| nukkamさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.44点 | 書評数:2940件 |
| No.1500 | 6点 | 嘘は刻む エリザベス・フェラーズ |
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(2016/07/28 09:24登録) (ネタバレなしです) 1954年発表の本格派推理小説です。正直こういう真相は私の好まない種類なのですが、巧妙な手掛かりと証言の矛盾の鮮やかな解き方は実に見事です。物語の雰囲気は全般的に暗く、登場人物の性格描写や彼らが織り成す人間ドラマには後年デビューするD・M・ディヴァインの作風を髣髴させるところがあります。 |
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| No.1499 | 6点 | 編集者を殺せ レックス・スタウト |
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(2016/07/28 09:20登録) (ネタバレなしです) スタウトの個性が良くも悪くも発揮されている1951年発表のネロ・ウルフシリーズ第14作の本格派推理小説です。行動型探偵のアーチーが実によく描かれ、特に前半のディナー・パーティー編でのスマートでお洒落、そしてユーモアも豊かな手腕が大変面白いです。しかし14章以降の西海岸編では「毒蛇」(1934年)ほどではないけれど証拠を入手するために乱暴な手段も辞さないのが個人的にはあまり感心できませんでした。起伏ある物語展開でとても読みやすいです。ウルフ自身が「もう少しで出し抜かれるところだった」というほど冷血で手ごわい犯人にとって最後の一撃が思いもよらぬものだったのが印象に残る作品です。 |
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| No.1498 | 5点 | 森を抜ける道 コリン・デクスター |
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(2016/07/28 09:14登録) (ネタバレなしです) 1992年発表のモース主任警部シリーズ第10作で1990年代の作品の中では最も評判がよく、CWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞を獲得しています。物語が匿名人物からの詩が投稿された後から始まっているので、その前に発生していた事件やそれまでの捜査状況について把握するのがやや難しかったです。またモースによる推理が頓挫してはまた新たに推理を重ねていく従来パターンではなく、代わりに新聞紙上で色々な人が謎解きに挑戦するという展開ですが論理的な推理というよりも主観的な解釈に近いので読者によっては期待外れに感じるかもしれません(個人的には新たな試みとして評価したいです)。68章での真相には驚かされましたが、「なぜそんなことを?」という理由についてははっきりしなかったのが気になりました(まあ往々にしてある私の理解力の不足かもしれませんが)。 |
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| No.1497 | 6点 | 閘門の足跡 ロナルド・A・ノックス |
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(2016/07/28 09:03登録) (ネタバレなしです) 1928年発表のマイルズ・ブリードンシリーズ第2作で、何とシリーズ外の作品である「陸橋殺人事件」(1925年)の登場人物の出演サービス付きです。ボート旅行者の失踪に端を発する事件を扱っていますが英国は日本よりも交通手段として川や運河が積極的に利用されているのか本書以外にもコリン・デクスターの「オックスフォード運河の殺人」(1989年)、ピーター・ラヴゼイの「絞首台までご一緒に」(1976年)、ジョセフィン・テイの「美の秘密」(1950年)などの作品が思い浮かびます。推理が丁寧な反面、細かすぎると感じることもしばしばでゆったりした展開と相まって冗長に思う読者もいるでしょう。とはいえ本格派推理小説としてしっかり作られているのは間違いありません。大胆なトリックの使い方も印象的で、個人的には「陸橋殺人事件」より上位の作品だと思います(まああちらは伝統破りが特徴の作品なので並べて比較すべきでないのかもしれませんが)。 |
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| No.1496 | 5点 | 殺人者はへまをする F・W・クロフツ |
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(2016/07/27 16:42登録) (ネタバレなしです) 1943年から1945年にかけて放送されたラジオの脚本から小説化されたものをまとめて1947年に発表された、実質上の第一短編集です(「クロフツ短編集1」(1955年)よりも早く出版されています)。前半の12作は犯人の正体や犯行状況場面を最初から読者に明かしてその後でフレンチ警視の推理によって謎を解くという倒叙型ミステリー、後半の11作は最初から最後までフレンチ警視の視点で謎解きを行うスタイルをとっています。後者にしても登場人物が非常に限られているので犯人当てとしては他愛もなく、どの作品も犯人がどこで失敗したのかが謎の中心になっています。1つ1つは大変短くて読みやすいのですが長編作品以上に物語の要素がなくて推理クイズ的な作品なので、連続して一気に読むとその味気なさにだんだん嫌気がさすかもしれません。トリックに頼った作品も多く、特に「熱心な羊飼い」で使われたトリックとフレンチがつかんだ手掛かりはあまりにも古典的で有名です。また「盗まれた手榴弾」のように書かれた時代ならではの戦時色濃厚な作品が読めるのも特徴です。 |
