こうさんの登録情報 | |
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平均点:6.29点 | 書評数:649件 |
No.289 | 8点 | 月光ゲーム 有栖川有栖 |
(2008/11/05 22:40登録) 大学卒業当時に読んだので作品世界に共感できた所もあるかと思います。江神作品は作品設定がどの作品も好きです。ダイイイングメッセージは頂けないですし、マッチからの推理もつっこみ所はあると思いますが江神シリーズはミステリの出来云々ではなく好きです。 |
No.288 | 6点 | 網走発遙かなり 島田荘司 |
(2008/11/05 22:33登録) かなり前の作品ですが何故か登録されていなかったので入れてみました。 島田作品でも珍しい連作短編集で4つの独立した作品が最後につながっていくスタイルでした。シリーズキャラクターもおらず地味な作品ですがまあまあ楽しめた記憶があります。列車のトリックは「奇想・天を動かす」の方が上でしょう。 一つ一つの事件、真相が小振りのため初期の島田作品らしくはないですがまあまあ楽しめた覚えがあります。 |
No.287 | 9点 | ウサギ料理は殺しの味 P・シニアック |
(2008/11/05 22:22登録) フランスミステリですがほとんどバカミスといえる内容でした。 閉鎖された田舎町で毎週木曜日あるレストランで狩人風ウサギ料理がメニューに載ると必ず若い女性が殺される、というストーリーですが読者の推理の余地はなく途中で犯人も自然に見つかります。そこから何でウサギ料理が出されると殺人が起こるか、の説明が凄いです。一見ロジカルですが内容はあることわざがぴったりの説明で笑わせてくれます。 しかもその後更なる展開があり推理のカタルシスはないですが掘り出し物でした。 |
No.286 | 7点 | あなたに似た人 ロアルド・ダール |
(2008/11/05 22:11登録) 所謂「奇妙な味」の第一人者ダールの代表作です。はっきりいって面白いのは三作だけでしたがその三作「味」、「おとなしい凶器」、「南からきた男」は名作に値すると思います(あとの作品は覚えていません)。どこかで目にしたことのある話かもしれませんがこれだけでも読む価値はあるかと思います。全体としてはあまりミステリという感じではなく同系列で語られるスタンリイ・エリンの作品の方がミステリに近いと思います。 |
No.285 | 7点 | 血の季節 小泉喜美子 |
(2008/11/03 00:03登録) 小泉喜美子第三長編で弁護側の証人がシンデレラをモチーフにした作品なのに対しこの作品はドラキュラをモチーフとした作品です。(第二長編ダイナマイト円舞曲は青ひげをモチーフとしています) 幼女殺人で死刑の判決を受けた囚人に精神鑑定するために医師が訪れ接見するところから始まり、次の章より囚人の回想と幼女殺人事件の捜査が交互に描かれてゆきます。 弁護側の証人と違いこの作品はモチーフとなった「ドラキュラ」を全面に押し出した作品で怪奇小説じみているところがありますが医師が実質探偵役を務め一連の謎を説明しております。ただラストの判断は読者に委ねられており、個人的にはすっきりした読後感が得られないのが少し不満です。少し海外作品の「首つり判事」に似たラストでした。 個人的には長編五作しか残さずお亡くなりになったのが残念な作家だと思いますがやはり「弁護側の証人」の方が上かなと思います。 |
No.284 | 9点 | わが子は殺人者 パトリック・クェンティン |
(2008/11/02 23:42登録) ホイーラー単独での第一作目です。これも「二人の妻を持つ男」同様家族がテーマの作品で地味ですが気に入っています。 パズルシリーズのシリーズキャラクターであるダルース夫妻のピーターの兄ジェークが主人公です。 本格的推理の余地はあまりないのですが地味ですが良くできた作品だと思います。人物造形もうまく、ストーリーが進むにつれて主人公の周りの人物の本当の姿が露わになってゆく所など非常にうまいです。あまり「カタルシス」はないですが良くできたミステリであり初期のパズルシリーズも復刊してほしいと個人的に思っています。 尚解説は法月綸太郎氏が書いていますが秀逸な出来です。 |
No.283 | 6点 | ファンレター ボブ・ランドール |
(2008/11/02 23:00登録) これも折原一氏推薦の一冊です。手紙のみで構成されており面白い趣向だと思いました。日本では井上ひさし氏の「十二人の手紙」(傑作です)がまず思いつきますがやはり作風は全然違いこちらはサスペンスストーリーです。メインキャラクターはミュージカルスターのサリー・ロスとその狂信的ファンのダグラス・ブリーンの二人でダグラスがファンレターを送っても一向に返事がもらえずだんだん苛立ちを募らせ行動がエスカレートしてゆく、という作品です。 読者の興味はどう収束してゆくか、という一点ですが手紙だけのスタイルをうまく使いラストの切れ味は鮮やかです。 難点は内容的には短~中編のネタだと思うのですが不必要な手紙が多く中盤かなりだれることです。ただ手紙のためページ中の文字が少なくさほど苦痛ではないですがそれでも水増し感はありました。 折原一氏の書きそうな狂信者の話でありアイデアの一部が同氏の「ファンレター」に活かされているのだと思います。 |
