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シーマスターさん
平均点: 5.94点 書評数: 278件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.38 6点 ブードゥー・チャイルド- 歌野晶午 2007/09/21 22:30
全体的にはよくできている話だと思う。

が、紋章はちょっといただけない・・・・・ミエ過ぎ。
「あの日」も普通わかるでしょう。

「葉桜」ほどではないにせよ展開のしかたによっては(黒白反転するような)あっと驚くストーリーになり得ただろうが、あえて少しずつ真相が見えてくる流れにしたのは、作者がこの作品ではドンデンよりも「不可思議な話を合理的に解明する」ことにウェイトを置きたかったからなのだろう。

ただ、それにしても全編に渡り(もちろんジュリアンの話を最たるものとして)まわりくどい言い回しが多すぎる感は否めない。
(どうでもいいけどジュリアンの住居って、うちの・・)

No.37 5点 どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 2007/09/11 21:35
こういう細かい理屈で攻めてくる話をリドルにされるのはちょっとキビシイよね。
自分のように「謎解き」よりもストーリーを楽しむ(読み返すことなど殆どない)タイプとしては尚更。
じっくり読むタイプの人は楽しめると思う。

加賀刑事に関してはこの話が一番好感持てたかも。

No.36 6点 青の炎- 貴志祐介 2007/09/07 22:05
ありきたりな感想で少々気がひけるが・・・・「普通に面白かった」

もっとドロドロメラメラした内容を予想していたが、それよりは典型的な倒叙推理小説としての色が濃く、殺害計画が(そんなところまで完全に理解できるのはそれぞれの専門家かマニアだけだろうという部分まで)細部にわたり詳細に記述され、遂行情景、そしてそれが破綻していく過程がリアルに且つ合理的に描かれている。

(Z会など懐かしい言葉も多かったが)個人的には主人公の心情云々よりも作者のまじめさと勉強家ぶりを改めて感じさせられた作品だった。
だけど貴志さん、130/94は「完全に正常な血圧値」じゃないよ。

叙情的な部分で言えば(難しいかとは思うが)ラストをもう少し美しくできなかっただろうか(章題から期待してしまった)。 舞台も揃っているのに。

No.35 6点 赤い指- 東野圭吾 2007/08/31 23:57
高齢者の介護問題や子供のヴァーチャル障害など現代社会の歪みを織り込んだ話になっているが、ミステリとしてはさほど目新しいものでもない。
それに「実は・・・・・だった」といわれてもねえ・・・・・・んなことホントにできんのかね・・

結局この話は、エゴ嫁とバカ息子を授かった哀れな男の悲劇でもあるわけだが、彼の心の防波堤がついには崩れなだれるシーンには感極まるのを禁じえない。

ただ結果はともかく、この家族とは何の関係もない一介の警察官が個人的な心情で、罪量が変わり得る変則的な手法をとるのはいかがなものだろうか。
まあ自分の親子関係のやるせなさに対するささやかな代償行為ということなのだろうが。

No.34 7点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2007/08/25 01:49
巧妙かつ大胆にミスリードする本作のトリックは、多くの読者を唸らせるものだろう。(似たような感じの話があったような気もするが・・・・・思い出せない)

その手口は、およそ常人の思考を逸脱した凶行をベースにしたものだが、それが究極の「献身」であるところが本作品のスゴいところ。
そこには常識も倫理も全く無関係の、ただ愛があるだけ
・・・・と、きれいに纏めたいところだが、素直にそう感じさせるだけの心情描写はされていないと思う。

確かに最後の手紙には胸を打たれ、ラストシーンには心を揺すられるが、(この人の「感動作」といわれるものに共通していると思うのだが)もう一押し足りない気がする。
(もちろん直木賞にケチをつけるつもりは毛頭ないよ)

No.33 7点 幻夜- 東野圭吾 2007/08/11 23:54
『白夜行』と同様に並のミステリ3冊分ぐらいの内容が詰まった作品だが、白夜の後だと本作中の数々のエピソードのパターンは大方読めてしまうし、結末も概ね予想できてしまう。
冷徹無比な人生ゲームも2度目になるとインパクトもさほど強くはない。