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| No.1495 | 4点 | 猫は郵便配達をする リリアン・J・ブラウン |
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(2016/07/27 16:20登録) (ネタバレなしです) 1987年発表のシャム猫ココシリーズ第6作で以降のシリーズ作品の主要舞台となるムース郡ピカックスにクィラランが引っ越すという、シリーズファンにとっては前作「猫はブラームスを演奏する」(1987年)と並んで年代記的に重要作ながらハヤカワ文庫版の出版が後年作よりも後回しになってしまいファンの顰蹙を買ったことでも知られます。前半はやや普通小説的な展開ながら中盤からはサスペンスが十分盛り上がります。とはいえ今回のクィラランは探偵役としてはぱっとせず、推理もほとんどしないままに解決してしまうので本格派の謎解きにはあまり期待しないで読んだ方がいいと思います。 |
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| No.1494 | 5点 | ベウラの頂 レジナルド・ヒル |
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(2016/07/27 16:16登録) (ネタバレなしです) 1998年発表のダルジール警視シリーズ第15作でずっしりと重さを感じさせる大作です。本書では女刑事シャーリー・ノヴェロが第4の主役ばりに存在感を示しています。その一方でダルジールは時に言葉づかいが下品になったり皮肉屋になることはあっても全般的にはおとなしく、いつものように羽目を外すことがないのには物足りなささえ感じます。パスコーの娘ロージーの病気を心配する場面なんかは結構しみじみしますけど。謎解きはそれほど論理的ではなく、夢判断でヒントを掴んだりしていてどこかもやもやした感じですがその中に恐さや痛々しさをひしひしと感じさせます。でもさすがにこの長大さには疲れました(とはいえヒルの大作主義は本書以降も更に拍車がかかるのですが)。入門編としてはちょっと薦めにくいです。 |
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| No.1493 | 6点 | 殺人ア・ラ・モード パトリシア・モイーズ |
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(2016/07/27 16:07登録) (ネタバレなしです) 1963年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第4作の本格派推理小説です。モイーズは作家になる前にファッション誌出版社で約5年間働いていた実績があるためか本書でのファッション業界の描写が(多少演出過剰に思えるところもあるけれど)とても生々しく感じられます。トリックもやや専門的過ぎて私には理解しにくい面がありますがこれまた作品舞台によく合っています。だけど男の登場人物を「小母ちゃん」と呼んでいるのには混乱しました(笑)。これもファッション業界ではよくあることなのでしょうか? |
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| No.1492 | 6点 | 鉄路のオベリスト C・デイリー・キング |
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(2016/07/27 15:58登録) (ネタバレなしです) 1934年発表のオベリスト3部作の第2弾で前作「海のオベリスト」(1932年)と同じく巻末に「手掛かり索引」が置かれています。私はカッパノベルズ版で本書を読みましたがびっくりしたことに内容をカットした抄訳だそうです。戦前や戦後まもなくならともかく、現代では原作通りに翻訳するのが常識でしょう。翻訳者が著名な推理小説家の鮎川哲也なのでおそらく謎解きに関連する部分は全部残してあるだろうし、私が読んだオベリスト3部作の中では1番読み易かったのですがやはり抄訳というのは残念な気がします。内容的には前作よりも謎解きが(詳細は書けませんが)技巧的になりました。(ほとんど)最初から最後まで列車を舞台にしている本格派推理小説としてはクリスティーの「オリエント急行の殺人」(1934年)と並ぶ存在です。再版の際にはぜひ完訳版をお願いしたいです。⇒2017年についに完訳版で再販されました。 |
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| No.1491 | 5点 | 夜の闇のように ハーバート・ブリーン |
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(2016/07/26 09:25登録) (ネタバレなしです) オカルト趣味濃厚な「ワイルダー一家の失踪」(1948年)に次いで1949年に発表されたレイノルド・フレームシリーズ第2作の本書は前作とは対照的にクレイグ・ライスを彷彿させるような都会風にすっきりと仕上げられた本格派推理小説です(ライスほどの強烈な個性があるわけではありませんけど)。怪しげな「催眠術」が物語のあちこちで登場していますが(これ、ネタバレではありません)、これはオカルトネタではないでしょう。ただハヤカワポケットブック版は大変古い翻訳のため洗練された雰囲気がいまひとつ伝わってこないのが残念です。 |
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| No.1490 | 5点 | 富豪の災難 シャーロット・マクラウド |
