皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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sophiaさん |
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平均点: 6.94点 | 書評数: 373件 |
No.313 | 8点 | 誰も僕を裁けない- 早坂吝 | 2022/04/30 01:52 |
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ネタバレあり
館の仕掛けを犯人しか知らない、×××とらいちが似ているという偶然などご都合主義な部分は確かにあるのですが、叙述トリック解除による舞台の一本化が鮮烈な良作であると思います。トリックや伏線をエロ要素で作らせたらこの方の右に出る者はいませんね(笑)らいちとW主人公の彼が、ただ利用されただけの間抜けな男で終わってしまいかねない流れだったのを、最後に中心に戻して終わったのもポイントが高いです。 |
No.312 | 8点 | 死の命題- 門前典之 | 2022/04/19 22:39 |
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改題・改稿作品「屍の命題」を読みました。序盤で面白そうという感触を得たものの、中盤から矢継ぎ早に起こる事件があまりに常軌を逸しているため、これは納得できるような解決編は期待できないのかなと思って読み進めたのですが、鮎川哲也賞選考会で当の鮎川哲也氏が推したのも頷ける仕上がりで凄まじい作品でした。個々の事件は割と荒唐無稽でしょうもないのですが、それらは恐らくはこっちを実現するための手段にすぎないのだろうという一連の事件の全体像に感服しました。伏線であることを示す点々をそんなに打たなくてもいいと思わなくはないのですが、ある人物が「驚いた顔でコーヒーカップを握りしめて立っていた」という伏線は大変よかったです。
余談ですが「うほっ、うほっ」という擬声語はやめてもらえませんかね。もしかしてこいつゴリラなのか?とかいらぬ推理をしてしまったので(笑) |
No.311 | 5点 | 廃遊園地の殺人- 斜線堂有紀 | 2022/04/09 03:54 |
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ネタバレあり
過去の銃乱射事件の謎の方が魅力的で、現在の殺人事件が埋もれてしまいました。読み終わって間もないのに「犯人誰でしたっけ」という状態ですし、トリックもそんな労力をかけてまでやることなのかと感じました。いつの間にか「ハルくんは誰」というのが話の軸になっているのにも違和感がありました。そこに付随して最も気になるのが冒頭のワンシーンの「籤付晴乃は」という表記ですねえ。ここを「ハルくんは」と書いていればなあと切に思います。 それから本作品はどうも読みにくかったです。主人公を含め主要人物に過去を隠している(あるいは記憶が曖昧な)人物が多いせいか、物語に感情移入しにくかったです。取って付けたような主人公の出自もあまり響かず。先に書かれている方もいますが、伏線が多すぎるのも読みにくさの一因でしょうか。しかもそのほとんどが解決編まで回収されないので整理するのが大変で、快適な読書とは言い難かったです(終わってみると特に意味のなかったダミーの伏線もちらほらありましたし)。ある程度は回収しつつ話を進めてほしいと思いました。「楽園とは探偵の不在なり」ではもっと「小説」が上手かった気がするので失望が大きいです。 |
No.310 | 8点 | 真夜中のマリオネット- 知念実希人 | 2022/03/16 01:12 |
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ネタバレあり
「私が救ったのは天使か悪魔か」という大きな柱を崩しちゃった割には真犯人の意外性に乏しい。これは完全に「悪魔」のパターンでしょ、とんだ竜頭蛇尾だと思っていたらエピローグ・・・。「硝子の塔の殺人」のヒットで脂の乗り切った知念実希人という作家を見くびっていました。すみません。世間でも賛否がはっきり分かれているようですが、まあよく出来ている作品だと思いますよ。映画「セブン」並みに後味が悪いです。しかしここまで行くと逆に清々しいのです(笑) |
No.309 | 9点 | 同志少女よ、敵を撃て- 逢坂冬馬 | 2022/02/24 23:20 |
