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ミステリの祭典

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toukoさんの登録情報
平均点:6.16点 書評数:241件

プロフィール| 書評

No.221 7点 わが心臓の痛み
マイクル・コナリー
(2012/07/28 12:51登録)
40代にして心筋梗塞で退職した元FBI捜査官である主人公は、コンビニ強盗で殺された女性の心臓を移植されて、なんとか生きながらえることが出来た。
そこに、コンビニ強盗の被害者の妹が、犯人を捕まえて欲しいと訪ねてくる……。

前半の地道さと後半の派手な展開のバランスがいいです。
伏線の回収も無理がなく、手堅い名作。

実はクリント・イーストウッド監督主演の映画の方を先に見てしまっていたのですが、犯人が違うんですね。原作の方がいいと思いますが。
何より映画版の70代主人公と30代美女とのロマンスには違和感ありまくりでしたが、原作はそのへんも無理がありません(笑)。


No.220 6点 カットスロート
マイケル・スレイド
(2012/07/28 12:32登録)
「ヘッドハンター」と「グール」の主要人物が再登場するスペシャルXシリーズの続編。
とはいえ、この作品単独で読んでも特に問題ありません。

相変わらずぶっ飛んだ内容とはいえ、前2作よりは、はるかに読みやすいです。

類人猿つながりでマイケル・クライトンの「失われた黄金都市」と中華系つながりでジェフリー・ディーヴァの「石の猿」を足して2で割ったような印象も受けたのですが、そんなメジャー作家のメジャー作品を彷彿とさせるにも関わらず、なぜこうもB級感やイロモノ感が漂うのやら……そこが味なんでしょうけど、やっぱり人を選ぶ作品。


No.219 6点 ヘッドハンター
マイケル・スレイド
(2012/07/28 12:11登録)
カナダの作家集団による、サイコスリラー+警察小説+本格ミステリ。

まとまりがなくとっちらかったプロット、詰めの甘いトリック、悪趣味な犯人、悪趣味な動機、悪趣味にもほどがある見立て、悪趣味な結末、悪趣味な後日談……おまけに翻訳(特に会話文)も変。

人を選びまくる作品でしょうけど、個人的には楽しめちゃいました(汗)。

それに、このオチでは続編を読まずにいられない……。


No.218 5点 グール
マイケル・スレイド
(2012/07/28 11:54登録)
ロンドンを舞台に下水道殺人鬼、吸血殺人鬼、爆殺魔ジャックの3人のシリアルキラーが連続殺人を行う中、怪しげなクトゥルーの末裔まで絡んでくる(某黒い仏と違って超常現象オチはなく、合理的解決はなされますが)というぶっ飛んだ設定のスプラッター+サイコサスペンス+ホラー+ロック+本格ミステリ+警察小説。

とにかく文章が読みづらく、場面転換も頻繁すぎて、今、誰が、どこで、何をしているのかしょっちゅう見失い、何度も同じ箇所を読み返したりして、読了するのに時間がかかったのですが、なるほど、こういうオチですか……そりゃ、誰がどこにいるのかわかりづらいのも当然だわ。。

1980年代の作品なので、今となっては手垢のついたオチだし、わかる人にはすぐわかるんだろうけど。

サービス精神旺盛(悪趣味系ですが)で、つまらなくはないんですが、労力のわりに、得られる満足感が少ないのが難。


No.217 4点 治療島
セバスチャン・フィツェック
(2012/07/28 11:42登録)
前半の謎めいた雰囲気はよく、ベストセラーという触れ込みもあって期待したのですが、今時こんなオチはない、と思った記憶があります。
何十年も前の作品というならまだしも、ねえ。


No.216 7点 チャイルド44
トム・ロブ・スミス
(2012/01/23 22:32登録)
1950年代のソビエト連邦を舞台に、国家保安庁の捜査官である主人公が、実在の猟奇連続殺人者アンドレイ・チカチーロをモデルにした犯人を追跡するというストーリー。