そういう嫌いがあるにしても、読んでいて飽きさせない情景を次々に繰り広げてくれるところは流石ケイゴリン(と銀座のクラブで呼ばれている、と解説に)。
阪神大震災を物語の原点に据え、その後比較的最近の社会情勢を背景にした展開も、読む者を離さない引力になっている。

また白夜行では敢えて排除していた叙情描写が多いのも特徴。(これは「男の主人公」のキャラクターの差異によりコントラスト付けされている)

No.32 6点 パラレルワールド・ラブストーリー- 東野圭吾 2007/08/08 21:25
『変身』『分身』に続く人体実験シリーズ第3弾。

主人公の2つの視点からなるストーリーが交互に展開するという形をとっているが、両方とも舞台も登場人物もほぼ同じで、客観的な差異は1年足らずの時間のズレだけ、というものだから話が進み両者の関係が密接になってくると、どうにもコンガラガりやすく辛いものもあった。

「恋愛と友情」というテーマを記憶操作という(現在あり得ない)超ハイテクに乗せてミステリチックに仕立ててあり、この作者らしい斬新な意欲作といえるだろう。

個人的には、ヒロインの中途半端な態度が悲劇の元凶になったように感じられ後味もあまり芳しいものではなかった。

No.31 3点 卒業−雪月花殺人ゲーム- 東野圭吾 2007/08/05 20:29
(全体的な印象として)
大学生の生態にしても、なかよしグループにしても、現実味に乏しく登場人物達の言動がいかにも作者が頭の中だけで想像して創造したもの、という不自然感が終始つき纏い最後までストーリーに入れ込めなかった。
お友達が殺された後の心情描写も、どう書いていいのかわからないのが痛ましい。

(ミステリとしては)
茶会のシーンで、図解がゾロゾロ出てきた時点で投了しようかとも思ったが、このトリックは勝手にやらせることにして何とか読了。
結局、この仕掛けは「どうだ、頭脳的で緻密なトリックだろう」という作者の自己満足にしか感じられなかったが、謎解きに燃える人には面白いのかも。 
密室はまあアリかな。

No.30 8点 過ぎ行く風はみどり色- 倉知淳 2007/08/01 23:58
なぜか懐かしさに近い感覚にとらわれながら読んだ普通のミステリ。

この人の文体は基本的に、陰惨な話も重苦しさや暗鬱感を抱かせない乾いたタッチ(ドライではない)で、ふんだんに遊び心を纏い(N氏のようにしつこくない)、時に甘酸っぱさやペーソスを漂わせながら根底にはどこか温かさを感じさせる・・・というものが多く個人的には好感が持てるタイプ。
もし、本書のプロットで綾辻行人が書いたら外連味が強い血腥い殺人劇になっただろうし、京極夏彦が著したなら奇々怪々な薀蓄満載で優に2倍くらいの厚さにはなったことだろう。

(以下、ややネタバレ・・・・かな)


最初の殺人の不可思議性は偶然の産物であり、最後の殺人は無駄な犠牲者が出るリスクが高すぎる。
ただ前者の偶然を生み出したネタと、それを最大限に効かすための叙述形式は実に巧い。(「2人」の自己紹介には笑ってしまうが)
また、降霊術のトリック・・・怪奇現象や数珠の出現は「腰を骨折したはずなのに故郷でサッカーに興じている」ぐらい人を小バカにしたものともいえ、ガチガチの本格ファンなら憤怒か侮蔑ものだろう。(自分はこのカラクリにも大いに笑ってしまった。数珠は漫画チックすぎるが)

採点はチト甘い気もするが、期待以上の楽しみを味わわせてくれたこの作品の平均点を下げるのが心苦しいので・・

No.29 6点 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 2007/07/27 23:06
倒叙ではないけど、殆ど始めから犯人が分かっていると言ってもいいストーリーを連ねた短編集。
いずれの作品も加賀刑事が犯人を「いかに引っ掛けるか」がフォーカスになっている。(最終作では被害者自身に委ねられるが)

印象としては「笑わない古畑任三郎」といったところか。

No.28 8点 白夜行- 東野圭吾 2007/07/25 00:59
2人のモンスターの生涯(&半生)と彼らの姿が見え隠れする数々の事件とエピソードを、20年に渡る歳月を通して緻密な構成で描ききった大作。