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少女兵バージョンの「戦場のコックたち」という感じでした。女性の深緑野分が「戦場のコックたち」を書き、男性の逢坂冬馬が本作を書くというのは面白いですね。味方がテンポよく次々と死んでいき、その描写も至って淡泊なのですが、それはいつ誰が死んでもおかしくない戦場の過酷さを知らしめる著者の狙いなのだと思います。特に第三章でのあの人物の早々の離脱が象徴的です。
当初は復讐のため、途中からは女性を守るためという目的をも持って軍隊に身を投じたはずのセラフィマですが、次第に初心を失っていき、何のために戦うのかを自問自答し成長していく姿は共感を呼びます。そしてそれが衝撃的なラストへつながってゆくのですから、壮大な伏線回収を見た思いです。歴史ものとしても冒険ものとしてもミステリーとしても一級品であったと思います。なお、エピローグでロシアとウクライナの関係に触れられているのが実にタイムリーです。 |
No.308 | 4点 | ゴースト≠ノイズ(リダクション)- 十市社 | 2022/02/18 00:32 |
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思いっきりネタバレします
新人離れした心理描写の上手さには目を見張るものがありますが(後半だんだんくどく感じられはしました)それだけで、ミステリーとしての完成度は低いです。最後真相が明かされるところできょとんですよ。まさか自分のことをそう思い込んでただけってこと?紙切れ一枚で?みたいな。さすがにこれは無理ですよ。「手のひらが透けた」とか「握手が空振りした」とか書いてしまってるじゃないですか。完全にアンフェアであると私も思います。 作品内で扱われるいくつかの事象、主人公の家庭問題、高町の家庭問題、クラス内のいざこざ、校内で起きる動物虐殺事件などは全部がバラバラで、ひとつの主流を形成できていません。結局何を読まされたのか?というすっきりしない読後感です。タイトルもセンスないですし、ツッコミどころはまだまだたくさんあるのですが、最後にひとつだけどうしても言いたいことがあります。やかん事件のことどんだけ根に持つんだよこいつらは(笑) |
No.307 | 9点 | 名探偵に甘美なる死を- 方丈貴恵 | 2022/02/09 18:41 |
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VRゲームと現実世界の両方を舞台にした、全く新しい最先端の館ものミステリー。「インシテミル」のようなデスゲームものが好きな人へも是非お勧めします。使われる数々のトリックは「そんなの分かるわけないだろう」と怒ってもいいレベルのぶっ飛んだものなのですが、怒らずに済むのは考え抜かれた二つの館の構造やさり気なく出されている数字など、伏線に対する感心が勝るからなのです。ゲームのルールは複雑で、ゲームマスターの気分による後付けルールも続出します。こういう頭を使う凝った作品は本来ページがなかなか進まないものですが、ほぼ一気に読まされてしまいました。
なお本作はシリーズ第3作ですが、第1作と第2作の主人公が共演するという、夢のような(?)作品となっています。二人に最大限に感情移入するために是非第1作から読んでいただきたいと思います。 |
No.306 | 8点 | 望み- 雫井脩介 | 2022/02/04 22:47 |
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設定が少々凝っているだけで割とありがちな少年犯罪ものかなと思って読んでいましたが、そうではありませんでした。ナイフに一喜一憂する父親、息子の無実を訴える友人に反駁してしまう母親、自分の人生が閉ざされることを何よりも恐れる妹、三者三様のパラドックスにより紡がれるドラマの結末に胸を締め付けられる思いでした。 |
No.305 | 8点 | 模像殺人事件- 佐々木俊介 | 2022/01/30 17:03 |
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隠れた名作と音に聞く本作、待望の復刊を機に読んでみました。これは入り組んでますねえ。人物記述の点でアンフェアにならないよう第三者の手記という体裁を採ったのですね。その手記がさらに人の手に渡ることで物語が厚みを増すという仕組みです。
予想をはるかに上回るハチャメチャな話で、正直な話毒気に当てられてしまったような気分なのですが、論理の面では非常にしっかりしており面白く、高評価せざるを得ないといったところです。 |
No.304 | 7点 | 魔術師- 佐々木俊介 | 2022/01/24 18:28 |
