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ミステリの祭典

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しらみつぶしの時計

作家 法月綸太郎
出版日2008年07月
平均点6.00点
書評数14人

No.14 6点 メルカトル
(2021/08/07 23:01登録)
無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻んでいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一四四〇個の時計―。正確な時間を示すのは、その中のただ一つ。夜とも昼とも知れぬ異様な空間から脱出する条件は、六時間以内にその“正しい時計”を見つけ出すことだった!?神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にはいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎、!名手が放つ本格ミステリ・コレクション。
『BOOK』データベースより。

表題作以外はこれと言って特筆すべき作品はありません。特に舞台が海外になると、途端に面白くなくなります。翻訳物に造詣が深くハードボイルドも好きな作者ならではとも思いますが、もっと端正なパズラーを書いて欲しいですね。表題作ですが、大体予想通りの展開でした、しかし最後にやってくれました、これには驚きましたね。そっちかよって感じで。

あと印象に残ったのはショートショートの『イン・メモリアル』で、この短さでこの内容、濃厚さ、心に刺さるものがありました。『猫の巡礼』はオチがなくてちょっとがっかりでしたね。平均的な作品が多いしあまり法月の特徴が出ていなかったのは残念です。期待を上回ることはありませんでした。

No.13 5点 パメル
(2020/10/07 09:23登録)
名探偵・法月綸太郎が登場しない9編と名探偵・法月「林」太郎が登場する1編の計10編からなるノンシリーズの短編集。
捻くれた密室もので脱力系の「使用中」、ダメ人間が奇妙な交換殺人を目論む「ダブル・プレイ」、ブラックな味わいで笑える「素人芸」、秀逸なロジックが味わえる頭の体操的パズル小説の「盗まれた手紙」、サスペンス風に展開しておきながら、異様なロジックでオチはダジャレネタという表題作の「しらみつぶしの時計」、切なくて哀しい叙情的な青春ミステリの「トゥ・オブ・アス」は佳作~秀作。ベストは「盗まれた手紙」。
「四色問題」と「幽霊をやとった女」は過去の名作のパスティーシュ。バレバレのネタなのでミステリとしての出来は今ひとつ。「イン・メモリアム」と「猫の巡礼」は幻想小説?ミステリとはいえない、または弱いと思う。

No.12 7点 虫暮部
(2020/07/31 12:19登録)
 十年ぶりに再読。「猫の巡礼」が素晴らしい――けど、ずっとこれ有栖川有栖作品だと思っていた。何処で記憶が混乱したのやら。
 「使用中」他者の作品をあんな風に引用しなくても、法月本人のアイデアは単独でちゃんと伝わるのに。
 
 以下、ネタバレになっちゃうかな?
 「ダブル・プレイ」ラスト前の“この見ず知らずの男こそ、本物の○○にちがいない”は余計な一文ではないだろうか?
 どういう思考回路でそこに到達したのか。
 ①自分と●●の殺意のタイミングが偶然かち合ったわけではなく、全体が一つにつながった事件である。
 ②未知の共犯者が存在するわけではなく、既に出て来た名前だけで事件は完結している。
 以上二点を前提にしないとその結論には至らない。主人公の持つ情報だけではそれはクリア出来ないと思う。

No.11 6点 青い車
(2016/05/02 00:49登録)
 『パズル崩壊』以来のノンシリーズ短篇集ですが、極度にエッジの利いた部分がなくなったことで、安心感と同時に若干の物足りなさも感じます。それでも全体的に考え抜かれた短篇が揃っており、充実の内容なのは確か。個人的ベストはやはり表題作の『しらみつぶしの時計』ですが、リドル・ストーリーを主題にした『使用中』交換殺人テーマをアレンジした『ダブル・プレイ』論理パズルとして秀逸な『盗まれた手紙』などどの作品にも何かしら見るべきものがあります。ただ、都筑道夫のパスティーシュ風(僕は本家を読んだことがありませんが)だという『四色問題』に関しては、説得力が弱い解決で純粋にミステリーとして一枚劣ると思います。

No.10 6点 まさむね
(2014/09/23 13:24登録)
 ノンシリーズの短編集。印象に残った作品について短評を。
①使用中
 こういう「密室」もイイ。本短編集中のベストかな。
②ダブル・プレイ
 交換殺人からの反転の妙が印象的。似たプロットを見たことがあるような気もしますが。
③しらみつぶしの時計
 「1分ずつ異なる時を表示する1440個の時計の中から,6時間以内に唯一正確な時計を探さなければならない」という命題への,解決までの過程が秀逸。オチは何とも微妙ですが,ランドルト環の使いっぷりを含めてむしろ印象に残りそう。

 その他の作品は,良く言えばバラエティに富んでおり,悪く言えば寄せ集め。その中でも印象深かったのは,都筑道夫氏の「退職刑事」シリーズのパスティーシュ「四色問題」かな。(ミステリとしては相当に期待外れながら,都筑氏への愛が感じられるなぁ…と。)
 総合的に,「法月綸太郎 」シリーズの短編集には及ばないですね。

