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ミステリの祭典

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simo10さんの登録情報
平均点:5.69点 書評数:193件

プロフィール| 書評

No.153 5点 探偵ガリレオ
東野圭吾
(2012/09/20 23:21登録)
--(一応)ネタばれ含みます--

ガリレオシリーズ第一弾。最初はTVで予知夢の「予知る(しる)」を見て作品を知りました。後は全て本で先回りして、TVの残りはDVDで見ました。最初は短編集だったんですね。以下の五話で構成されています。

①「燃える」:炭酸ガスレーザーというものがそんなに威力があるものだとは知りませんでした。夜中に騒ぐ輩がどれだけ迷惑か知っているので、犯人には同調します。(ひょっとして著者もそういう経験あったのかな?)
②「転写る(うつる)」:衝撃波によって造形を崩すことなくアルミが顔にピッタリはまる!マジで?!
③「壊死る(くさる)」:銭湯なんかにある超音波風呂って大丈夫なんだろうかと不安になってしまう。クロい女の独白がたまらない。
④「爆ぜる(はぜる)」:ナトリウムって危険なんですね。せっかくの派手な事件ももう一つの余計な事件のせいで思いっきり印象が薄まった感じがします。
⑤「離脱(うつる)」:唯一これだけは予想がついた!蜃気楼ならまだ一般的なほうだから分かる人は多いはず。

初めて読んだ時は全然面白くないと思ったが、作品の方向性が分かった上で再読したら、湯川と草薙の掛け合いを中心としてまあまあ楽しむことができました。


No.152 6点 絶望ノート
歌野晶午
(2012/08/31 23:33登録)
--ネタばれ含みます--

手記、日記形式の作品は感情移入しやすくサクサク読めるが、実はその内容は嘘かもしれないと(現実の)読者が気付き易いというリスクもあります。
私も途中で恐らく嘘なのではと勘繰ったのですが、ビデオ事件が本当らしいため、その予想は却下されたと思っていました。
しかし日記は嘘だったという。じゃあビデオ事件の真相はというと、これも全然納得できない。似顔絵事件も本当だし、はっきり言っていじめじゃんと思いました。是永も十分最低と思いました。この点が大きくマイナスです。
ラストの諸井君の件もちょっと唐突でイマイチでした。主人公に対してはもっと皮肉な結末を用意して欲しかったです。
それ以外では、ページ数も気にならずサクサク読めたし、犯人の正体も面白かったし、ジョンも面白かったので、全体的には悪くなかったと思います。
もう少し煮詰めてくれれば大化けできたかもしれないだけに惜しかったと思います。
ちなみに来宮先生はやっぱ見られたんだろうか?


No.151 8点 神様ゲーム
麻耶雄嵩
(2012/08/31 23:27登録)
--ネタばれ含みます--

表紙帯に「驚天のラスト」と記載されていましたが、本当に驚天でした。ミステリランドと思ってなめていたのもありましたが、このレベルの衝撃は久々です。
ネタばれサイトを見てようやく理解したつもりですが、つまり神様を信じるならば箱説が真相だった、信じないのならば物置説が真相だった、ということなんですね。
そしてどちらを信じるかは読者次第という、作者から読者に向けてのゲーム(神様ゲーム)でもあったと解釈しています。
芳雄のラストの語りもあるので、きっと神様が正しいのでしょうが。
解が一つでないのはズルいとは思いますが、この作品ならありでしょう。
叙述以外でここまで驚かせてくれた作品というのも中々思い当たらないです。


No.150 4点 密室殺人ゲーム・マニアックス
歌野晶午
(2012/08/31 23:15登録)
2.0の文庫版読了、王手飛車取りの再読で勢いがつき、文庫化を待てずにノベルズ版の本作を読んでしまった。
正直、失敗したと思った。内容の善し悪し以前に、さすがに本シリーズのテンションに飽きがきており、指が進まない。
ただでさえそんな状態なのにトリックの種明かしたるや、結末たるや…。
読み始めは文庫化を待てば良かったと多少後悔もしたが、待ち侘びて無駄に期待値を上げるよりはさっさと見切りを付けられて良かったかなとも感じている。


