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平均点:6.00点 | 書評数:1851件 |
No.171 | 6点 | 三重殺 奥田哲也 |
(2010/01/07 23:06登録) 埋もれた作家? 奥田哲也(英朗ではありません)の作品。 「同じ名前の人物が3回殺された」というのが本作の大きな謎です。 事件関係者も主に3名しか出てこないため、この3人がどういう組み合わせで加害者と被害者になっていったのかがポイントになります。 ただ、仮説がいろいろと検討されるため、読んでる途中でだんだんこんがらがってきます。 面白いプロットなのですが、設定にムリヤリ感があるため、ロジックだけの解決は無理で、「偶然」に頼っている部分が大きいのがちょっと残念ですね。 ”名なしの刑事”キャラは、なかなか味があって良いです。 |
No.170 | 9点 | Xの悲劇 エラリイ・クイーン |
(2010/01/03 21:45登録) ドルリー・レーン4部作の記念すべき第1作。 ”ニコチン原液を塗った無数の針”という恐ろしい凶器が有名な作品です。 さすがというか、グレードが高いですね。 最終章、第1~第3の殺人までレーンの推理の過程が述べられるわけですが、その徹底したロジックには唸らされるばかりです。特に、○○傷跡の誤謬には気付きませんでした・・・ 正直時代性もあり、第2の殺人については、いくら何でも現代では通用しないでしょうし、今ひとつ人物像が浮かびづらいという翻訳物の宿命は感じますが、まさしく「稀代の名作」という評価で間違いありません。 |
No.169 | 5点 | メビウスの殺人 我孫子武丸 |
(2010/01/03 21:27登録) 速水三兄妹シリーズ第3作。 いわゆる「ミッシング・リンク」がテーマになっていますが、デビュー間もない頃のシリーズだけあって、何となく筆致が安定してないというか、”若さ”が目に付く作品だなぁという印象が残ります。 その辺、作者もあとがきで書いてますが、本作を書いている最中に「殺戮にいたる病」のプロットを思いついたとのことで、それが本作の中途半端さの理由かもしれません。(本作に全力投球じゃなかったわけですよね・・・) 速水三兄妹自体はなかなかのキャラクターだと思うので、是非復活させて欲しいものです。 |
No.168 | 4点 | 天河伝説殺人事件 内田康夫 |
(2010/01/03 21:17登録) 浅見光彦シリーズの1作。 映画化もされた作品なので、氏の作品群の中でも名の知られた一作かもしれません。 展開はいつもの浅見シリーズを踏襲しており、「能」宗家にまつわる殺人事件の謎を追って「天河」の地へ・・・といった具合。 ちなみに「天河」とは奈良県の吉野にあるそうです。 普段のシリーズ作よりは若干なりとも「重厚さ」があり、後年の「文芸シリーズ」に通じる部分が感じられます。 しかし、毎回思いますが、「浅見」のキャラは何とかなりませんかねぇ・・・男性の読者にとっては、全く感情移入できないような設定だと思うんですけど。 |
No.167 | 6点 | 僧正殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン |
(2009/12/30 22:54登録) ファイロ・ヴァンス探偵譚の4作目にして、「グリーン家」と並ぶ氏の傑作です。 ただ、読了後まず感じたのは、「読みにくかった」ということでしたが・・・ 当然ながら、マザーグースの歌詞を元にした「見立て殺人」が本作のハイライトですけれど、必然性のない”見立て”は個人的にはちょっと否定的です。 まぁ、「古き良き探偵小説」を体現しているのは事実だと思いますし、一応?読んでおくべき作品という評価で良いと思います。 「グリーン家」よりは落ちるかな・・・ |
No.166 | 6点 | 叔母殺人事件 偽りの館 折原一 |
(2009/12/30 22:43登録) まさに「ザ・折原」とでも言うべき作品。 主人公視点の「地の文」(現在)と、日記(過去)部分が交互に書かれ、徐々に2つがシンクロしていきます。 オチについては、収まるべきところに収まったという感じで、良く言えば「正統派叙述トリック」ですし、悪く言うなら「ワンパターン、二番煎じ」というところでしょう。 個人的には、ここ最近の氏の作品の中ではまとまっていて、ある程度”読める”作品なのではないかと思いました。 少なくとも、”姉妹品?”の「叔父殺人事件」よりは数段良い出来なのは間違いありません。 |
No.165 | 5点 | 猪苗代マジック 二階堂黎人 |
