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Tetchyさん
平均点: 6.74点 書評数: 1617件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.337 7点 青銅ランプの呪- カーター・ディクスン 2008/09/06 21:07
カーがエラリー・クイーンとミステリについて語り明かした末に行き着いた最高の謎、人間消失に挑んだのがこの作品。
失踪事件は2つ発生するが、第2の事件の犯人の意外性・動機ともに素晴らしい。
しかしメインの失踪事件の真相はいただけない。以下、大いに真相に触れる。

エジプトのミイラの呪いが無意味であることを証明するために敢えて自ら失踪して、数日後に現れてみせるという逆説めいた真相は面白いが、家政婦の下働きの娘に化けて、やり過ごしていたというのは多分私が日本人であるからそう思うのだろうが、やはり素直に首肯しづらいものがある。
確かに貴族と下民という階級格差の激しいイギリスでは確かにゲストは召使い達などに目を配りもしないだろう。
それは解るのだが、彼女をよく知る人物が常に屋敷にいて、それに気付かないというのは(しかもその男ファレルは彼女に心底惚れているのである)いささか現実味が無いように感じる。
例えば文中に、

「時々、目の端にヘレンの似た姿がよぎる。しかしそこに目を向けてみるといるのはこの屋敷の従業員ばかり。どうやら私も幻覚を見るまでになってしまったらしい」

などという一文でも入れていれば、なるほど流石はカー!と納得は出来るのだが。

いやあ、ちょっと勿体無い力作である。

No.336 7点 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン 2008/09/05 20:04
哀しいかな、このメイントリックは某藤原宰太郎の推理トリッククイズに問題の1つとして丸々ネタバレされていたわ。
あのシリーズってまだ本屋に売っているのか?
絶版である事を祈る!

題名は微妙に間違えている。厳密に云えば殺人が起きるのは館長の家であり、爬虫類館ではない。
原題の“He Wouldn’t Kill Patience”を訳す方が非常にマッチしているのだが、もうこの題名で有名になってしまったなぁ。

No.335 6点 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン 2008/09/04 20:17
泥棒の正体が館の主である事からすぐに盗難による保険詐欺という趣向が想起され、それが確かにミスリードとなっているのは、さすがはカー!といったところか。
しかし、前述のように真犯人の正体に関してはいささか際どすぎる。特に思うのは、死体が血にまみれるほどの出血をして、あれほど動き回れるだろうかという点だ。
確かに作中ではスポーツ万能の偉丈夫と描かれているが、胸を刺殺されて医者にもかからずにそのまま滞在し、あまつさえビリヤードなどにも興じているというのが納得できない。
また事件に一番最初に気付くのが真犯人であるというのはまだしも許せるが、深手を負って2階へ窓からロープでよじ登るというのも、ちょっと無理すぎないか?

しかしカーは読者サービス精神旺盛だね。HM卿がものすごいパフォーマンスを披露してくれてる。

No.334 7点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2008/09/03 13:42
作品の題名にこういう挑戦的な題名をつけていることからも作者の自信が窺えるが、そのとおりこの真相は解らなかった。
かなり奇抜なアイデアだが基本的にこういうの大好きなので、満足はした(麻耶雄嵩氏の諸作のようだ)。

本作では同一時間に離れた場所に出現し、殺人を犯すという趣向が盛り込まれてあるが、これが双子のトリックではないことは明言しておこう。
しかし双子ではないという真相を超えるものであるかは別問題で、それが私には逆に物足りなかった。

No.333 9点 ユダの窓- カーター・ディクスン 2008/09/02 22:54
HM卿が被告側弁護人として法廷に立ち、既に容疑者は逮捕されているという、シリーズの中でも異色な幕開け。
物語は終始法廷で展開するというのがまず面白い。
そして裁判が進むにつれて解けていく謎。
特に10章あたりからは謎が加速度的に解けていく。
確かにこれは傑作。
ただ唯一、「ユダの窓」の正体が私にはカタルシスをもたらさなかった。

No.332 5点 孔雀の羽根- カーター・ディクスン 2008/08/31 19:38
カーには珍しく「この章には、重要な記録が読者の前に提供される」なんて付いており、しかも最終章に至っては32もの手掛かりについてそれぞれが文中で表現されているページ数まで記載されている。
つまりこれはカー版読者への挑戦状だったわけだ。
でもこれは解けんぜよ(←どこの方言?)