No.149 6点 密室殺人ゲーム2.0
歌野晶午
(2012/08/31 23:12登録)
--ネタばれ含みます--

密室殺人ゲームシリーズ第二弾。二冠を達成したとのことで期待していたため、ノベルズ版を我慢し、文庫化を待ちました。
内容はある意味まさかの前作そのまんま。この点は全体的に評価が下がる要素になりやすいと思いますが、久々にこのシリーズを読んだ私にとってはちょっと嬉しい。当然、前作が嫌いな方にはオススメできません。
別の評価の分かれ目としては、登場人物が全て前作から入れ替わっている点かな。入れ替わっていたことがちょっと残念で、自分は前作の登場人物達に愛着を感じていたことに気付かされました。
トリックの評価としては、ちょっと強引だけど「切り裂きジャック」がインパクトがあったかな。前作に続きザンギャ君はインパクトのあるトリックを披露してくれます。その他のトリックはどれも前作に比べるとイマイチでした。ただし、各出題者のトリックが前作の出題者のそれと性格が似ているのは面白いとは思いました。そのせいで044APDのトリックはタイトルを見ただけで予想がついてしまい、無駄に長く感じました。
総括すると、面白くはあったけど、決して前作を超えるものとは思えませんでした(ダブル受賞作品という期待値を差し引いても)。実際、王手飛車取りを再読してみたが、やはりこちらのほうが面白かった。


No.148 5点 奇面館の殺人
綾辻行人
(2012/08/31 23:08登録)
--ネタばれ含みます--

館シリーズ第十段。いよいよラスト一作を残すのみ。
内容はここにきてある意味まさかの大雪クローズドサークル。さらに主要人物が全員顔をすっぽりと覆う仮面をかぶらされてしまうという、漫画をも超えるベタな本格ミステリの展開です。
しかし何故かいつものオドロオドロ感は影を潜め、殺人もなかなか起きず、退屈な展開が続く。やっと事件が発生、期待通りの猟奇的殺人ではあったがなぜか登場人物達は大人しく、盛上がらない。検証も進み、いよいよ犯人、トリック、数々の動機が明らかに。おお、非常に論理的だ(というか細かいな)。さらに綾辻氏得意のアレも炸裂。おお、そういうことか(でも騙された~って感じじゃないんだよな)。
‥う~ん、評価が難しい。しっかり本格はしてるし猟奇的だし叙述もあるしバランスも取れているんだけど。ここまでページをめくる指が重かった館シリーズは初めてかもしれません。やはり館シリーズの根源ともいうべきオドロオドロ感が全く感じられなかったのが一番効いてるかな。あと登場人物が背格好の似たオッサンばっかてのも痛いかな。


No.147 7点 ゴールデンスランバー
伊坂幸太郎
(2012/08/07 21:38登録)
--ネタばれ含みます--

首相殺しの犯人役に祭り上げられた主人公の逃亡劇を描いた話です。設定から期待した通りの、映画を見てるようなスリル感を味わえ、ページ数も気にならずにサクサク読めました。
大学時代の同級生達の他、ヘッドホンの男、キルオ等、伊坂作品特有の冗談みたいなキャラも良く描けていたと思います。
ミステリとは違うが、伊坂氏お得意の細かい伏線(小ネタではあるが)も心地良く利いていました。
前評判通りの出来だったと思います。
ただし、自分がもし伊坂作品の作風(主に小ネタ的伏線)を知らずに、ミステリを期待して一発目にこの作品を読んだとしたらたぶん評価は低かった(5点くらいかな)と思います。こんなの伏線でも何でもねーよとか言ってたと思います。


No.146 5点 フィッシュストーリー
伊坂幸太郎
(2012/08/02 22:42登録)
伊坂氏の短編集。以下の4作品で構成されます。

①「動物園のエンジン」:タイトル通りの異名を持つ男の奇妙な行動の真相やいかに?と思わせて別の仕掛けがあった。巧い。
②「サクリファイス」:ラッシュライフの黒澤が登場。麻耶雄嵩氏の「鴉」に似た印象で、世界観に引き込まれたが、ラストはイマイチ。
③「フィッシュストーリー」:無名バンドのCDの一分間の無音にまつわるエピソードと、その結果(影響?)を綴った物語。ご都合主義だけど見せ方が上手いから良い作品に見える。
④「ポテチ」:再び黒澤登場だが主役はその同業者。感動話っぽかったが自分は何も感じなかった。