現在であれば北朝鮮もかくやという、冒頭の寒村で起こる飢餓に追い詰められた村人たちの描写が凄まじく、一気にひきこまれます。

その後はなかなか本筋には入らず、スターリン体制下にあるソ連のシステムがいかに非人道的であったかの描写が上巻では延々と続きますが、これはこれで興味深くも面白い。
理想国家であるソ連には、堕落した資本主義国家のような犯罪は存在しない、などという建前に阻まれて、捜査は立ち行かないのですが、国家の忠実な下僕であったはずの主人公は、同胞たちの嫉妬や陰謀、妻とのすれ違い等により、立場も精神的にもドン底に落ちて、やっと野放しになっている殺人犯を、個人の良心と償いを原動力に本格的に追う覚悟をします。

全編、重苦しくもサスペンスフルで楽しめるのですが、あのチカチーロがモデルで、主人公との因縁話まで絡めたわりに、犯人像や対決シーンがあっけなかったのが個人的に残念。
実際には1980年代に起こった事件を、国家の罪をメインに据えるために1950年代に設定し、それはもちろん作者の狙い通り成功しているし、主人公の精神的成長や人間関係の再生もあざやかに書かれていて感動するのですが、それらに比べて、犯人が印象に残らないので、もうちょっと犯人側の造形や描写にも工夫を凝らして欲しかったな。

スピーディで緊張感を持続したまま読了できるのはいいんですが、これでもかと内容を詰め込んでいるわりに頁数が少ないのかも。


No.215 6点 写楽 閉じた国の幻
島田荘司
(2012/01/14 23:47登録)
主人公の妻を完全悪役扱いにするんなら、ただの見栄っ張りで我儘なお嬢様にしておけばいいのに、主人公の親を単身赴任中に丸投げで介護させて欝病にさせたことがあるとか、二度と子供が作れない身体である、なんてエピソードいらないでしょ……おかげで、主人公のいちいちデリカシーにかけるわりに、無辜の被害者ぶる身勝手さやウジウジぶりにイライラしてしまい、感情移入できませんでした。

女性学者は、妻と正反対の主人公にとって理想的女性像なのかと思ったら、詳しいことは何も書かれないまま、都合よく登場しては、尻切れトンボに退場。

ミソジニーがきついのは毎度のことだから慣れてるけど、頁数稼ぎの手段に使うのはきつすぎ。。

歴史の謎解きそのものは面白かっただけに、小説としては破綻しているの残念。


No.214 6点 貴族探偵
麻耶雄嵩
(2012/01/13 22:40登録)
これ、「富豪刑事」とか「謎解きはディナーはあとで」みたいなキャッチャーで売れ線の設定のはずなのに、どうしてこの作者が書くとこうも寒いと感じてしまうんだろう。。

同じようなネタをやってても、売れない芸人がすべってるみたいに個人的に感じられてしまって ^^;

ロジックだけしか積極的に楽しめる部分がないとはいえ、それだけでも読ませはします。


No.213 6点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2012/01/13 22:25登録)
わけありのツンデレ?美少女巫女さん探偵と弱気なワトソン役の青年という、男性向けの萌え系深夜アニメかラノベみたいな記号的なキャラ・ありがちなおどろおどろしい設定。
なのに内容は、淡々としたロジック重視、パズルのためならどんな文学的犠牲も厭わないといういつもの麻耶雄嵩。

門外漢から見ると相乗効果はなく、打ち消しあっているような気さえするんですが、何故ここまで(このサイトに限らず)評判いいのか。。

つまらなくはなかったけど、もし本格ミステリがこういう方面に進化(特化)していくしかないのなら、そろそろ卒業した方がいいのかもとさえ思わされた作品。


No.212 7点 折れた竜骨
米澤穂信
(2012/01/12 23:16登録)
剣と魔法の中世ファンタジー世界が舞台ではあるけれど、王道本格ミステリ。

最初に魔法の法則や限界が明示されているので、わかりやすいです。
語り口もラノベ的な何でもありのキャラクターファンタジーというよりは、歴史ものをベースにファンタジーで味付けしたオーソドックスな児童文学風なので、固定ファン以外でも読みやすそう。


No.211 5点 暗い鏡の中に
ヘレン・マクロイ
(2012/01/12 23:08登録)
うーん、もったいぶっていたわりに中味はたいしたことなかったという感想にどうしてもなってしまいます。

ただ古きよき時代のアメリカの風俗等の描写はよかったので、他の作品も読んでみたいと思わせられる筆力はあります。


No.210 6点 悪の教典
貴志祐介
(2012/01/12 22:45登録)
(ネタバレ部分あり)






おバカスプラッタホラー?

