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ミステリの祭典

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花の棺
キャサリン

作家 山村美紗
出版日1975年09月
平均点5.56点
書評数9人

No.9 5点 mediocrity
(2019/12/22 00:55登録)
二重密室のトリック、外側(足跡が残らなかった理由)はつまらなかったが、内側の茶室の方は確かに驚いた。これは会心のトリックであろう。
ただそれ以外は特に印象に残った事柄もなく、茶室トリックにステータスを全振りした作品に感じた。キャンピングカーのトリックなど、ゲームの簡単なギミックレベルなのに、なぜあんなに解決に苦労しているのか不思議だった。
本作が代表作と言われると、100冊以上作品を残していて現在書評が17作しかないのも頷ける。

No.8 5点 ねここねこ男爵
(2018/06/14 05:18登録)
時代を感じる作品。読んでいるときはそれなりに面白かった。2時間ドラマの原作としては満点ではなかろうか。

トリック単独ではとても良くできているのだが、トリックを用いる必然性に極めて難があり、それどころか用いたことで犯人バレするという典型的な手段が目的化している小説。みんながみんな、不要な偽装工作で証拠を残したり工作中に目撃されたりで苦笑。
ミステリをあまり読まない人と話すと、『ミステリはトリックを見るもの』『トリックに必然性なんてあるの?』ということがとても多く、それはこの時代にそういう作品が乱発されイメージが固定化してしまった事が大きいんだなぁと。そういう意味で時代を感じる。
ただリーダビリティは高いし、トリック観賞作品と思えば悪くない。

**********
犯人の独白の中に、「美人だった母には、堅実だが地味な公務員の父はふさわしくなかった」「そんな母はふさわしいイケメンと浮気した」「浮気がバレて離婚し、それがもとで母は死んだ」「あのとき父が母を許していれば母は死なずに済んだのに」とさらっと書いてあるのを読んで、作者の倫理観に寒気を覚えた。そういう時代だったのかも知れないが…

No.7 6点 nukkam
(2015/12/08 20:22登録)
(ネタバレなしです) 膨大な山村作品の中でも最も有名なキャサリンシリーズ(長編だけで20作、中短編集もかなりの数があります)の1975年発表の第1作の本格派推理小説です。私の読んだ光文社文庫版の巻末解説ではキャンピング・カーの消失トリックの方をべた褒めしてましたが、現在では和風密室トリックの方が高く評価されているようです。シリーズ第1作だからでしょうが、キャサリン(本書では米国副大統領の令嬢という設定)が外国人であるゆえに日本人と違う視点から事件を観察して解決に結びつけるというユニークさがよく考えられています。

No.6 6点 ボナンザ
(2015/07/17 22:20登録)
日本固有の密室トリックに思わずニヤリとする。
良作。

No.5 6点 いいちこ
(2015/06/30 17:13登録)
みなさんのご指摘に同感。
シンプルで美しいトリックには見所があるのだが、必然性やフィージビリティに見逃しがたい難があり、犯行の不合理性を犯行動機のみで説明しようとしているため、プロットが納得感に乏しい。
アイデア先行のミステリパズル・クイズと言うべきで、作品の完成度は低い

No.4 6点 測量ボ-イ
(2015/04/10 18:48登録)
超有名作家でありながら未読であった氏の作品を拝読。
思ったようも本格色があり、密室の謎が解けるとそのまま犯人に
たどり着く構成はなるほどと思いました。
動機は正直後付っぽいですが。
でもこの作品は初期のものなので、まだ本格ファンを納得させら
れる体裁を保っていますが、後年量産された作品は、必然的に質
の劣化を招いているのでしょうね。

No.3 5点 江守森江
(2011/02/16 02:01登録)
西村御大のテレビ局への影響力で作者が没しても2サスでのシリーズが継続制作される偉大な日本のクリスティ(オマケに娘の紅葉がセットで付いてくる)
藤田まことの「必殺仕事人」「はぐれ刑事純情派」に並ぶ主演シリーズでもある「京都殺人案内」で最初にドラマ化され、日本人なキャサリン(TBS系)更には狩矢親娘シリーズと三度も映像化されながら、作品の肝である日本人には盲点だが外国人ならではの気づきを無視(探偵役が常に日本人)して制作され続けている(ドラマ映えするトリックではある)
それでも作者が没して結構過ぎ、原作もさほど読まれない現状を考えれば再放送もバンバンされる2サス作品は貴重かもしれない。
正直な話〈西村御大のトラベル・ミステリー〉〈内田御大の浅見シリーズ〉〈山村美紗作品〉は2サスを観るだけで満腹で原作をおさらいする気も起きない。
それにしても、同じトリックを何度も観て楽しめるのだから2サスは偉大だ!
※因みに、山村美紗作品は本作と「燃えた花嫁」を2サス視聴後におさらいした以外は読んでいないが、トリックは殆ど2サスで観て知っている(書かれた時代の家電品絡みのトリックなんか今では陳腐)

No.2 6点 kanamori
(2011/02/15 17:54登録)
米国副大統領の令嬢、名探偵キャサリン・ターナー初登場作品。
メイン・トリックは、雪中の鍵のかかった和室で華道の家元が殺される二重の密室なわけですが、”日本人には密室でも外国人にとっては密室ではない”みたいなハッタリが面白かった記憶があります。外国人を探偵役に据える必然性も感じさせます。今考えてみれば、警察の現場鑑識を舐めきってますが(笑)。
パズル的なキャンピング・カーのアリバイも、ここらでもう一つ見せ場が必要という必然性しかありませんが、リアリズムや必然性を犠牲にしても、トリックに拘った本書はやはり面白かった。

No.1 5点
(2009/01/16 20:35登録)
純和室での密室トリックが評判のいい作品で、確かに盲点を突いたおもしろいアイディアです。しかし、密室構成方法が露見すれば、それだけで犯人が限定されてしまうタイプですので、密室にした理由は動機の面から説明されても、納得のいくものではありません。また、実際には警察の現場検証に耐えられるかどうか、心もとない気もします。
キャンピング・カーのアリバイ・トリックの方は複雑で、パズルとしてはよくできているのですが、やはり必然性に難点があると思います。キャンプ場からの消失という不可能性を演出する意味が全くないのです。
パズルとして以外に、ミッシング・リンク的な連続殺人それぞれの動機設定がきっちりできている点は評価できます。『ポアロのクリスマス』の一部ネタバレあり。

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