No.282 | 7点 | 絶海の訪問者 チャールズ・ウィリアムズ(米国) |
(2008/11/02 22:43登録) 折原一氏のガイド本での推薦で読んだ一冊ですが確かに雰囲気が折原氏の「セーラ号の謎」に少し活かされていると思いました。 主人公はイングラム夫妻で外洋ヨットで新婚旅行中に漂流するヨットを発見する。そこからボートで逃れてきた一人の青年がボートでの凄惨な出来事を語るが、不審に思ったイングラムがボートで相手のヨットに乗船し、というストーリーです。 典型的なサスペンスストーリーで推理の余地はありませんがスリリングでうまくまとまっています。海洋の冒険小説以外のジャンルの作品は珍しいこともありかなり楽しめました。40年以上前の作品ですが今でも古臭くなく楽しめます。ただラストはある意味ワンパターンな結末だと思いました。 尚原題「デッドカーム」のタイトルで映画化されている様です。 |
No.281 | 8点 | 嘘、そして沈黙 デイヴィッド・マーティン |
(2008/11/02 22:32登録) 一昔前流行ったサイコサスペンス物です。実業家ジョナサンが自宅で血まみれの死体で発見され、その様に処理されたが「人間嘘発見器」の異名を持つ担当刑事が事件当時一緒にいた妻メアリーの証言に嘘を直感し捜査を進めてゆくストーリーです。 冒頭はいきなり不審者の男がジョナサンの自宅に侵入しジョナサンを縛り上げる所からストーリーが始まるため読者には妻が嘘の証言をしていることが最初からわかっており何故妻は嘘をついたのか、謎の不審者の正体は、ジョナサンは本当に自殺なのかといったことに疑問を持ちながら話は進んでゆきます。 難点は陰惨な描写がとにかくどぎついことと決して長い作品ではないのですが不必要な描写で中だるみしていることです。 真相自体は前例はありますが良く考えられていてシリアルキラーものとみせておいて実は、という構成になっていますが真相が最後にまとめてわかるタイプではなく小出しにされているため最後の驚きはさほでもありません。提示の仕方によってはもっと驚かせることが可能だと思いました。また原題はLIE TO MEですがこちらの方が作品の意図に近いと思います。 シリアルキラーものは今は下火ですが描写を我慢できる方なら一読をお薦めする作品です。 |
No.280 | 6点 | 私が彼を殺した 東野圭吾 |
(2008/11/02 22:14登録) これも「どちらかが彼女を殺した」と同様で趣向自体は面白いと思いますが個人的には長編推理クイズのような印象で謎も魅力的ではありませんでした。読者に推理してもらうために謎のレベルを落として意図的に作られたのでしょうが作品自体の面白みはありませんでした。三作目も構想中らしいですが面白い謎を提示してもらいたいです。 |
No.279 | 6点 | どちらかが彼女を殺した 東野圭吾 |
(2008/11/02 22:06登録) 趣向自体は面白いと思います。ただ犯人当ての手がかりというか読者に提示された謎があまりにも面白みがなかったと思います。恐らく読者に推理してもらうために意図的に謎のレベルを下げているのだとは思いますが長編の推理クイズみたいな印象を受けてしまいます。実際にはその程度で犯人はつかまらないと個人的には思いました。 |
No.278 | 6点 | 黒後家蜘蛛の会5 アイザック・アシモフ |
(2008/10/26 23:27登録) 日本人にも推理の余地のある作品は相変わらず少ないですが「待てど暮らせど」「秘伝」「アリバイ」「封筒」は推理可能です。個人的には最後の「秘伝」「アリバイ」が好きです。 まあ全体として特に3~5はその雰囲気が楽しめる方には楽しめる作品集だと思います。尚あとがきはいかにも好きそうなデビュー直後の有栖川有栖氏が書いています。 アシモフも亡くなり未収録作品が一向に出ないことはとても残念です。 1~5全般に言えますが私はこのシリーズのファンなので甘めの評価だと思います。 |
No.277 | 7点 | 黒後家蜘蛛の会4 アイザック・アシモフ |
(2008/10/26 23:18登録) この作品集では個人的には「帰ってみれば」が面白かったです。また「赤毛」は小噺みたいですがアシモフのあとがきににやりとさせられます。どちらかというと日本人にはわからないアメリカ人むけのクイズの様な作品が増えていますが日本人としてはアシモフの博識に感心するしかないかな、と思います。 |
No.276 | 7点 | 黒後家蜘蛛の会3 アイザック・アシモフ |
(2008/10/26 23:11登録) 日本人には絶対分からないミステリが多いですがストーリーは面白いと思います。個人的には「欠けているもの」がよかったです。原文で読めれば「その翌日」などはとても面白いと思いますが仕方ありません。会話と雰囲気はいつもどおり楽しめます。 |
