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ミステリの祭典

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記憶の果て
THE END OF MEMORY/安藤直樹シリーズ

作家 浦賀和宏
出版日1998年02月
平均点5.83点
書評数18人

No.18 8点 じきる
(2021/04/04 19:27登録)
人によって好き嫌いは分かれるでしょうが、これは癖になる作風ですね。
青臭さとか、鬱々とした心情描写とか、そういった部分もひっくるめて非常に惹かれるものがありました。

No.17 6点 tider-tiger
(2020/06/29 23:48登録)
~浦賀が死んだ。知らなかった。

「浦賀さん死んじゃった」
浦賀の死を告げたメルカトルの言葉は、今でも頭の中で鳴り響いている。まるで不快な、出来損ないの音楽のように。その音楽は頭の中で、メロディとハーモニーが勝手に増殖して、日に日に不快さを増していった。
忘れようとすればするほど、その音楽のボリュームは上がってゆく。~
※上記は本作の書き出しの一部名詞を入れ替え、一文だけ差し換えています。敬称略とさせて頂きました。

語り手の安藤直樹は冒頭で父親の自殺を母親から知らされます。最初はジメジメとした青春小説といった様相ですが、そこにSF要素が加わってきます。
なぜ父親が自殺したのかがわからないため、安藤は父親のパソコンの電源を入れてみます。モニターに『あなたは誰?』の文字が。安藤が自分の名前を入力すると『わたしは安藤裕子』と表示されました。さらにこの安藤裕子なる女性?は『父さんはどうなったの?』と問いかけてきます。
この謎が物語の骨格なのですが、ここに反ミステリの要素も加わります。
安藤は名探偵が嫌いだからミステリは嫌いだと嘯きます。彼には本格ミステリ以外の小説はつまらないという友人がいます。
謎がいくつか生まれますが、きちんと決着がついているとはいえません。わざと決着をつけなかった作品です。
ミステリの読者が興味深く読めなければ反ミステリとしては失敗だと思います。ミステリに興味のない人間にとって反ミステリ小説などなんの意味もありません。
つまらなくはないのですが、さりとてさほど意味があるとも思えない部分が多すぎる作品です。
作中安藤の自意識が溢れんばかりに押し寄せてきますが、大人が共感できるような語り手ではないし、若い人でも彼の剥き出しの自我、誤魔化しにどこまで付き合い切れるかは疑問です。
読み易いかどうかでいえば、ダラダラ長いも読み易いと思います。文章がうまいか下手か問われると返答に迷います。小説を書きはじめたばかりの高校生が好んで使いそうな言い回しが頻出します。そうかと思うと目が醒めるような一文がフッと顔をのぞかせるときもあるのです。
語り手が自身を制御できていないさまがよく描かれています。青臭く、回りくどく、緊張感というよりは焦燥感のようなものがありありと窺えます。
書き手(作者自身)が自身を制御できていないのか、計算ずくで制御できていない人物を描いているのかがよくわからないのです。
※私が所有するのはノベルス版。 文庫版はかなり改稿されているそうですが、そちらは未読。

まあまあ面白いとは思いますが、はっきりいって下手な小説だと思っています。なのにとても印象深い。文章がうまいとか、ストーリー展開が巧みだとか、発想がすごいとかではありませんが、なにか得体のしれない才能があると感じました。
メフィスト賞を象徴している作家は我れ思うに二人います。殊能将之と浦賀和宏です。二人とも若くして死んでしまいました。
メルカトルさんが掲示板に書き込みされた次の日に訃報を読んで、浦賀の本名を知り、涙が出そうになりました。

No.16 5点 レッドキング
(2019/02/08 19:56登録)
佐藤友哉や舞城王太郎のこと思い出していたら この作家のこともフト思い出した。それなりに面白かったかな。

No.15 6点 メルカトル
(2019/01/20 22:10登録)
父が自殺した。突然の死を受け入れられない安藤直樹は、父の部屋にある真っ黒で不気味なパソコンを立ち上げる。ディスプレイに現れた「裕子」と名乗る女性と次第に心を通わせるようになる安藤。裕子の意識はプログラムなのか実体なのか。彼女の記憶が紐解かれ、謎が謎を呼ぶ。ミステリの枠組みを超越した傑作。
『BOOK』データベースより。

「ああ、彼女の歌は日本人の琴線に触れるね」。作中人物の台詞です。確かに彼女のファーストアルバムは素晴らしい出来栄えでした。しかも数多くのヒットナンバーを世に送り出しています。まあそういう訳で、ジャンルミックスな本作ですが、これは『安藤直樹シリーズ』のほんの第一歩に過ぎないことを思い知らされました。そして、『萩原重化学工業連続殺人事件』はまさしく本シリーズのシーズン2に間違いないと認識を新たにしました。今までの私は大きな間違いを冒していたようです。『萩原・・・』こそ浦賀の一つの到達点に違いないと今私は確信しています。

本作、全体的に思うのは、輪郭がぼやけているような気がするということです。確かに本筋はわきまえていますが、あまりにも様々な要素が入り混じっていて、どこに焦点を置いてよいのか分からず仕舞いな感じで。
安藤の内面を当時まだ十代の若さで描き切ったことには、十分に作者の才気が感じ取れますし、ここが原点なのはその後のシリーズを読み進めば理解できてくると思います。ただ、いくつもの謎を残したまま、つまり未完のまま完結してしまっているのは、デビュー作としてどうなのかなという気はします。最初からシリーズ化を狙っているのは明白ではあっても、初読の読者にとってそれはやはり不親切なのではないかと思います。
安藤直樹に対して感情移入できないとする向きもありますが、彼は金田と同じくらい身勝手な性格なので、仕方ないんじゃないでしょうかねえ。

