海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

Tetchyさん
平均点: 6.74点 書評数: 1617件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.517 8点 フリーマントルの恐怖劇場- ブライアン・フリーマントル 2009/04/29 19:58
エスピオナージュ作家フリーマントルが紡いだ怪奇短編集。これが実にヴァラエティーに富んだ短編集となっている。
個人的ベストは「インサイダー取引」と「ゴーストライター」。
前者は投資家夫婦と降霊術という相反する物を結びつけたのがミソ。両者ともタイトルが秀逸。

このようなホラー・ストーリーはもはや出尽くした感があり、確かにここに語られる恐怖譚の中には目新しさは無い物もある。では何が読者の興趣を誘うかというとやはりそれは作者の語り口にあるだろう。
そしてフリーマントルが筆巧者であり、その定型化した恐怖譚をコクのある料理に変身させる腕前を備えていることを再認識させられた。

No.516 5点 暗殺者オファレルの原則- ブライアン・フリーマントル 2009/04/28 22:47
当初題名から連想していたのは映画『レオン』のレオンの如く、日々の日課を欠かさず、1つのフォーミュラのように固持して生活する内省的な暗殺者を思い浮かべていたが、さにあらず、家族みんなに頼りにされる模範的な父親・夫という人物だったのが意外だった。
このオファレルという暖かな家庭を持ち、規律正しい生活を信条とし、なおかつ潔癖とまで云える正義感を備えた暗殺者というこの設定がこの作品に厚みを持たせている。通常の小説で語られる精密機械のような感情の持たない暗殺者、人殺しに無上の喜びを感じる歪んだ性格の持ち主ではなく、このような生真面目な人物を設定したところにフリーマントルのアイデアの冴えを感じる。

が、最後の締めくくり方は非常に気分が悪い。
読後、しばらく声がでなかった。
最近読んだ本の中では、最も後味の悪い結末だ。
何を語りたくてあのような結末にしたのか、全く以ってフリーマントルの意図が理解できない。この作品を著した当時、家族間に何か問題があったのか、そう勘ぐってしまうほどの結末だ。
もう少し救いがあっても良かったのではないか、フリーマントルよ!

No.515 7点 第五の日に帰って行った男- ブライアン・フリーマントル 2009/04/27 22:17
亡命者をテーマにした5つの短編を集めたもの。
亡命者が亡命する際の緊張感、どのような緻密な計画を立てるのか、果たして成功するのか否かというのが亡命物のメインとなるのだが、短編である本作においてはその辺が軽く書かれており、フリーマントル自身、短編である事を意識して最後のどんでん返しに主眼を置いて著したようだ。
しかし彼お得意のどんでん返しも長編の焼き直しのような感じがして、物足りない。
この作者、やはり長編向きだと思う。

No.514 7点 BRAIN VALLEY- 瀬名秀明 2009/04/26 20:01
世に「理系ホラー」なる新語を定着させた衝撃のデビュー作『パラサイト・イヴ』では遺伝子工学の観点からミトコンドリアを題材にした瀬名氏が今回取り上げたテーマは題名にあるようにずばり脳。しかし本書ではこの未知なる領域、脳について様々な方向からアプローチを行い、一大叙事詩を繰り広げている。

“お光様”なる民間伝承、エイリアンによる誘拐(アブダクション)体験、さらには臨死体験からサイバースペース内で培養される人工生命へ、そして動物とのコミュニケーションの確立と物語は多岐に渡るが、瀬名氏は巧みにこれらを論理的にある一点に収束させていく。

が、しかし最後に明かされる“お光様”で、これら緻密な論理の牙城がいきなりぶっ飛んでしまった。ここまで堅牢無比かつ高度な論理的ホラーを築き上げておきながら、最後に説明のつかない物を持ってくる瀬名氏の意図が解らない。ある意味、暴挙とも云える。
最後の最後で悪い意味で裏切られた。残念。