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(2016/07/26 09:19登録) (ネタバレなしです) 1988年発表のセーラ・ケリングシリーズ第8作の本格派推理小説です。過去作品のネタバレはしていませんが「消えた鱈」(1984年)の登場人物が大変重要な役割を果たしているので、そちらを先に読んでおくことをお勧めします。登場人物が多くしかも関係がかなり複雑なので前半はそれの整理で手一杯でしたが、ジェム伯父さんが登場する第11章あたりからは話が俄然面白くなります。いやあこのジェム伯父さん、私にとってはセーラやマックスよりもお気に入りのキャラです。謎解きはこのシリーズとしてはかなり緻密に考えられていますが動機が後づけ説明気味になっているのがちょっと残念です。あと扶桑社文庫版の巻末解説は訳者と作者の交流が描かれていてなかなかいい味出していますが、第16章の内容に触れているのがちょっと勇み足に感じますので本文より先には読まない方がいいと思います。 |
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| No.1489 | 5点 | ルーヴルの怪事件 エリオット・ポール |
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(2016/07/26 09:11登録) (ネタバレなしです) 1940年発表のホーマー・エヴァンズシリーズ第2作で前作同様舞台となったパリの描写に力を入れていますが地名が沢山登場するので地図は欲しかったです。世界推理小説全集版は「古代音楽」(クラシック音楽のことか?)などびっくりする単語もあるけれど古い割にはしっかりした翻訳だと思いますが、全体的にはどうも読みにくいです。登場人物リストに載っている人数は12人ですが彼らに劣らず重要な役割を果たす登場人物がその倍近くもいますので補足のリストを作りながら整理することを勧めます。脈絡がはっきりしないまま物語が急展開するのは前作「不思議なミッキー・フィン」(1939年)と同じです。個々のキャラクターはそれなりに魅力的で、特にやたら銃をぶっ放すミレイユがすごい存在感(笑)。謎解きは推理要素が少なくて結果のみの説明といった感があり、本格派推理小説ファンにはちょっと物足りないかもしれません。 |
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| No.1488 | 5点 | ボニーと砂に消えた男 アーサー・アップフィールド |
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(2016/07/26 08:35登録) (ネタバレなしです) オーストラリアを代表する本格派推理小説家アーサー・アップフィールド(1888-1964)は白人とアボリジニの混血(ハーフカースト)で両民族の長所が結合しているユニークな探偵ナポレオン・ボナパルト警部(ボニー警部)シリーズを中心に30冊を越える作品を残したことで知られます。1931年発表のシリーズ第2作の本書は作中のトリックが現実の殺人事件でも使われて、作者も証人として裁判に出廷したことで有名です(詳細はハヤカワ文庫版巻末解説に書かれています)。もっともこのトリック、実行するにはある種の条件をクリアしないとまず無理なので個人的にはそれほど感銘しませんでした。また犯人当てとしては謎解き伏線がかなり粗いようにも思えます。しかし本書の特色は何といってもスケール感の大きな舞台や活き活きとした風俗習慣の描写で、これはちょっと他の作家には真似できない個性でしょう。 |
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| No.1487 | 6点 | 手袋の中の手 レックス・スタウト |
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(2016/07/26 08:28登録) (ネタバレなしです) 1937年に発表された本書は女性の私立探偵を主人公にしたミステリーとして時代を先取りした作品と評価されています。もっともキャラクター小説を期待すると肩透かしを感じるかもしれません。探偵役のドル・ボナーが死体を発見してショックを受けたり自分自身にはっぱをかけたりと感情を表に出すシーンもありますが、全般的にはドライに描かれています。スタウトは個性的な女性を描くのは決して苦手ではないと思いますが、探偵役としてはうまく書ける自信がなかったのかドルは本書以外にも中編「探偵が多すぎる」(1938年)と長編「苦いオードブル」(1940年)にも登場していますがそちらでは脇役扱いです。ミステリーとしての出来栄えは平均点的な本格派推理小説といったところでしょうか。 |
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| No.1486 | 6点 | ウエディング・プランナーは狙われる ローラ・ダラム |
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(2016/07/25 02:09登録) (ネタバレなしです) 2007年発表のアナベル・アーチャーシリーズ第3作はユーモアがますます快調、死体発見場面でのどたばたぶりはクレイグ・ライスの域にまで達しています。「犯人を探しているのではなく、情報を集めているだけ」というアナベルの言い訳もツッコミを入れたくてうずうずします。ある謎に対する手掛かりがほとんど終盤になってからようやく現れるので駆け足気味の解決になってはいますが前作よりは推理要素が濃いです。 |