No.9 5点 いいちこ
(2014/08/11 18:43登録)
表題作は短編のオールタイムベスト上位にランクインする世評の高い作品。
大いに期待して手に取ったのだが、ハードルは超えられなかった。
着想としては面白いものの、ある1点に着目すれば解けるパズルで、最大の難所である二者択一もお茶を濁して終了。
1,440の必然性もなし。
10編掲載されている短編のうち3~4編は水準以上であり、したがって短編集としても水準以上ではあるが、飛び抜けた作品はなく必読の域には達していない

No.8 6点 simo10
(2013/09/21 23:14登録)
ノンシリーズの短編集。以下の10作で構成されます。

①「使用中」:密室モノの新たなアプローチの提案にピンとこない若手編集部員と、それにイライラする中堅推理作家のやりとりが面白すぎる。
②「ダブルプレイ」:犯罪ホロスコープで披露された交換殺人の発展系の原型?当事者が登場する分こちらの方が面白い。
③「素人芸」:妻を殺してしまった夫の苦肉過ぎる策。コメディな雰囲気はあるが嫁さんが可哀相過ぎる‥
④「盗まれた手紙」:なるほどと思ったがこのネタって暗号なんかですでに知られてる方法なのかな?作者自身が考えたのならすごいけど。
⑤「イン・メモリアム」:ショートショート。残念ながら意味が解らなかった。
⑥「猫の巡礼」:猫を飼っていないので本当なのかと思った。
⑦「四色問題」:法月親子の原型っぽいキャラのやりとり。もはやこの雰囲気に対してアレルギー気味になっていることを実感。
⑧「幽霊をやとった女」:何ページか読んですごくつまらなそうだったから読みませんでした。
⑨「しらみつぶしの時計」:すごく論理的なパズル小説。ただラストが全然論理的じゃなかった。
⑩「トゥ・オブ・アス」:二の悲劇の原型らしき作品。ただし例の二人称がない。

個人的に面白かったのは①②③⑨です。氏の作品とは思えないほどブラックユーモアにあふれてました。⑩も面白いとは思うけど好きな作品である二の悲劇の簡易版を読まされた感じで好きになれなかったです。残りは全てつまらかったです。
どうやら各作品の掲載時期がバラバラらしく、特に何かのコンセプトに従った短編集わけではなかったようで、評価もバラバラになりました。

No.7 7点 makomako
(2013/04/13 14:52登録)
 どの作品もきちんと考え抜かれており、水準は高い。法月氏のいつものようにあとがきに作品に対する作者の考えや参考文献がのっている。内外の推理小説をよく読んで勉強家だなあと思う半分、こんなに色々と読むからそれに縛られて悩むんでしょうと同情もする。
 この人の才能ならこんなことやっていないで思いついたらさっさと書いてくれればもっと面白いものがたくさんできそうなのだが。まあ作者の性格なのだからしかたがないか。
 いずれも粒ぞろいの本格物だが、猫の巡礼はちょっと異質。これ結構面白かったです。
 

No.6 7点 E-BANKER
(2013/03/09 22:44登録)
作者といえば、もちろん法月綸太郎・法月警視の親子が活躍するシリーズが有名なのだが、本作はノンシリーズの短編を集めた作品集。
クライム系ミステリーまたは名探偵のパスティーシュ作品というのが収録作のテーマ(ということらしい)。

①「使用中」=これは面白いなぁ。さすが、短編の法月綸太郎はスゴい。とにかく“フリ”と“オチ”の連携が見事に嵌っている。でも、こんなプロットを「ああでもない、こうでもない」って考えるのって・・・ミステリー作家って変な人種だ!
②「ダブル・プレイ」=野球に引っ掛けた「交換殺人」が本作のテーマ。しかし、もちろんただの「交換」で終わるはずがない。でも、ここまで人って操られるのだろうか?
③「素人芸」=これは少しオカルト色のある作品。ちょっとした悪意・殺意が思いもかけない結果を招く・・・というプロットはよく目にするが、本作のオチはかなり強力。
④「盗まれた手紙」=もちろん、ポーの同名の名作ミステリーを意識した作品なのだろうが・・・ちょっと分かりにくいなぁー。
⑤「イン・メモリアム」=これはショート・ショート。「それで?」っていう感覚になるのは私だけでしょうか・・・?
⑥「猫の巡礼」=これは何だ!? 作者あとがきを読むと分かるが、これは締切に追い込まれて書いた作品なんだろうなぁ。でも、それはそれで味のある作品になっているのが、作者のスゴさか。
⑦「四色問題」=これは都筑道夫の名シリーズ「退職刑事」のパスティーシュ。しかもテーマは何と「特撮戦隊ヒーロー」って・・・。真相はこのシリーズらしい「緩ーい」感じ。
⑧「幽霊をやとった女」=本作も結構異色。ハードボイルド色を出した作品なのだが、これも都筑氏のシリーズ作品のパスティーシュとのこと。でも、これはかなり予定調和。
⑨「しらみつぶしの時計」=表題作かつこれもかなり異色。全て異なる時を刻む1440個の時計の中から唯一正確な時計を探す・・・というプロットなのだが、このオチって・・・何? やられたねぇ。
⑩「トゥ・オブ・アス」=これは、名作「二の悲劇」の原型となった作品で、作者が京大ミステリー研時代に発表した作品とのこと(タイトルは変えてるそうだが)。でも、こっちの方がまとまってないか? 「二の悲劇」で詰め込まれた伏線はすべて張られているし、これでいいじゃない。