No.513 7点 クレムリン・キス- ブライアン・フリーマントル 2009/04/26 00:03
本作のテーマはCIAとMI-6の諜報員同士のソ連の大物政治家の亡命を巡っての、丁々発止のやり取りなのだが、実は物語が動き出すのは全体の3/4当りに差し掛かった頃で、それまで本作ではモスクワに送られた各国スパイ達の交流とその夫婦生活と奥さん連中の内緒話、三角関係、遠距離恋愛といった、非常に通俗的な内容。
しかしこれが非常に面白い。スパイも家庭問題を抱えるのだね。息子が非行に走り、急遽勤務先から舞い戻ったりと大変なのだ。

実は個人的にはこの作品はこういう普段語られることのないスパイの生活を描くところで終わって欲しかったのだ。というのも本作に仕掛けられた最後のサプライズはあまりに唐突過ぎるからだ。技巧派のフリーマントルにしてはちょっと説明不足といった感じが拭えない。
今回はどんでん返しというよりも辻褄併せのような感じがした。実にフリーマントルらしくない歯切れの悪い結末だ。

No.512 9点 亡命者はモスクワをめざす- ブライアン・フリーマントル 2009/04/24 20:05
本作では前作でとうとう捕まってしまったチャーリーの獄中生活から始まるのが興味深い。各国の諜報部員達の裏をかき、自らが生き延びることを信条とするチャーリーだが、刑務所内ではその闊達ぶりは全く見られない。
逆にチャーリーの脱獄の手伝いをするためにわざと投獄された若き情報部員サンプソンに刑務所内で地位が逆転し、助けを請う始末。シリーズを読み続けている者にとっては、あまり面白くない展開だ。

しかし脱獄してからスパイ学校の講師になったチャーリーは彼が真に一流のスパイである事が解るエピソードだ。やっぱ、チャーリーはすごいわ。

そして本作から最新作までチャーリーと運命を共にする女性ナターリヤが登場する。このときは彼女とチャーリーとの恋は一過性のもので、単なるシリーズのアクセントでしか思っていなかったのだが、いやぁ、こんなに関係が続くとは思わなかった。

そして本作では驚愕の結末が待っている。チャーリーの報復には報復を、という性格と、物語全体に仕掛けられたある企みがマッチして、ものすごい効果を挙げている。私は最後、鳥肌が立ったものだ。
いやあ、この作品はシリーズの大きな分岐点だったんだなぁと後になって思った次第。

No.511 8点 罠にかけられた男- ブライアン・フリーマントル 2009/04/21 23:12
いやあ、痛快、痛快。やはりこのシリーズでの筆致は一線を画すほどの躍動感がある。

チャーリー・マフィンの常に人を喰ったような策士ぶりは健在。いや、それどころか組織に属していない分、上司に縛られていないので、むしろ更に狡猾さが増した感がした。特にFBIのテリッリ捕縛作戦にロマノフ王朝切手コレクションがダシに使われることを摑んでからのFBIとのやり取りと、その作戦に一役噛んでいる上院議員コズグローブとのやり取りの面白い事、面白い事。
権力ある者に屈せず、むしろその権力を嵩に横暴を貪る者達を嘲笑するように振舞うチャーリーの姿には、上司-部下の上下関係に逆らえないサラリーマンの、こうでありたいという姿であり、溜飲が下がる気持ちがした。

そして今回、チャーリーの敵役のペンドルベリーも、いやはやなかなか面白い人物である。この男は、FBI版チャーリー・マフィンであり、チャーリー自身も自分と同じ匂いを嗅ぎ取る。
この男の水をも漏らさない計画に穴を開けるのが、このチャーリーというのがまた面白い。丁々発止の頭脳戦は似た者同士の騙し合い合戦そのものであり、これが今回の物語のメインディッシュとしてかなり美味しいものだった。

魅力ある登場人物が増え、どんどんシリーズの世界が広がっていく。今後のシリーズの行く末が非常に愉しみだ。

No.510 8点 黄金をつくる男- ブライアン・フリーマントル 2009/04/20 22:36
フリーマントルの手による経済小説である本書は、従来、彼の得意とするエスピオナージュの手法を存分に取り入れており、主人公である多国籍企業の会長を縦横無尽に世界中を駆け巡らせ、丁々発止の駆け引きをさせる。