今回の短編集は連作にはなっていませんでした。①、③はまあまあで②、④はイマイチでした。


No.145 5点 陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂幸太郎
(2012/07/27 22:43登録)
陽気なギャングシリーズ第二弾。
前半は四人の主人公それぞれの話を短編形式で紹介し、後半はグループとしての活躍を描く形。
伊坂氏お得意の各話のリンクと時系列パズルが堪能できます。というかやり過ぎの感があり、整理するのも面倒なくらいでした。
まあこの作品の醍醐味はキャラを楽しむものだと思っているのでその点では楽しめました。第一弾が好きな方は安心して楽しめると思います。
やはり響野のキャラが良い。あと小西、大田、良子の掛け合いに対する久遠の突っ込みが好きでした。


No.144 5点 終末のフール
伊坂幸太郎
(2012/07/26 21:59登録)
舞台はお馴染みの仙台だが、なんと地球滅亡まであと三年らしい。五年前に発表された地球滅亡説以降、混乱を極めた世界がようやく一定の小康状態を見せ始めた頃という設定です。
8つの短編で構成されており、各主人公達のこれまでの、そして今後の生き方が描かれています。
登場人物達は皆五年間の辛い混乱時代を経験し、また短い未来しか残されていませんが決して暗い話ではなかったと思います。
残された三年間を普通の日常のように生きようとする登場人物の姿にちょっと感動しつつ、避けられない現実にしんみりする、そんな作品でした。
苗場のセリフ「あなたの今の生き方はどれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」が特に印象的でした。自分の生き方について考えさせられました。
しかし非常に良い作品でしたが、全然ミステリでないので5点です。


No.143 6点 砂漠
伊坂幸太郎
(2012/07/02 21:36登録)
--ネタばれ含みます--

一言で言えば大学青春モノです。
主人公が学生生活での印象深いエピソードを章分けして紹介してくれ、各章がちょうど四季で分けられいるため四章構成になっています。
どの章も敵役が据えられており、飽きずにサクサク読めます。
話全体にある仕掛けがなされており、上手いとは思ったのですが規模が小さいのが勿体ないと感じました。規模を大きくするとパクりになるんだろうな。
ちなみに登場人物に関しては、私は西島だけでなく全員変人だと思いました。


No.142 3点 魔王
伊坂幸太郎
(2012/06/26 22:36登録)
ミステリ性は皆無。娯楽性もありそうで実はない。なんか敷居が高いというかメッセージ性が強いというか、あまりにも自分の求めているものとかけ離れていました。
モダンタイムスが続編にあたるらしいですが、読みません。


No.141 6点 死神の精度
伊坂幸太郎
(2012/06/26 22:31登録)
以下の六つの短編で構成されており、全て死神が語り手となっています。

①「死神の精度」:標的はストーカー被害に悩む冴えない女性。オチはベタで予想通りだけど後味は爽やか。
②「死神と藤田」:真の仁侠の男に無様な死は似合わない、といったとこなのかな。
③「吹雪に死神」:伊坂氏には珍しい、というかまさかの雪の山荘もの。しかし、というかやはり本格ではなかった。
④「恋愛で死神」:実に切ない話でしたな。
⑤「旅路を死神」:この作品だけ、やけに文学色が強いというか、自分には合いませんでした。
⑥「死神対老女」:美容師の老女の奇妙な依頼。その真相以外にも幾つかサプライズが仕掛けられている。

人の生き様もしくは死に様、人と人の繋がりが死神を介して描かれた異色の作品です。そんなテーマにも関わらずどの話もライトに描かれているのが良いです。
しかしどっちが先かは知らんがデスノートと似ている。


No.140 6点 グラスホッパー
伊坂幸太郎
(2012/06/23 11:51登録)
--ネタばれ含みます--

銀行強盗だけでは飽き足らず、今度は殺し屋達が主役の作品。
普通人の鈴木、ナイフの達人の蝉、自殺誘導者の鯨の三人の視点が入れ替わりながら話は進みます。謎の殺し屋「押し屋」を巡って三者が交わっていく流れは、良い意味で想定通りでサクサクと読めます。
本当にこんな奴等がいたら堪らないけど、あまりにも現実離れしているため、そこは割り切って楽しめます。(ただし悪の枢軸寺原の息子はリアルな悪で本当に嫌です)
終わり方が引っ掛かったのでネタばれサイトを見たのですが、仕掛けがあったんですね(しかもちょっと嫌な仕掛けが)。伊坂氏には珍しく後味の悪い終わり方でした。せめて「始まり」は鈴木の奥さんの死からだとまだ救いはあったんだけどな~。
まあ面白かったんで続編のマリアビートルは文庫化されたら読もう。