上巻は同作者の「青の炎」を思い出しましたが、下巻はまるで「13日の金曜日」。

一方的すぎるゲーム感覚の殺戮なので、何の罪もない学生たちが殺されていくという残酷さはなく、爽快感すらあるかも?

まあ楽しめないことはなかったのですが、天才設定のわりに、要所要所で都合よくおバカになる犯人がなんだかカッコ悪くて。。

連載作品だからか、書き飛ばしている感ありあり。
この作者には、やはりじっくり書き下ろし作品を出して欲しいです。


No.209 7点 二流小説家
デイヴィッド・ゴードン
(2012/01/12 22:21登録)
ポルノ仕立てのスペースオペラ、耽美なバンパイア小説、お約束満載のハードボイルド等のバラエティに富んだ作中作のあえてのB級っぷり、メタ設定、ジャンル文学愛好論、文学青年の成れの果ての冴えない中年ゴーストライターの愚痴、スーパーお嬢様でロリ生意気な女子高生、エログロ猟奇な殺人犯の告白等、日本で書かれていたら、よくある、ちょっとひねった青臭い文学臭のするライトノベルもどきにしかならないようなオタク臭い内容なのに、不思議とごく普通のエンタメとして読めてしまいます。

一応、読者への挑戦やどんでん返しもありますが、トリック部分はたいしたことありません。

デビュー作だけあって、詰め込みすぎな感はあるものの、バランスのいい、万人向けのエンタメサイコサスペンスなんじゃないかな。
(終盤に出てくる猟奇部分はかなりグロく、人を選ぶかもしれませんが、そこは飛ばして読んでも差し支えなさそうなので)。


No.208 4点 幻夜
東野圭吾
(2011/04/17 23:47登録)
百夜行の続編(かもしれない)という微妙な位置づけの作品。
なんかよく出来た携帯小説とか韓流ドラマみたいな印象。
さらさら読めて、つまらなくはないし、適度にドラマチックではあるんだけど、特に面白いところもないというか……。


No.207 6点 ソウル・コレクター
ジェフリー・ディーヴァー
(2011/04/17 22:55登録)
サイバーテロを扱った映画のダイハード4を彷彿とさせる作品。
ダイハードのようにテロリストがペンタゴンをハッキングしたり、爆撃機を乗っ取ったり等の映像的な派手さはないけれど、民間の大手すぎる個人情報管理会社が舞台の派手な展開とドキハラぶりでは負けていません(おそらく、ありそうでありえなさも、同じくらいと思われます)。

犯人そいつかあ……先日のみずほ銀行の件もあるし、結局はアナログな人の管理の方が重要ってことかな?

この作品中の情報管理世界もすごいんだけど、そんな中でもエクセルの名前すら知らない20代のアメリカ人が普通にいるというのもなんだかすごいような……アメリカは幅が広いのですね。。


No.206 7点 だれもがポオを愛していた
平石貴樹
(2011/04/17 22:09登録)
ロジックに特化した作品。

確かにロジックは素晴らしいんですが、古典的名探偵ものへのオマージュなんでしょうけれど、日本人の女の子がアメリカ警察の捜査にいきなり協力することになる設定の強引さやネーミング等、中途半端に作り物めいているところが気になりました……きわめてしまっていれば、それはそれでそういう世界と思えるんだけど。

ポーの作品をモチーフにして、小道具も色々出しているわりに、パズル、推理クイズって感じが全面に出すぎて無味乾燥になっている面もあるので、ニッキの主観を排した論理性と事件の幻想性・おぞましさが対比されていればよかったのに……とないものねだりをしたくなりました。


