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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:873件

プロフィール| 書評

No.253 6点 風のターン・ロード
石井敏弘
(2012/02/05 16:20登録)
 第33回江戸川乱歩賞受賞作なのだが、作者の登録も書評もないのは寂しい。初めて読んだときはオートバイとタバコのにおいがするどちらかといえば敬遠したいお話であったが、近年乱歩賞受傷全集が出たので再読してみた。
 推理小説としては「きず」がある。この方法ではこういった殺人とはならないでしょう。作者はオートバイのツーリングの楽しさをを知ってもらいたいと述べているようだが、この小説のようなら道路の暴走です。でもあまり気分が悪くならずに最後まで読めたのは主人公と恵子が生き生きと描かれていたから。
 作者のその後の作品は読んでいないが、最年少で乱歩賞を獲得したにしては以後の活躍があまり目立たないのが残念です。


No.252 7点 海泡
樋口有介
(2012/02/03 19:56登録)
 小笠原を舞台にした青春小説であるとともに推理小説でもある。ただ本格推理としてはちょっと甘い。樋口氏の主人公はれいによってかっこいい受け答えをするし、何故かとてももてる。いいなあ。
 こんなふうに暮らせたらいいな。でもある面つらいのかな。同世代の人間としてこの作者の作品はとても気になる。あまりに違う青春を送ってしまったからかもしれないけど、ぜんぜん違う人間にいやみなくこんな青春を読ませてしまうところに作者の力量を感じます。
 


No.251 6点 生霊の如き重るもの
三津田信三
(2012/01/29 21:27登録)
 刀城言耶シリーズは長編が向いているように思います。あの特異な雰囲気が短編ではもうひとつ味わえない。阿武隈川のばかばかしいほどの傍若無人も短編だと余計に鼻につく。
 全体としてなずまず粒ぞろいといえる内容でしたが、いずれも一応すっきりした解決が提示された後でわざと(と思いますが)割り切れないお話が追加されています。作者の好みなのでしょうが私はなくても良いような気もしました。
 作品としては「生霊」が一番良かった。「天魔」はあまり好みでない上にどうもどこかで読んだ気がすると思ったら、「凶鳥」のおまけのようについていた作品でした。
 


No.250 7点 奇面館の殺人
綾辻行人
(2012/01/21 19:33登録)
待ちに待った綾辻氏の館シリーズの最新版。わけのわからない招待状や館では全員が仮面をかぶらないといけないなんてーーー。 
 よ!でました本格推理小説!!。といった始まりにこころが浮き立つ。
 物語はミステリーマニアが気づきそうな事柄については丁寧に否定しながら展開する。実に創の少ない推理小説で、作者は時間をかけ細心の注意を払って書いたのでしょう。きちんとした本格物なので当然あちこちに伏線も張ってありそうと思って読むこととなる。 ただ仮面をかぶっているので人物が実に分かり難く説明はくどいのですらすらとはとても読めなかった。
 私は鹿谷の推理がそんなに弱いとは思わなかった。
 綾辻氏はもうこんな小説は書かないと思いつつあったのをきっちりと裏切ってくれた。 
 次作が楽しみ。なるべく早めに書いてほしいものです。


No.249 7点 花園の迷宮
山崎洋子
(2012/01/21 19:07登録)
 奇抜なトリックがあるわけではないが、謎はそれなりに面白い。昭和初期の遊郭ってこんなんだったのかと納得しながら読んだ。そのままだと滅入ってしまいそうな暗い雰囲気だが、主人公の明るい性格が小説を照らして最後まですらすらと読めた。
 乱歩賞のなかでも好きなほうの小説です。


No.248 7点 ピース
樋口有介
(2012/01/07 20:43登録)
 無口な店員とマスター、そして食事のレシピなどなんだか北森鴻の世界みたいだなと思っていたら、途中からしっかりミステリーとなる。
 連続ばらばら殺人が起きるが、被害者にまったく関連性がなく登場するおじん刑事もぜんぜんさえないなあと思っていたら、警察とは無縁の人物から急遽犯人が指摘される。なるほどこういったこともありかな、でもまだ大分ページが残っているのに解決というもの変だなあと思っていると、話はさらにひねくれて意外な結論(だいたい私はこういった展開は推定できていません。だから面白く読んでもいるのですが)となる。ただ最後にいたってもマスターの八田やバーテンダーの梢路にはまだ謎の影が残る。
 なかなか楽しめました。


No.247 7点 繭の密室
今邑彩
(2012/01/03 17:55登録)
 今邑彩の本格物としてはちょっとさえないかな。メイントリックはちょっと本格物が好きなものにとってはどこかで読んだぞといったもの。もちろん作者はそれだけではダメなことを承知しているのでずいぶんひねってはある。
 犯人は以外だった。女性は恐ろしいねえ。