本作も事件の発端に無理を感じ、まさにトリックのために作られた設定という不自然さがある(独身の若い男性が遺言状なんて書くだろうか?)。

あとサプライズで乱歩の某有名短編と同様の趣向があるのには笑った。やっぱあの2人は似た者同士だったのか。

No.331 3点 パンチとジュディ- カーター・ディクスン 2008/08/30 18:56
題名の「パンチとジュディ」はドタバタ喜劇の人形劇の名前に由来する。つまり物語のメインの設定である“L”の正体探しは実は実体のない事件だったということを現している。
つまり、今回のカーがこの作品でやりたかった仕掛けは物語の設定自体がトリックだったというものだが、それがために色々盛り込みすぎて、つくり過ぎたという感が否めない。

作中で扱われている遠距離で起きた2つのストリキニーネによる毒殺の謎が非常に魅力的なのに、これがなんと真相としては単に物語の添え物に過ぎないというのに驚いた。
作品の力の入れどころを間違えているようにしか思えないんだけど・・・。

No.330 9点 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン 2008/08/29 20:39
久々に本を読んで「あっ!」と声を上げてしまった。
各種推理クイズ本にもネタとして挙げられている本書のトリックだが、そんなことはすっかり忘れてしまっていて、18章の最後の一行を読んだときには霧が晴れる思いがした。

しかし、訳が古すぎる。名作なのに勿体無い。

点数はこの驚きに敬意を表して、ちょっとオマケした。

No.329 8点 遠きに目ありて- 天藤真 2008/08/28 20:29
身体障害者が主人公というミステリだが、当時友人の仁木悦子氏に触発して書かれたらしい。
そして80年代当時、社会が身障者に対して決して優しくない(雇用問題やノー・バリヤフリー)ことを声高に語るのではなく、あくまでソフトにミステリに織り込んでいる。
しかしそんなことを差っ引いても十分面白い連作短編集だ。
手元に本がないので、題名が解らないが、山に住んでいる乞食のような男が証言者として出てくる1編が妙に印象に残っている。
何故だか解らないのだけど・・・。

No.328 8点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2008/08/27 18:55
正直、犯人の名前を読んだ時は、最初拒絶反応を起こした。
ちょっとありえないだろう、と。
しかし、後の推理で明かされるロジックの素晴らしい事!
3つの殺人が描かれているが、謎解きのロジックは2番目の殺人が好きだ。
この作品への点数はそれが大半を占める。
あとタイトルの『Xの悲劇』もきちんと意味があって付けられているのが最後の最後で解る。
特段、すごいものではないが、記憶に残るエピソードである。

No.327 7点 プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン 2008/08/26 21:48
この作品はさすがに世評高いだけあって、楽しめた。
ただやはりあのトリックはかなりアクロバティックで無理を感じた。

でも明かされる人間関係の複雑さはなかなかに面白い。
事件の裏側にこれほど込み入った役割分担があったのには驚いた。
その辺の微妙なバランス感覚を愉しんだ。

No.326 2点 弓弦城殺人事件- カーター・ディクスン 2008/08/25 19:49
カーの、無駄に長いという悪いくせが出た作品。
屋敷の見取り図はせめて欲しい。
登場人物の配置が全く解らん。

No.325 5点 赤後家の殺人- カーター・ディクスン 2008/08/24 13:54
人を殺す部屋とか昔の毒針仕掛け箱の話などガジェットは非常に面白いのだが、いかんせん冗長すぎた。シンプルなのに、犯人が意外なために犯行方法が複雑すぎて、犯人を犯人にするがためにこじつけが過ぎるような印象を受けた。

第1の殺人ベンダーの毒殺方法は非常に面白く、これぞカー!といった感じだが、やはり犯人の協力者であるベンダーがトリックを労してまで「後家の部屋」に入ろうとした根拠が強引であるという思いが拭えない。過去に過ごした4人が全て絶命しているという部屋にいくら友人の頼みとはいえ、自ら進んで入ろうとするだろうか?

拍子抜けしたのが、H・M卿が最後に真相を話すにいたって、どの辺で犯人がアーノルドであると解ったという問いに、初めて会った時にと答えた事。それだったら第2の殺人を食い止められただろう!!

No.324 7点 第三の銃弾<完全版>- カーター・ディクスン 2008/08/23 21:40
登場人物たちがそれぞれ何らかの嘘をついていることで殺人計画が予想外の方向転換を余儀なくされた結果、2発の銃声に3種類の銃弾が発生するという奇妙な事件を招く。
この、どうにもすわりが悪い状況設定を最後に論理で解き明かしていくのは素晴らしい。

今回の作品の特徴として、新たな事実が発覚するにつれ、また新たな謎が生まれる畳み掛け方が絶妙だった。

銃声2発に対し、犯人から発射された銃弾は1発→現場で発見された別の銃の意外な持ち主→遺体から摘出された銃弾がその2丁の拳銃のどれでもない第3の銃弾だった→第3の銃の意外な発見場所→奇妙な窓の足跡→第2の殺人の発生、と謎また謎の連続である。

犯人も意外で、云う事ないのだが、窓の足跡については蛇足であると感じた。他者へ疑惑の目を向けるための工作だったが、開かない窓から脱出する足跡という謎は魅力的だったものの、その存在を十分に納得させるだけの論理性は薄弱だと感じた。

