home

ミステリの祭典

login
卒業生には向かない真実
ピップシリーズ

作家 ホリー・ジャクソン
出版日2023年07月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 HORNET
(2023/08/27 20:53登録)
 ここまでの評者の方々が(前作から)書いているように、基本的に本シリーズは「シリーズを読み続けている人」の前提で書かれている。1作目から読むことをオススメ。

 3作目にして、ちょっと意外な方向に進んだな…主人公・ピップがどんどん遠いところに行ってしまったなぁ、というのが正直な感想。
 「自由研究」で始まった素人探偵の頃のピップが懐かしい。物語としては面白かったが、それこそ通して本シリーズを読んでいる身としてはなんだか悲しく、切なくなる展開ばかりだった。
 物語の後半、ピップがとんでもない「計画」に進み始めたところでは、「おいおい、冤罪のまま投獄されているビリー・カラスはどうなったんだよ!?」と思っていたけど、そちらはきちんと回収されていたのでまぁそれはよかった。
 とりあえず本シリーズは終了ということなので、また毛色の違う他作で楽しませてくれると嬉しい。

No.2 5点 nukkam
(2023/08/25 22:45登録)
(ネタバレなしです) 2021年発表のピップ三部作の最終作です(但し創元推理文庫版の巻末解説によればもう1作、ピップ初めての事件を描いた中編があるそうです)。文生さんのご書評で説明されているように、「自由研究には向かない殺人」(2019年)、「優等生は探偵に向かない」(2020年)のネタバレが一杯で、多くの登場人物が再登場していますので過去の2作品を先に読むことを勧めます。本書のピップは過去の事件で負った心の傷が癒えておらず薬に頼っている有様で、序盤は非常に暗くて重苦しい雰囲気が漂います。その上に謎のストーカーにつきまとわれますが、このストーカーを捕まえようと考えてから少しずつ前向きになります。推理によって真相が明らかにならないのは個人的に残念ですが、第一部は本格派推理小説とサスペンス小説のジャンルミックス型のプロットです。ところが第二部になってがらりと作風が変わったのにはとても驚かされます。過去2作も500ページ以上の大作ですが本書は650ページを超えます。しかしテンションは全く落ちずに最後まで読ませます。本格派好きの私には合わない作品でしたが、多くのミステリー好きは高く評価すると思います。

No.1 8点 文生
(2023/07/24 12:08登録)
ピップシリーズ三部作の完結編です。700ページ近い大作ですが、一切だれることなく最後まで一気読みでした。前半は過去の事件を捜査して真相を探っていくいつもの展開が繰り広げられるものの、これに関してはおそらく多くの人が比較的早い段階で犯人の正体に気がつくのではないのでしょうか。しかし、本作の主眼はそこではありません。中盤に事件の様相が一変し、思いもしない展開になだれ込んでいくのです。前作でなんとなく予感はあったものの、ここまでやってくれるとは思いませんでした。それに加え、1作目&2作目のエピソードが思わぬところで繋がってき、一気に伏線回収されていくさまも圧巻です。
ただ、唯一の不満は前作で登場したあの男の扱い。新旧スターウォーズ三部作におけるダース・ベイダーあるいはパルパティーン最高議長のような立ち位置のキャラで、果たしてどっちの方にいくのかと期待していたら3作目のボバ・フェットの如くあっさり処理されたのにはがっかりでした(それとも今回不自然までに描写が少なかったので外伝の構想でもあるのでしょうか?)。
あと、1作目、2作目のネタばれは当たり前のようにしてくるし、そもそも1~3作目は物語的にも密接につながっているので、事前に過去作を読んでおくことをおすすめします。

3レコード表示中です 書評