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ミステリの祭典

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殺人!ザ・東京ドーム

作家 岡嶋二人
出版日1988年09月
平均点5.79点
書評数14人

No.14 7点 斎藤警部
(2025/06/06 00:18登録)
「お前のしたことは、野球のみならず、人間の尊厳を汚す行為である。 私たちは決してお前を許さない!」

愉しき瞬殺本。 明るくドライに、胸糞サイコサスペンスの要素あり。
東京ドームこと水道橋ビッグエッグにて伝統の巨人vs阪神戦を舞台に横行する、"ガラスの矢" を使った連続毒殺事件。
狂った暗殺者、彼に "きっかけ" を与えてしまったちょっとダークなTV業界コンビ、そして「警察」の三者を中心に、複雑ながら推進力ゴリ強の短いカットバックを高速で積み重ねる。 最初から最後まで動きの激しいストーリーだが、起承転結の転に至って更に上乗せされる激動感はダブルスチール二連続成功の様に素晴らしい。
傍流の伸びしろがそんな所にまで潜んでおったか! と驚かされる流れもある。 大したアレではないなと見切ってたサブストーリーがある時点からむくむくと結末インフルエンサー候補の前線に躍り出たりもする。 どいつもこいつも、予想外の深みへと驀進しやがって・・!

"返してあげる、という言い回しが、××には気に入った。"   「返してあげる」

各方面で試される誤った推測がもたらす焦れったいスリルに、ストーリーの波に乗って新たな犯罪派生のサスペンス。 野球には、◯◯◯◯◯◯◯ちゅうもんがあるよってにな・・ 運命変わったな・・ 知らぬは××ばかりなりの三すくみだか何すくみだか、んん~~もう分からへんわ。 あぁーーまだもうちょっと、あと数時間ほど読んでいたい。。

「・・・・・・ はい。 前の三人は、僕がちゃんと殺(や)ったんですけど、昨日のは ・・・・・・ あれは間違いだったんです」

世を震わす連続殺人も、三人できっちりやめておいたらどうなっていただろう。 どうせ殺人者の未来は腐っていただろうか。 だけど野球は数字の「3」と契りを結んだゲームだからな。 長嶋さんも見事6月3日に亡くなった。 この小説のジャイアンツは王監督(タイガースは村山監督)だけどね。 ところで本作で描かれる野球試合の臨場感は素晴らしい。 但しどういうわけかオープンエアー球場の風の匂いがするのだが、気のせいかも知れん。

人はそれぞれ事情がある。時にそれは他の者に想像が付かないほどの奥深い残酷さを湛えている。 殺人者の生い立ちを深く掘り下げて、サスペンス小説の形を借りた純文作品に仕立てるやり方もあったかも知れん。 だけど作者はエンタメとしてのミステリが持ち味の人(たち)ですからね、これがいいんです。
とにかく、巨大な犯罪幻想エネルギーが爆音で駆け巡る素晴らしい作品です。 砂煙が上がります。 チャラっぽいタイトルに騙されたらアカんのです。
なおカッパノベルスの表紙絵はネタバレでもミスディレクションでもなく、単なる間違いですね。

No.13 4点 ボナンザ
(2015/09/03 22:39登録)
一気に読ませてしまう力量は流石だが、ミステリとしてはイマイチかも。

No.12 4点 E-BANKER
(2012/12/30 22:01登録)
1988年発表のノンシリーズ、クライムノベル。
本作の舞台となる「東京ドーム」はこの年にオープン・・・という時代背景。

~密かに日本国内に持ち込まれた南米産の猛毒クラーレ。巨人対阪神戦に沸く東京ドームで、この猛毒を塗った矢による殺人事件が発生した。大観衆5万6千人の目の前にもかかわらず、犯行現場の目撃者は皆無。さらに、翌日の同一カードでも凶行は繰り返され、スタジアムはパニックに陥った。作者後年の傑作サスペンス!~

「東京ドーム」という舞台設定だけが目を引く作品。
ということではないか。
主人公(=犯人)の異常性に引き込まれるが、どうしてこういう人間になったのかという背景、つまりは人物造形がはっきりしないので、この子供騙しのような「動機」に全く納得性がいかないのだ。

ストーリー的には、本筋の殺人事件に便乗しようとする二組の男女が登場し、終盤に向かって複雑化していくわけなのだが、これもあまり誉められたものではないだろう。
特に、若手男女二人組はお茶を濁しただけだし、サスペンスとはいいながらも盛り上がりにかなり欠ける。
これではとてもではないが、十分に練られたプロットとは言えない。