これさえなければ私の中でカーの代表作となる作品になっただろう。

No.323 7点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2008/08/22 15:20
アメリカの東半分をエラリーが犯人を追って駆け回る云わば「動のクイーン」が本書のウリとなるだろうか。
T型の十字架に磔にされた首のないT型の死体という今までにないショッキングな見立て殺人が、本作の、シリーズから一歩抜け出ようとする作者の強い意志を感じるのはよいとしても、首なし死体の首のない理由がごく単純だったのが、ちょっと残念。

しかし今回も挑戦は敗北。あの太字の一行に「参った!」と唸らされた。それでもやはり不満はある。

なぜトマス・ブラッドは犯人とチェッカーをやるために、家族のみならず、執事ら使用人らも含めて人払いしたのか?

またスティヴン・メガラの殺害について、桟橋にあったボートを盗んで犯行に及んだ事までは解っているが、どうやってその桟橋まで犯人は侵入できたのか?まだ警察はブラッドウッド界隈を見張っており、メガラが犯人をおびき寄せるべく、警察に警護を解くようにいった事実は、この犯人は知りようがないではないか。つまりこの犯人はそれまでブラッドウッドのどこに潜んでいたのかが全然解らない。

この辺が曖昧なままで終わってしまった。それだけが残念!

No.322 8点 ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン 2008/08/21 17:40
今のところ、クイーンの国名シリーズではこれがベスト。
トライアル&エラーがテーマでシリーズ中最長だが、それが作者の自信を窺わせるし、確かに面白かった。

あと、エラリーが大学卒まもないせいか、妙にチャラい(笑)。

今回も内容的に色々な不満があるが、今回は鮮やかに騙されたので良しとしよう。

No.321 7点 オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン 2008/08/20 13:44
本作においては最後犯人を2人まで絞り込む事ができたが、最後の最後で間違えてしまった!
ババ抜きで2枚残ったカードを眼の前に提示され、最後にババを引いてしまった、そんな感じだ。
しかし今回は納得行きます。天晴、クイーン!

しかし、犯行に使った白衣、ズボンならびに靴、そして決定的なのはマスクまで残しているのだから、そこから唾液や髪の毛を採取し、鑑定すれば犯人はロジックを駆使せずとも絞り込めると思うのに、今回もそういった動きは皆無。
つまりクイーンって、本当にロジックで解き明かすミステリなのだなぁ。
もうそういう物なんだと思って、次回から読もう。

No.320 7点 孤独の歌声- 天童荒太 2008/08/20 00:04
連続するコンビニ強盗、連続する若い女性の死体遺棄事件。
これらの事件を、捜査する朝山風季とシンガーを目指す芳川潤平、そして完璧な家族を目指すサイコキラーの謎の男の3人を軸に話は展開する。

後に『家族狩り』、畢生の傑作『永遠の仔』を物する作者の、天童荒太名義でのデビュー作(文庫解説によればその前に別名義でデビューしているらしい)。
文庫改稿版で読んだので、発表当時とはいささか文体が改めてられているようだが、この作品から既に読者の心まで響く信条描写力が備わっている。

しかし、展開は非常によどみないが、どうも2時間サスペンスドラマ的な感じと、どこかから借りてきたようなチープな感じが拭えない。
コンビニを舞台にした日常性、つまり誰しもが経験する恐怖を扱った手腕は買えるんだけど。

No.319 6点 暁の死線- ウィリアム・アイリッシュ 2008/08/18 20:16
アイリッシュ作品の中でも人気の高い本書は『幻の女』同様、タイムリミットサスペンス物だが、私は世評ほど面白いとは思わなかった。

別に殺人の容疑を晴らすのはクィンの指紋を消せばいいのであって、犯人を捜す必要はないと思うのだがどうだろう?
この導入部にどうも引っ掛かりが感じて十分楽しめなかった。

内容的にはまたも連作短編を読んでいるような作風で、申し分ない面白さがあるとは思うのだが・・・。

No.318 8点 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ 2008/08/17 14:34
有名な冒頭の一文に代表されるように、アイリッシュの美文に酔うが如く、物語を味わった。

主人公の無実を晴らす為に自身のみならず、親友まで協力して証拠を探すが、幾度となく徒労に終わる。
それらはヴァリエーションに富んでおり、あたかも連作短編のようだ。

そして最後の衝撃の真相に、読中引っかかっていた不自然さが腑に落ちる気がした。
しかし後日読み返すと、この真相にも諸手を挙げて賛同しかねる箇所があったので、評価はさらに下げた。

また、私的な感想を云えば、最後に幻の女の正体が判る事は、蛇足だったのではないだろうか。幻の女は最後の最後まで幻の女であって欲しかった。

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