No.139 6点 チルドレン
伊坂幸太郎
(2012/06/20 22:40登録)
伊坂氏の連作短編集。以下の五話で構成されています。

①「バンク」:銀行強盗事件の仕組みの推理には納得。ただ、たかが社員同士でそこまで結束が固まることなんてあるものなのかな。
②「チルドレン」:万引きをした息子と家庭を顧みない父親のギクシャク関係が家裁を通じて修復される、というベタながらも暖かいお話。と思いきや不自然な程急すぎる展開に違和感を感じずにいられなかったが真相が分かって納得。
③「レトリーバー」:時間が止まっている公園、って真相あまりにも単純過ぎる。仕掛人は意外ではあるけれど。
④「チルドレン2」:再び家裁のお話。何だかごちゃごちゃした家庭問題があったが印象に残っているのはラストのシーンのみ。
⑤「イン」:④でチラッと語られた「正体をバレずに親を殴った」という方法が明らかに。全盲である永瀬の主観で語られるためはっきりと表現されておらず、想像力をかき立てられるのが面白い。

全ての話に陣内という男性が登場しますが、いずれも別の人物の視点から、主役というより変わった脇役といった立ち位置で描かれています。アクが強いですが語り手から程よい距離を置かれて語られているため、魅力的なキャラに描かれていると感じました。全ての作品が暖かみがあり、和める作品です。


No.138 5点 陽気なギャングが地球を回す
伊坂幸太郎
(2012/06/19 20:50登録)
程度の差は激しいが、特殊能力を持つ銀行強盗四人組が主人公のお話。
伊坂氏の作品なので悪人が登場しますが、それは主人公達ではなく悪い銀行強盗達です。つまり良い銀行強盗(主人公達)VS悪い銀行強盗という図式になります。
まあこんな設定なのでミステリ要素は全くありませんでしたが、割り切って楽しく読めました。
これだけ妙な設定の登場人物達なので伊坂作品特有のセリフも気にならず、むしろマッチしていたと思います。
悪人は登場しますがタイトル通りライトな展開で、安心して読めました。続編も読もうと思います。
ちなみに響野が島田氏の御手洗潔に似ていると思いました。
また、ミシェル・ペトルチアーニの評価には全く同感です。


No.137 6点 アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎
(2012/06/19 20:44登録)
--ネタばれ含みます--

まず序盤の「本屋を襲わないか?」と「シッポサキマルマリを見なかったか?」というセリフに嫌気がさし、半年程放置してしまいました。
傷も癒え、再度挑戦。序盤こそセリフにイラついたものの、悪者が登場してから一気に読み易くなりました。
話の構成としては本屋襲撃が行われる現在の場面とペット殺し事件があった二年前の場面を交互に語る形です。
二年前の話の続きが気になるところで現在に引き戻されるという感じで進み、うまいこと焦らされながらもサクサク読めました。
伊坂氏には珍しく、トリックが仕掛けられていました。やや哀しい結末ですが、良い終わり方だったと思います。


No.136 6点 深泥丘奇談
綾辻行人
(2012/06/05 21:45登録)
タイトルからしてホラーものっぽい、だけど綾辻作品だからミステリ要素もあるかも、と思いましたが、純粋なホラー小説というか怪奇小説でした。
内容としては深泥丘(みどろがおか)に住む主人公の日常とその土地にまつわる不可思議な現象、慣習を描くというもので全10話の連作短編集です。
主人公は怪奇現象であると認識する→妻を含めた周りの人物達にとっては当たり前のことらしい→主人公も慣らされていく、というのが大まかなパターンですがこれが何とも言えず、不気味な世界をまろやかに仕立て上げているような気がします。
各作品の中では「悪霊憑き」がお気に入りです。
本書は自分にとっては忙しい中での一服の清涼剤の様な位置付けと言えそうです。読み易さも抜群で、続編の文庫化が待ち遠しいです。ミステリではありませんが特別に6点つけちゃいます。
ちなみに眼球綺譚の怪ヒロイン咲谷(由衣?)が本書でも登場、活躍するのでファンの方は必読です。