No.205 6点 魔術師
ジェフリー・ディーヴァー
(2011/04/17 21:46登録)
今回の犯人は、普通なら大仕掛けを施した舞台で、アシスタントやさくらの力も借りて成立させているようなイリュージョン・マジックを即興でどんどん繰り出せる、神出鬼没・七変化のすごすぎるマジシャン。

ルパン対ホームズとか明智小五郎対怪人20面相の世界が、現代ニューヨークを舞台に繰り広げられるので、いくらなんでもやりすぎ、と思う人もいれば、子供の頃、そういうのが好きだったら、感涙ものと評価がわれそう(ちなみに私は前者です;)。

ミスディレクション(誤導)の達人である犯人は、本来の目的から目をそらさせるために、様々な犯行を重ねるのですが、最初から目標一直線だったら、誰にも怪しまれなかったよね……。
でも、こういうのって、世界征服が目的なはずのショッカーが毎回幼稚園のバスを襲ったりとせこい犯罪をするのはなぜ? というのと同じ野暮な疑問なんでしょうね。。


No.204 5点 ダ・ヴィンチ・コード
ダン・ブラウン
(2011/04/17 21:38登録)
実はこの作品、西洋史のトンデモ系としては古くからある鉄板のネタが多くて(日本史で言えば、ジンギスカン=源義経の類)、作者のオリジナリティのあるネタはさほどありません。

それでも、それらのネタを縦横に使って、インディ・ジョーンズばりのハラハラドキドキの娯楽作品、たとえ背景も知識も何もなくても楽しめるような、大変、敷居の低いサスペンスミステリに仕上げたのはすごいと思います。


個人的には同じく西洋史のトンデモネタを扱ったものならウンベルト・エーコの「フーコーの振り子」の方がずっと好きだし、出来もいいと思うんですが、同じ世界的ベストセラーでも、こっちは敷居が高いんだろうな……。


No.203 6点 QED 六歌仙の暗号
高田崇史
(2011/04/10 20:52登録)
この手の歴史ミステリって、作者が作中で披露している資料だけに基づいた謎解き(だから単純化されて、本格ミステリたりうる)なんだから、これはこれでいいんだけど、六歌仙はともかく、七福神に関しては由来も日本で広まった経緯もメジャーすぎることもあり、無茶なこじつけ感が強いかなあ。。

現在進行形で進む殺人事件の方は前作よりマシで、歴史の謎解きとも有機的に関連付けられてはいますが、やっぱしょぼい。

これだけ壮大でオリジナリティのあるトンでもネタを考えられるアイディアマンなのに、小説を書く才能はあまりなさそうなのが惜しいです。

個人的に、ネタや薀蓄の面白さに比べて、小説は下手なので残念な作家ナンバー1は荒俣宏だったんですが、上には上がいた!?

これじゃオカルト漫画のMMRと変わらないような……。

主人公「○○は××だったんだよ!」
脇役たち「な、なんだってー」

だって、基本的にこのワンパターンで話が進むんだもの……こういうやり取りだけでも、もうちょっと工夫したらいいのに。


No.202 7点 コフィン・ダンサー
ジェフリー・ディーヴァー
(2011/04/09 23:43登録)
四肢麻痺の元天才科学捜査官リンカーン・ライムシリーズの第二弾。
コフィンダンサーと呼ばれる凄腕の殺し屋と対決するライムとその仲間たち。

詰め込みすぎ、展開早すぎ、意外性を狙いすぎで、ドタバタしすぎていた前作に比べると、情報やアイディアの取捨選択のバランスがいいのか、落ち着いて読めます(それでも、ジェットコースターサスペンスには違いありませんが)。

前作では基本的な設定を紹介するだけで終わってしまい、ペラペラ感があったレギュラーキャラたちも、書き込まれるようになり、キャラがたってきていますし、恋愛模様も焦らす方向にシフトしています(笑)。

トラウマ持ちの神経症的な殺し屋の描写に、大昔、読んだ、トマス・ハリスの「レッドドラゴン」を思い出して、なんだかなつかしいなあ……なんて思っていたので、ラストは余計やられた! って感じでした。

奇をてらいすぎたどんでん返しの連発になることもある作者ですが、この作品はおおむねすべてのバランスがよいのではないでしょうか。

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