昔、某滋養強壮剤のCMコピーに「24時間戦えますか?」というのがあったが、本書の主人公で南アフリカの鉱山会社会長のコリントンは文字通り、24時間戦う会長だ。
不眠不休で世界中を駆け巡り、情報を収集し、状況を好転させる。
このコリントンのあまりのスーパーマンぶりに失笑を禁じえなかったが、その辺はフリーマントル、危ういところで読者との距離感を埋めている。仕事はすごいが、女性と家庭には不器用な男という肖像をきちんと描いており、なかなかである。

作品が書かれたのは80年代初頭とかなり古いが、それでも世界経済の情勢を知る上でもかなりの情報が詰め込まれており、非常に勉強になった。

No.509 5点 ディーケンの戦い- ブライアン・フリーマントル 2009/04/19 20:01
かつて勇名を馳せつつも相次ぐ敗訴で自信喪失中の弁護士ディーケンが武器商人らの取引に巻き込まれ、翻弄されるというお話。
とにかくなんとも救いのない話だ。
本来こういう設定ならば、ディーケンという男の復活をストーリーの軸にするのが定石だが、本作では違う。もうそれこそボロ雑巾のようにこき使われるだけなのだ。
しかも彼の行動原理となっているのは誘拐された妻を救うところにあるが、この妻の成行きも実に意外な方向に展開していく。

こういう小説はシニカルな面白さを求めれば楽しめるのだろうけど、私は爽快感を求めたが故に、悲壮感が最後残ってしまった。

特に最後にはフリーマントルならではといった仕掛けが明らかにされるが、ちょっと出来すぎのような気がして、それもまた十全に楽しめなかった一因となった。

No.508 7点 英雄- ブライアン・フリーマントル 2009/04/19 00:43
ダニーロフ&カウリーシリーズ第2弾。
アメリカで起きたロシア大使館員射殺事件を発端に、再び2人がコンビを組んで米露共同捜査に当る物語。捜査は次第にロシアマフィアとの抗争に巻き込まれていく。

やはり物語の主眼はアメリカ側のカウリーよりもロシア側のダニーロフに割かれており、これがかなり読ませる。
特にロシアマフィアと民警、大使館員らの癒着の有様を読むとロシアの政治が絶望的だという感を強くする。

しかし、全体的に冗漫だと感じた。特にマフィアと繋がっているダニーロフの悪友コソフや上巻で道化師役を割り当てられるメトキンの二人の狂言回しが長すぎる。これもダニーロフの人物像を深めるためのエピソードなのだろうが、なかなか核心に行かず、焦れた。
こういう冗漫さを感じるところが傑作と佳作の壁なのだろう。面白いがその面白さが突き抜けなかったなあ。

No.507 8点 猟鬼- ブライアン・フリーマントル 2009/04/17 22:32
ダニーロフ&カウリーシリーズ第1作目。
アメリカの政治原理とロシアの政治原理が交錯するやり取りは正にフリーマントルの真骨頂なのだが、今回はそれだけでなく、全編に事件解決の手掛かりが周到に散りばめられている、一種本格ミステリの要素も含まれている。
ここにフリーマントルのこのシリーズに賭ける意気込み、並々ならぬ創作意欲の迸りをびしびし感じた。まさに記念すべき新シリーズの幕開けだと云える1作だ。

今回、作者フリーマントルがロシア民警の警官とFBIエージェントを組ませて捜査を行うこの設定を思いついたのは単純に犬猿の仲とも云える相反する両国のミスマッチの妙と、水と油の関係の二国のそれぞれに属する者同士が国の利害を超え、結ばれる友情を描きたかった、それだけではないだろう。
90年代後半に起きたソ連の民主化政策、グラスノスチとペレストロイカという二大ムーヴメントによってもたらされた欧米的生活様式と価値観。それはまた同時に犯罪の欧米化を促す事でもあったのだ。
従って、今まで官吏が独裁的に行う犯罪捜査では解決しえない類いの犯罪も頻発する可能性があり、それを解決すべく東側もアメリカ式の犯罪捜査システムの導入が必要になる。こういった洞察からこの二国間のそれぞれの腕利きが協力し合うという構想が具体化していったに違いない。これこそ、フリーマントルの素晴らしき慧眼だといえる。