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舞台設定が麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」に似ていますが、それとはまた違う狂気じみた作品です。真相は衝撃的でありますし、○○○○に基づいた見立てなどよく出来ている部分はありますが、何の根拠もない与太話を盲信してあれだけのことをするのかという釈然としない思いも残りました。「魔術師」「秘儀(アルカナ)」「神秘学」などというミステリアスな用語で装飾したり、手帳の文面におどろおどろしいフォントを用いたりして雰囲気を出そうとしているのは分かるのですけれども。 |
No.303 | 5点 | 1話3分で驚きの結末!大どんでん返しの物語- アンソロジー(出版社編) | 2021/12/30 23:11 |
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宝島社出版の「5分で読めるひと駅ストーリー」「3分で読める喫茶店の物語」「10分間ミステリー」等から今回のテーマに沿った16短編を収録したもの。正直に言いまして傑作選でこの水準なのかという軽い失望はあります。それでも「フレンチプレスといくつかの嘘」「祈り捧げる」「柿」「盆帰り」は読み応えがありました。ベストは悩みますが、恋心と信仰の板挟みが苦い「祈り捧げる」と、唯一しっかり本格ミステリーとしても成立している「盆帰り」の2作を挙げさせていただきます。 |
No.302 | 6点 | カミサマはそういない- 深緑野分 | 2021/12/07 01:40 |
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現実的事件から無限ループ地獄から戦争ミステリーから終末的世界の冒険譚から、これでもかというくらい多種多様な短編集です。特に今回はファンタジーホラーへの挑戦が見られます。全7話飽きずに読めてお得である反面、少しまとまりを欠いてしまいましたかね。「オーブランの少女」のように、ある程度の括りがあった方が評価しやすかったかもしれません。救いのない話ばかりですが、「新しい音楽、海賊ラジオ」は希望を感じさせる爽やかな読後感でした。この話がラストで本当によかったです。 |
No.301 | 7点 | 神のダイスを見上げて- 知念実希人 | 2021/11/25 23:34 |
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小惑星の衝突による地球滅亡をタイムリミットとしたフーダニット&復讐劇。接触した人物が次々と殺されていき主人公自身も容疑者になってしまうというというサスペンス要素もあり、謎めいた同級生の女の子との青春もあり、それら全てが終末的な潮流に支配されているという、言うなれば一種の特殊設定ミステリーといった作品です。追いかける犯人像が二転三転していくのはこの手の作品の王道なのですが、最後の最後のどんでん返しが推測に過ぎず雑に感じました。もう少し根拠となるような伏線を張ってもらいたかったです。それと市川憂人の某作を先に読んでいなければなあという個人的事情も併記しておきます。 |
No.300 | 6点 | 野球が好きすぎて- 東川篤哉 | 2021/11/15 23:20 |
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ネタバレあり
プロ野球ファンなら思わず笑ってしまう小ネタが織り交ぜられたライトな作品で楽しく読めましたが、ミステリーとしては粗さが目立ちます。主な突っ込み所としては、第3話の中断の時間も当然飛ばすのでは?というところと、第4話の犯行現場を偽装するメリットが感じられないというところです。第1話「カープレッドよりも真っ赤な嘘」がシンプルながら綺麗にまとまっていてこの中では一番よかったですかね。あとはパ・リーグの話がもっと欲しかったところです。 |
No.299 | 5点 | 変な家- 雨穴 | 2021/11/11 23:49 |
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本作は人気のYouTube動画を書籍化したものだとか。「不動産ミステリー」の謳い文句に相応しく、話の折々に間取り図が挿入されるという親切設計です。しかし「不動産ミステリー」だったのは第二章まで。第三章はもはや単なる隠し部屋・隠し通路捜しミステリーになってしまい、あまつさえ第四章は家系図ミステリーになってしまいました。こういう無理に長編に仕立てたものではなく、独立した複数の短編が読みたかったですね。真相の現実味のなさは棚に上げておきます。 |
No.298 | 7点 | invert 城塚翡翠倒叙集- 相沢沙呼 | 2021/11/02 22:41 |
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ネタバレあり