(2009/12/30 22:29登録) 水乃サトルを探偵役とする「・・・マジック」シリーズの第3作。 本作は、ラストの2~3行でどれくらいサプライズを感じるかに尽きます。ただ、真犯人の印象が作品中であまりにも薄いので、「驚いたなぁ・・・」というより、どうしても「それはないんじゃないの・・・」という感想になってしまいます。伏線にも全く気付きませんでした。 アリバイを絡めた密室トリックも低レベルですし、事件の背景になっている過去の「処刑魔」による犯罪についても、今ひとつ効果を発揮できていません。 まぁ、プロット自体はそんなに悪くないと思うので、点数はこれくらいにしておきます。 |
No.164 | 7点 | 本陣殺人事件 横溝正史 |
(2009/12/26 00:02登録) 言わずと知れた、金田一耕助の初登場作品。 私自身、機械仕掛けの密室に初めて触れた作品です。 何よりも、作品世界の雰囲気がいいです。琴や水車といった小道具や雪景色が何ともいえない「和」のテイストを感じさせます。 動機については、確かに現代の価値観からすれば異常ですが、逆にそれが文学的な後味を引いているような気はしますね・・・ グレードの高い一作という評価で間違いないでしょう。 |
No.163 | 6点 | どんどん橋、落ちた 綾辻行人 |
(2009/12/25 23:51登録) 軽~い雰囲気の短編集。 読んだ後脱力するような作品でした。 表題作と「ぼうぼう森・・・」は、まぁ面白い趣向でしょうね。ただ、後者の方はいくら伏線はあったとはいえ、ちょっとズルイような気はしましたが・・・ 問題作!「伊園家・・・」は設定だけは面白いですが、どうですかねぇ・・・ 浮気相手と気だるい時間を過ごすマス○さんなんてあまり想像したくないですけど・・・ それにしても、リンタローさん、これ以上悩まないようにしてください! |
No.162 | 5点 | 夜行列車(ミッドナイト・トレイン)殺人事件 西村京太郎 |
(2009/12/25 23:39登録) 光文社文庫の復刻版「西村京太郎アニバーサリーフェア」の第4作目で超久しぶりに再読。 ”謎の提起”はいいですね。 国鉄(!)総裁宛に「夜行列車の爆破」を予告する匿名の手紙が届きますが、どの列車がいつ爆破されるのか不明なまま十津川警部が捜査を開始して・・・という展開。 まぁアリバイトリックについては、今となっては子供だましのようなレベルですし、「○○駅」が2つあるというのはファンならば周知のことでしょう。 ただ、400頁超の話をこれだけスラスラ読ませるのはやっぱり作者の力量でしょうか? それとも軽いだけ? |
No.161 | 6点 | 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー |
(2009/12/21 23:00登録) ある意味「密室物」の元祖的作品。 何かの書評でも読みましたが、ポー「モルグ街」やドイル「まだらの紐」という”人知を超えた密室”ではなく、いわゆる「心理的密室」というか一種の「欺瞞的密室」を最初に持ち込んだ功績は大でしょう。 やはり、最初に読んだときは、密室もですが真犯人の意外性にまずはサプライズでした。と同時に「そんなのありか?」というふうにも感じましたが・・・ まぁ、今読めば古臭さは如何ともしがたいですが、時代性を考えれば「名作」ということで間違いありません。 |
No.160 | 9点 | 狼花 新宿鮫IX 大沢在昌 |
(2009/12/21 22:52登録) 新宿鮫シリーズ第9作。 ハードカバー版の帯どおり「桁違いの濃度と感動、一気に炸裂するクライマックス」という言葉がまさにピッタリです。 本作では、パートⅤ「炎蛹」以降、鮫島の好敵手となっていた仙田勝と、キャリア組同期入庁でありながら常に対立していた香田警視という重要なキャラクター2人について、一定の決着が図られます。 今回の鮫島もピンチの連続、緊張感のある展開が続きますが、刑事として人間として、鮫島の心は決して揺らぐことなく自身の任務・正義を遂行しようとします。 シリーズも9作目を数えますが、面白さは全く色褪せません。ただ、鮫島がどんどん孤独になっていくような気がして、今後の展開が何となく心配です。せめて、桃井警部と藪だけは殺さないでください。 |
No.159 | 4点 | 鬼首村の殺人 篠田秀幸 |
(2009/12/21 22:31登録) 弥生原探偵シリーズの第6作目。 本作はタイトルから分かるとおり、横溝「悪魔の手毬唄」のオマージュとなっていますが、もう1つ、帝銀事件と並ぶ戦後の未解決事件である「下山事件」についても独自の解決を試みるという斬新な設定です。 「悪魔の手毬唄」を彷彿させる本筋の童謡連続殺人事件よりも、「下山事件」についての考察や解説に割いている部分が多いような気がして、本筋は全く薄っぺらな印象しか残りません。 本筋の中では、最後の”密室から密室への死体移動”のトリックが読み所なんでしょうが、全然腑に落ちない解決です。(動機も相当薄っぺら) 作者のこだわりは分からなくもないですが、まさに「二兎追うものは一兎も得ず」としか言いようがありません。 |