以上10編。
さすが、とにかく短編を書かせると冴える。(裏返せば、長編になるとなぜかモタモタするってことなのだが)
本作は、よく言えば「バラエティに富んでいる」だが、悪く言えば「ごった煮」または「玉石混交」。
まぁ、でも作者の「ミステリー愛」はたっぷり感じられるし、やっぱり安定感十分だよなぁー。
水準以上。
(ベストは悩むが⑩かな。①や②、⑨が次点という感じ)

No.5 5点 江守森江
(2009/07/21 15:15登録)
ノン・シリーズ作品の寄せ集め短編集。
初出時期に結構開きがあり、アンソロジー等で既読の作品が多数だった。
「表題作」の主人公がもっと効率的に行動出来る事に思い至ったがオチを考えるとギリギリセーフしか正解に至らない為の前振りだった事に気付き納得した(それでも、傑作とは思わない)
一編でも必読級の作品を収録してあれば違った評価も出来るのだが・・・。

No.4 5点 こう
(2009/01/18 02:01登録)
 探偵法月綸太郎が登場しない短編集ですがまあまあといったところです。殺人事件で探偵役が犯行を暴く、というスタイルの作品がないためその点もの足りなかったです。
 「二の悲劇」のオリジナルのトゥ・オブ・アスが収録されています。内容はほぼ同じですが視点が違うのが興味深いです。
 この短編集を読んでつくづく作者は都筑道夫氏の影響を強く受けているのだなあ、と思いました。マクベインのパロディの都筑氏の「クォート・ギャロン」のそのまたパスティッシュが収録されているだけでなく二人称視点の「しらみつぶしの時計」も収録されています。「二の悲劇」の時には気づきませんでしたが恐らく「二の悲劇」発表時点で既に都筑氏の「やぶにらみの時計」を意識していたのは間違いないと思いました。「しらみつぶしの時計」はラストは拍子抜けでロジックもあったものではありませんがこれも都筑氏へのオマージュとなっておりストーリーというか構成は気に入っています。
 ロジックあふれる「法月綸太郎」探偵の短編も早く読みたいです。

No.3 7点 dei
(2008/11/19 20:45登録)
ノリツキの短編にはやはりはずれなし
しかしまぁ当たりもこれといってなかった短編集
ベストは「トゥ・オブ・アス」

No.2 6点 シーマスター
(2008/10/10 21:03登録)
作者の最新短編集ではあるが・・・・・

・「使用中」「ダブル・プレイ」・・・両作とも途中で、かなり前に読んだ話であることに気づき計らずも再読することになったが、このころのノリピーには張りがあったなーと妙な懐かしさを覚えたりもする。
・「素人芸」・・・これも随分前の話のようだが特筆すべき点は見当たらない。
・「盗まれた手紙」・・・カラクリは読めたが面白いパズルだと思う。タイトルはあの作品そのままだが文調まで似せているのには舌を巻いた。
・「イン・メモリアル」・・・読後ニヤっとさせられるショート・ショートだが若干意図が分かりにくいかもしれない。
・「猫の巡礼」・・・意図不明。(悪くはない)
・「四色問題」・・・このD・メッセージは関係者以外にはまず解らないし答えを聞いても「ふーん」だろう。
・「幽霊をやとった女」・・・冒頭で一目瞭然カート・キャノンのパスティーシュ。ストーリーも小気味よく纏まっている。
・「しらみつぶしの時計」・・・問答無用で余計なファクターを一切排除した閉ざされたロジックの空間を演出しているが、解決の糸口となる仮説(何となくノーベル物理学賞の「粒子・反粒子の対称性の破れ」を連想させる・・もちろん冗談)は、どうも屁理屈の域を出ていない気がするし、最後の決め手も脱力モノで結局中途半端な印象しか残らない。
・「トゥ・オブ・アス」・・・これも既読の気がするが相当前だし、ノリちゃん、このネタ他でも使っていると思うのではっきり同定できず。割りとよくできた話だと思うがキレは感じられず。

トータルとしてはホロスコープより面白かったが、この人には生っぽい本格短編をもっとビシバシ書いてもらいたい。

No.1 6点 おしょわ
(2008/09/21 09:20登録)
かの「パズル崩壊」以来のノンシリーズ(法月倫太郎が登場しない)ものの短編集です。
表題作はまさにパズルですが、ミステリーかといわれるとこたえに詰まります。
全体的にまずまず楽しめました。

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