No.135 8点 メルカトルかく語りき
麻耶雄嵩
(2012/02/21 21:50登録)
--ネタばれ含みます--

メルカトル&美袋コンビ短編集第二弾(たぶん)。以下の五話で構成されます。

①「死者を起こす」:前半の事件は事故か殺人かという問題で、メルカトルが見事に解決。後半の事件に関しても見事な推理を披露するメルカトルだが…。しばらく何が起こったのか理解できませんでした。残りの作品を読んで、こんな不条理な結末もありなんだなと思いました。
②「九州旅行」:不謹慎にも、新作の構想を練るために実際の殺人事件現場に足を踏み入れる美袋だが、ノリの良さがウケる。ダイイングメッセージの不完全さの理由を紐解くという形だから、結果的にはワイダニットものに含まれるのかな。
③「収束」:聖域で殺人を行うのは、また殺されるのは誰か?というフーダニット。殺人事件が起きることを推理し、犯人と被害者を三通りに絞り込むメルカトルだが、どのパターンになるかは発生するまで分からないと言う。読者にのみ事件発生現場の様子が綴られるが…。これまた読者には意地悪な結末だけど、この作品に関してはこの方がハマっているかも。ただどうして3人ともカテジナ書を入手していたのかが分からない。
④「答えのない絵本」:変則的クローズドサークルにより、オタク教師殺害犯は20人の生徒の中に絞られる、というフーダニットもの。ロジック全開で犯人候補がサクサクと絞り込まれていくが…。著者の陰謀により解決不可能空間に招かれたメルカトルだが、解決が不可能であることを看破したメルカトルの勝利!と勝手に解釈しました。
⑤「密室荘」:完全な密室空間の内側に美袋とメルカトルと他殺体のみが…。著者の陰謀により殺人犯はどちらかしか有り得ない空間に追い込まれたメルカトルだが、強引に収束させたメルカトルの勝利!と勝手に解釈しました。

これほど不条理かつロジックの効いた短編集は初めてです。受け入れがたい人は多いと思いますが私はアリだと思います。
ちなみにこれまでの作品では記号同然だった事件関係者が、本作品では詳しく描かれているので非常に読み易いです。


No.134 5点 メルカトルと美袋のための殺人
麻耶雄嵩
(2012/02/13 23:59登録)
講談社にて絶版されていた麻耶氏の作品の一つが集英社で復刊となっているのを本屋で発見し、すぐ購入しました。隻眼の少女でダブル受賞したのが効いたかな。(集英社さんありがとう!他の作品も何卒よろしくお願いします!)
本書は探偵メルカトル鮎、ワトスン役の美袋(みなぎ)が活躍する7つの短編で構成されています。

①「遠くで瑠璃鳥の鳴く声が聞こえる」:何故美袋が佑美子に突然惚れたのか?という一風変わったワイダニット形式が印象的。
②「化粧した男の冒険」:ワイダニットもの。「木は森の中に隠せ」の典型です。ラストの美袋のセリフが真相かもしれないブラックなところが著者らしい。
③「小人閑居為不善」:安楽椅子探偵もの。依頼人の武装がやや甘いのが気になったが展開は面白かった。ここでのメルカトルは初期の御手洗に凄く似ていると思いました。
④「水難」:事件のインパクトは薄いわ、幽霊は出てくるわで、いまいち。
⑤「ノスタルジア」:メルカトル著の何とも怪しげなフーダニット作品。ヒントは提示されてはいるものの、その隠し方は巧妙というより卑怯。見事に意地悪に仕上がっており、割り切って楽しめます。
⑥「彷徨える美袋」:メルカトルの黒さ以外はインパクト薄し。
⑦「シベリア急行西へ」:フーダニットもの。ロジックは見事で読者への挑戦状でも欲しかったところ。死兆星には笑った。

メルカトルの短編集とあって、さすがに風変わりな作品が多いものの、ミステリの体裁は整えられてはいます。この作風とメルカトルの悪業を受け入れられるかどうかの差は大きいと思います。個人的には③が好きで、①⑤⑦がまあまあ、②④⑥がいまいちでした。

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