あらら?(あれれ?でしたっけ)というのが正直な感想です。今作は正真正銘の霊媒師として事件に立ち向かうと思っていましたので、まだそこをリドルにしたままで進めるのかとまず思いました。霊媒師として描かれない翡翠は魅力半減です。さらに各エピソード終わりに「and again」なんて書いてあるものですから、前作のように最後に別角度から伏線回収していくものだと思っていたのですが当てが外れました。恐らく今作の目玉であろう3話目の叙述トリックも奇を衒いすぎてちょっと受け入れがたい。この作品に求めているサプライズはこういうのじゃないんですよね。衝撃的だった前作に比べて何だか普通のミステリーになってしまって残念です。個人的にこれはシリーズ化しない方がよかったと思います。 追記 酷評してしまったようですが、軽く読み返してみたところ、「medium」の続編という枷を外せば及第点は付けていいのかなあと思いましたので1点プラスしておきます。 |
No.297 | 10点 | 黒牢城- 米澤穂信 | 2021/10/24 18:45 |
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わたくし日本史にはとんと疎く、どこまでが史実かも分からなかったのですが、それが却ってよかったのでしょうか、フィクションと割り切って楽しむことが出来ました。行き詰った捜査員が囚人の知恵を借りて事件を解決するなどというのは映画などでもままあるパターンですが、本作は囚人の官兵衛からの働きかけもある点が新しいです。いや、壮大な遠望です。この戦乱の時代の武士道や死生観が四つの大きな事件と絡み合っており、ミステリーとしても時代小説としても抜群の読み応えです。この作品を著者名を伏せられた状態で読んでいたとしたら、米澤穂信だとはまず分からなかったと思います。まさに新境地です。
そしてこの作品には優れた点がまだあります。私は先述の通り日本史に疎いがゆえに、ラストの「×××は実は~」のくだりで驚くことが出来ましたが、恐らく歴史に詳しい人とそうでない人で異なる楽しみ方ができる作りになっているのだと思います。個人的に著者の最高傑作は「折れた竜骨」でしたが、これはあるいは超えたかもしれません。 |
No.296 | 6点 | 金色の獣、彼方に向かう- 恒川光太郎 | 2021/10/15 21:28 |
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文句なしに面白いのは歴史スペクタクル「異神千夜」だけです。「風天孔参り」は「夜行の冬」と「秋の牢獄」を足したような話。中盤まで面白かっただけに、オチをちゃんと付けて欲しかったです。「森の神、夢に還る」と「金色の獣、彼方に向かう」はいずれも超自然的な存在とシンクロする話です。この二話は抽象的で、私があまり好きじゃない方の恒川光太郎でした。 |
No.295 | 9点 | 硝子の塔の殺人- 知念実希人 | 2021/10/10 22:14 |
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若干ネタバレ気味です
外界から孤立したガラス張りの奇妙な塔で起こる連続密室殺人。知念実希人氏が満を持して贈る本格ファン待望の館ミステリー。と思いきや、まさかの倒叙もの?えっ、どういうこと?とプロローグの時点で術中に嵌ってしまいました。最初から最後まで意表を突く展開でずっと面白く、舞台設定ともリンクしている二段構えの構成は実に美しいです。 この作品は「問題作」や「賛否両論」という触れ込みですが、真相は私が思っていたほど滅茶苦茶なものではなく、普通に傑作だと思いました。動機部分が問題ということなのかもしれませんが、私は割とすんなり受け入れられました。これはコテコテの舞台設定や人物設定、本格ミステリーへの愛が止まらない探偵など序盤からメタミステリーのオーラがこれでもかと充満していたことが大きいと思います。これは本格ミステリーの新たなマイルストーンと呼んでも良い作品なのではないでしょうか。しかし「硝子館の殺人」より出来の悪い館シリーズありますよね(禁句?)。 |
No.294 | 7点 | 崩れる脳を抱きしめて- 知念実希人 | 2021/10/02 23:53 |
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第二部で病院側が採った「君の××だよ」作戦はだいぶ無理があると思いますけれども(笑)、無駄のない文章とストーリー運びですらすら読めましたし、プロローグで描かれている主人公の決意が読者の思っていたものとは全く異なるものに変貌する様が素晴らしかったです。注文を付けるとするならば、第一部で「ユウさん」の描写をもう少し緻密にしていたら最後真相が明らかになるところで効いたのではないでしょうか(敢えてそうしなかった面もあるとは思いますが)。 |