No.246 3点 九月が永遠に続けば
沼田まほかる
(2011/12/31 15:38登録)
 第5回ホラーサスペンス賞受賞作で国内ミステリー部門第1位という帯がついて本屋に山済みされていたので、ミーハー心を刺激されてどんなものかと読んでみたが、残念ながらはずれ。
 文章はまずまずだが話の内容が全く好みではない。登場人物はある面で普通の人だが一皮向くとどろどろのごてごて。妙に気の強くそして切れやすい女が主人公で、不自然と思えるほど親切で鈍感なおとこが助けてくれる。こんな話は女性にしか書けないだろう。それにしても女性から見た世界はこんな風になっているのかと思うとちょっと驚く。
 全体として救いようのない話がねちねちと続きうんざりしたといった印象でした。
 私の感性が古いのかもしれませんが、これが本当にベストセラーになっているのですかねえ。
 


No.245 7点 水車館の殺人
綾辻行人
(2011/12/28 21:46登録)
 これは本格物の備えているロジックと幻想のぎりぎりの妥協点であることを良く示している小説だと思う。そういった意味では本格推理小説の見本のような小説。若き作者ががちがちの本格物を書こうとした意図がうかがえて読んでいてとても好ましい。
 1年前と現在が交互に語られそれが複雑に絡み合って最後に意外な結果となっていくストーリーは、本格物として読む分には実に興味深い。
 でもよく考えると、いくら衝撃的な出来事といっても1年前のことを些細な出来事まで正確な時間をみんなが記憶していることなんて本当は絶対無理なんだ。
 好みとしては第1作の十字館のほうが好きなのだがこれも悪くはない。


No.244 9点 十角館の殺人
綾辻行人
(2011/12/24 14:30登録)
 この作品は昔発表された直後に読み、私に本格物に興味を持たせてくれた作品でした。綾辻氏は当時の新本格作家といわれた作者の中で抜群に文章が良く、内容も実に凝っておりいっぺんにファンとなってしまいました。
 でも当時の採点なら多分8点ぐらい。時を経てずいぶん本格物を呼んだ後で再読すると、その雰囲気はさらに好ましく、トリックもほとんど忘れていたので(この点私は再読に向いているのす。今後年のせいでさらに覚えが悪くなると思われるので今もっている本でひょっとしたら生涯楽しめるかも)本当に楽しめた。減点は最後のところが理解し難いところぐらい。
 本格物の多くの名作が発売されておらず、本屋で手に入らないのはまことに残念だが、館シリーズは文庫本が再販され手に入れやすい。それだけ人気が有るということなのでしょう。


No.243 4点 人形館の殺人
綾辻行人
(2011/12/17 14:53登録)
 綾辻の館シリーズの異色作ではあるが、好みではない。
 こういった設定ならある意味どんなことでもありとなるのではないでしょうか。初めて読んだときには大分がっかりしたことのみ覚えていたが、作者が思い入れのある作品としてあげているのでもう一度読んでみた。
 やっぱり私にはあいませんでした。


No.242 10点 時計館の殺人
綾辻行人
(2011/12/12 21:42登録)
 綾辻の館シリーズ私にとって推理小説にのめり込見始めた頃に読んで十角館以来館シリーズはすべてリアルタイムで読んできた。20年ぶりに読み直してみたが、雰囲気といい堅固で独創的なトリックといい、ほんとうにすばらしい。
 思えばこの頃の作者は人形館、霧越邸と年に1作ぐらいの割ではあったがきわめて質の高い本格推理小説を発表しており、まさに絶頂期であった。綾辻の新作が出ると聞いたら書店へ飛んでいったものだ。
 このところの作品は当時の勢いが低下気味なのはまことに残念なのだが、思えばこんな作品を何作も書くこと自体が無理なのかもしれない。


No.241 5点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2011/12/06 20:45登録)
 これは評価が分かれる作品だと思います。まず文章。翻訳家なのだからなのでしょうか、外国作品の翻訳文そのままの文体で味も素っ気もない。こんな文が嫌いだから外国小説は読みたくないという人も多いと思います(私もどちらかというとそっちのほう)。こういった方にはこの作品は全くだめでしょう。
 さらにミステリーの面白さが「だまし」にあると感じている人にはこんな面白い小説はないと感じそうですが、そうでなければただだまされただけでばからしいかぎりなのでしょう。
 確かにこの小説にはきれいにだまされました。まあ許せる程度なので酷評はしませんが、だますだけの小説なんてあんまり好みではありませんな。


