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ミステリの祭典

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楽園のカンヴァス

作家 原田マハ
出版日2012年01月
平均点6.36点
書評数11人

No.11 2点 yoshi
(2023/02/26 01:01登録)
結局「夢をみた」は真作なのか贋作なのか、ブルーピカソはあるのかないのか、二人が読む物語の作者は誰なのか、それらの謎が結局解かれないままなのは、極めて消化不良。
これは作者の「逃げ」でしょう。
最後のオリエとティムの鑑定も、何のロジックもないただの当てずっぽうだし……正直みなさんの評価が高いのが不思議です。
この構成なら二人が読む物語の中に、ただ読み飛ばしただけでは気付かない証拠が隠されていて、それで真贋の判定がつく、という形でなければいけないと思うのですが。
ミステリーとしては一点ですが、途中は面白かったのでプラス一点。

No.10 7点 makomako
(2020/03/25 20:05登録)
絵画のミステリーは時折見かけますが、これほど名画の裏事情に切り込んだ作品は初めてでした。絵画が好きな人はこれ程絵にのめり込んでいくのかとある意味感心しました。お話は殺人事件など衝撃的な事件は全くでてきはしませんが、充分に興味深く刺激的です。
 女性が書いた作品らしく理性的なのにそれを無視するようなロマンチックなところもあります。特に主人公の冷徹なまでの性格と学識、そして容赦なく相手を叩きつぶす激しさと、しばらくして見せる女らしさとある意味での弱さはまずなかなか男の作家には書けないでしょう。
 最後がちょっと甘いがなかなか素敵な作品と思います。

No.9 6点 パメル
(2017/11/01 01:14登録)
幻想的な画風と鮮やかな色彩で知られる素朴派の画家、アンリ・ルソーをめぐる極上の美術サスペンス。
大原美術館で監視員をする織絵は、ある時学芸課に呼び出された。日本で大規模なルソー展が企画されており、ニューヨーク美術館のチーフ・キュレーターであるブラウンが、代表作「夢」の貸し出し交渉人として織絵を指名してきたという。
物語は1983年にさかのぼり、スイスの大邸宅で繰り広げられた、風変わりな競い合いの一週間をたどる。ある大富豪がブラウンと織絵に対し、ルソーの「夢」とほぼ同じ構図やタッチを持つ作品「夢を見た」の真贋を判定せよと命じ、手掛かりとなる謎の古書を手渡したのだ。
本作は、単に幻の名画をめぐる鑑定対決にとどまらず、ルソーが「日曜画家」だった頃から晩年に至るまで、ピカソをはじめ彼らを取り巻く人々の物語が挿入されており、重層的な仕掛けがほどこされている。章が移るごとに意外な真実が明らかになるなど巧みな構成に舌を巻くばかりか、登場人物たちが抱くルソーへの思いも熱く伝わってくる。驚きと愛に満ちたミステリ。

No.8 2点 abc1
(2016/05/08 22:57登録)
絵の真贋判定をするのに呼ばれた二人が、肝腎の絵はロクに観ずに、
毎日物語ばっかり読んでいる(読まされている)という不自然さがどうしても気になってのめり込めなかった。
それで最後は結局真贋は読者に明かされないという最低の終わり方。ひどい。

No.7 7点 白い風
(2015/08/25 23:36登録)
初めての原田作品でしたが読み易かったです。
ルソーとピカソの二人が絡んでくる絵画ミステリーでしたね。
私にもっと美術の知識があればもっと楽しめたのが残念!
PCで出てきた作品を検索しての読書になりました(爆)
作品の真贋だけでなく、1910年当時の芸術家の様子も楽しめました。

No.6 7点 E-BANKER
(2015/02/01 20:48登録)
2012年発表。同年の山本周五郎賞受賞作。
作者は作中にも登場するMOMA(ニューヨーク近代美術館)勤務経験もある美術の専門家ということだが・・・

~ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム=ブラウンは、ある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵画。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵画を譲ると告げ、手掛かりとなる謎の古書を読ませる。リミットは七日間。ライバルは日本人研修者・早川織絵。ルソーとピカソ、ふたりの天才がカンヴァスに籠めた想いとは・・・?~

さすがに評判どおりの面白さだった。
文庫版の『これまでに書かれたどんな美術ミステリーとも違う』という帯の惹句は決して誇張ではない。
絵画や美術は全くの門外漢の私。読む前には「ルソーって絵なんて描いてたの?」って、正直、哲学者のジャン=ジャック=ルソー(=著書「社会契約論」で有名な人物)と勘違いしていた。
(そもそも活躍してた時代が全然違う!)
そんな美術オンチの私でも十分に本作は楽しめた。