しかしそれにも増して物語に深みを与えるのが主人公2人の私生活に落とす翳だ。
英雄足りうる彼らも人並みに失恋し、不倫もするし、家庭内の不和という問題も抱える。それらがビシバシ情感に訴えてくる。

猟奇殺人事件のみならず、ロシア・アメリカ両国の政府に歴然と存在する政治原理のギャップ。そして主人公2人の苦悩など、読み応え抜群の1冊。

No.506 7点 十二の秘密指令- ブライアン・フリーマントル 2009/04/16 22:12
イギリスの対外情報機関「ザ・ファクトリー」に潜入した二重スパイの捕縛をテーマにした12の連作短編集。その内容は二重スパイの誤認、ロシアからの亡命者の話、潜入中の工作員の救出、ロシアへのスパイ派遣、首相のインサイダー取引疑惑事件、世界的経済壊滅事件、ロシア皇帝の末裔の話などヴァラエティに富んでいる。
財政のスペシャリスト、度胸満々のアラビア語を操るエージェント、暗号解読のスペシャリストなど、実に魅力的。こういった微に細に渡ったエージェントの諜報活動を読むのは、非常に胸を躍らさせ、これぞ読書の醍醐味というのを味わった。

ただサプライズのために用意されていたのだろうが、ラストのどんでん返しは余計な設定だった。
こういうところが職人作家のいらぬサービス精神なんだよなぁ。

No.505 5点 屍体配達人- ブライアン・フリーマントル 2009/04/15 19:58
ヨーロッパ各地で起こる連続バラバラ殺人事件を解決すべく、心理分析官クローディーン・カーターを中心に特捜班を作られる。クローディーンは外の敵だけでなく、内部の権力抗争にも巻き込まれる、というのはフリーマントルの定石的物語運び。

率直に云えば、可もなく不可もない作品。
職業作家としてのフリーマントルの職人技で作られた作品という印象が強い。それはこの小説で語られる事象が、ヨーロッパ各地で起こる凄惨な事件と平行して、自殺した夫に関するインサイダー取引疑惑、サングリエのユーロポールにおける自らの優位性を高めるための権謀術数など、色んな要素が絡み合っていることによる。
これがかえって事件への視点がぶれ、散漫な感じを強く受けた。

あと加えて傲岸不遜なクローディーンのキャラクターがどうしても共感を得ず、辟易してしまった。

これらこの小説を彩る内容は小説として非常に贅沢な感じを思わせるが、フリーマントルはこれらについてあまりに職人的すぎ、感銘を受けるには内容が薄いと感じた。

No.504 5点 屍泥棒- ブライアン・フリーマントル 2009/04/14 22:54
EU版FBI、ユーロポールに所属するプロファイラー、クローディーン・カーターの活躍を収めた短編集。
ヴァラエティに富み、しかもヨーロッパ諸国にそれぞれ舞台を変えて展開する物語。
こうやって書くとかなり面白く思えるのだが、さにあらず、正味30ページ前後の短編では、シナリオを読まされているような淡白さでストーリー展開に性急さを感じた。
なぜこのように淡白に感じるかというと、被害者の描写が単なる結果としか報告されないからで、あまりに省略された文章は読者の感情移入を許さないかのようだ。

全12作の中でよかったのはリアルタイムで事件が進行し、タイムリミットが設定された「天国への切符」とイタリアで蔓延する新型麻薬が実はハンガリーの新型麻薬の開発のために、人間を実験動物の代わりにしていたという真相が意外だった「モルモット」ぐらいか。
しかし現在ではほとんど手垢のついた題材で新味がないというのも事実。

No.503 7点 再び消されかけた男- ブライアン・フリーマントル 2009/04/13 23:40
前作『消されかけた男』の続きから物語は始まる。
しかし前作に比べると本作は小粒な印象を受けてしまう。今回は逃亡者としてのチャーリーの緊張感を軸にしてチャーリー抹殺のための英国情報部とCIAの丁々発止のやりとりを描いているのだが、プロットがストーリーに上手く溶け込まず、あざといまでに露見しているきらいがあり、チャーリーが逆転に転じる敵側のミスがあからさま過ぎる。

