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ミステリの祭典

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これは殺人だ
別題「これは殺人だ!」

作家 E・S・ガードナー
出版日1955年12月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/05/06 12:40登録)
(ネタバレなし)
 評者の場合、昔からペリイ・メイスンものは山のように買い込んでそれなりに読み、『掏替えられた顔』なんかかなり面白いと思いながら、この数年間に読んだガードナーといえばなぜか非メイスンものばかりである(笑)。まだまだ未読のメイスンシリーズなんかいくらでもあるのに(汗)。
 
 そういう訳でどういう訳か今回もまたノンシリーズ作品だけど、なかなか面白かった。あともうちょっとで、7点あげてもいいくらい。

 物語の序盤、公職の地方検事フィル・ダンカンがポーカー友達の主人公サミュエル(サム)・モレインを公式な犯罪捜査(になる流れの場)につれだすのはいささか乱暴。
 とはいえ、のちのちに書かれるあまりにも一本気すぎる正義漢ダンカンのキャラクターとあわせて、オトナのガキ大将譚な趣が発露。ある程度はアクチュアリティをふみこえた破天荒さがオッケーという雰囲気で、それが読み物としての快感につながる作風になっている。この辺はガードナーが別名義で、いささか破格のものをこっそり書いてみた印象である。

 ヒロインでモレインの秘書のナタリー・ライスは、デラ・ストリートではたぶん許されない? ワケアリのキャラ設定が与えられ、とりあえず単発として書かれた? 作品ならではの自在な立ち位置が新鮮であった。モレインと相思相愛なんだろうけれど、最後までまったく(中略)。そういう意味では、この二人のその後を描くシリーズの続きも読みたかった。まあ続刊以降は二組めのメイスン&デラが別途に書かれるだけになったかもしれないが(ナタリーの父で、準キーパーソンともいえるアルトンのキャラを生かせば、面白い恋人関係ができたかもしれないね)。

 トリックは意外に「すげー」と驚くようなものが用意されていて軽くウケた(笑)。しかしこれって、そこに行くまでの、かなり奇抜で鋭い推理を関係者が組み立ててくれることが前提のトリックであって、リアリティからいえばまずありえない。まあフィクションとしてのミステリの範疇内で許されるんだけど。

 全体的にハイテンポでとても楽しめた。ガードナーのなかでは期待以上に相性の良かった作品。

No.1 5点 nukkam
(2016/07/25 01:54登録)
(ネタバレなしです) ガードナーがチャールズ・ケニー名義で1935年に発表したミステリーでシリーズ探偵は登場しません。探偵役のサム・モレインは行動力やはったりを駆使して捜査当局と渡り合いますがこれはハードボイルド探偵によくありがちな特徴で、弁護士ペリイ・メイスンに比べると個性には乏しいです。ハードボイルド的でありながらも非情さや残虐性はなく、本格派の謎解きも楽しめるところはペリイ・メイスンシリーズと共通しています。モレインが法廷場面で尋問役になれたのは地方検事ダンカンとの友情あってのものという設定は少々好都合すぎの気もします。犯人のトリックはなかなか機知に富んだものではありますがあの偶然のチャンスがなかったら打つ手なしだったように思え、やはりこれまたご都合主義的に感じられます。

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