前半は各章が1つずつのストーリーであたかも連作短編集であるが如くの展開をとり、尚かつ整合性を崩さない伏線を鏤めつつ、後半さらに多くの登場人物を巻き込みながら押し進んでいく物語が一大叙事詩ともいえる作品に仕上げられている。
・・・・・・・・・・そしてとにかく読みやすい。

「彼女」のエゴイズムに徹した生き様を、影から手段を選ばずアシストしてきた「彼」・・・・2人の関係の実態は想像すらつかないが、これは刑事が言うとおり「エビとハゼ」に喩えるしかないのかもしれない。
しかし、ラストシーンで白い影と化した「彼女」がこれから生きていけるのは、もはや白夜などという生易しい世界ではなく極夜でしかないだろう。

「長さに比例した面白さ」が味わえる数少ない一冊だと思う。

No.27 6点 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 2007/07/18 21:35
パズラーとしてはハイレベルな短編集ではあるが、『メルカトルと美袋のための殺人』が実にスパイシーでアクが強くて邪悪な雰囲気に満ち溢れていたのに比べると(いくら毎回幽霊を出しても)普通っぽくて薄味の感は如何ともし難い。
無論これは「キャラクターの違い」でありミステリとしての優劣の尺度にはならないが、もう少し麻耶らしいエグさがあってもよかった気がする。
(最終作ではチョットやっちゃってくれたけどね)

読者をほったらかしにする文体が頻出するのは相変わらず。

No.26 5点 頼子のために- 法月綸太郎 2007/07/13 22:49
確かに、頼子がかわいそすぎるよね。

(ほぼネタバレ)



『誰彼』の序章でも、親のおかしな逆恨みがあったと思うけど、この人自身妙な過去があるのかな。

また綸太郎が引っ張り出されなければならない理由もムリヤリな感が大だし、政治家の抗争図なども「この状況」を作るためという作者の意図が剥き出しになってしまっている。
更に、登場人物のキャラクターが一様に中途半端な印象で、インパクトが強い事件のはずなのに(第二部以後は)何か一枚ビニールを通してストーリーを眺めさせられている気分になった・・・・のは自分だけかな。

手記を使ったトリックとしては特筆すべきほどのものではないが、ミステリ作品としては悪くない。しかし真犯人指摘の場面などは、もう少し盛り上がりがあってもよかったのではないだろうか。(「あれ、今そんなトコロだったの?」ってな感じ)
その後の真相解明とラストの底知れぬ暗さがヤマなのではあるが。

No.25 6点 分身- 東野圭吾 2007/07/07 23:36
変身の分身みたいな話。(両方読んだ人なら分かる)

2人の物語が交互に進むという形であるにしても、トントンと読ませる『変身』に比べるとモッツァレラという印象が終始拭えなかった。(何のこっちゃ)

本作も先進医療への危惧の念が込められたミステリだが、本質的にはこの小説もまた(変身はこの点、異なるが)「親子」の真の意味を訴えかけてくるものではないだろうか。

皆さん感じられているように、この作品は間違いなくラストで不相応なくらいに点を稼いでいる。個人的にも震えがくるほどの情感を覚えたことを否定できない。(富良野のラベンダー畑!)

No.24 8点 悪意- 東野圭吾 2007/07/04 01:39
読みやすくて濃厚なミステリと言えるだろう。
(奥が深い小説を書くのに、ややこしい薀蓄をダラダラ連ねる必要なんかないんだよ)

手記形式を利用する推理小説は珍しくないが、犯人当てと犯行トリックの解明が始めの1/3で終わり、次の1/3で物的手掛かりから犯人に(不可解であった)動機を告白させるまでに至り、そして最後の1/3で(ドンデンともいえる)真実の究明・・・・という構成は今でも斬新ではないだろうか。

進行癌を患う殺人犯の自供に納得できない刑事が、執念で事件の根底を抉り出し、人の「悪意」を暴き晒す・・・・という残酷な話でもある。

No.23 6点 重力ピエロ- 伊坂幸太郎 2007/06/29 23:06
始めのうちは、「どうだ、軽妙だろう、ウィッティだろう」と言わんばかりの会話と文体、プチ教養ひけらかしまくりの雑話挿みまくり・・・が鼻についてしょうがなかったが慣れてくると、さほど気にならなくなり結構笑えるところもあった。

