風の証言 鬼貫警部シリーズ |
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作家 | 鮎川哲也 |
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出版日 | 1971年01月 |
平均点 | 6.17点 |
書評数 | 12人 |
No.12 | 5点 | nukkam | |
(2023/12/20 23:55登録) (ネタバレなしです) 1971年発表の鬼貫警部シリーズ第13作の本格派推理小説で、中編「城と塔」(1971年)を長編化したと紹介されていますがアリバイトリックは1960年代前半に発表されていた短編作品(私は未読)で既に使われていたそうです。前半はまさかの産業スパイが容疑者となり、鬼貫が出る幕もなくアリバイが崩されるという展開です。もちろんこれで解決には至らず、事件は新たな局面を迎えるというのが本書の一工夫です。メインのアリバイトリックは失敗リスクが高そうであまり感心できませんが、トリック成立に必要な小道具を入手するための犯人の苦心の行為が印象的でした。そこを鬼貫に目をつけられるのですけど。最後になってタイトルの意味が明らかになる演出が上手いと思います。 |
No.11 | 5点 | ことは | |
(2023/01/19 23:09登録) 元となった中編「城と塔」と読み比べのため、「風の証言 増補版」読んだ。採点は「風の証言」だけでの採点で、6点と迷った5点。 ちょっと前に「死のある風景」の読み比べを行ったが、「死のある風景」は75ページの話が450ページになっていたのに対して、「風の証言」は120ページの話が310ページになっていて、改稿量が少ない。しかも、「風の証言」の220ページくらいまでに「城と塔」の内容はすべて展開しおわり、その後に事件を1つ追加している形となっている。 「城と塔」から使用された部分の改稿状況は、「地の分で1,2ページだったものを1つのシーンにする」、「推理を明確にするための文章の書き加え」、「後半に追加された事件の前振り」などで、「城と塔」の文章は9割以上残っているのではないかな。 上記状況なので、長編化にあたってよくなったかといえば、そうでもない。密度が薄くなってしまったという感じがした。元となった中編「城と塔」は、十分に書き込まれていて力作と評価できる作品だと思うので、これはもっと工夫がほしかった。 ひとつ「風の証言」が良かった点は、”アリバイが偽造である決め手”を最後にもっていく演出かな。これはエピローグとしてきれいに決まっている。 追加された事件については、単独で特によいというわけではないが、前の事件と”ある点”を共通にしているので、並べて提示したかったのだと思う。この趣向は、なかなかよいと共感できた。 あと、追加された事件で、刑事コロンボの「二枚のドガの絵」を想起させる部分があったので、発表日比較してみたところ、同じ月だった。(日本語Wikipedia情報) 風の証言:1971年11月、毎日新聞社 二枚のドガの絵:アメリカ初回放送日「1971年11月17日」、日本初回放送日「1972年10月22日」 たまたま思いついて調べてみて、同じだと、「おぉ、なんと偶然!」と思うなあ。 さらに、「風の証言 増補版」の解説だが、(たまたま持っていた)青樹社文庫版の解説とほぼ同じ。”元となる中編がある”作品の解説は、”元となる解説がある”解説だったとは! 解説まで読み比べしてしまったよ。 |
No.10 | 4点 | E-BANKER | |
(2017/12/11 22:47登録) 鬼貫警部/丹那刑事。安定感抜群のコンビが登場するシリーズ長編。 長編とはいっても、もともとは「城と塔」という中編を引き伸ばしたもの(とのこと。もちろん悪い意味ではなく)。 1971年発表。 ~井之頭公園に隣接する植物園で音響メーカーの技師とバレエダンサーが死体となって見つかった。技師が同僚に「うちの研究がライバル会社に盗まれた件だが、スパイの正体をこの目で見届けたよ」と告げていたことから、疑惑を糾す矢先に消されたと判明。当局は色めき立つ。しかし最有力容疑者である男は、堅牢なアリバイを楯に犯行を否認。調べれば調べるほど膠着状態に陥る難局に挑む丹那刑事は、ある日歯科医院で思いがけない大発見をするのだが・・・~ 1971年というと後期の作品ということかな。 