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| No.1485 | 6点 | 死と陽気な女 エリス・ピーターズ |
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(2016/07/25 02:04登録) (ネタバレなしです) 1962年発表の本書は「カマフォード村の哀惜」(1951年)から久方ぶりに書かれたフェルス一家シリーズ第2作の本格派推理小説ですが格段の進歩が見られます。丁寧な人物描写は後年のカドフェルシリーズと共通していますが、探偵役が警官なので(解決はやや強引ながらも)謎解き要素はカドフェルシリーズより濃厚です。プロであるジョージ・フェルス(部長刑事)の探偵活動とアマチュアであるドミニック・フェルスの探偵活動の両方が絡み合うプロットはユニークで、そこにフェルス一家の家族交流や少年ドミニックの成長物語の要素が上手く絡み合い、MWA(アメリカ探偵作家協会)の最優秀長編賞を受賞したのも納得の出来栄えになっています。 |
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| No.1484 | 5点 | 塩沢地の霧 ヘンリー・ウエイド |
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(2016/07/25 01:59登録) (ネタバレなしです) 1933年に発表されたシリーズ探偵の登場しないミステリーです。本書は「半倒叙」と評価されることもあるようですがそれはいかにも犯人らしい人物を描きながら肝心の犯行場面を直接描写しないことによって犯人当て要素も残しているからのようです。もっとも有力な犯人候補が意外と少ないため犯人当て本格派推理小説としてはあまり面白くありません。物語としては良く出来ており、事件が中盤まで発生しないながら筋運びがだれることもなく結末の印象度も高いです。ところで国書刊行会版の巻末解説では結末のアイデアが某有名ミステリーを先取りしているかのように誉めていましたが、よく考えるとその某ミステリーの方が本書より先に出版されているではないですか! |
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| No.1483 | 5点 | これは殺人だ E・S・ガードナー |
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(2016/07/25 01:54登録) (ネタバレなしです) ガードナーがチャールズ・ケニー名義で1935年に発表したミステリーでシリーズ探偵は登場しません。探偵役のサム・モレインは行動力やはったりを駆使して捜査当局と渡り合いますがこれはハードボイルド探偵によくありがちな特徴で、弁護士ペリイ・メイスンに比べると個性には乏しいです。ハードボイルド的でありながらも非情さや残虐性はなく、本格派の謎解きも楽しめるところはペリイ・メイスンシリーズと共通しています。モレインが法廷場面で尋問役になれたのは地方検事ダンカンとの友情あってのものという設定は少々好都合すぎの気もします。犯人のトリックはなかなか機知に富んだものではありますがあの偶然のチャンスがなかったら打つ手なしだったように思え、やはりこれまたご都合主義的に感じられます。 |
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| No.1482 | 5点 | シャーロック・ホームズのクロニクル ジューン・トムスン |
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(2016/07/25 01:44登録) (ネタバレなしです) 「正調贋作」と何とも不思議な紹介をされている1992年発表のホームズ・パスティシュシリーズ第2短編集で、ミュージックホールの楽屋で起こった密室殺人の「ハマースミスの怪人」、英国政府を脅迫する凶悪犯パイド・パイパーを追い詰める「スマトラの大鼠」など7作品を収録いています。時代描写だけでなく作品自体の出来栄えもいかにもコナン・ドイルが書きそうなミステリーに仕上げられていますが、そのためか純粋な謎解きを期待するとやや肩透かしかもしれません。中では「キャンバウェルの毒殺事件」が1番本格派推理小説らしいと思いますが犯人の意外性は全くといっていいほどありませんし、「ハマースミスの怪人」のトリックも感心するようなものではありません。むしろ印象に残るのは「ハーレー街の医師」でのユーモア溢れる締めくくりとか、「スマトラの大鼠」でワトスンの頭の冴えにホームズが驚く場面などで、雰囲気を楽しむべき作品だと思います。 |
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| No.1481 | 6点 | 証拠は眠る R・オースティン・フリーマン |
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(2016/07/24 06:59登録) (ネタバレなしです) 1928年発表のソーンダイク博士シリーズ第11作です。本書が発表されたのは本格派推理小説黄金時代の真っ只中で、次々と新進作家の意欲作が発表される中、先輩作家にあたるフリーマンはこの時期どういう立場だったんでしょう?時代遅れのレッテルを貼られてたんでしょうか?でも本書を読む限りではフリーマンらしさは十分主張できていると思います。珍しいトリック、グラフまで使った科学者探偵にふさわしいソーンダイクの推理などは他の作家には容易に真似できないでしょう。一方で読者の裏をかくような工夫はほとんどなく、しかも描写や説明がとても丁寧なため犯人当てとしてはわかりやす過ぎると思う読者もいるでしょう。 |
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