そして最後の方で退場するある人物は、物語の構成とチャーリーの生き方でそうせざるを得ないというのは解るけれど、ちょっとベタな始末のつけ方だなぁ。

最後に仕掛けるチャーリーの復讐。これがチャーリーという男の恐ろしさを表している。

No.502 9点 消されかけた男- ブライアン・フリーマントル 2009/04/12 19:46
原書が刊行されたのが'77年、訳出されたのが'79年。25年も前の作品である。確かに携帯電話とかインターネットとか無い時代で、ローテクであるのは致し方ないが、この頃の小説はひたすらキャラクターとプロットの妙味で読ませている。つまり作家としての物語を作る技量が高く、本書が放つ輝きはいささかも衰えているとは思えない。

チャーリー・マフィンシリーズの第1作。この第1作を読んで、これがシリーズ物になるのかと正直驚いた。それほどびっくりする結末である。

興味深いのはニュースで報じられる政治ニュースの裏側を垣間見せてくれる事。特に各国首脳の訪問にはかなりパワー・バランスが作用しているのだという事を教えてくれた。本書ではCIAがカレーニン亡命劇に一役買うことが出来なくなりそうになると大統領の各国訪問から英国を外すように働きかけ、情報部へ圧力をかける件はなるほど、こういう駆け引きが裏に隠されているのかと感心した。

No.501 5点 コンチネンタル・オプの事件簿- ダシール・ハメット 2009/04/10 22:06
結局の所、ハードボイルドについて云えば、そのストーリーもしくはプロットの妙もさる事ながら、その纏う雰囲気、文体にのれるかのれないかによる所が大きい。
心情の判らないサム・スペード物に比べれば今回のコンチネンタル・オプ物は主人公の内面に当たる所があり、今までのハメット作品の中ではのれた部類に入るのだが、正直云ってやはり物足りない。
コンチネンタル探偵社がオプを中心にチームワークで事件に当たるのは(私の中で)今までになくフレッシュな感覚があるのだが、その分登場人物が多過ぎて訳判んなくなってしまった。
う~ん。

No.500 7点 僕を殺した女- 北川歩実 2009/04/09 19:55
ある日目覚めると女になっており、しかもその世界は五年後の世界だったというSFとしか思えないこの設定に論理的解明を試みた野心作。

この主人公を取り巻いて色々登場人物が出てくるが、その誰もが色々問題を抱えているというのがちょっと詰め込みすぎと感じた。
ただ謎また謎の展開は全く先は読めないし、リーダビリティーは高い。
だからその分、真相に期待が高まるのだが、確かに十分考えられてはいるが、複雑すぎて爽快感とはほど遠く、論理を読み解くのに勉強しながら読んだという感じ。
実にサスペンスフルな作品だっただけにそれだけが悔やまれる。

No.499 7点 ガラスの鍵- ダシール・ハメット 2009/04/08 22:48
前半、軽妙なリズムで話が流れて、主人公ネド・ボーモンの曲者振りがいかんなく発揮され、かなりの手ごたえを感じた。
特にネドが敵役のシャドの手下達にリンチを受けるシーンは徹底した第三者視点の描写ながら、その執拗な攻撃に身震いを起こしてしまった。
だが後半になると、人物間のドロドロした話となり、いささか辟易してしまった。

名作の名高い本書だが、ちょっとオイラには重かったかな。

No.498 6点 赤い収穫- ダシール・ハメット 2009/04/07 22:32
2組の反目し合うマフィアが支配する街現れたコンティネンタル・オプが、知恵と策謀を風評を利用して、お互いをぶつけ合い、壊滅に導くという、今やギャング映画ならびにこの手の小説においてのストーリーの黄金律とも云えるこのプロットは、本書によって作られました。
従ってかなり歴史的意義は高いが、いかんせんオプという男が何を考えているのかが解らないところに評価が分かれると思う。
これはハメットが三人称叙述に徹しているからだと解ってはいるが、なかなか感情移入できず、よって上のような点数と相成った。
何年後かに再読する必要があるな、これは。

キーワードから探す