ミステリーとしてのメインテーマはもちろん絵の真贋なのだが、それよりも作中に登場する「古書」と登場人物たちに纏わる謎の方に個人的には惹かれた。
「古書」については、特に作中の人物に施された「仕掛け」がなかなか旨い。ルソーとピカソのグレイな関係を目くらましに使い、「作中作」というミステリーっぽいプロットを巧みに取り入れている。
ルソーの幻の絵画を軸に、それを手に入れたい謎の人物が次々に登場する展開もスリリング。
七日間というタイムリミットを設け、終盤に向かい徐々に盛り上げていく手法もなかなか良く出来ていると思う。

惜しむらくは織絵の扱いか。
冒頭から、過去に秘密を抱えた謎の人物として登場する織絵なのだが、掘り下げ不足で結局今ひとつ盛り上がらないまま終了した感じだ。
(岡山弁を操る超美少女=「織絵の娘」もかなり気になったが・・・)

「絵画」っていうのは実に謎に包まれた存在なんだろう。
絵に魅せられた人は、絵画そのものだけではなく、描かれた動機や背景、手法などあらゆることを知りたいと願う・・・
これってミステリー或いは謎解きの楽しさと同じ、ってことか??

No.5 9点 おっとー
(2015/01/16 12:10登録)
久しぶりに楽しめた作品です。
絵画には全く疎いですが、今度ゆっくり絵画展に行ってみます。

No.4 7点 蟷螂の斧
(2013/02/23 09:16登録)
ルソーは好きな画家の一人で、画風は独特の雰囲気がありますね。「夢」ではありませんが、家の壁に「ライオンの食事」が飾ってあります。当時の評価、「日曜画家」と揶揄されたことは知りませんでしたが、その評価の低かったルソーに心酔する3人の物語です。殺人事件などなく、純粋にルソーの作品「夢をみた」の真贋に関するものです。作中に出てくる「物語」がいい味を出しています。画家の情熱が伝わってきました。話はそれますが、昨年、ルーブルの「モナリザ」とは別の「若いモナリザ」が本物(ダヴィンチ)とモナリザ財団が発表しました。絵画の世界は、まさにミステリアスです。

No.3 7点 (^^)
(2013/02/14 22:04登録)
アートミステリー。
絵画には疎いけれども惹きこまれた。

No.2 8点 あびびび
(2013/01/22 15:14登録)
アンリ・ルソーという画家に俄然興味を持った。「夢を見た」という作品の真贋を問うストーリーだが、重厚で流れるような展開にページをめくる手が止まらなかった。

最後はそれなりにどんでん返しもあり、こういう小説もいいなと、新分野に興味を持った。

No.1 8点
(2012/12/15 13:30登録)
山本周五郎賞受賞作。
アンリ・ルソーの幻の絵画「夢をみた」の真贋を巡る、男女研究家による7日間の鑑定対決を描いたアート・ミステリー。
(以下、ネタバレ気味な書き方をしています)

謀略が絡み、さらには驚愕の事実が待ち受けている。単純なせいか、こういうのには弱い。
構成は現在、過去、ルソーの物語と、3層構造になっている。中心となる過去の話は、スリリングな展開で、興奮したし、その作中のルソーの物語にはピカソが登場してきて、これもなかなか面白い。
驚愕は2つ。1つ目はカンヴァスに関することで、中盤に匂わせてきた。絵画の世界を知らない者には驚きだが、専門家なら想像できるのかも。でも、これは空振り。2つ目は鑑定の依頼者に関すること。へぇ~という感じだった。
驚愕を含め後半のストーリーは抜群。せわしなく読み急いでしまった。「情熱」を感じた。
人物については、主人公ティムの揺れ動く心の描写がよかった。それにくらべ織絵の人物像がややぼやけ気味だが、これはこれでいい。作者自身の投影なのかな。
作者の原田マハは、小説にも登場するニューヨーク近代美術館に勤務していたキュレーターでもある。経験をフルに生かして書いた作品ということだろう。

ルソーといえば哲学者のルソーがまず思い浮かぶが、表紙の絵を見て、この作品を描いた画家なんだ、そういえばそんな名前の画家がいた、と改めて納得。私の知識はそのぐらいだが、ネットで作品を眺めているうちに、悪くない、当時ならモダンアートという位置づけだったのかもしれないが、現代アートにくらべれば断然いい、と思えてきた。

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