個人的には作者も、鬼貫警部シリーズも大好きなんだけど、本作はどうにも評価できない。 作家としての峠を越えてしまったせいかのか、マンネリなのか、中編を引き伸ばしたせいなのか、そこのところはよく分からないけど、傑作をつぎつぎと送り出していた全盛期と比べるべくもない・・・っていう感じだ。 鬼貫警部シリーズというともちろん「アリバイトリック」なのだが、本作は「時刻表」はいっさい登場せず、二つの「写真」に関するトリックがメインテーマとなる。 ただ、これがどうにもピンとこないのだ。 他の作品でも写真がアリバイトリックに使われたケースがあったけど、これでは鬼貫警部の存在価値が半減すると思うのは私だけだろうか・・・ 作品としてのランクが一枚も二枚も下のように感じてしまう。 あと「双子トリック」・・・これもちょっと酷くて、トリックとは呼べないレベル。 唯一、タイトルの意味が浮かび上がる終章だけが作者のセンスを味わうことができた。(なるほど、だからこのタイトルね) ということで、否定的なコメントばかりとなった本作。 でもまぁ正直なところ、本シリーズ中では今のところ最低ランクの作品だと思う。 もちろん、他に面白い作品が多数あるからということではあるけど・・・ (結局、最初のオメガ電機のくだりは何だったのか??) |
No.9 | 6点 | 文生 | |
(2017/11/10 07:43登録) アリバイ崩しに焦点を当てた本格ミステリ。堅実な作品で読みごたえも十分ですが、カメラを使ったトリックは小粒で特にそれ以外の見所もないため、長編ミステリーとしてはやや物足りない。 |
No.8 | 8点 | MS1960 | |
(2016/06/05 11:57登録) 地味な作風ですが、凝りに凝った作品。頭の中を整理しないと訳が分からなくなる。一枚の写真でこれだけの論点がつくれるというのは驚き。 |
No.7 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2016/02/09 17:57登録) 鮎川さんの短篇には「わるい風」「にくい風」と言った風の系譜がありますがね、こちらは長篇の風です。 トリックもストーリーも小ぶりですけどね、ファンにとっては安定した良さがありますよ。 社会派の塩をちょぃと嘗めてみたような趣向もまあ、気安いお遊びでね、奇抜さ派手さの無い地道なアリバイ崩しがいいんですよ。 わたしゃ悪魔の様に大胆なアリバイトリックも堪らないけど、人間らしく細やかで優しい(?)それも愛おしいからね。まあそういうのが読みたい人向けでしょうね。 |
No.6 | 6点 | あびびび | |
(2015/05/09 15:46登録) 鬼貫警部シリーズの定番中の定番。相棒の丹那刑事が足で稼いで、情報を一つずつつぶしていく様は、昭和のミステリの醍醐味であり、懐かしく感じた。 最後の最後で、「風の証言」が有力な証拠となるのだが、写真を見ていない読者にはそれが分からない。そんなもどかしさもあったが、双子のアリバイ作りには、苦笑するしかなかった。 |
No.5 | 6点 | ボナンザ | |
(2014/04/07 15:33登録) トリックはやや小ぶり。本格の手本ではありますね。 |
No.4 | 6点 | toyotama | |
(2010/10/05 14:56登録) バニラアレルギーで容疑が晴らせたよき時代。。。 |
No.3 | 5点 | 測量ボ-イ | |
(2009/05/16 10:43登録) これも鮎川氏の作品中では平凡な印象。どうも写真 トリックが僕には合わないのでしょうか? |
No.2 | 8点 | ギザじゅう | |
(2004/12/19 14:09登録) この写真トリックの基本原理は、氏が以前ある短編でも使っていたのだが、それにひねりを加えたもの二つをメイン、サブトリックで使っているのがなかなか面白い。 そのうえさらに、証拠を見つけるとなると・・・。最後に明かされる謎解きの鍵が凧というのも味わい深い。よく出来た秀作。 |
No.1 | 8点 | myk | |
(2004/05/23 21:32登録) この作品は、2つの写真と1つの絵が証明している犯人(+?)のアリバイをどうやって崩すかが全て。単に犯人のトリックを暴くだけでなく、その証拠まで発見することが求められている。実によく考えられていて面白かった。 |