あまり誉めるところがないので、トータルでも辛い評価しかできないが、これも作者の作品に高いハードルを課しているせい・・・と言っておこう。
(この時代の巨人・阪神戦。王監督と村山監督。四番・原、中畑・篠塚・・・etc いやぁーなつかしいねぇ・・・)

No.11 3点 いけお
(2008/09/21 10:58登録)
どんな作品にしたいのか意図がつかみにくい。

No.10 5点 vivi
(2008/08/25 18:58登録)
野球好きからすると、非常に複雑な心境の物語でした。
でも、正体不明の無差別殺人者が出るという状況で、
果たしてこんなにも観客が入るものだろうか・・・??
私だったら、行きません(苦笑)

主人公のキャラクターには何ら共感できませんし、
その殺人を利用しようとする輩もどうでもいいのですけど、
すべての事情が、最後にどの点に終結するのかに興味を引かれて、
一気に読みきってしまいましたが・・・
まあ、あんまり読み返そうとは思わない作品です。

No.9 3点 COBRA
(2008/06/14 16:08登録)
岡島作品の下の方の部類に属するでしょう。
タイトルは特に酷い。

No.8 2点 こう
(2008/04/23 01:09登録)
ミステリ的な興味が薄くサスペンスといっても感情移入できる登場人物もおらず岡嶋二人の作品の中では出来は悪いかなと思います。

No.7 7点 深夜
(2008/01/14 22:48登録)
チープなタイトルですが、中身はしっかりしていて、一気に読ませます。このスピード感はさすが。

個人的には、犯人側や脅迫側や警察側の視点がいろいろ入り混じるより、犯人側の視点で一気に描き切ってくれたほうが、好みかもしれない。

No.6 7点 VOLKS
(2007/10/05 00:30登録)
事件の展開、犯人の心理などしっかり押さえながらストーリーが進んでいくので安心して読める。逆に、スリルはない。スリルはないが、作品に引き込まれラストまで一気に読ませるのはさすが。

No.5 5点 ぱり
(2003/12/04 20:23登録)
岡嶋二人と言えば軽妙洒脱な文体であるが、サスペンスとその文体は非常にマッチしていて内容はおどろおどろしいが、その軽快な文章で全体的な雰囲気は暗くは感じられない。

僥倖(?)から強大な力を手に入た久松の歪んだ愛情から起こる不条理な連続殺人から始まり、猛毒クラーレを日本に持ち帰ったこの騒動の或る意味で大元の勝本が久松を利用しようと物語に加わってくる。
舞台はビックエッグだが、物語の様相をスクランブルエッグのように錯綜していき読んでていて最後まで飽きさない。

No.4 8点 由良小三郎
(2002/06/26 20:02登録)
岡嶋二人の片割れの井上夢人さんの書かれた岡嶋二人盛衰記によれば、この小説は印刷屋をまたせておいて、12日間で書き上げて、出稿後10日で本になった記録的な作品だそうです。評価高いのも作者にとって複雑な気持ちになるかもしれません。勢いみたいなのと、伏線の少なさはそんなところからかとも思います。連続殺人物は苦手ですが、十分に楽しめました。

No.3 7点 ドクター7
(2002/06/20 23:30登録)
皆さんの評価が高かったので読んでみました。けっこう楽しめました。物語にはリアル感があったし、犯人の描写もうまいと思いました。私も、犯人が時々鋭かったり鈍かったりするのは気になりましたが、許容範囲内でした。残念だったのは、犯人が明らかになっているうえに、登場人物の行動もすべて分かっているので、先の展開がたやすく読めてしまうこと(なのでドキドキ感はゼロ)。エンディングに+1点です。

No.2 9点 ゲンタ
(2002/04/23 16:50登録)
 タイトルからは想像できないような重めの雰囲気。
 岡嶋さんには珍しく犯人当てとか意外な結末とかはなかったけど、よかったです。

No.1 10点 テツロー
(2002/03/29 22:54登録)
 主役の一人、佐藤三郎氏(仮名)の行動が、時々鋭かったり時々鈍かったり、そこが少々気になりましたが、それは無視してもよい範囲と思います。
 主役級は3グループあって、それらのグループに属するキャラクター達が、ドーム無差別殺人を軸に、絡まったり離れたりしながら、結末に向かってなだれ込んでいく。また、多数の脇役達も枝葉的に事件に絡んでたり、絡んでなかったり。複数の登場人物を並行して描くことで、何と言うか、人物像にリアルさというものが加味されたかなと思うのです。社会派よりもリアル。だからといって、この作品は社会派ではないです。本格でもない。ジャンル分けしにくい作品ですが、とりあえず再読に耐えうる内容には違いないです。

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