No.14 7点 ロマン
(2015/10/29 19:55登録)
実際に存在した「裕子」は十八年前すでに自殺していると告げる母。父は自殺した娘の生まれ変わりとして、コンピュータにプログラムしたのではないか?脳科学を扱う父の研究所や、彼女の本当の母親の元を訪ね回る。錯綜する人間関係が暴かれる衝撃的結末は、凡百のミステリの常識を破壊する。

No.13 7点 kowai
(2014/05/05 17:08登録)
6作目をシリーズと知らずに読んだ後です。なるほどすべてはここから始まったのですね。でも、ちょっと長いですねー。

No.12 9点 深夜
(2008/02/29 14:21登録)
この作品を19で書いたのは凄すぎるでしょ。10代でしか書けないことを見事に文章化したという感じだ。30代40代が書こうと思っても書ける小説ではないと思う。思春期に結局答えの出ない哲学的なことを考えていたことを思い出した。アンチ名探偵小説としても面白い。久々に夢中になって読めた。

No.11 5点 ぷねうま
(2007/09/20 23:01登録)
評価の高い『時の鳥籠』を万全の状態で楽しむために読んだ浦賀和宏の一作目。
確かに微妙だ。青春小説にしては暗すぎるが、このジメジメした感じは好きではある。が、やはり主人公に共感できないなあ。
とりあえず二作目に期待。

No.10 3点 バファックス
(2004/07/03 00:04登録)
たぶん、わざとなんでしょうけど、キャラがなんというか、恥ずかしくて。年寄りには。

No.9 9点 なりね
(2004/02/21 21:39登録)
かなり面白いのですが、まず最初に一言。ミステリではありません。
しかし高校生の僕にとっては心理描写も良く分かり、登場人物も印象に残る。父の自殺によって運命が狂っていく安藤、上辺だけを魅せる金田、コンピューターの中の女性、などなど。
今時の鳥籠を読んでいますが、こちらもよさそうです。

No.8 8点 エイドリアン・アドニス
(2004/02/14 22:51登録)
面白い「小説」と思ったが、同時にいかにも19才が書いたような青臭さが気になり、この点となったけど、次作「時の鳥籠」の衝撃度が強烈で、セットで評価しなければならない代物と思う。
「閉じられた世界」の美しさが良い。

No.7 4点 テツロー
(2003/11/27 22:33登録)
 以前何処でだったか確かこの作品の評だったと思うが、「どうしてこんな気色悪い書き方をするのか」という文が記憶に残ってて、単純に「グロい内容なのかな」と思ってたんですね(「殺戮にいたる病」のような)。実際読んでみたらそういうのではなく、先の評は多分、主人公の心情描写のことを言ってるのだろうと分かりました。僕自身も少々そういう感想を持ったので。恐らく作者自身の心情の吐露でもあるのだろうけど、こういう考え方をする人間もいるのだろうとは思っても、本心としては、「その拗ね方、絶対間違っとるぞ」とでも言いたくなってしまって、欲求不満になりそうです。
 ミステリとしての側面でも、他作品への続きとなる謎はまあ置いといても、この作品中で解決されるべき謎の解明が、論理的に確定されず、「俺がそう思うことにしたからいいんだ」でまとめるのは、どうかと思います。探偵役を気取る金田というキャラクターの言動に共感を覚えたのですが、作中では「他人の心の中に土足で入り込んでくる無礼な奴」という、よくあるアンチ探偵扱いしかされず、この点でも不満でした。
 場面場面における考察などは読みやすく面白いとも思ったのですが、共感できない点が多く、全体的にはイマイチ感の方が大きいですね。

No.6 5点 HKS
(2002/10/31 01:33登録)
ミステリとしてどうかはわかりませんが、小説としてなら面白いんじゃないでしょうか。感情移入しにくい部分は多いけど、読後感は悪くありません。

No.5 7点 HKS
(2002/10/31 01:27登録)
ミステリとしてどうかはわかりませんが、小説としてなら面白いんじゃないでしょうか。感情移入しにくい部分は多いですが、読後感は悪くありません。

No.4 3点 okuyama
(2002/10/16 18:19登録)
 ミステリ色が薄ーい作品ですが、そのことは別に気になりませんでした。
 19歳の著者が18歳の主人公の悩みや葛藤を書いているので、生々しいと言えば生々しいのですが、「そのまんま」すぎて小説としての出来がイマイチだと思います。冗長だし。文章は読みやすいのですが、ガス抜き出来るような笑える場面を入れるか、もっと分量を削れば読了しやすいと思います。

No.3 7点
(2002/07/26 10:27登録)
暗い青春小説て感じ。荒削りだけどこの年齢でこれだけ書けたら立派。私は好きな作品。

No.2 5点 流破
(2002/07/04 17:10登録)
噂の賛否両論ミステリ(ミステリですらない?)
う〜んコメントしづらいな。
『時の鳥籠』とセットにして読まないとだめかも。(主人公は別だけど)
人それぞれなんで私は楽しめました。ちょっと長すぎて読むのに疲れた。話の展開が牛歩戦術。

No.1 1点 のり
(2002/05/23 23:04登録)
「モテない野島伸司、もしくは秋葉原系三島信奉者」的な世界から展開していくと思いきや、結局そのままダラダラと終わってしまった感じ。何度も読むのを止めようと思った。まず、推理小説としてどうかと思うし、違うジャンルの作品として見ても、共感や感動、意外性などは感じられない。歪んだキャラ設定も作者の狙いによるものと思っていたが、結構内面吐露に近いものがあるのかもしれない。そういうのは他でやってくれ。

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