No.240 8点 空飛ぶタイヤ
池井戸潤
(2011/12/03 09:20登録)
 かなりの長編だが読み始めれば長さは全く気にならずにぐいぐい引き込んでいく迫力のある作品でした。登場人物が結構多いが巧みに描かれており作者の筆力を感じる。ストーリーは突発事故から始まり次々と強烈な試練が立ちはだかりまさにジェットコースターミステリーといった趣のなかに、主人公赤松の強くて弱くて人情的で実に泥臭い生き様がよく描かれている。若造の金髪門田もいいじゃないか。
 物語の結末は簡単に予測できてしうある意味で単純なお話なのだが、ぴったりと思ったとうりの結末に共感し感動する。こんな話が好きなんです。
 ただPTAの話は余分かなあ。
 それにしても悪役の大企業のモデルはすぐに見当がついてしまう。読んでいる間は実話を基にしたお話と思っていたが(以前自分が勤めていた会社関連?)、解説を読むと完全なフィクションなのだそうだ。ーー自動車、重工関係の人はどんな感じがするのかなあ。
 


No.239 7点 ビブリア古書堂の事件手帖2
三上延
(2011/11/27 10:05登録)
 本書は売れ行きがよいようでamazonでは品切れ。こうなると読みたいもので近くの大型書店へ行ったら正面になんと山積みとなっていたので早速買っ読んでみた。
 内容は相変わらず感じのよいストーリーですらすらと読める。前回と同じように大胆なトリックや残酷シーン、殺人などはない。でも雰囲気がよくだんだんにこのシリーズが好きになりそうな気がする。
 いったいシリーズ物は2作目の出来がかぎのようで、前作よりつまらないとまず3作目はもっとダメになるようです。
 2作目はたいてい1作目で分からなかった主人公の秘密などがちょっとづつ明らかになるものだが(本作も然り)、このことにより主人公たちに愛着が増すのか、この秘密がさらに知りたくなるか、あたりが分かれ目かもしれない。
 栞子さんとても魅力的、今回はお母さんの秘密も出てきてなかなか興味深い。次が楽しみとなってきた。


No.238 8点 ビブリア古書堂の事件手帖
三上延
(2011/11/24 07:50登録)
こんな雰囲気の小説好きです。奇抜なトリックや連続殺人などはまったくなし。きわめて不器用な美人の女性が一冊の古書から隠されていた過去を推理していく。4つの古書にかかわる話が有機的に絡み合ってなかなか面白い。繊細な栞子さんと普通の大男大輔の掛け合いもほほえましい。


No.237 6点 咸陽の闇
丸山天寿
(2011/11/23 15:36登録)
 シリーズ第3弾。前作がぱっとしなかったが本作品は第2弾よりは楽しめた。このシリーズは中国歴史とミステリー,SFの合体のような小説で、解明不可能と思われる現象や事件が呈示され、全く混迷にいたってしまう。そこで無心が登場して快刀乱麻を断つがごとく解決する。無心の謎解きは一見理論的のようだがSF的要素を交えた相当無理な話なのだが、とにかくそのとうりになってしまうのだ。
 本格物のように謎を解く鍵が述べられているようにもみえるがこの程度の鍵で結論を推理することは全く無理でしょう。前作よりは趙軍の戦いや兵馬俑の謎など楽しませる要素が多かった分楽しめたと思います。中国古代史が好きならまあ楽しめそうです。
 この先話は続きそうですが、この先続編が出てきたら読もうと思うかはちょっとね。項羽でも出てきたら読んでしまいそう。


No.236 4点 琅邪の虎
丸山天寿
(2011/11/09 21:06登録)
前作よりもだいぶ落ちる。「鬼」ではシチュエーションも登場人物も新鮮でトリックもまずまずだったのだが、今回はどうもぱっとしない。読んでいてつまらないのだ。それなりに謎もあり、登場人物も二度目なので愛着が湧きそうなのだが、なんだか話がごちゃごちゃとしていて最後の謎解きではまあご苦労様でしたといった感じとなってしまった。面白くなる要素は沢山あると思うのだが。


No.235 7点 赤い館の秘密
A・A・ミルン
(2011/11/06 13:56登録)
 すごいトリックやおどろおどろしい雰囲気もなく、いたって平凡といえば平凡。連続殺人などは起きず、一人の殺人事件を解決していく物語。でも翻訳物独特の変な人物ばかり登場ということはなく、むしろ登場人物の巧妙な会話や雰囲気を楽しむといった嗜好となっていることは私にとっては好ましいことでした。
 ずいぶん昔に読んだときはやっぱり変なやつが登場する違和感のある小説といった感じを受けたことを思い出しますが、最近は日本のミステリーでも変な人間がやたら出るし、文体も翻訳文のようなものも結構あるので慣れてきたのかもしれません。


No.234 6点 てとろどときしん
黒川博行
(2011/10/26 21:13登録)
黒川氏の小説ははじめて読みました。くろマメのコンビは多少の違和感があったが慣れてくるとそれなりに面白い。あまり派手なトリックなどはなく、もっぱら現実的な警察小説集というべき内容だが、そこにユーモアや登場人物の個性がうまく描かれているので、退屈せずに読める。もうちょっと刺激的なお話しだとなお良いのだが。

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