ミステリとしては何ということもないが、「親子=遺伝子の繋がり、ではない」という作者のメッセージの象徴といえる父親のスタンス、特に最後の方での「あのコメント」には胸を打たれるものがある。

事件の始末がこれでいいのか、については何とも評し難いが、今後も思い悩むことがあろう主人公にはとりあえずエールを送りたい。 「泉水、負けないで」

No.22 6点 レイクサイド- 東野圭吾 2007/06/28 00:57
途中までは、いわゆる社会派ミステリなのかとも思えたが、それにしては現実味に乏しすぎる感が否めなかった。
そもそも、こんな「お受験サークル」自体が「?」だし、その行状たるや(殺人以前だとしても)明るみに出たとしたら「気違い集団の異常な実態」とされることは疑う余地もない。

しかし、お受験風刺などの様相を絡めながらも最終的には「家族とは何か」を問いかけてくる展開には考えさせられるところがある。

ミステリの部分も、よくできていて読み物としては楽しめる。

No.21 6点 トキオ- 東野圭吾 2007/06/24 23:59
こういうのって、実は結構多かったりしないかなあ。(小説に限らず映画やマンガなどでも・・・・・・・・・全然違うけれど「ドラえもん」とも共通するものがあると思う)

『序章』では、予定されていた息子の死を目前にした夫婦の諦念と、彼らがその「予定」を選択した経緯が語られる。 前者は悲痛極まりなく、後者は悲壮感に満ちている。

〈本編〉は、ややベタな「探索冒険もの」という感じ。
「幼稚な青年が不思議な少年と出会い、さまざまな遭遇や体験を通して、人の絆を知り成長していく様を描いた愛と感動の物語」といったところか。 
「行き詰まれば手掛かり現る」「ピンチになれば助っ人来たる」などの冒険物ルールも遵守されているので安心して読むことができる。

『終章』は(約500ページになる本編を挿話としての)序章の続きだが、もはや死別の悲しみだけではなく、新たな旅立ちの感覚が確かにそこにはある。「どんなに短い人生でも生きている実感さえあれば未来はある、明日だけが未来じゃない」というトキオの言葉が素直に思い返される。

所々に見られるリアルなレトロ描写も面白い。

No.20 6点 変身- 東野圭吾 2007/06/19 00:14
「主人公には申し訳ないが楽しんで読めた」というのが率直な感想。

小気味いいテンポで中だるみも少なく、人格変化の顕在、真相究明、そして破滅へ向かって淡々と進んで行く展開は(月並みなフレーズだが)ページを捲る手を休ませてくれなかった。
特に終盤での成瀬の狂人ぶりは圧巻とも言え、そんな彼への恵の愛と献身には感動を禁じ得ない。

いわゆるミステリではないことは分かっていたので、読みながら「作者は(現在ありえない医療を扱った話で)何を言いたいのだろう」と感じていたが、最後の脳外科医の手記により「今後益々盛んになっていくであろう臓器移植のための脳死判定が、ともすれば安易に形式化されていきかねない」ことへの作者の警鐘が浮き彫りにされている。

ところで本作は1993年刊行とのことだが、「京極の亡霊、憑き物」って・・・・偶然だよね。

No.19 6点 ファンレター- 折原一 2007/06/17 23:57
手紙形式の連作短編集。北村薫パロで遊びまくっている。

・「覆面作家」 意外性、インパクトにおいてこの本の中で一番。(第1話だったというのも大きいが)
・「ファンレター」 オチはあまりにもありきたり(ありきたり過ぎて見抜けなかった)が、そこに行くまでに結構読ませてくれる。
・「二重誘拐」 映画『ミザリー』の設定を○○錯誤で捻ってくる。怖いね。
・「授賞式の夜」 この辺(8話目)までくると、いい加減飽きてくるが「ここまで読んできて」のお楽しみがある。
・「時の記憶」「エピローグ」 果たして西村香の正体は・・・

折原ワールドへの入門書としてはいいかも。
(いきなりロンドなんぞを読むと「何じゃこりゃ」となりかねないもんね)

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ひとこと
再開おめでとうございます。
たくさんの方がたくさんの書評を寄せられることを期待しています。
好きな作家
クリスティ  チェスタトン  恩田陸
採点傾向
平均点: 5.94点   採点数: 278件
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