
月村了衛
(2023/06/25 10:41登録)
日本と香港の合同チームである特殊共助係の活躍を描く刑事アクションです。計10名の刑事たちはみな個性的でキャラが立っており、なかでも、天然おっとりお姉さんのようなキャラで実はすごい切れ者の水越真希枝警視が魅力的。
一方、アクションは中盤の凄まじいまでの銃撃戦は息をのむほどの迫力で大変よろしいのですが、そこがピークになってしまっているのにはもの足りなさを覚えてしまいました。中盤の銃撃戦があまりにも素晴らしかったので期待値が上がりすぎたのかもしれません。


No.339 5点 死者のノック
ジョン・ディクスン・カー
(2023/06/23 22:20登録)
密室トリックに関しては不備が指摘されているものの、個人的にはアイディア自体は悪くないと思います。ただ、長篇でメインをはれるほどものではなく、どちらかといえば短編向きかなと。また、多くの人が指摘しているようにフーダニットミステリーとしては悪くありません。もっとも、それがいまいちミステリーとしての面白さに結びついていないというか、どうにも盛り上がりやケレン味に欠けている感じがします。カーのなかではかなり印象の薄い作品。


No.338 6点 猫と鼠の殺人
ジョン・ディクスン・カー
(2023/06/23 22:02登録)
不可能犯罪も怪奇趣味もなく、カーの作品としては地味ですが、ストーリーに緊張感があり、ヒネリの効いた皮肉な展開は十分に楽しめました。トリックに関しては可もなく不可もなくといったところ。


No.337 3点 アラビアンナイトの殺人
ジョン・ディクスン・カー
(2023/06/23 21:41登録)
話が長い割に大した謎もなく、そのうえ、同じ事件を3人の視点から描かれるのだけど、どれも劇的な違いがあるわけでもないので読んでいてとにかく退屈でした。真相も凡庸で『盲目の理髪師』に並ぶつまらなさ。


No.336 5点 フォトミステリー ―PHOTO・MYSTERY―
道尾秀介
(2023/06/21 20:01登録)
『いけない』と同じ写真でオチを付けるタイプのミステリーなのですが、果たしてこれをミステリー小説と言ってもいいものか。全50話のほとんどが1ページ未満で、なかには一行しかないものもあります。小説というより小ネタ集です。とはいえ、写真だけでなく、タイトルも駆使してオチを付ける手管はさすがですし、道尾流のブラックなネタも嫌いではありません(「ひとをうたがうべからず」とか結構好き)。しかし、ミステリー小説としてはやはり評価しがたいものがあります。


No.335 6点 殺したい子
イ・コンニム
(2023/06/18 15:00登録)
女子高生が校舎裏で撲殺死体となって発見され、同級生の友人が逮捕される。その事件を関係者のインタビューを通じて追っていくが…。

証言する人間が代わるたびに被害者と容疑者のイメージが二転三転しながらも、世論のバイアスによって次第に真実が歪められていくプロセスがスリリングです。事件の真相も皮肉が効いていて悪くありません。ただ、逮捕された女子高生が弁護士たちにあまりにも非協力的で自ら心証を悪くしにいっている点に関しては若干の苛立ちを覚えました。


No.334 6点 歩く亡者 怪民研に於ける記録と推理
三津田信三
(2023/06/09 11:22登録)
刀城言耶に代わって研究室の留守を預かる天弓馬人が探偵役を務めるスピンオフ作品。しかし、天弓は刀城の弟子なのに怖いものが大の苦手で、怪異の存在を否定するために推理をするというのがユニークです。また、そんな彼を怖がらせてからかう大学生・瞳星愛とのコンビも微笑ましい。本格ミステリとしては突出した出来ではありませんが、ホラーミステリとしてはなかなか読み応えあります。ディクソン・カーに関する言及が多い点も個人的に嬉しいところ。


No.333 7点 のぞきめ
三津田信三
(2023/06/08 20:47登録)
現代編と過去編の2部構成になっているのですが、現代編がとにかく絶望的すぎて圧倒的に怖い。そして、そのインパクトがミスディレクションとして機能し、過去編における事件の真相を隠蔽する役割を果たしているが見事です。ただ、その仕掛け故、第2部が第1部に比べてあまり怖くないのがホラー小説としては物足りなさを覚えました。


No.332 6点 すり替えられた誘拐
D・M・ディヴァイン
(2023/06/03 22:21登録)
窃盗を理由に大学を除名された学生の冤罪疑惑が持ち上がり、やがて学生たちによる抗議活動へと発展していく。そんななか、抗議の一環としてこの大学に大口の寄付をしている富豪の娘を誘拐するらしいという噂が広まっていく。果たして誘拐は行われるがそれはあくまでも狂言誘拐のはずだった。だが、誘拐はやがて殺人事件となり…。

ディヴァイン最後の未訳作品です。いつもの如く派手な仕掛けなどはありませんが、真犯人を論理的に指摘するなど、フーダニットミステリとしては悪くありません。それに事件が起きる前の、不穏な空気が高まっていくくだりなどは物語としても読ませます。ただ、犯人が判明したあとのサスペンス展開、出来自体は悪くないものの、自分はてっきり(犯人指摘が早すぎたので)さらなるドンデン返しがあるものとばかり思っていました。まさか『死の接吻』方式とは思ってもなかったので、謎解きがすでに終わっていた事実を最後に知って肩透かしを覚えたわけです。トータル評価としてはそこそこ楽しめたということで6点くらいで。


No.331 7点 恐るべき太陽
ミシェル・ビュッシ
(2023/05/27 04:21登録)
ミシェル・ビュッシといえばサスペンス調の物語にどんでん返しの組み合わせというイメージの強い作家です。しかし、本作では携帯電話の電波が届かない南の島(島には数千人の住人もいるのでクローズドサークルではない)で連続殺人が起き、事件の関係者が真相を推理していくという本格仕立てになっています。
そして、終盤のどんでん返し。これがなかなかにすごい。とはいえ、それは意外な真相に驚くというより、よくそこまでやるなという、作家の仕掛けに対する執念に唸らされたいった感じ。そういう意味では、泡坂妻夫のミステリーに通じるものがあるかもしれません。全体としては大いに楽しめたのだけど、ただ、仕掛けに特化した作品ならばもう少し短くてもよかったような気が...。

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