No.158 | 5点 | 生首に聞いてみろ 法月綸太郎 |
(2009/12/17 18:32登録) 何年か前の「このミス」第1位作品ですが、正直「ホンマかいな?」という感想です。 以前に一度読んでましたが、内容をあまり覚えてなかったため今回再読しました。 例の「母子像」彫刻についての”首”の問題はこだわりすぎじゃないですかね? (文庫版で)200頁を過ぎても誰も殺されないんで、もしかして本作って「彫刻の首切り落とし事件」の話なのかと思ってしまいました。 確かに「小説」としてはグレードの高い作品だと思いますが、氏の悪い部分がやや目に付く一作でした。(長いですし・・・) |
No.157 | 6点 | 女王蜂 横溝正史 |
(2009/12/17 18:20登録) 一連の金田一耕助ものとしては、何度もドラマ化されていて比較的有名な作品の1つでしょう。 ドロドロ&オドロオドロシイ展開がつきものの横溝作品の中では、割合スッキリというか薄味な印象は残ります。 特別凝ったトリックやギミックはなくて、真犯人も「まぁそうだろうな・・・」という気がしました。 ただ、決してつまらないというレベルではなくて、過去の密室殺人や謎の人物など本格物の要素は十分詰まっていますし、「さすが」という感じです。 いつの時代も男って「絶世の美女」には弱いんですね・・・ |
No.156 | 6点 | 殺人ダイヤルを捜せ 島田荘司 |
(2009/12/17 18:11登録) 初期のシリーズ外作品。 まだ携帯電話が普及する前の年代を舞台に、島田氏の十八番の1つ、「東京=都市の恐ろしさ」を感じさせる一作になってます。 「電話」に着目した作品は、確か別の短編(短編集「展望塔の殺人」の収録作でしたか?)でも書いてましたが、使いようによってはこういう気の利いたサスペンスになるんですね。 途中ハラハラさせておいて、ラストで「実は・・・でした」というオチは、定番とはいえ初期作らしい切れ味を持っています。 重厚さはありませんが、水準以上の作品でしょう。 |
No.155 | 8点 | りら荘事件 鮎川哲也 |
(2009/12/10 23:05登録) 星影龍三シリーズ。 まさにフーダニットの代表作とでも言うべき一作ですし、さすがの面白さです。 秀逸なのは、殺人現場に残される「トランプ」の仕掛けでしょう。単にストーリーを盛り上げる小道具的扱いではなく、○○○○トリックと絡めての仕掛けは素晴らしい発想です。 確かに動機の弱さは感じますし(特に第4の殺人以降)、最初の事件はちょっと偶然性が強すぎる気はします。 ですが、それは本作の作風からすれば、あまり重要視しなくても良い部分でしょう。 作品中に散りばめれた伏線にどれだけ気付けるかという、「謎解き」の醍醐味が味わえる傑作という評価です。 |
No.154 | 7点 | 不祥事 池井戸潤 |
(2009/12/10 22:51登録) こちらも氏の連作短編集。 某銀行事務部臨店班に所属する美貌の女性銀行員、花咲舞が主人公の”痛快?銀行ミステリー”。 出世欲や組織の理論に毒された幹部行員の悪行に対して、主人公が正論を振りかざし、まさに「メッタ斬り」にしていきます。 全8編の中では、大百貨店の御曹司を悪人に据えた「腐魚」と「不祥事」が最も痛快です。 他にもアナグラムが面白い「荒磯の子」も捻りが効いててなかなかの良作。 |
No.153 | 7点 | 悪魔の手毬唄 横溝正史 |
(2009/12/10 22:36登録) 言わずと知れた金田一耕助シリーズ。 横溝作品でいえば中期の代表作的存在。 本作のキーは当然ながら鬼首村に伝わる手毬唄どおりに殺人が起こる、いわゆる「見立て殺人」ですが、正直、作品の雰囲気作りが主眼で必然性は感じません。 その他にも、氏の作品ではお馴染みの「顔のない(焼かれた)死体」や「被害者の出生に関する秘密」といったギミックがたっぷり出てきており、金田一シリーズの総決算といった趣きすら感じます。 もちろん「名作」には違いないですし、一読する価値は十分でしょう。 |
No.152 | 4点 | 行方不明者 折原一 |
(2009/12/05 23:11登録) 「~者」シリーズ。 よく続いてます。本シリーズ。 ですが、前作「沈黙者」くらいから明らかにパワーダウン気味なのが否めません。 ラスト前で「僕」の正体が明かされますが、それまでに何の材料も与えられてなかった名前であり、「だれ?」という感じです。 氏の作品は、「狂気」とか「訳のわからなさ」という”味”が強ければこそだと思いますが、ちょっと今回は薄味すぎです。 オチもとってつけた感が残りました。 |