No.275 | 6点 | 密やかな喪服 連城三紀彦 |
(2008/10/26 23:03登録) 表題作の「密やかな喪服」は収録作の中では一番怖いミステリでしたが現実的なリアリティは低いかなと思います。夫婦とはいえこんな会話が成り立つのか、という印象でした。(阿刀田嵩の奇妙な味系でした)他作品も「夜よ鼠たちのために」ほどのトリッキーさはありませんが男女の機微をテーマとした連城作品らしいものも収録されており全体として水準作だと思います。 |
No.274 | 8点 | ユダの窓 カーター・ディクスン |
(2008/10/26 22:51登録) カーの中でも法廷場面がほとんどという異色作ですがミステリとしては良くできていると思います。 文体というかH.M卿の語り口などは少々うんざりさせられますがこれはどの作品もそうなので仕方ないかなと思います。 例のトリックは有名になりすぎていて読んでない方でも知っているとは思いますがそれでも一読の価値はあるかと思います。ただ異色作ではあるので比較的読みやすい「皇帝のかぎ煙草入れ」(ミステリとしての評価は別ですが)などの他作品から読んだ方が良いかもしれません。個人的にはありきたりですがこれと「火刑法廷」が好きです。 |
No.273 | 6点 | ブラックネルの殺人理論 ウォラス・ヒルディック |
(2008/10/26 22:39登録) サイコサスペンスの一作でした。全編日記(手記)のみで構成された当時では珍しいミステリだと思います。 夫が全く無関係な社会的に無益な人間を殺す計画、実行に移しそれに伴う精神状態の変化などを表した日記を書いていることを見つけた妻が、全てを自分で書き写し夫を信じながらも次第に疑ってゆく心情を自分の日記に記す体裁をとっています。 要するに「妻が写した夫の日記の章」とそれを写し終わったあとの「妻の日記の章」が交互に語られる形です。 殺人事件が第2、第3と進むにつれて妻の心情が変化してゆくのはありきたりですが、妻が夫を信じすぎているため何もせずただ日記を写しているだけであまりにものんきすぎる印象です。そのためどぎつい感じはなく読みやすいとは思いますがやはりリアリティが低かったです。 主眼は夫が本当に殺人を起こしているのか、それとも自分が殺人を犯したと妄想を抱いているだけなのか、という所の興味と話がどう収束するかですが最後に一ひねりがあり明らかになるのですがさほど大きな盛り上がりもありませんでした。 日記のみからなる作品構成は評価したいですがミステリとしてはそこそこでした。 |
No.272 | 7点 | 黒後家蜘蛛の会2 アイザック・アシモフ |
(2008/10/19 23:43登録) 「追われてもいないのに」「電光石火」、「禁煙」などは比較的本格色があると思います。 作品中の会話もアシモフ自身のあとがきも相変わらず好調な作品です。 |
No.271 | 8点 | 黒後家蜘蛛の会1 アイザック・アシモフ |
(2008/10/19 23:36登録) 安楽椅子探偵ものの中では最も気に入っている作品集です。実家にあった1~5を20年ぶりに読んでみましたが面白かったです。 黒後家蜘蛛の会は化学者、ミステリ作家、画家、弁護士、数学教師、暗号専門家(政府役人)の6人のインテリで構成され月に一回レストランに集まり6人のうちの一人がゲストを呼び歓談するという構成です。何故か毎回ゲストもしくは会員が不思議な体験、ミステリじみた話を持っており6人が素人探偵振りを発揮するが最後必ず真相を見破るのは給仕のヘンリーである、というスタイルで1~5はそれぞれ12編入っています。 本格ミステリ様なものもあれば単なる言葉遊び、落語の落ちみたいなものもありますしアメリカ文学、英語にかかわる問題など日本人には絶対わからない、解けない話もありますが個人的には全作品好きです。 会での会話、キャラクター6人+ヘンリーのキャラクターが最高で個人的には謎解きがつまらないときでも会話でおつりがくる感じです。また作品のあとのアシモフによるあとがきも面白いです。 1では本格色が一番強いのは「死角」でしょう。「明白な要素」「会心の笑い」「実をいえば」なども比較的そうですがどちらかというと落語の落ちみたいな作品です。 ミステリとしての出来云々ではなくこのメンバーが好きになれれば1~5いずれもお薦めできます。 |
No.270 | 7点 | 死のようにロマンティック サイモン・ブレット |
(2008/10/19 23:03登録) サスペンスの佳品でした。折原一氏推薦のあった本の一つですが折原作品にも似た雰囲気のある作品でした。 登場人物がただ一人として感情移入できない「おかしい」人々のみなのはそっくりです。 冒頭に殺人により誰かが殺されたことが明かされ、その後時間が遡りキャラクター紹介がされ30代まで未婚の教師マデレーンと彼女に恋する男子生徒ポール、マデレーンと急接近する新任教師バーナードの3人がメインキャストで物語が進行してゆきます。 最後の展開、エピローグの切れ味は現代では新鮮な驚きはないと思いますが皮肉も効いており良くできていると思います。ただし読んで「楽しい」小説ではないかもしれません。 |